PRESSRELEASE プレスリリース

第21046号

新型コロナのPCR検査で伸びている遺伝子検査の国内市場を調査
―2020年(前年比)/2025年予測(2020年比)―
■遺伝子検査の検査薬市場 222億円(2.2倍)/308億円(38.7%増)
~2020年は“PCR検査”の呼称で浸透した新型コロナウイルスの検査がけん引~
■病理検査の検査薬市場 96億円(3.2%増)/111億円(15.6%増)
~抗がん剤などの適応拡大でコンパニオン診断として堅調に拡大~

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋小伝馬町 社長 清口 正夫 03-3664-5811)は、新型コロナウイルス(SARS‐CoV‐2)検査薬が立ち上がり急拡大した遺伝子検査や、医療機関への受診控えや感染症対策の浸透によりインフルエンザ抗原迅速検査キットなどが落ち込んだPOC検査など臨床検査の国内市場を調査した。その結果を「2021 臨床検査市場 No.3 細菌検査・遺伝子検査・POC検査・病理検査・新型コロナウイルス検査」にまとめた。

この調査では、検査室で行う遺伝子、病理、細菌検査と、キットなどを用いて検査室以外でも行うことができるPOC(Point Of Care)検査の検査薬と検査装置の市場を捉えた。

◆調査結果の概要

■遺伝子検査の検査薬市場

2020年

前年比

2025年予測

2020年比

222億円

2.2倍

308億円

138.7%

ウイルスや微生物の遺伝子を検出することで感染の有無や治療薬の効果を判定する遺伝子検査の検査薬を対象とする。肝炎、結核、性感染症など、主に感染症関連の検査項目で構成される。微生物の培養では結果が出るまで時間がかかるが、遺伝子検査は当日中に結果が得られるため、自動化や簡便化の進展とともに検査機会が増加し、検査薬市場も堅調である。

2020年は、新型コロナウイルス感染症が世界的に大流行し、最も早く保険適用された遺伝子検査がスタンダードな検査として普及したことで、検査薬市場が大きく拡大した。一方で、感染症対策の浸透や医療機関への受診控えによる検査機会の減少により、その他感染症の検査項目では縮小がみられる。今後数年は新型コロナウイルス検査薬が市場の60%以上を占めると予想される。

■病理検査の検査薬市場

2020年

前年比

2025年予測

2020年比

96億円

103.2%

111億円

115.6%

採取した細胞や組織を観察し病変を診断する病理検査の検査薬(染色液・検査キットなど)を対象とする。検査薬で病変に特異的に発現する特定抗原を選択的に着色することで、観察や診断が容易となる。

近年、抗体医薬品の適性や治療効果を判断するためのコンパニオン診断薬として、免疫組織染色を中心に市場が形成されている。がん治療に欠かせない検査であることから2020年においても新型コロナウイルス感染症の影響はあまり受けておらず、市場は前年比3.2%増となった。

今後の市場は、治療薬の適応拡大による利用増加などで拡大を続け、2025年には2020年比15.6%増の111億円が予測される。

■細菌検査の検査薬市場

2020年

前年比

2025年予測

2020年比

222億円

89.5%

248億円

111.7%

培養することで微生物の有無を判定する細菌検査の検査薬(培地・器具など)を対象とする。

2020年はマスクの着用や手洗いなどの新型コロナウイルス感染症予防対策がほかの感染症予防にも奏功したこと、患者の医療機関受診控えによる検査機会が減少したことにより市場は縮小した。感染症対策の浸透により培地や装置用検査薬は2020年に続き、2021年も縮小するとみられる。

2022年以降は回復が期待されるものの、培地は低価格化と自動化による使用量の減少により回復は緩やかとみられる。一方、装置用検査薬は手作業および目視(マニュアル)からの移行により2024年には2019年の規模を上回るとみられる。

■POC検査の検査薬市場

2020年

前年比

2025年予測

2020年比

938億円

84.9%

1,087億円

115.9%

検査室以外でも行える簡便・迅速なPOC検査薬・検査キットを対象とする。尿試験紙、HCG・LH、便潜血、肝炎、呼吸器感染症、消化器感染症、糖尿病、心筋障害の関連項目、血糖自己測定などがある。

細菌検査の検査薬と同様に、マスクの着用や手洗いなどの新型コロナウイルス感染症予防対策がほかの感染症予防にも奏功したこと、検査機会が減少したことにより市場は縮小し、2020年は1,000億円を下回った。

これまで市場をけん引してきたインフルエンザ抗原迅速検査キットは前年比51.3%減の75億円と大きく落ち込んだ。また、市場の40%以上を占める血糖自己測定装置用検査薬は、在宅時に実施する検査のため影響を受けにくいとみられていたが、受診控えなど診療機会の減少による自己管理意識の低下や新規利用者の減少により、縮小した。

◆注目市場

■新型コロナウイルス検査薬

2020年に一気に市場が形成された。現在、遺伝子検査、免疫血清検査(抗原検査、抗体検査)の検査薬が展開されている。一般的にも“PCR検査"の呼称で浸透した遺伝子検査がスタンダードな検査として普及しており、今後の市場拡大をけん引するとみられる。

抗原検査には定量法と定性法がある。定量法は、検査精度も高く、遺伝子検査ほど前処理などが煩雑でないことから、現在は空港検疫向けが多い。定性法は、イムノクロマト法などの検査キットがあり、専用の検査装置が不要なものが多く中小病院やクリニックを中心に利用されている。今後はインフルエンザ抗原迅速検査キットなどのように検査キットが常備される可能性がある。

抗体検査は抗体の有無により感染歴を判断するものである。厚生労働省や研究機関などによる大規模な抗体検査や疫学調査における需要が高く、今後はワクチン接種後の抗体確認を目的とした利用の増加も予想される。

◆調査対象

SARS‐CoV‐2検査薬(研究用含む)

遺伝子検査

検査薬

検査装置

・遺伝子検査薬

・遺伝子検査装置

病理検査

検査薬

検査装置

・免疫染色検査薬

・遺伝子検査薬

・病理検査装置

・術中リンパ節遺伝子検査装置

細菌検査

検査薬(培地・器具など)

検査装置

・生培地

・粉末培地

・ガスパック

・血液培養ボトル

・感受性ディスク

・簡易同定キット

・オート用培地

 

・血液培養・抗酸菌培養装置

・感受性装置

・同定+感受性装置

・同定装置

POC検査

検査薬・検査キット

検査装置

・尿検査薬

・便潜血検査薬

・簡易分析装置用検査薬

・HCG簡易検査キット

・LH簡易検査キット

・HBs抗原・抗体簡易検査キット

・HCV抗体簡易検査キット

・マイコプラズマ抗原迅速検査キット

・敗血症簡易検査キット

・ロタウイルス抗原検査キット

・A群β連鎖球菌

ダイレクト検査キット

・アデノウイルス抗原検査キット

・RSウイルス抗原検査キット

 

・ヒトメタニューモウイルス

検査キット

・インフルエンザ抗原迅速検査キット

・SARS‐CoV‐2

抗原簡易検査キット

・ノロウイルス抗原検査キット

・肺炎球菌・レジオネラ

簡易検査キット

・尿中アルブミン定性検査キット

・糖尿病専用測定装置用検査薬

・心筋マーカー迅速検査薬

・アレルギー簡易検査キット

・CRP専用測定装置用検査薬

・OTC検査キット

・血糖自己測定装置用検査薬

・尿検査装置

・便潜血検査装置

・簡易分析装置

・デンシトメトリー装置

・糖尿病専用測定装置

・心筋マーカー迅速検査装置

・CRP専用測定装置

・血糖自己測定装置


2021/05/17
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