PRESSRELEASE プレスリリース

第20052号

医療ビッグデータビジネスの国内市場を調査
―2032年市場予測―
●AI搭載型医療画像診断支援システム 43億円
~2019年に市場が形成、専門医不足による需要の高さもあり早期拡大が期待~
●自動問診システム/診断bot 12億円(2018年比20.0倍)
~AI技術の進展により病気の推測が可能となり、業務効率化ニーズなどにより拡大~
●製薬企業向けコールセンター/問い合わせ支援システム 12億円 (2018年比36.4%増)
~AI活用システムの開発進展によって導入増加が期待~

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋小伝馬町 社長 清口 正夫 03-3664-5811)は、今後医療分野においても欠かせない技術になるAIを活用することで、さらなる展開が期待される医療ビッグデータビジネスの国内市場を調査した。その結果を「2020年 医療ITのシームレス化・クラウド化と医療ビッグデータビジネスの将来展望 No.2 医療ビッグデータビジネス編」にまとめた。

この調査では、医療ビッグデータを活用し業務支援や付加価値向上をはかるビジネスとして、医療ビッグデータ分析、ビッグデータ活用治療・診断システム、医療向けプロモーション支援など9カテゴリー37品目の市場を調査し、AI、IoT、ブロックチェーンなどの新技術の導入状況なども明らかにした。

なお、医療ビッグデータビジネスのベースとなる医療ITの普及やシームレス化・クラウド化の動向については「(同)No.1 医療IT・医療情報プラットフォーム編」でまとめており、その結果は3月19日に発表している。

◆注目市場

●AI搭載型医療画像診断支援システム【ビッグデータ活用治療・診断システム】

2019年見込

2018年比

2032年予測

2018年比

僅少

43億円

CTやMRI、病理診断画像など医用画像の診断を支援する、AI搭載システムを対象とする。

2019年にエルピクセルがシステムを発売し市場が立ち上がった。2020年以降もメドメインをはじめ、現在開発を進める企業の参入が予想される。

放射線専門医や病理専門医が大幅に不足していることからAIによる画像診断支援システムの需要は高いと考えられ、早期の普及と市場拡大が期待される。一方でAIによる診断支援のエビデンスが明確に示されない場合は採用が限定的になる可能性もある。

●自動問診システム/診断bot【ビッグデータ活用治療・診断システム】

2019年見込

2018年比

2032年予測

2018年比

0.8億円

133.3%

12億円

20.0倍

患者が問診に回答することで、AIが病気を推測し、医師や看護師への通知や電子カルテなどに自動で反映する、病院・診療所向けの問診システムを対象とする。

見落とし防止など診断支援を目的に開発され、2017年に市場が立ち上がった。以前よりタブレット端末などを用いた問診支援システムが展開されていたが、AIとロボット技術の進展により問診回答からの病気の推測や診断の精度を高めるために患者の回答に応じて問診の内容を変えることが可能となった。

電子カルテの普及や医療現場における業務効率化を求める動きがありニーズは高いとみられ、参入企業の増加とともに市場の拡大が期待される。

●製薬企業向けコールセンター/問い合わせ支援システム【医療向けプロモーション支援】

2019年見込

2018年比

2032年予測

2018年比

9.2億円

104.5%

12億円

136.4%

製薬企業向けのコールセンターおよび問い合わせ支援システムを対象とし、AIチャットボットも含む。

システムが必要な製薬企業への導入はすでに進んでおり、リプレースと保守運用がメインである。AIを活用したチャットボットや音声認識によるオペレータ支援などが展開されているが、医療業界特有の用語の登録など開発が遅れていることもあり、AIを活用したシステムの導入に慎重な製薬企業も多い。今後、開発の進展によってAIを活用したシステムを導入する製薬企業の増加が期待される。

●治療アプリ(管理・モニタリング)【デジタル治療システム】

2019年見込

2018年比

2032年予測

2018年比

4.7億円

患者がスマートフォンなどに入力したデータを、医学的知見を搭載したアルゴリズムで解析し、個々の患者へ適切な指導を行うアプリで、保険が適用されるものを対象とする。

世界初の治療アプリは2010年にFDAより承認された糖尿病患者向けアプリである。国内では2014年の薬事法改正により治療アプリが医療機器の承認対象に追加され、開発が始まった。2019年にニコチン依存症を対象とした治療アプリが初めて申請され、2020年中の承認が期待されている。

●医療関連業界向け医療ビッグデータ分析【医療ビッグデータ分析分野】

2019年見込

2018年比

2032年予測

2018年比

73億円

123.7%

250億円

4.2倍

医療ビッグデータから個人情報を除いた統計データやその分析結果を製薬や医療機器など医療関連企業に対して提供するサービスを対象とする。

以前から活用されていたのが調剤薬局のレセプトデータである。データごとに様々な企業がサービスを展開しており、複数のデータを掛け合わせることで、より深く分析する動きが活発化している。大手製薬企業を中心にマーケティングを目的とした医療ビッグデータの利活用が進んだことで市場は拡大した。

現在では需要のすそ野が広がり、中堅の製薬や医療機器などでも利用が浸透し、レセプトデータのみならずDPCデータや電子カルテデータ、健診データなど様々なデータが活用されている。また、治験の効率化や医療経済評価などマーケティング以外での利用も活発化していることから、市場は拡大していくとみられる。

なお、医療ビッグデータの分析にはAIの活用も期待されているが、実験的な試みにとどまっており、AIがパッケージ化されたサービスの展開は現状みられない。今後、生体モニタリング装置のウェアラブル化やIoT化により、心拍などのヘルスケアデータがリアルタイムで取得可能となり、医療ビッグデータに新たな価値が加わることが期待される。

◆調査結果の概要

■医療ビッグデータビジネス市場

 

2019年見込

2018年比

2032年予測

2018年比

合 計

5,221億円

105.4%

6,479億円

130.8%

 

創薬支援

168億円

105.0%

220億円

137.5%

 

医療ビッグデータ分析分野

277億円

111.7%

729億円

2.9倍

 

医薬品開発支援

258億円

102.0%

299億円

118.2%

 

ビッグデータ活用治療・診断システム

3,928億円

104.8%

4,277億円

114.1%

 

医療向けプロモーション支援

581億円

108.6%

854億円

159.6%

※創薬支援、医療ビッグデータ分析分野、医薬品開発支援、ビッグデータ活用治療・診断システム、医療向けプロモーション支援は合計の内数

医療ビッグデータビジネス市場は、現時点で市場をけん引するビッグデータ活用治療・診断システムに加え、医療向けプロモーション支援、医療ビッグデータ分析分野が伸びることで拡大し、2032年には6,479億円が予測される。

医療ビッグデータ分析分野は医療ビッグデータを集めて分析するサービスを対象とする。厚生労働省が主導するデータヘルス計画により健康保険組合による活用が進む保険者向けデータ分析、個人による疾病リスク検査ニーズの高まりによるDTC遺伝子検査サービスの伸長が市場をけん引していくとみられる。

ビッグデータ活用治療・診断システムは、集めた医療ビッグデータを分析し、治療や診断を支援するシステムを対象とする。分子標的治療剤や免疫チェックポイント阻害剤など高価な医療用医薬品が多い、テーラーメイド医療(個別化医療)の需要が大きい。また、がんゲノム医療の進展により、プレシジョン・メディシンの伸びも期待される。

医療向けプロモーション支援は、ITを活用したプロモーション支援を対象とする。医師を含む医療従事者向けサービスと製薬企業向けの営業システムに分けられる。MRの訪問規制などによりITを活用したプロモーションにシフトしており、拡大が予想される。

◆調査対象

創薬支援

 

・インシリコ創薬・創薬支援システム(AI創薬含む)

 

医療ビッグデータ分析

 

・医療関連業界向け医療ビッグデータ分析

・保険者向けデータ分析

・病院向けDPCデータウェアハウス・

・医療ビッグデータ向けクレンジングサービス

病院経営分析サービス

・DTC遺伝子検査サービス

医薬品開発支援

 

・臨床試験支援システム

・安全性情報管理システム

・EDCシステム

・製造販売後調査支援システム

・電子的原データ収集システム(eSource)

・その他開発支援システム・サービス

・被験者日誌システム(ePRO)

(医療ビッグデータ活用開発支援サービス、

・リモートSDVシステム

バーチャル治験システム/サービス含む)

ビッグデータ活用治療・診断システム

 

・プレシジョン・メディシン

・AI搭載型医療画像診断支援システム

・テーラーメイド医療(個別化医療)

・AI搭載型精神科向け診断支援システム

・自動問診システム/診断bot

・AI搭載型内視鏡診断支援システム

デジタル治療システム

 

・医療・介護向けデジタルゲーミフィケーション

・治療アプリ(管理・モニタリング)

遠隔/IoT活用治療・診断システム

 

・CGM(持続血糖測定)

・遠隔・IoT服薬管理システム

・デジタルセンサー搭載型薬剤(デジタルメディスン)

 

医療向けプロモーション支援

 

・医療向けe-プロモーション

・ディテール支援システム

・ドクター向けポータルサイト

・医師・薬剤師データベース

・ドクター向けSNS

・製薬企業向けコールセンター/問い合わせ支援

・Web講演会サービス

システム

・製薬企業向け営業支援システム

 

医療向け個人情報管理システム

 

・患者向け診療情報閲覧システム

 

注目トピックス

 

・医療ブロックチェーンの動向

・医療ブロックチェーンの動向(データ利活用)

(トレーサビリティ・流通管理)

・病院向け働き方改革ソリューション


2020/05/22
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