PRESSRELEASE プレスリリース

第23133号

快適性向上/サステナブルに寄与する
自動車内外装部品向け材料の世界市場を調査
― 2027年 世界市場予測 ―
■リサイクルプラスチックは2022年比90.9%増の84.0万トン
欧州や中国を中心にリサイクル材使用を促す法整備が進んで急拡大

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 社長 菊地 弘幸 03-3241-3470)は、車室内空間の快適性向上に寄与する内外装部品向け材料、環境に配慮した材料(サステナブル材料)の世界市場を調査した。その結果を「2024年 自動車内装・外装市場とサステナブル/快適性向上技術の将来展望」にまとめた。

この調査では、自動車内外装部品の市場動向をはじめ、自動車メーカーや内外装部品メーカーで取り組みが加速している車室内快適性向上への取り組みやサステナブル技術の採用動向を捉え、主要な自動車内外装部品向け材料16品目(内、サステナブル材料6品目)の世界市場の現状と将来を明らかにした。

◆注目市場(世界)

1.リサイクルプラスチック(サステナブル材料)

リサイクルプラスチックは、プラスチック製品の製造工程で発生した端材、あるいは廃棄製品から得た再利用材料である。外装部品ではボディアンダーカバー、フェンダーライナー、バンパーなどに、また、内装部品ではドアトリム、センタークラスター、グローブボックスなどに、そのほかではエンジンアンダーカバー、バッテリーカバーなどに使用される。原料となるのは、PP(ポリプロピレン)、PA(ポリアミド)などである。

2022年の市場は前年比7.8%増の44.0万トンとなった。用途は外装部品が最も多く、市場の50.7%を占める。リサイクルプラスチックの色調は黒が多く、バージン材に比べて外観性が劣るため、外装部品をはじめ、エンジンアンダーカバーなどの人目につかない部品での使用が多い。原料はPPが多く、90%以上を占める。

2023年の市場は前年比13.9%増の50.1万トンが見込まれる。物流資材や家電製品に続き、欧州や中国を中心に自動車にもリサイクル材の使用を促す法整備が進んでいることから、市場は急速に拡大している。また、環境に配慮した製品を選ぶ消費が欧米を中心に広がっており、それに対する訴求、自動車のブランド価値向上のためにもリサイクルプラスチックの使用が増えている。多くの自動車メーカーは2030年目標のリサイクル材採用率25%に取り組むとみられることから、今後も市場拡大は続くと予想される。

国内でも市場が急速に拡大している。自動車生産台数がほぼ横ばいであった2022年も需要は増加した。需要の増加によりリサイクル用PPの引き合いが急増し、回収材の供給待ちとなっているケースもみられる。一部のリサイクルコンパウンドメーカーは、今後リサイクルプラスチックの生産能力を高めていくとみられることから、世界市場に比較して伸び率は低いものの、国内市場は拡大が続くと予想される。

2.リサイクル繊維(サステナブル材料)

2023年見込

2022年比

2027年予測

2022年比

14.5万トン

113.3%

23.0万トン

179.7%

4.5億ドル

109.8%

6.8億ドル

165.9%

リサイクル繊維は、製品の製造工程で発生した端材や、廃棄されたペットボトルや漁網、衣料品など自動車部品以外の製品を繊維化した再利用材料である。フロアカーペット/マット、フロント・リアシートバックボード、ドアトリム、アームレストなど、内装部品に使用される。原料となるのは、PET(ポリエチレンテレフタレート)やPAなどである。

2022年の市場は前年比6.7%増の12.8万トン、2023年には同13.3%増の14.5万トンが見込まれる。天井や吸音材などの内装部品メーカーは環境に配慮した材料の採用に積極的である。EVではエンジン音に埋もれていた騒音が表面化するため、EV化の進展で静粛性向上ニーズが高まっており、吸音材への採用には追い風となっている。物性面での改良も進んでおり、今後も需要は増加するとみられる。

国内では主に不織布に加工され、天井やマット、吸音材、表皮材などで使用される。EV化が進み静粛性向上ニーズは高まっており、2023年の市場は自動車生産台数の増加に伴い拡大している。2024年以降は、自動車生産台数が横ばいに転じるとみられることから、市場は微増が予想される。

3.吸音材

2023年見込

2022年比

2027年予測

2022年比

65.7万トン

110.1%

70.1万トン

117.4%

19.1億ドル

109.8%

19.7億ドル

113.2%

防音材の一つである吸音材は、音を吸収し、音の持つ運動エネルギーを熱エネルギーなどに変換する。車室前方ではエンジンルーム周辺やタイヤ周辺、下方ではフロアカーペットなど、車室後方ではトランクサイドやタイヤ周辺など、上方ではルーフなどに使用される。タイプとしては、フェルト(反毛)、ウレタンフォーム、不織布、メラミンフォーム、グラスウールなどがある。

2022年の市場は北米で自動車生産が回復したことから前年比6.4%増の59.7万トンとなった。用途はフロアカーペットが最も多く、市場の33.5%を占める。次いで多いのがダッシュインナー、フェンダーライナーである。タイプはフェルト(反毛)とウレタンフォームが多い。両タイプで市場のおよそ8割を占める。車室内の静粛性向上ニーズは高まっており、世界的な自動車生産の回復から2023年の市場は前年比10.1%増の65.7万トンが見込まれる。フェンダーライナーなどで使用が増えており、2024年以降も市場は1~2%程度の拡大が予想される。

国内では2022年に半導体不足の影響による自動車の減産に連動して需要が微減となったが、2023年は半導体不足が解消され、自動車メーカー各社が生産台数を伸ばしていることから、ほぼ新型コロナウイルス感染症流行前の需要に回復するとみられる。2024年以降は自動車生産台数に連動して、市場は横ばいが予想される。

4.内装用接着剤

2023年見込

2022年比

2027年予測

2022年比

19.5万トン

110.2%

20.8万トン

117.5%

10.8億ドル

112.5%

12.0億ドル

125.5%

内装用接着剤は、内装部品の製造や取り付けに使用される。ドアや天井、シート、床、ダッシュボード、インパネなどに使用され、需要はほぼ自動車生産台数に連動する。タイプとしては、リキッドタイプとホットメルトタイプに分かれる。リキッドタイプには溶剤形接着剤、水系接着剤(エマルジョン系接着剤)、反応系接着剤、無溶剤形接着剤(溶剤の使用量を僅少にしたもの)などが、ホットメルトタイプには熱可塑性タイプと反応型がある。環境への配慮からホットメルトタイプの使用が増えている。

2022年の市場は半導体不足が緩和され、自動車生産が回復に向かったことから前年比6.6%増の17.7万トンとなった。ドア向けが最も多く、市場の29.4%を占める。次いで多いのが天井とシート向けで、共に同24.8%を占める。タイプはオレフィン系のホットメルトタイプが多く、市場の31.8%を占める。2023年の市場は世界的な自動車生産の回復から前年比10.2%増の19.5万トンが見込まれる。世界的に脱溶剤化は進められているが、接着性能に優れるため需要は残っている。そのため、内装用接着剤需要としては大きな変化はなく、今後も自動車生産台数に連動して市場は堅調に推移すると予想される。

国内では自動車メーカーが材料のバイオマス化に取り組んでいるが、実際に採用されるのは、自動車の場合は時間がかかるため、2030年以降とみられる。

◆調査結果の概要

■自動車内外装部品向け材料の世界市場

 

2023年見込

2022年比

2027年予測

2022年比

全 体

105.8億ドル

112.0%

127.0億ドル

134.4%

 

サステナブル材料

34.2億ドル

111.8%

50.9億ドル

166.3%

※全体は日本市場を対象とした品目を含む

※サステナブル材料は全体の内数

自動車内外装部品向け材料14品目(市場重複、市場未算出の品目は除外)の市場は、2022年に前年比5.8%増の94.5億ドル、2023年には同12.0%増の105.8億ドルが見込まれる。リサイクルプラスチックや吸音材などの市場規模が大きい。今後はより快適性向上に寄与する材料や環境に配慮した材料を中心に市場拡大すると予想される。

サステナブル材料5品目(市場未算出の品目は除外)の市場は、2022年に前年比7.7%増の30.6億ドル、2023年には同11.8%増の34.2億ドルが見込まれる。リサイクルプラスチックが市場をけん引している。バイオマスプラスチックは、ひまし油を原料とするPA11(ポリアミド11)が主体であり、自動車用チューブ・ホースで使用される。日本、欧州、米国、中国、東南アジアなど各地で広く使用されており、特に、EV用冷却配管で需要が増加している。天然繊維複合材は、環境対応ニーズの強い欧州を中心に需要を獲得している。ブランド価値向上のための材料としてニーズが強く、天然繊維独自の風合いが内装部品のデザイン性を高めるとして注目されている。今後は環境に配慮した製品を選ぶ消費の広がりが、需要の増加を後押しする。リサイクル繊維は、物性面での改良も進められており、今後も市場拡大が予想される。CNF複合材は、部品の軽量化と高強度化、薄肉化、小型化に貢献する材料である。しかし、高価格がネックとなっており、内外装部品向けはほぼサンプル検証にとどまっている。サンプル検証が終了する2027年頃には乗用車の内装部品などへの採用が始まるとみられる。

◆調査対象

自動車内外装部品向け材料

表皮材※、吸音材、制振材、加飾フィルム、光透過フィルム、内装用塗料、内装用接着剤、内装用テープ、消臭剤・抗菌剤・抗ウイルス剤、良触感樹脂

 

サステナブル材料

リサイクルプラスチック、バイオマスプラスチック、天然繊維複合材、リサイクル繊維、CNF複合材、グリーンメタル

 

 

 

自動車部品

内装部品

ルーフトリム、ドアトリム、シート、インストルメントパネル、フロアカーペット、ダッシュインナーインシュレーター

 

外装部品

エンジンアンダーカバー、フェンダーライナー、サンルーフ・パノラマルーフ、バンパー、フロントグリル、ヘッドランプ

※日本市場を対象

内外装部品メーカー事例

トヨタ紡織、豊田合成、河西工業、林テレンプ、HOWA、寿屋フロンテ、イノアックコーポレーション、テイ・エス テック、日本プラスト、三光合成


2023/12/13
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