PRESSRELEASE プレスリリース

第21105号

データヘルス計画、健康経営、PHR関連システム/サービス市場を調査
―2029年国内市場予測(2020年比)―
■データヘルス計画、健康経営、PHR関連システム/サービス 1,778億円(2.2倍)
ヘルスケアデータの分析・活用が進み、市場拡大
●ストレスチェック・メンタルヘルス対策 380億円(2.4倍)
テレワークの普及でメンタルヘルス対策の強化を意識する企業が増加

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋小伝馬町 社長 清口 正夫 03-3664-5811)は、健康保険組合によるデータヘルス計画への取り組み、企業による健康経営の推進、個人によるPHR(Personal Health Record)の活用、さらには官民連携によるPHRの二次利用に向けた環境整備などにより注目される、データヘルス計画、健康経営、PHR関連システム/サービスの国内市場を調査した。その結果を「データヘルス計画・健康経営・PHR関連市場と先進健保動向 2021」にまとめた。

この調査では、データヘルス計画関連3品目、健康経営関連10品目、健康情報・PHR関連5品目、計18品目の市場調査に加え、健康保険組合105団体へ第2期データヘルス計画に対する最新の取り組み状況、新型コロナウイルス感染症の影響などについてのアンケート調査を実施し、整理した。

◆調査結果の概要

■データヘルス計画、健康経営、PHR関連システム/サービスの国内市場

 

2021年見込

2020年比

2029年予測

2020年比

データヘルス計画関連

221億円

120.1%

470億円

2.6倍

健康経営関連

608億円

120.4%

1,065億円

2.1倍

健康情報・PHR関連

146億円

109.8%

243億円

182.7%

合 計

974億円

118.5%

1,778億円

2.2倍

※市場データは四捨五入している

新型コロナウイルス感染症の影響により、感染症対策が優先されたことで、各システム/サービスの導入見送りなどが一部でみられたが、新型コロナによるニューノーマルに対応したオンラインサービスの提供や健康への意識が高まったことで、2020年の市場は前年に続き拡大し、2021年も好調である。今後は、政策の動向と企業や個人の健康増進意識に左右されるものの、ヘルスケアデータの分析・活用が進むことで、新たなサービスやシステムが登場し、市場は2029年に2020年比2.2倍の1,778億円が予測される。

【データヘルス計画関連】

健康保険組合向けシステム/サービスが中心である。2013年に策定された成長戦略「日本再興戦略」(内閣府)に基づきデータヘルス計画が始動し、2018年度から始まった第2期データヘルス計画では、レセプトや健診情報などを活用したデータ分析や、科学的アプローチによる予防・健康づくり事業など、健康保険組合はより綿密な計画立案が求められている。

2020年は新型コロナの影響により、医療機関への受診控えなどから重症化予防サービスが減少したものの、特定健診受診率や特定保健指導実施率の達成などで計画見直しを迫られる健康保険組合も出てきたことから、データ分析の必要性が高まり市場は拡大した。また、第2期データヘルス計画の中間評価が実施されたことから、2021年以降は、中間評価を受けての対応や目標未達のペナルティが設定されたことへの対応など取り組み強化が検討されており、需要がさらに高まるとみられる。

データヘルス計画の動向や、国のロードマップに左右されやすいが、継続した市場拡大により2029年には2020年比2.6倍が予測される。

【健康経営関連】

法人向けシステム/サービスが中心である。働き方改革や健康経営の各種認定制度の開始以降、企業の健康経営に対する意識が高まり、市場が拡大している。ホワイト500に加え、2020年度から健康経営優良法人の中小規模法人部門ブライト500が新たに開始したことを受けて、中小企業でも健康経営の意識が高まり、市場の裾野が広がっている。

2020年は新型コロナの影響によって商談がずれ込むケースもあったが、テレワークに対応したオンラインでのヘルスサポート、健診結果のデータ化など新たな需要の創出により市場が拡大した。

さらに健康経営のISO標準化や健康経営度調査のフィードバックシート公開による見える化なども検討されており、これらが実施されることで健康経営に取り組む企業の増加と継続した市場拡大が予想される。

【健康情報・PHR関連】

ウェアラブル活動量計やスマートウォッチなどのウェアラブルデバイスの普及により、個人で自身の健康情報を収集する動きが広がり、PHRの活用も進んでいる。

2020年は、新型コロナの影響による健康意識の高まりにより、市場が拡大した。現状ではBtoC向けのサービスが中心だが、マネタイズやアクティブユーザーの確保などの難しさもあり、健康保険組合や健康経営企業などBtoBtoE(従業員)向けの市場開拓が進められている。

また、一次利用によるサービス料だけでは市場拡大には限界があることから、官民連携によりPHRの二次利用に向けた実証事業や共同研究が進められており、将来的には二次利用ビジネスの発展が期待される。

注目市場

●ストレスチェック・メンタルヘルス対策

2021年見込

2020年比

2029年予測

2020年比

183億円

113.7%

380億円

2.4倍

ストレスチェック制度に準拠して提供されているストレスチェックシステムやEAP(Employee Assistance Program:従業員支援プログラム)サービス、関連するメンタルヘルス対策サービスを対象とする。対策サービスは、ストレスチェックによるメンタルヘルス不調者の発見、相談・カウンセリング対応、予防や組織改善に向けた組織分析や研修・コンサルティングの実施、休職者・復職者支援サービス、ハラスメント対策などがある。

2015年12月からのストレスチェック義務化により、市場は急速に拡大した。従業員50人以上の事業所では年1回以上の実施が義務付けられたことで継続的な需要を獲得している。現状では、最低限のストレスチェックのみ導入する企業と、従業員の健康増進や生産性の向上など健康経営への取り組みを意識してEAPサービスを導入する企業に分かれている。社会的にもメンタルヘルス対策の重要性が意識されていることもあり、EAPサービスを中心とした新規導入やオプションの追加などから、市場が拡大している。

新型コロナの影響により、サービス導入の見送りや導入済みサービスのダウングレードなどが一部でみられたが、テレワークの普及により従業員のセルフケアやメンタルヘルス対策の強化を意識する企業が増加し、カウンセリングや研修依頼が増えている。また、参入企業は新型コロナとメンタルヘルスを紐づけた無料のオンラインセミナーや一部サービスのトライアルなどを提供し、新規顧客開拓を進めている。

●データヘルス計画向けレセプト分析・計画立案

2021年見込

2020年比

2029年予測

2020年比

120億円

120.0%

300億円

3.0倍

データヘルス計画の立案・実行のためのレセプト分析およびそれに伴うコンサルティングを対象とする。

2018年度から第2期データヘルス計画が始まり、2020年度に3年間の中間評価が行われたことで、健康保険組合における施策の追加や強化などが増えている。また、新型コロナの影響により、特定健診受診率や特定保健指導実施率の達成について計画見直しが必要となったケースもあり、データ分析や計画策定支援、その他行動変容施策などの需要が高まり、市場が拡大している。

2024年度からの第3期データヘルス計画スタートに備えて新サービスを打ち出す参入企業が増えるとみられ、2029年の市場は2020年比3.0倍の300億円が予測される。

●健康経営支援システム

2021年見込

2020年比

2029年予測

2020年比

75億円

108.7%

135億円

195.7%

健診データやストレスチェックデータ、残業時間などの勤怠データを集約・管理・分析し、健康課題の見える化や企業の健康経営活動におけるPDCAサイクルを支援するITシステムを対象とする。

健康経営の取り組みを検討する企業が増加し、多様なデータの一元管理や分析のための見える化ニーズが高まっている。2020年は、新型コロナの影響によって感染症対策などが優先されたため、健康経営への取り組みを先延ばしにする企業も出てきたが、テレワークの普及により、健診結果などの紙媒体からデータ管理への移行や、データを一元的に管理するシステムのニーズが高まり、市場は拡大した。

従業員規模が大きいほどデータ量も多く管理が煩雑になるため、主要ユーザーは大企業である。健康経営に取り組む中小企業の増加や、現在検討されている健康経営のISO標準化や健康経営度調査のフィードバックシート公開による見える化など、さらなる施策実施により今後も市場拡大が予想される。

●自己健康情報/バイタルデータ管理・分析サービス

2021年見込

2020年比

2029年予測

2020年比

83億円

105.1%

100億円

126.6%

個人が健康情報やバイタルデータ(血圧・体温・脈拍など)、歩行や睡眠など行動データといった自身のPHRデータを一括してスマホアプリで記録・管理するサービスと、そのデータを医療機関などで活用するシステムを対象とする。

Bluetoothなどでアプリに自動でデータを入力できる通信機能付きデバイスの普及が、市場拡大の追い風となっている。市場の中心は、自身の健康情報を入力するライフログ用途であり、新型コロナの影響やテレワークの普及により健康に対する意識が高くなったことで、サービスの利用を開始・再開する人が増えている。また、PHRデータアプリと提携を行う医療機関が年々増加しており、オンライン診療の際にデータを活用するケースもあり、市場は拡大していくとみられる。

◆調査対象

データヘルス計画関連

 

・データヘルス計画向けレセプト分析・計画立案

・重症化予防サービス

・特定健診/定期健診結果利活用システム

 

健康経営関連

 

・健康経営トータル支援サービス/コラボヘルス

支援サービス

・従業員向けエンゲージメント/モチベーション

測定サービス

・健康経営支援システム

・従業員向け睡眠改善サービス

・健康診断予約精算代行サービス

・禁煙サポートプログラム

・健康経営向け福利厚生・インセンティブ付与サービス

・従業員向けCOVID-19郵送PCR検査サービス

・ストレスチェック・メンタルヘルス対策

・妊活支援サービス

健康情報・PHR関連

 

・自己健康情報/バイタルデータ管理・分析サービス

・ストレスデータ管理・分析サービス

・健診データ管理・分析サービス

・遺伝子/DNA検査分析サービス

・食生活データ管理・分析サービス

 


2021/11/02
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