PRESSRELEASE プレスリリース
<調査結果の概要>
・生化学検査薬は2019年比微減の801億円、血液学検査は同拡大の427億円、検査関連ITシステムは同微減の560億円
<注目市場>
・コントロール血清は2019年比21.4%増の34億円、コントロール血球、血漿は2019年比13.2%増の60億円、同8.3%増の13億円とそれぞれ市場が拡大
総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋小伝馬町 社長 清口 正夫 03-3664-5811)は、臨床検査のうち、採血した血液や尿などに含まれる成分を分析し、健康状態や病気の程度を調べる生化学検査や、血液に含まれる赤血球・白血球・血小板などの細胞数や形態から炎症や貧血、病気の有無などを調べたり、血液の固まり易さを調べたりする血液学検査、また、検体検査の実施や、データ管理などをサポートする検査関連ITシステムの国内市場を調査した。その結果を「2020 臨床検査市場 No.2 生化学検査・血液検査市場/検査関連ITシステム市場」にまとめた。
◆調査結果の概要
■生化学検査薬の国内市場
2019年 |
2025年予測 |
2019年比 |
802億円 |
801億円 |
99.9% |
生化学検査薬は、生化学試薬(HPLC装置用試薬、血糖分析装置用試薬含む)、簡易分析装置用試薬、電解質分析装置用試薬、血液ガス分析装置用試薬を対象とする。
2019年の生化学検査薬市場は2018年比で横ばいとなり、802億円であった。生化学検査は普及から長期が経過しており、市場は飽和している。今後も横ばいとみられ、2025年には801億円(2019年比0.1%減)が予測される。
生化学試薬市場は、自動化学分析装置用試薬を中心に、HPLC装置用試薬、血糖分析装置用試薬ほかで構成される。糖尿病検査試薬のHbA1cが市場拡大をけん引してきたが、糖尿病患者の顕在化が進んでいることから伸びは鈍化しており、今後は横ばいとみられる。
簡易分析装置用試薬市場は、生化学検査のルーチン項目(肝機能・膵臓・心筋など)の試薬は飽和が進んでいる。また、生活習慣病に特化した項目の試薬は伸びが鈍化するとみられる。
電解質分析装置用試薬市場は、装置の減少に伴い微減しており、今後も微減で推移していくとみられる。
血液ガス分析装置用試薬市場は、救急対応の患者の増加によってわずかに拡大している。今後も救急対応の患者の増加によって市場は微増で推移していくとみられる。
■血液学検査薬の国内市場
2019年 |
2025年予測 |
2019年比 |
380億円 |
427億円 |
112.4% |
血液学検査薬は、血液凝固・線溶試薬(PT‐INR装置用試薬含む)と血球計数装置用試薬を対象とする。
2019年の血液学検査薬市場は、380億円(2018年比1.3%増)となった。2025年には427億円(2019年比12.4%増)が予測される。
血液凝固・線溶試薬市場は、Dダイマーが血栓症診断、循環器疾患診断での需要増加で伸びており市場をけん引している。今後もDダイマーの伸びによってわずかに市場は拡大していくとみられる。一方、主要検査項目であるPT、APTT、フィブリノーゲンは自然増、FDPはDダイマーへの移行で減少していくとみられる。PT‐INR装置用試薬市場は、抗凝固剤のワーファリンの使用が減少していることから縮小している。今後も引き続きワーファリンの使用は減少するとみられ、市場は縮小が予想される。
血球計数装置用試薬市場は、微増となっている。血球計数検査は、健康状態の診断や病気の治癒状態を調べるための基本であり、今後、高齢化の進展に伴ってわずかに市場は拡大していくとみられる。
■検査関連ITシステムの国内市場
2019年 |
2025年予測 |
2019年比 |
562億円 |
560億円 |
99.6% |
検体検査支援システム、検体検査搬送システム、病理・細胞診検査業務支援システム、輸血検査支援システム、細菌検査支援システム、感染制御支援システム、検査室在庫管理システム、健診支援システム、ISO 15189運用支援システムを対象とする。
2019年の検査関連ITシステム市場は、562億円(2018年比4.7%増)となった。2025年には560億円(2019年比0.4%減)が予測される。
最も規模の大きい検体検査支援システム市場は、中規模以上の病院で普及が一巡しており、リプレース需要が中心である。今後もリプレース需要が中心のため市場は横ばいとみられる。
次いで規模が大きい検体検査搬送システム市場は、大学病院などの大規模病院の需要が中心であり中小規模病院の需要は少ない。現状は、大規模病院ではほぼ導入を終えており、リプレース需要が中心となっている。今後は、病院数の減少および臨床検査機器のコンパクト化により検査室も省スペース化が進むことで需要は減少し、市場は縮小するとみられる。
病理・細胞診検査業務支援システム市場は、高齢化の進展によるがん患者の増加に伴い病理診断科が増加し、拡大している。今後もさらなる高齢化の進展による病理・細胞診検査需要の高まりから、市場は拡大すると予想される。
輸血検査支援システムは、輸血検査の情報管理、輸血製剤依頼から製剤出庫、在庫管理、血液備蓄管理などを行うシステムであり、必要性は高く普及が進んでいる。今後は、リプレース需要が中心になるとみられるが、検体検査支援システムのサブシステムとして導入する施設が出てくることが予想され、需要は高まるとみられる。
細菌検査支援システム市場は、細菌検査の手順が煩雑で手間がかかることから、自動化、システム化のニーズが高く、拡大している。今後、大幅な市場拡大は期待しづらいが安定的に推移していくとみられる。
感染制御支援システム市場は、院内感染対策として重要度は高まっており拡大している。新型コロナウイルス感染症の院内感染も多く発生していることから、2022年にかけて対策をさらに推し進める施設が増え、需要は増加するとみられる。
検査室在庫管理システム市場は僅少である。他システムに機能が付帯していることから、今後も大幅な拡大は期待できない。
健診支援システムは、健診を実施している医療施設や健診センターのほとんどに導入されていることから、リプレース需要が中心となっている。今後も新規導入施設は限られ、リプレース需要が中心になると予想される。また、長期的には人口減少に伴い健診受診数も減少し、市場は縮小するとみられる。
ISO 15189運用支援システム市場は、2016年度診療報酬改定により「国際標準検査管理加算」が追加され、治験実施施設などではISO 15189の認証取得が推奨されており、取得した施設が増えていることから拡大している。今後も認証を取得する施設は増えるとみられ、市場の拡大が予想される。
◆注目市場
●コントロール血清、血球、血漿
|
2019年 |
2025年予測 |
2019年比 |
コントロール血清 |
28億円 |
34億円 |
121.4% |
コントロール血球 |
53億円 |
60億円 |
113.2% |
コントロール血漿 |
12億円 |
13億円 |
108.3% |
コントロール血清は生化学検査装置の測定精度を管理するための各検査項目に値付けされた血清であり、一定のタイミングでこの血清検体を測定することにより、正確な測定値が得られる。コントロール血球、血漿は血球計数装置、血液凝固装置の測定精度管理のための試薬である。
2018年12月に改正医療法(検体検査関連)が施行され、検体検査業務を行う医療機関や検体検査業務を医療機関から受託して行う衛生検査所などにおける測定精度管理の基準が明確化された。これにより精度管理意識が高まり、使用頻度が増加して、2019年の市場は拡大した。今後も精度管理意識の向上により各市場とも拡大していくとみられる。
◆調査対象
生化学検査 |
|
検査薬 |
検査装置 |
・生化学試薬 ・HPLC装置用試薬 ・血糖分析装置用試薬 ・簡易分析装置用試薬 ・電解質分析装置用試薬 ・血液ガス分析装置用試薬 ・コントロール血清※1 |
・自動化学分析装置 ・簡易分析装置 ・電解質分析装置 ・血糖分析装置 ・HPLC装置(HbA1c測定) ・血液ガス分析装置
|
血液学検査 |
|
検査薬 |
検査装置 |
・血液凝固・線溶試薬 ・PT-INR装置用試薬 ・血球計数装置用試薬 ・コントロール血球・血漿※2 |
・血液凝固装置 ・PT-INR装置 ・血球計数装置
|
検査関連ITシステム |
|
・検体検査支援システム ・病理・細胞診検査業務支援システム ・輸血検査支援システム ・細菌検査支援システム ・感染制御支援システム |
・検査室在庫管理システム ・検体検査搬送システム ・健診支援システム ・ISO 15189運用支援システム
|
※1調査結果の概要の生化学検査薬の国内市場には含まない
※2調査結果の概要の血液学検査薬の国内市場には含まない