PRESSRELEASE プレスリリース

第23105号

高機能液状樹脂の世界市場を調査
― 2027年予測(2022年比) ―
●LiBバインダー用樹脂市場 3,547百万ドル (7.3%増)
樹脂使用量の多いLFP系正極材がEVのエントリーモデルで採用増加し、拡大
●石油樹脂(C5C9共重合)市場 330百万ドル (16.2%増)
タイヤのグリップ力や耐久性向上に寄与。エコタイヤやEV向けタイヤで採用広がる

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 社長 菊地 弘幸 03-3241-3470)は、塗料・コーティングや粘・接着剤、インキ、また、半導体や電子基板などの原材料として、環境に配慮した製品や高機能製品の開発が進められている高機能液状樹脂の世界市場を調査した。その結果を「高機能液状樹脂製品関連市場の現状と将来展望 2023」にまとめた。

この調査では、電材用樹脂7品目、機能性樹脂11品目、石油樹脂5品目、水系・天然樹脂6品目の計29品目の樹脂に加え、樹脂の物性を変化させる硬化剤4品目、添加剤5品目の市場を調査・分析し、将来を展望した。

◆注目市場

●LiBバインダー用樹脂【電材用樹脂】

2023年見込

2022年比

2027年予測

2022年比

1,915百万ドル

57.9%

3,547百万ドル

107.3%

リチウムイオン二次電池(LiB)の正極材、負極材のバインダーに用いられる樹脂、ゴムを対象とする。

正極材向けバインダー用樹脂では耐酸化性に優れるポリフッ化ビニリデン(PVDF)が主流である。しかし、PVDFを溶液化する際に用いられるN-メチル-2-ピロリドンの環境負荷が高いこともあり、今後を見据えてアクリルエマルジョンやポリテトラフルオロエチレン(PTFE)パウダーの採用が始まっている。

負極材向けバインダー用樹脂ではスチレン・ブタジエンゴム(SBR)ラテックスと、分散剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)の組み合わせが主流であり、一部では、SBRラテックスの代わりにアクリルエマルジョンも採用される。

EVやPHVの生産台数の増加により車載用LiBの需要が増えており、数量ベースでは拡大が予想される。一方、2022年の上半期にPVDFの原材料の供給不足を受けて正極材向けバインダー用樹脂の価格が高騰したものの、2023年には以前の価格水準に戻りつつあることから、市場は大幅に縮小するとみられる。2024年以降は順調な市場拡大が予想される。特に、樹脂使用量の多いリチウムリン酸鉄(LFP)系正極材がEVのエントリーモデルでの採用が急増しており、今後の市場拡大をけん引していくとみられる。

●石油樹脂(C5C9共重合)【石油樹脂】

2023年見込

2022年比

2027年予測

2022年比

285百万ドル

100.4%

330百万ドル

116.2%

C5系石油樹脂とC9系石油樹脂をカチオン重合によりオリゴマー化した熱可塑性樹脂である。主にタイヤ改質や粘着剤、ホットメルト接着剤などで使用される。

タイヤのグリップ力や耐久性の向上を目的に添加されることが多い。EVはガソリン車と比較し車重が増加するため、低燃費、耐摩耗など高性能タイヤのニーズが増しており、市場が拡大している。

タイヤに求められる特性として転がり抵抗、耐摩耗、ウェットグリップが挙げられるが、トレードオフの関係にあるウェットグリップ性能と転がり抵抗性能を両立できるような開発が進められている。今後もエコタイヤやEV向けタイヤなどを中心に市場の拡大が予想される。

●ポリウレタンディスパージョン【水系・天然樹脂】

2023年見込

2022年比

2027年予測

2022年比

1,049百万ドル

97.7%

1,214百万ドル

113.0%

ウレタン微粒子が水に分散している製品であり、水系ウレタン樹脂ともよばれる。低VOC(揮発性有機化合物)や脱溶剤のニーズが増加している接着剤、塗料・コーティング剤をはじめ、幅広い用途で使用される。

市場は各国の景気動向と連動する傾向にあり、2023年は、需要規模の大きい中国の景気回復の遅れにより一時的に低迷している。地域別には、溶剤に関する法規制がある中国が今後も市場をけん引するとみられる。また、環境意識の高い欧州の需要が中国に次いで多い。

今後は、企業が商品のラベルやタグなどで環境対応をPRできることから、消費財でのニーズの増加が想定されるほか、靴用接着剤や繊維、合成皮革などでの需要増加が期待される。

●ポリウレア【機能性樹脂】

2023年見込

2022年比

2027年予測

2022年比

2,600百万ドル

108.3%

3,080百万ドル

128.3%

防水性、耐薬品性、耐摩耗性、耐熱性、防食性に優れたポリマーである。土木・建築分野において初期コーティングおよび補修・メンテナンスコーティング剤として、コンクリートのひび割れ補修、ピックアップトラック荷台の保護などに使用される。

地域別では、北米、欧州における需要が中心であり、日本では上下水道関連施設で需要がある。競合となるポリウレタンと比較して高価格であるためアジア地域では需要が限られるが、環境に優しい低VOC塗料として置き換えが進み、市場拡大が期待される。

●フォトレジスト用樹脂【電材用樹脂】

2023年見込

2022年比

2027年予測

2022年比

288百万ドル

101.4%

350百万ドル

123.2%

半導体デバイス、液晶、有機ELの回路形成時に用いられているフォトレジストの主成分となる樹脂とゴムを対象とする。

半導体向けとディスプレイ向けに分けられ、金額ベースでは半導体向けの比率が高い。フォトレジストの需要が堅調であることや、先端ラインでの露光工程の増加などから、半導体向けが市場をけん引している。今後も、通信量の増加や自動車の自動運転化などで半導体需要の大幅な増加が予想され、2027年の市場は、350百万ドルが予測される。

フォトレジストの種類ごとに使用される樹脂が異なり、ディスプレイ向けとg線・i線用ではフェノール樹脂、KrF用とEUV用ではスチレン樹脂、ArF用ではアクリル樹脂が主流である。数量ベースではフェノール樹脂が多い。スチレン樹脂はKrFでの厚膜塗布による樹脂配合率の上昇やEUVの採用の広がりなどから増加していくとみられる。また、アクリル樹脂は半導体需要の拡大とともに増加していくが、先端ラインでのArFからEUVへの移行により増加ペースは鈍化するとみられる。

◆調査結果の概要

●高機能液状樹脂の世界市場

 

2023年見込

2022年比

2027年予測

2022年比

電材用樹脂

5,043百万ドル

72.2%

7,286百万ドル

104.3%

機能性樹脂

12,573百万ドル

105.1%

14,308百万ドル

119.7%

石油樹脂

2,749百万ドル

102.1%

3,160百万ドル

117.4%

水系・天然樹脂

9,514百万ドル

88.4%

10,747百万ドル

99.9%

硬化剤

2,140百万ドル

100.9%

2,381百万ドル

112.3%

合 計

32,019百万ドル

92.8%

37,881百万ドル

109.7%

数量合計

1,082万トン

102.1%

1,216万トン

114.7%

※重複を避けるため、添加剤は市場に含まない

※市場データは四捨五入している

2023年の市場は、自動車の電装品や電池に関連する樹脂については好調である。しかし、民生用の電気・電子機器の在庫調整が長引いている影響から電材用樹脂、硬化剤が減少しており、機能性樹脂や石油樹脂、水系・天然樹脂は中国の景気回復の遅れを受けて低迷している。そのため、数量ベースでは緩やかな伸びが予想される。一方、2022年に価格が高騰したLiBバインダー用樹脂やリジッド基板用樹脂、ロジンの原材料価格が2023年には大幅に低下しているため、市場は縮小するとみられる。

長期的にはアジア地域を中心とした新興国での経済成長や人口増加、環境意識の高まりを背景とした塗料や粘接着剤など液状樹脂製品の伸びにより、機能性樹脂や石油樹脂、水系・天然樹脂で安定した需要が予想される。また、電材用樹脂の需要回復が期待されることから、数量、金額ともに伸びるとみられる。

◆調査対象

電材用樹脂

 

 

 

・リジッド基板用樹脂

・フォトレジスト用樹脂

・LiBバインダー用樹脂

・フレキシブル基板用樹脂

・半導体バッファーコート・再配線

・熱伝導性材料用樹脂

・半導体封止・接着用樹脂

用樹脂

 

機能性樹脂

 

 

 

・脂環式エポキシ

・ベンゾオキサジン

・低分子量ポリイソブチレン

・ジアリルフタレート樹脂

・塩化ビニルペースト

・中・高分子量ポリイソブチレン

・ポリウレア

・共重合ポリエステル

・液状ポリブタジエン

・変成シリコーン樹脂

・アルキルフェノール樹脂

 

石油樹脂

 

 

 

・石油樹脂(C5)

・石油樹脂(C5C9共重合)

・水添石油樹脂

・石油樹脂(C9)

・石油樹脂(DCPD)

 

水系・天然樹脂

 

 

 

・アクリルエマルジョン/アク

・ポリウレタンディスパージョン

・テルペン樹脂

リル・スチレンエマルジョン

・PTFEディスパージョン

 

・PO系ディスパージョン

・ロジン

 

硬化剤

 

 

・硬化剤(アミン系)

・硬化剤(フェノール)

 

・硬化剤(酸無水物)

・潜在性硬化剤

 

添加剤

 

 

・水系樹脂用乳化剤

・消泡剤

・シランカップリング剤

・分散剤

・水系樹脂用架橋剤

 


2023/09/29
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