PRESSRELEASE プレスリリース
■全固体電池の世界市場 3兆8,605億円 (1,072.4倍)
20年代は酸化物系が、30年代以降は硫化物系がけん引
総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 社長 菊地 弘幸 03-3241-3470)は、自動車メーカーによるxEVへの搭載計画が発表された全固体電池をはじめ、安全性の高い電池として性能の向上だけでなく、コンパクト化やレアメタルフリー、コスト低減などの実現を目的に開発が進んでいる次世代電池の世界市場を調査した。その結果を「2022 次世代電池関連技術・市場の全貌」にまとめた。
この調査では、固体電解質を採用したリチウムイオン二次電池であり次世代電池の中で最も実用化に近い全固体電池5品目、資源戦略の観点から資源量が豊富な元素を用いたポストリチウムイオン二次電池5品目、リチウムイオン二次電池とは異なる材料や電池構造を有する新型二次電池9品目の市場動向を明らかにし、次世代電池の材料、アプリケーション、製造プロセス、企業動向なども総合的に分析した。
◆注目市場
■全固体電池の世界市場
2022年の市場は60億円が見込まれる。高分子系と酸化物系が中心であり、硫化物系もわずかながら市場が形成されている。
高分子系はカーシェアリングや路線バスなどの商用EVに搭載されている。
酸化物系は小型が中心である。大型は界面形成や量産技術のハードルが高いことから、実用化を優先するため固体電解質をベースに電解液やゲルポリマーを添加する疑似固体の製品化に向けた取り組みが海外を中心に進んでいる。中国で疑似固体をEVに搭載する動きが多くみられ、2025年にかけて伸長が予想される。
硫化物系はxEV向けで有望とみられ、トヨタ自動車が2020年代前半にHVへ搭載予定である。また、2030年までにEVへの搭載も進み、2040年に向け急速な市場拡大が期待される。
リチウムイオン二次電池(LIB)からの置き換えが本命視されるのは硫化物系と酸化物系であり、特に硫化物系がけん引することで市場が拡大し、2040年には3兆8,605億円が予測される。
アプリケーション別では、大型ではxEV、小型ではIoT機器やウェアラブルデバイスなどでの搭載が進むとみられる。
ESS(電力貯蔵システム)での採用はxEVでの量産化後になるとみられる。スマートフォンなどの民生機器はコストダウン要求が強いことから、現状では採用の可能性は低いが、安全性や形状自由度からワイヤレスイヤホン、スマートウォッチなどで搭載が期待される。
また、安全性や耐久性から、医療用、インフラ、航空・宇宙分野など様々な用途で開拓が進められており、LIBよりエネルギー密度が高くなることで、電池の軽量化・コンパクト化につながることからドローンや空飛ぶクルマなどの飛行体用途での研究開発も活発である。
【酸化物系】
2022年見込 |
2021年比 |
2040年予測 |
2021年比 |
39億円 |
2.3倍 |
1兆2,411億円 |
730.1倍 |
酸化物系は小型と大型に分かれる。
小型はすでに量産を開始しているメーカーがあり、今後ほかのメーカーも続くと予想される。電池容量が小さいことから市場は限定的であるものの、耐熱性が要求される民生機器、IoT機器などで採用されるとみられる。長期的には、エネルギー容量の拡大やコスト低減、エナジーハーベスティングとの組み合わせを実現することで、ウェアラブル・ヒアラブルデバイスや新規用途での採用拡大が期待される。
大型は疑似固体の実用化が進んでいる。固体電解質ほどの高エネルギー密度、急速充電性能の実現は難しいものの、LIB以上の安全性、パック当たりエネルギー密度を実現することで、2025年頃からxEV向けで市場は大きく拡大するとみられる。
【硫化物系】
2022年見込 |
2021年比 |
2040年予測 |
2021年比 |
僅少 |
- |
2兆3,762億円 |
- |
現時点では、小型や特殊用途での取り組みが目立っている。xEV向けなどの大型では量産面の課題が多く、2020年代中頃の展開が予想される。
硫化物系を搭載するHVが2020年代前半まで発売される予定である。HVでは、電池容量が小さく充電率・放電深度が浅いこと、全固体電池の高いレート特性を活かすことができるという点で、比較的実用化しやすいとみられる。
2020年代後半には、日本、韓国、欧州の自動車メーカーによるEVでの搭載が予想されるが、当初はコストを考慮し、高級車など車種を限定した展開が想定される。
2030年代以降は、正極・負極活物質に新規材料を採用した全固体電池の展開が予想される。高い安全性に加え、高エネルギー密度・高入出力特性を有することにより、航続距離延長などモビリティの性能向上に寄与する電池として位置づけられるとみられる。
◆調査結果の概要
■次世代電池の世界市場
|
2022年見込 |
2021年比 |
2040年予測 |
2021年比 |
全固体電池 |
60億円 |
166.7% |
3兆8,605億円 |
1,072.4倍 |
ほか次世代電池 |
1億円 |
100.0% |
1,903億円 |
1,903.0倍 |
合 計 |
61億円 |
164.9% |
4兆 508億円 |
1,094.8倍 |
全固体電池以外の次世代電池としては、2022年時点で、ナトリウムイオン二次電池、金属空気二次電池の市場がわずかながら形成されている。このほか、カリウムイオン二次電池、マグネシウム二次電池などの非リチウム系二次電池の増加も今後予想される。
最も実用化に近いとされるナトリウムイオン二次電池は、中国で量産が始まっており、ESSでの採用が期待される。金属空気二次電池では日本や米国でESSでの実証が進んでいる。LIBのように全方位的にアプリケーションをカバーすることは難しいものの、それぞれの特性を生かした特定用途でLIBを代替していくとみられる。
◆調査対象
次世代電池 |
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全固体電池 |
・硫化物系 |
・高分子系 |
・塩化物系 |
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・酸化物系 |
・錯体水素化物系 |
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ポストリチウムイオン二次電池 |
・ナトリウムイオン二次電池 |
・マグネシウム二次電池 |
・その他イオン二次電池 |
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・カリウムイオン二次電池 |
・フッ化物イオン二次電池 |
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||||||
新型二次電池 |
・金属空気二次電池 |
・イオン液体採用電池 |
・Si系負極採用電池 |
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・全樹脂電池 |
・高濃度電解液採用電池 |
・金属Li負極採用電池 |
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・クレイ型電池 |
・リチウム硫黄電池(Li-S電池) |
・バイポーラ型電池 |
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次世代電池材料 |
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・電解質 |
・正極活物質 |
・負極活物質 |
・セパレータ |
・バインダ |
・集電体 |
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次世代電池応用製品 |
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・自動車 |
・定置用電力貯蔵システム |
・小型民生用/その他用途 |
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※下線の品目は市場規模を算出した