PRESSRELEASE プレスリリース

第22067号

炭素繊維複合材料(CFRP/CFRTP)の世界市場を調査
―2035年市場予測(2021年比)―
■炭素繊維複合材料(CFRP/CFRTP)  3兆7,776億円(2.6倍)
CFRPは航空機用途、CFRTPは自動車用途を中心に市場が拡大
■炭素繊維複合材料 圧力容器用途  3,653億円(5.3倍)
低CO₂排出のCNG車や、FCV車の普及により車載タンク向けが伸びる
●端材利用CFRP/CFRTP  1,316億円(3.5倍)
CFRPは技術が蓄積され用途が拡大。CFRTP端材の製品市場確立にも期待

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 社長 清口 正夫 03-3241-3470)は、新型コロナウイルス感染症流行の影響による縮小から一転、マルチマテリアル化や低コスト化の進展で拡大している炭素繊維複合材料(CFRP/CFRTP)の世界市場を調査した。その結果を「炭素繊維複合材料(CFRP/CFRTP)関連技術・用途市場の展望 2022」にまとめた。

この調査では、炭素繊維複合材料をはじめ、関連するキーマテリアルや部材、成形加工装置などの市場を捉えた。また、炭素繊維複合材料の用途別市場や競合複合材料市場についても分析した。さらに、カーボンニュートラルやLCA(ライフサイクルアセスメント)評価など環境影響度についても整理した。

◆調査結果の概要

■炭素繊維複合材料(CFRP/CFRTP)

 

2021年

2020年比

2035年予測

2021年比

CFRP

1兆4,001億円

110.0%

3兆4,707億円

2.5倍

CFRTP

556億円

129.0%

3,069億円

5.5倍

合計

1兆4,557億円

110.6%

3兆7,776億円

2.6倍

CFRPは炭素繊維に熱硬化性樹脂を含浸させた炭素繊維複合材料の成形加工品を対象とする。品質に優れるプリプレグ成形品と生産性・生産コストに強みを持つ成形時樹脂含浸品に大別され、プリプレグ成形品は航空機、成形時樹脂含浸品は風力発電ブレードが主な用途である。

2020年は新型コロナの影響で航空機向けが減少し、市場は縮小した。2021年は航空機向けが受注の延期やキャンセルなどで引き続き苦戦したが、風力発電ブレードやスポーツ・レジャー向けが好調であり、市場は前年を上回った。中長期的には、プリプレグ成形品は2030年に燃費規制が強化される自動車向けの増加が予想される。成形時樹脂含浸品は風力発電ブレードや圧力容器向けなどが増加しているほか、航空機での採用が増えることでさらなる伸びが期待される。

CFRTPはマトリクス樹脂に熱可塑性樹脂を使用した成形加工品を対象とする。CFRPの課題である成形加工時間の長さを大幅に短縮でき、リサイクル性が高い点も評価されて世界で研究開発が活発化している。

静電部品・摺動部品用途が主体であるが、新型コロナの影響で2020年は需要が減少した。2021年は自動車ギアなどの各種産業部品、工作機械などの製造ラインの軸受、産業用多関節ロボットの摺動部分などの駆動部品向けが好調で、市場は前年比29.0%増となった。

今後、短期的には静電部品・摺動部品向けの増加が期待される。中長期的には2030年の燃費規制厳格化にむけて自動車での採用が増えると想定される。その後も量産加工性に優れた成形技術開発、マルチマテリアル成形技術の進展に加え、軽量化や炭素繊維リサイクルニーズの観点から自動車用途を中心に需要が高まり、2035年には市場は3,000億円超になるとみられる。

■用途別市場

 

2021年

2020年比

2035年予測

2021年比

自動車

655億円

94.8%

3,703億円

5.7倍

圧力容器

688億円

124.4%

3,653億円

5.3倍

航空機

4,399億円

100.2%

1兆1,243億円

2.6倍

自動車向けは現状、特定の自動車メーカーでの採用がメインであるが、将来的な量産体制へ向けた研究開発が続いている。資源・原油高騰によって生産コストが上昇しており、低コスト化が最大の課題である。

今後は2030年の燃費規制厳格化を見据えて車体軽量化開発が活発化するため、CFRP/CFRTPの注目度が高まるとみられる。マルチマテリアル技術の蓄積と低コスト化を目指した開発によって量産体制が確保され採用が進むことによりCFRP/CFRTPの使用が増加し、2035年の市場は2021年比5.7倍が予測される。

将来的にはLCA(ライフサイクルアセスメント)による環境影響性についての議論が本格化し、端材利用の拡大とともにリサイクル性に優れるCFRTPの採用が拡大すると予想される。

圧力容器向けは炭素繊維複合材料を強化材として使用するタンクを対象としており、主にFCV用および水素ステーション用の高圧水素タンク、車載用および輸送用のCNGタンク、消防士が使用する酸素ボンベなどに用いられる。世界的なxEVへのシフトにより、CO₂排出量の低いCNG(圧縮天然ガス)車やゼロエミッション車として注目されるFCV用タンク向けが市場をけん引している。

2020年は新型コロナによる景気低迷の影響を受けたが、同年後半には需要が回復し、2021年はCNG・その他圧力容器での需要が旺盛で好調であった。各種タンクにCFRPを採用する比率は高まっており、今後も市場拡大が続くとみられる。

中長期的には、トラック、バスなどの大型車両で、ディーゼル車の代替としてCNG車やFCVが普及していくと予想され、それに伴い車載タンク向けが伸長するとみられる。その後は乗用車への普及も期待され、2035年に市場は2021年比5.3倍が予測される。

航空機向けは新型コロナにより受注の延期・キャンセルなどがあった影響で2020年に市場が縮小した。2021年は各国の国内線を中心に航空機需要が回復に向かったが、受注キャンセルなどの影響が残り、CFRP/CFRTP市場は微増にとどまった。

2022年以降は中国、インド、アフリカなどを中心とした航空機の需要増加に伴いCFRP/CFRTPの市場は拡大が予想される。

長期的には生産性に課題のあるオートクレーブ成形から脱オートクレーブ成形への転換が進むことで成形時樹脂含浸品の採用増加が想定される。構造の変化が起こりながらも市場は拡大し、2035年には2021年比で2.6倍になると予想される。

■注目キーマテリアル/関連部品・装置の世界市場

●中間基材(プリプレグ、ペレット/シート、ラミネート)

 

2021年

2020年比

2035年予測

2021年比

全体

3,813億円

110.7%

8,893億円

2.3倍

 

ラミネート

69億円

119.0%

1,607億円

23.3倍

※ラミネートは中間基材の内数

炭素繊維に樹脂を含浸させた中間基材を対象とする。航空機やスポーツ・レジャー用品向けのCFRP用が市場の中心である。新型コロナ流行により需要が低迷した用途もあるが、スポーツ・レジャー用品や風力発電ブレード向けの需要が回復し、CFRTP用途も摺動部品向けが伸びたため、2021年の市場は前年比10.7%増となった。

中長期的には航空機向けCFRP用途で需要が回復し、市場をけん引するとみられる。また自動車向けは燃費規制の厳格化に対応した車体軽量化開発のため、CFRP/CFRTP用途共に2030年頃から需要増加が予想される。特にCFRTP用のラミネートは、将来的な量産車への採用も見据え、マルチマテリアル成形技術や金属材料との異種材料接合技術などの研究が参入各社の共同で進められており、2035年には市場は2021年比20倍以上に拡大するとみられる。

●端材利用CFRP/CFRTP

2021年

2020年比

2035年予測

2021年比

167億円

116.0%

648億円

3.9倍

CFRP/CFRTPに使用される中間基材や成形加工時に発生する端材を活用した成形加工品を対象とする。CFRP加工時の工程端材が原料であり、安定調達の実現が市場拡大の重要ポイントである。

近年はCFRP/CFRTPのリサイクルスキーム確立への機運が高まっており、参入各社が安定調達やリサイクル技術の向上、販売チャネルの獲得に向けて買収や事業提携に動いているため、今後端材や廃材の調達安定性が高まっていくとみられる。CFRP/CFRTP市場が拡大することで安定調達が可能になり、参入企業のリサイクル事業への投資も加速すると期待される。

現状はCFRPの工程端材が原料となっているが、リサイクル成形品の用途開拓に向けて試験・実証実験が行われており、これらの知見や技術の蓄積により、将来的にはリサイクル性の高いCFRTP連続繊維の端材を活用した製品の市場が本格化すると予想される。

●PAN系炭素繊維

2021年

2020年比

2035年予測

2021年比

2,350億円

119.7%

6,255億円

2.7倍

航空機や風力発電ブレードに使用されるCFRP用途が中心であり、2020年の市場は新型コロナの影響を受けて特に航空機需要が減少したことなどから縮小した。2021年には航空機向け以外は回復に向かい、中でも再生可能エネルギーの需要増加を受けて、風力発電ブレード向けが市場をけん引した。

中長期的には、CFRP用途は風力発電ブレードや航空機、圧力容器向けの需要増加が予想される。CFRTP用途はリサイクル性の高さが強みであり、世界的なSDGsの機運の高まりから、成形技術やリサイクル材の活用技術開発と連動して市場が拡大するとみられる。

製造時のエネルギー消費量が大きく、リサイクル面でも課題が多いため、今後炭素繊維メーカーを中心として製造時のエネルギー消費量抑制や使用電力のグリーン化、リサイクル面の課題克服に取り組んでいくと想定される。

◆調査対象

キーマテリアル/関連部材・装置

・PAN系炭素繊維(レギュラートウ、ラージトウ)

・リサイクル炭素繊維/

・マトリクス樹脂/添加剤(PES)

端材利用CFRP/CFRTP

・中間基材

・自動積層装置

(プリプレグ、ペレット/シート、ラミネート)

・TFP(Tailored Fiber Placement)装置

・CFRP

・CFRP/CFRTP成形加工装置

・CFRTP

・3Dプリンタ/付加製造装置

・接着剤

・異種材接合

・工程紙・フィルム

 

炭素繊維複合材料用途

・自動車(車両骨格・構造部品/外板・外装部品他)

・船舶

・航空機

・油田掘削・搬送

・圧力容器(高圧水素タンク/CNGタンク)

・ドローン

・風力発電ブレード

・家電・OA製品

・建築・土木

・空飛ぶクルマ・フライングカー(eVTOLなど)

・スポーツ・レジャー

・鉄道車両

・静電部品・摺動部品

・医療機器

 

・治具

競合複合材料

・ガラス繊維複合材料(連続繊維)

・ピッチ系炭素繊維

・セルロースナノファイバー(CNF)複合材料

・C/Cコンポジット(炭素繊維強化炭素複合材料)


2022/06/15
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