PRESSRELEASE プレスリリース
◆病院向け電子カルテ(オンプレミス型/クラウド型) 2,425億円(4.8%増)
…大規模病院では導入率が99%以上に。クラウド型への切り替えが進む
◆民間企業向けリアルワールドデータ分析サービス 320億円 (2.4倍)
…大手製薬企業を中心に利活用が増えるほか、生損保企業などユーザー層も広がる
総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 社長 菊地 弘幸 03-3241-3470)は、医療DX実現に向けて、全国医療情報プラットフォームの創設や電子カルテの標準化といった取り組みが進んでおり、注目される医療・ヘルスケアDX関連の国内市場を調査した。その結果を「2023 医療・ヘルスケアDX関連市場の現状と将来展望」にまとめた。
この調査では、医療情報のプラットフォーム9品目、次世代医療アクセス6品目、ヘルステック3品目、医療ビッグデータ分析サービス3品目、デジタル治療・検査システム4品目、次世代臨床試験システム5品目、計30品目の市場について、現状を捉え、将来を予想するとともに、行政動向や海外企業動向などが与える影響も明らかにした。
◆注目市場
●病院向け電子カルテ(オンプレミス型/クラウド型)
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2023年見込 |
2022年比 |
2030年予測 |
2022年比 |
オンプレミス型 |
2,246億円 |
100.9% |
2,145億円 |
96.4% |
クラウド型 |
113億円 |
128.4% |
280億円 |
3.2倍 |
合 計 |
2,359億円 |
102.0% |
2,425億円 |
104.8% |
オンプレミス型は初期導入費や月額費用、維持・メンテナンス費、クラウド型は初期導入費、月額使用料、サービス料を対象としている。
大規模病院の導入は一巡していることから、現在の導入は中小規模病院が中心となっている。大規模病院のリプレース需要のほか、未導入病院や新設病院への導入により市場は拡大している。
システム部門を持たない、また、費用面から導入を見送ってきた中小規模病院を中心にクラウド型のニーズが高まっている。大規模病院においてもリプレースコストを抑えるため、クラウド型への切り替えが進むと予想される。
●民間企業向けリアルワールドデータ分析サービス
2023年見込 |
2022年比 |
2030年予測 |
2022年比 |
158億円 |
119.7% |
320億円 |
2.4倍 |
製薬企業や生損保企業などの民間企業向けに、リアルワールドデータと呼ばれるレセプトデータやDPCデータ、電子カルテデータ、ゲノムデータなどから個人情報を除いて、匿名化したデータの提供や分析などを行うサービスを対象としている。
製薬企業ではマーケティングや研究開発を目的にニーズが高まっており、大手を中心に利活用が増えている。また、近年は生損保企業が保険サービスの開発などを目的に利用するケースをはじめ、金融機関や医療機器メーカー、アカデミアなど、製薬企業以外にもユーザー層が広がっている。今後は、利活用できるデータの種類が増え、組み合わせによって提供サービスも多様化するため、利活用シーンの拡充や高付加価値化が進むとみられる。
●治療用アプリ/ソフトウェア
2023年見込 |
2022年比 |
2030年予測 |
2022年比 |
0.2億円 |
2.0倍 |
122.4億円 |
1,224.0倍 |
医療機関に導入され、スマートフォンやウェアラブルデバイスなどから収集した患者の健康情報を解析し、個々の患者に治療へ向けたガイダンスを実施することを目的としたアプリ/ソフトウェアと、患者の認知機能の活性化などを目的にゲーミフィケーションに用いられるアプリ/ソフトウェアを対象としている。
2020年に精神科疾患領域でCureAppの「CureApp SCニコチン依存症治療アプリ及びCOチェッカー」がプログラム医療機器として承認され、保険適用されたことで市場が立ち上がった。
2023年は、2022年に保険適用されたCureAppの高血圧治療用に加え、サスメドの不眠障害治療用が保険適用されるとみられる。これらのアプリは、デバイスや薬剤の併用指定がないことから、保険適用されるまでの期間短縮が可能となっている。
アステラス製薬の糖尿病治療用アプリ、CureAppのNASH(非アルコール性脂肪肝炎)治療用アプリ、アルコール依存症治療用アプリがフェーズⅢに入っており、2026年前後の発売が予想されるなど、非薬物療法の新規モダリティの発売により、市場は拡大するとみられる。
◆調査結果の概要
●医療・ヘルスケアDXの領域別国内市場
2022年は、新型コロナの流行が追い風となった次世代医療アクセスは依然として好調だったが、市場の8割以上を占める医療情報プラットフォームが世界的な半導体不足の影響を受けてほぼ横ばいだったため、市場は微増にとどまった。
2023年以降、医療情報プラットフォームで中心的な位置づけの電子カルテが、大規模病院での導入は一巡しているものの、中小規模病院や一般診療所などで新規導入が進むとみられるほか、1月からの電子処方箋の運用開始や医薬品の欠品問題などに伴う在庫管理ニーズの高まりから電子薬歴システムなど調剤薬局向けシステムの好調が予想される。
次世代医療アクセスでは、電子処方箋の運用が開始されたことから、今後、オンライン診療システムやオンライン服薬指導システム、個人向け医薬品配送サービスの需要が高まるとみられる。
近年、研究開発が進むデジタル治療・検査システムでは、AI画像診断システムが先行して発売されたことから、導入が進んでいるほか、治療用アプリ/ソフトウェアやデジタルバイオマーカーは厚生労働省の承認審査を待つ製品も多く、今後も活発な新製品投入が予想される。
「医療DX令和ビジョン2030」や、次世代医療基盤法の見直し、プログラム医療機器2段階承認など医療DXを推し進める政策も進展しており、こうした動きが市場の成長を後押ししていくと予想される。
●DX化システム導入率
2022年時点で導入が80%を超えているのは大規模病院向けの電子カルテ、診療科専門電子カルテの内、一般病院(眼科)における眼科専門電子カルテ、調剤薬局向けレセプトコンピュータである。2025年までに導入率が80%を超えるのは、2023年中にほとんどの施設で導入が終わるとみられるオンライン資格確認システム(顔認証付きカードリーダー)が予想される。2030年には中規模病院向け電子カルテの導入率が80%を超えると予想される。
◆調査対象
医療情報プラットフォーム市場 |
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・病院向け電子カルテ(オンプレミス型/クラウド型) |
・医療従事者向け音声入力システム |
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・診療所向け電子カルテ(オンプレミス型/クラウド型) |
・オンライン資格確認システム(顔認証付きカードリーダー) |
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・診療科専門電子カルテ(精神科/眼科) |
・調剤薬局向けレセプトコンピュータ |
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・広域医療/地域医療連携システム |
・電子薬歴システム(訪問薬剤管理指導支援・ |
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・検体検査支援システム |
在宅医療業務システムを含む) |
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次世代医療アクセス市場 |
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・診療/検査予約システム |
・オンライン診療システム |
・オンライン薬局サービス |
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・AI問診システム |
・オンライン服薬指導システム |
・個人向け医薬品配送サービス |
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ヘルステック市場 |
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・PHR管理・分析サービス |
・電子お薬手帳 |
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(バイタルデータ/食生活データ) |
・認知機能検査サービス |
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医療ビッグデータ分析サービス市場 |
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・民間企業向けリアルワールドデータ分析サービス |
・保険者向け健診レセプト分析サービス |
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・病院向けDPCデータウェアハウス/病院経営分析サービス |
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デジタル治療・検査システム市場 |
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・治療用アプリ/ソフトウェア |
・デジタルバイオマーカー |
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(生活習慣病/精神神経疾患など) |
・医療/介護向けメタバースサービス |
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・AI画像診断システム |
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(脳・頭部/胸部/眼底/内視鏡/病理など) |
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次世代臨床試験システム市場 |
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・EDCシステム |
・被験者日誌システム(ePRO) |
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・電子的同意取得システム(eConsent) |
・DCTプラットフォーム |
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・電子的原データ収集システム(eSource) |
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海外メガテック企業ヘルスケア参入事例 |
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・Apple |
・Tencent(騰訊) |
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・Alphabet |
・HUAWEI(華為技術) |
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・Amazon |
・Ping An Insurance Group |
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・Meta(旧Facebook) |
(中国平安保険集団) |
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・Baidu(百度) |
・JD.com(京東商城) |
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・Alibaba Group(阿里巴巴集団) |
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