PRESSRELEASE プレスリリース
検査数は年平均成長率(2015-2021年)1.7%、検査薬は同1.0%
総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 清口正夫 代表取締役)は、病気の診断や治療方針、経過の確認や重症度の判定、回復の度合いなどをみるために行われる臨床検査のうち、人体から採取した血液や尿、便などを分析する検体検査の国内市場を2015年10月より調査している。今回は免疫反応を用いて特定の物質を同定・測定するイムノアッセイ(免疫血清検査)市場を調査した。
その結果を報告書「2016 臨床検査市場 No.1 イムノアッセイ市場」にまとめた。この報告書では、イムノアッセイの検査数と用いられる検査薬の市場を、検査領域ごとに、また、測定方式ごとに分析し、将来を予測した。また、測定装置の市場についても測定方式ごとに分析し、将来を予測した。
◆調査結果の概要
イムノアッセイの国内市場
2015年 |
2021年予測 |
2015年比 |
CAGR 2015-2021年 |
|
検査数 |
7億7,638万件 |
8億5,949万件 |
110.7% |
1.7% |
検査薬 |
2,008億円 |
2,131億円 |
106.1% |
1.0% |
2015年のイムノアッセイ市場は検査数が前年比1.8%増の7億7,638万件、検査薬が同1.6%増の2,008億円となった。検査数、検査薬共に近年は大きな変化がなく微増となっている。CCP抗体、プロカルシトニンなど、一時注目された新規検査は現在もやや高い伸びを維持しているものの、普及初期のような急激な伸びを示しているわけではない。感染症領域では、一部の感染症に例年に無い流行が観測されているが、全体市場に影響を及ぼすほどの伸びとはなっていない。一方、流行の大小で全体市場の拡大・縮小に影響を与えていたインフルエンザウイルスの検査は疑わしければ実施する検査として定着したため、小流行のシーズンでもある程度の検査需要を維持出来るようになっている。今後も市場は検査数が年平均成長率(2015年〜2021年)1.7%、検査薬が同1.0%と予測される。
1. 検査領域別市場
主要検査領域の検査薬市場
感染症、ホルモン、癌の3検査領域で、イムノアッセイの検査薬市場のおよそ7割を占める。
感染症領域市場は微増推移している。比較的伸びているのはアデノウイルスやRSV、A群レンサ球菌、ヘリコバクター・ピロリなどである。インフルエンザウイルスは疑わしければ実施する検査として定着したため、一定の検査需要が維持されつつ横ばいとなっている。今後も季節性感染症で大流行がなければ市場は微増が予想される。肝炎関連の検査需要も頭打ちに近づいており、大きな伸びが望めない状況である。一方、POC関連では検査需要の伸びが期待される。
ホルモン領域で検査需要が伸びているのは心疾患関連のBNPやNT-proBNP、プロカルシトニンなどである。今後もBNPとNT-proBNP、プロカルシトニンは伸びるとみられる。プロカルシトニンは新規の測定方式や参入企業が予想されており、それが伸長の一因となる。
癌領域市場はほぼ横ばいである。検査項目別にみると、肝細胞癌に特異性の高いPIVKA−?で特許切れに伴う新規参入があり、2015年に市場が活性化している。
2. 測定方式別市場
高感度定量法の検査薬市場
高感度定量法のメインはRIA法からEIA法を経て、現在は化学発光法となっている。
RIA法は1980年代初頭まで高感度定量法のメインであったが、放射性物質を利用するため検査は許認可制で、設備が必要、線量制限や廃棄の問題などがあったことから、1980年代半ばに登場した放射性物質を利用しないEIA法へ徐々に移行が進んだ。現在もRIA法で実施されている検査はRIA法以外に測定方式が無いものが中心になっている。検査数は減少しており、市場は縮小している。
EIA法はRIA法からの移行により高感度定量法として広範に普及した。しかし、1990年代にEIA法の課題であった特異性・感度・測定時間の問題を改善した化学発光法が登場し、EIA法の切り替えが進んだ。但し、EIA法でも化学発光法と互角にまで性能を高められたものもあり、市場は一定規模を維持している。今後も市場は横ばいが予想される。
化学発光法の登場以降、新たな測定方式は登場しておらず、今もなお化学発光法メインが続いている。イムノアッセイの検査数が自然増推移する中、新装置の発売、化学発光法装置と生化学装置の連携・統合、他社製化学発光法装置専用検査薬の提携販売、他社に無い新規検査項目の販促など、参入各社は戦略を実行に移してきている。これらが市場の拡大につながると期待され、年平均成長率(2015年〜2021年)1.3%、2021年には2015年比8.3%増の940億円が予測される。
簡易・迅速定性法の検査薬市場
ラテックス凝集法は便潜血の主要測定方式として広範に普及した。その他の簡易・迅速検査にも応用されたが、比較的精度の高いCG(イムノクロマトグラフィー)法の登場にともない検査数が減少、市場が縮小している。また、赤血球凝集法とPA法は感染症の定性検査で広範に普及したが、同じくCG法の登場にともない検査数が減少している。
CG法は厚労省が検査精度向上を目指し、感染症を中心に広範に普及していた赤血球凝集法、PA法などからの変更を推奨したことで伸びた。操作が簡便であることも特徴で、検査技師のみならず、医師や看護師などでも簡単に検査が可能である。CG法のインフルエンザウイルス検査キットが発売と同時に大きな市場を形成し、現在ではPOC検査のメインの測定方式として様々な検査に採用されている。
◆調査対象
測定方式 | EIA法、RIA法、赤血球凝集法、FIA法、TIA法、PA法、化学発光法、NIA法、ラテックス定量法、ラテックス凝集法、その他 |
検査領域 | 輸血検査、自己免疫、癌、血漿蛋白、CG法(イムノクロマトグラフィー法)、ホルモン、TDM、感染症、その他 |
※一部の数字は四捨五入しています。このため合計と一致しない場合があります。