PRESSRELEASE プレスリリース
<注目市場>
■水処理膜の世界市場 3,373億円(47.1%増)
~ 中国や新興国での工業化や経済成長に伴い工業用水処理の需要が増加 ~
■上下水道遠隔監視・制御システムの国内市場 62億円(55.0%増)
~ 施設や設備の管理の効率化やコスト削減ニーズの高まりにより導入進む ~
総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋小伝馬町 社長 清口 正夫 03-3664-5811)は、気候変動による水の偏在化が加速するなか、安定的な水資源確保のため注目を集めている水処理関連の市場を調査した。その結果を「2019年版 水資源関連市場の現状と将来展望」にまとめた。
この調査では、水処理膜3品目、水処理薬品・副資材8品目、水処理装置・プラント9品目、水処理関連サービス5品目の市場を調査・分析し、将来を展望した。
なお、水処理プラント・エンジニアリング(EPC)会社、水道事業者・O&M会社など、水ビジネスに参入する国内外の“企業"を基点に業界動向をとらえ「水ビジネスに挑む注目企業の事業戦略動向 2020」にまとめた。
◆注目市場
■水処理膜
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2019年見込 |
2018年比 |
2025年予測 |
2018年比 |
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世界市場 |
2,392億円 |
104.3% |
3,373億円 |
147.1% |
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国内市場 |
139億円 |
100.7% |
149億円 |
108.0% |
水処理膜はMF膜/UF膜、MBR用膜、RO膜/NF膜を対象とする。
世界市場は中国など新興国での工業化や経済成長、環境規制の強化に伴い拡大している。MF膜/UF膜は中国、インド、東南アジアで飲料水や水道水に対する水質規制が強化されていることや、経済発展に伴う工業化や都市化が進んでいることから需要が増加し伸びている。また、北米や欧州の安定したリプレース需要やMENAを中心とした海水淡水化プロジェクトが活発化していることも伸長の要因となっている。MBR用膜は北米や欧州で下水処理場の安定したリプレース需要を獲得している。また、中国では都市部を中心にMBR用膜を採用した下水処理場や、地方部では農業集落排水の整備が進み需要が増加している。RO膜/NF膜は工業用水処理・純水製造用途や海水・かん水淡水化用途、下水・排水の再利用用途、超純水製造用途、民生用では浄水器など多様な用途で採用されている。中国では半導体などのエレクトロニクス産業の進展に伴い、超純水製造用途で需要が増加している。また、環境規制の強化に伴い中国や北米などでは、下水や排水の再利用用途が注目されている。MENAでは海水淡水化の需要が高まっており、大規模プロジェクトに伴う新規需要などにより好調である。
国内市場は水処理の高度化ニーズの高まりによる需要増加に加え、リプレース需要が堅調であることから拡大している。MF膜/UF膜は、浄水場および工業用水処理の需要が中心となっている。導入済み浄水場への安定したリプレース需要により伸びている。MBR用膜は、食品・飲料などの工場排水向けが中心となっている。世界的に普及している下水処理場向けの需要は限られるため、市場は横ばいとなっている。
RO膜/NF膜は、一般工業や発電所、エレクトロニクス分野における純水・超純水製造用途が中心である。リプレース需要を中心とし堅調に市場は拡大している。
■上下水道遠隔監視・制御システム
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2019年見込 |
2018年比 |
2025年予測 |
2018年比 |
国内市場 |
42億円 |
105.0% |
62億円 |
155.0% |
近年普及が進むクラウド型の遠隔監視・制御システムを対象とし、機器販売だけではなくシステム使用料などのサービス料も対象とする。
災害時のBCP対策として、クラウド型遠隔監視・制御システムへのニーズが高まっており、市場は拡大している。また、多くの自治体では人口減少に伴う水道事業の収益性の悪化や、水道事業職員の高齢化に伴うマンパワーや経験の不足から、できるだけ監視システムの構築コストを下げ、管理の効率化を図る目的で、クラウド型遠隔システムの導入が進んでいる。今後、人口減少が進み水道事業の広域化や民営化が進むことで、各地に点在する施設や設備管理の効率化やコスト削減ニーズがさらに高まるため、システムの導入は増加し市場の拡大が予想される。
■地下水利用システム/サービス
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2019年見込 |
2018年比 |
2025年予測 |
2018年比 |
国内市場 |
155億円 |
107.6% |
160億円 |
111.1% |
地下水膜ろ過システムなどにより、地下水に適切なろ過処理などを施し専用水道として提供するサービスを対象とする。
地下水利用システム/サービスは、商業施設、工場など大口水需要家の水道料金の削減目的での導入が中心であった。しかし、2011年の東日本大震災後は地下水が緊急用水源として注目されるようになり、コスト削減だけではなくBCP対策やCSRの目的で、医療行為の際に水を必要とする病院や、避難所となる学校や官公庁施設などでの導入が増加している。2018年12月に閣議決定された2018年度から2020年度の「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」の事業により、補助対象となる病院を中心に地下水利用システム/サービスの導入が進んでいる。今後は、BCP対策の普及が進み今回の補助対象以外の中小規模の病院やそのほかの施設などでの導入増加も期待され市場拡大が予想される。
■純水・超純水供給サービス
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2019年見込 |
2018年比 |
2025年予測 |
2018年比 |
国内市場 |
379億円 |
104.7% |
403億円 |
111.3% |
純水・超純水供給サービス(水売り)や装置のレンタルサービスなど、装置売り以外で収益を得るビジネスモデルを対象とする。
純水・超純水供給サービスは、契約期間は約10年であり、その間は安定した収益を得ることができる。大型案件の契約終了に伴い市場が変動することもあるが、顧客数が増加しており国内の半導体メーカーやディスプレイメーカーの多くで採用されていることから、市場は拡大している。装置のレンタルサービスは、季節要因による増産などに対応して純水利用量が増加する飲料メーカーなどで安定した需要を獲得しており好調である。
◆調査結果の概要
■水処理関連の国内市場
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2019年見込 |
2018年比 |
2025年予測 |
2018年比 |
水処理薬品・副資材 |
1,482億円 |
101.2% |
1,426億円 |
97.4% |
水処理装置・プラント |
992億円 |
99.6% |
937億円 |
94.1% |
水処理関連サービス |
1,616億円 |
101.3% |
1,637億円 |
102.6% |
水処理薬品・副資材市場と水処理装置・プラント市場は、人口減少や産業空洞化などの影響を受け伸びが鈍化しており長期的には微減が予想される。一方、水処理関連サービス市場はイニシャル/ランニングコストの削減要求、技術者不足などを背景に需要が増加しており、今後拡大していくとみられる。
【水処理薬品・副資材】
人口減少、産業空洞化、薬品使用量の低減化、他技術との競合などにより市場は縮小していくとみられる。製品別にみると、純水製造装置や超純水製造装置に組み込み、薬品を使用せず電気的にイオン交換樹脂の再生を行うEDIスタックは、薬品使用量の低減化が可能な点やメンテナンスが容易であることなどが評価され注目度が高まっている。
【水処理装置・プラント】
水処理装置・プラントはすでに普及が進んでおり、リプレース需要が中心となっている。新設案件が少なくなっているため市場は縮小していくとみられる。製品別にみると、紫外線照射装置は浄水場へのさらなる普及や新たな光源としてUV-LEDの開発が進められており伸びるとみられる。
【水処理関連サービス】
水道事業の民間委託、下水道施設の民間委託、純水・超純水供給サービス、上下水道遠隔監視・制御システム、地下水利用システム/サービスを対象とする。
下水道施設の民間委託は、維持管理費用削減や施設の老朽化、維持管理業務の担い手や技術職員の減少などの問題から増加している。今後、コンセッション(施設の所有権を公共主体に残したまま、民間事業者が長期間の運営を行うこと)など新たな官民連携形態が採用されることが期待される。純水・超純水供給サービスは、国内の半導体メーカーやディスプレイメーカーの多くで採用されており好調である。上下水道遠隔監視・制御システムは、災害時のBCP対策としてニーズが高まっており伸びている。地下水利用システム/サービスは、東日本大震災後は地下水が緊急用水源として注目されるようになり、コスト削減だけではなくBCP対策やCSRの目的で病院や学校、官公庁などで導入が増加している。
◆調査対象
水処理膜 |
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・MF膜(精密ろ過膜)/UF膜(限外ろ過膜) |
・RO膜(逆浸透膜)/NF膜(ナノろ過膜) |
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・MBR(膜分離活性汚泥法)用膜 |
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水処理薬品・副資材 |
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・ボイラ・冷却水用薬品 |
・高分子凝集剤 |
・イオン交換樹脂 |
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・水殺菌・消毒用薬品 |
・キレート樹脂/液体キレート剤 |
・EDIスタック |
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・無機凝集剤 |
・活性炭 |
(電気再生式イオン交換装置) |
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水処理装置・プラント |
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・純水製造装置/システム |
・紫外線照射装置 |
・嫌気処理システム(UASB/EGSB) |
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・超純水製造装置/システム |
・超微細気泡散気装置 |
・海水淡水化装置・プラント |
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・オゾン発生装置(オゾナイザ) |
・浄化槽 |
・汚泥脱水機 |
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水処理関連サービス |
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・水道事業の民間委託 |
・純水・超純水供給サービス |
・地下水利用システム/サービス |
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・下水道施設の民間委託 |
・上下水道遠隔監視・制御システム |
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※網掛け部分は国内市場に加え世界市場も調査した。