PRESSRELEASE プレスリリース
抗がん剤、抗がん剤関連用剤を調査
抗がん剤1兆4,367億円(35.0%増)、抗がん剤関連用剤1,099億円(11.6%増)
総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 清口正夫 代表取締役)は、2016年5月から、医師の診断に基づいて処方される医療用医薬品について、国内市場の動向を調査している。このたび第5回(全7回)として、抗がん剤15分類、抗がん剤関連用剤としてCSF、制吐剤、がん疼痛治療剤、がん副作用治療剤・がん関連症状緩和剤の市場を調査した。その結果を「2017 医療用医薬品データブック No.5」にまとめた。
がん領域は多くの製薬企業が開発ターゲットとして注力している領域であるとともに、分子標的治療剤、また、免疫チェックポイント阻害剤の登場により市場環境が大きく変化している領域でもある。免疫チェックポイント阻害剤は、現在発売されている3製品に加え、他にも複数の製品が開発されており、発売を間近に控えている。免疫チェックポイント阻害剤との併用療法でも多くの製品開発が進められているため、今後の抗がん剤による治療及び市場は大きな動きが予想される。※市場はメーカ出荷ベース
◆調査結果の概要
抗がん剤と抗がん剤関連用剤の国内市場
抗がん剤の市場は、分子標的治療剤の新薬発売や適応拡大、2014年に免疫チェックポイント阻害剤「オプジーボ」(小野薬品工業)が登場したことで拡大を続けている。
2016年の市場は前年比12.2%増の1兆646億円となった。市場規模の大きい肺がんや、腎がん、骨髄異形成症候群・その他血液がんなどの伸びが市場拡大をけん引している。2017年は前年比3.7%増の1兆1,041億円が見込まれる。今後は多くの治療剤で伸びが予想される。特に免疫チェックポイント阻害剤が発売される肺がん、胃・食道がん、頭頸部がん、腎がん、皮膚がんなどの大幅な伸びが期待される。2025年の市場は1兆4,367億円が予測される。
抗がん剤関連用剤の2016年の市場は前年比3.9%増の985億円となった。認知度の高まりから処方数を伸ばしているがん疼痛治療剤の規模が最も大きい。「アロキシ」(大鵬薬品工業)や「イメンド/プロイメンド」(小野薬品工業)といった上位製品がけん引し拡大してきた制吐剤が続いている。CSFはバイオシミラーの発売により一時落ち込んでいたが、新製品「ジーラスタ」(協和発酵キリン)の伸びにより市場は回復しつつある。2017年は前年比1.7%増の1,002億円が見込まれる。今後は、がん疼痛治療剤やがん副作用治療剤・がん関連症状緩和剤の伸びがけん引し、2025年には1,099億円が予測される。
◆注目抗がん剤市場
1.肺がん
2016年 |
2025年予測 |
2016年比 |
|
市場規模 |
2,072億円 |
3,707億円 |
178.9% |
2014年に第二世代のEGFR-TKI「ジオトリフ」(日本ベーリンガーインゲルハイム)が、2016年に第三世代のEGFR-TKI「タグリッソ」(アストラゼネカ)がそれぞれ発売されたほか、ALK阻害剤の「ザーコリ」(ファイザー)、「アレセンサ」(中外製薬)が発売され、個別化医療の進展に伴う分子標的治療剤の伸びにより市場は拡大している。
2016年は、2015年12月に免疫チェックポイント阻害剤「オプジーボ」が非小細胞肺がんの適応拡大を取得したことが寄与し、市場は大幅に拡大した。
2017年は「オプジーボ」が、緊急薬価改定により薬価が50%に引き下げられたため実績は縮小するとみられるが、非小細胞肺がんを適応とした2剤目の免疫チェックポイント阻害剤「キイトルーダ」(MSD)が発売されたため、市場は微増が見込まれる。免疫チェックポイント阻害剤は発売された3製品に加え、今後発売されるとみられる製品が複数あるため、更なる伸びが予想される。また、併用療法による奏功率の向上により、治療における免疫チェックポイント阻害剤の位置づけが高まるとみられる。
2018年以降、主に免疫チェックポイント阻害剤の伸びにより、更なる市場の拡大が予想される。「オプジーボ」はセカンドライン以降の処方となるため伸びは緩やかになるとみられるものの、PD-L1 TDS 50%以上の患者に対するファーストラインで処方可能な「キイトルーダ」や、今後発売が予想される抗PD-L1抗体の伸びにより、2025年の市場は2016年比78.9%増が予測される。
2.頭頸部がん
2016年 |
2025年予測 |
2016年比 |
|
市場規模 |
77億円 |
402億円 |
5.2倍 |
2012年に頭頸部がんの適応拡大を取得した分子標的治療剤 「アービタックス」(メルクセローノ)が、既存の抗がん剤に比べ高薬価であったこともあり市場は一気に拡大した。
2017年は3月に免疫チェックポイント阻害剤「オプジーボ」が頭頸部がんの適応拡大を取得したことにより市場は大幅な拡大が見込まれる。加えて、他の免疫チェックポイント阻害剤が頭頸部がんを対象とした適応拡大を目指しており、2018年以降もそれらがけん引して市場拡大が続くと予想される。患者数が増加していることも市場拡大の要因になるとみられる。
3.大腸がん
2016年 |
2025年予測 |
2016年比 |
|
市場規模 |
1,457億円 |
1,469億円 |
100.8% |
2014年5月の代謝拮抗剤「ロンサーフ」(大鵬薬品工業)、2016年6月の「サイラムザ」(日本イーライリリー)の発売により市場は拡大を続けてきた。2017年の市場は、5月に「ザルトラップ」(サノフィ)が発売されたものの、ジェネリック医薬品登場の影響により縮小が見込まれる。
高齢化社会の進行により患者数の増加が想定されるため、処方増加が予想される。代謝拮抗剤はジェネリック医薬品や薬価改定の影響もあり減少するものの、分子標的治療剤や免疫チェックポイント阻害剤の発売により、市場は拡大し2025年には1,469億円が予測される。
4.多発性骨髄腫
2016年 |
2025年予測 |
2016年比 |
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市場規模 |
701億円 |
1,163億円 |
165.9% |
2006年に分子標的治療剤の「ベルケイド」(ヤンセンファーマ)が発売されたことにより、治療方法が大きく変わり、同剤がけん引して市場は拡大を続けてきた。
2015年の「ポマリスト」(セルジーン)、「ファリーダック」(ノバルティス ファーマ)、2016年の「カイプロリス」(小野薬品工業)、「エムプリシティ」(ブリストル・マイヤーズ スクイブ)、2017年の「ニンラーロ」(武田薬品工業)といった新製品が相次いで発売されたことにより市場は活性化している。また、「ニンラーロ」は多発性骨髄腫のファーストラインでの国際共同臨床第3相試験を行っており、ファーストラインでの処方が可能となれば治療パラダイムが大きく変化する可能性があり市場への影響が予想される。
患者数が増加基調にある上に、発症は高齢者に多いことから、移植は困難であり薬物療法が主流であるため、近年発売された高薬価の分子標的治療剤の処方が増加することにより、今後も市場拡大が続くとみられる。2018年頃には抗体医薬品とし2製品目となる、現在申請中の「ダラツムマブ」(ヤンセンファーマ)が発売を控えており、市場の底上げが期待される。
◆調査対象
抗がん剤 | 肺がん、前立腺がん、白血病、胃、食道がん、肝がん、悪性リンパ腫、大腸がん、頭頸部がん、多発性骨髄腫、乳がん、腎がん、骨髄異形成症候群、その他血液がん、子宮がん、卵巣がん、その他女性関連がん、皮膚がん、その他固形がん |
抗がん剤関連用剤 | CSF、がん疼痛治療剤、がん副作用治療剤、がん関連症状緩和剤、制吐剤 |
※一部の数字は四捨五入しています。このため合計と一致しない場合があります。