PRESSRELEASE プレスリリース

第24026号

粘・接着剤の世界市場を調査
環境対応をキーワードに関連製品の伸びに期待
― 2030年世界市場予測(2022年比) ―
■バイオマス系/生分解性粘・接着剤 95億ドル(2.3倍)
2026年以降、エレクトロ二クス向けが大きく伸びる
日本でもスマートフォン向けの電子部材用粘着シートなどで採用が進む

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 社長 菊地 弘幸 03-3241-3470)は、溶剤形から水性形やホットメルト形への移行、バイオマス材料の採用など環境対応が進む粘着剤、接着剤の世界市場を調査した。その結果を「2024年 粘・接着剤市場の将来展望」にまとめた。

この調査では、反応形10品目、溶剤形2品目、水性形4品目、縮合形3品目、ホットメルト形9品目の接着剤と感圧形粘着剤8品目、バイオマス系/生分解性粘・接着剤を対象に粘・接着剤の世界市場の現状を明らかにし、将来を展望した。また、用途別や国・地域別、参入企業別の動向も明らかにした。

◆調査結果の概要

■バイオマス系/生分解性粘・接着剤の世界市場

バイオマス系/生分解性粘・接着剤の世界市場

他の粘・接着剤と比較して価格が高いことがネックであるが、バイオマス系粘・接着剤を使用することで、製品のパッケージやタグにバイオマスマークなどを記載でき、環境対応やブランドイメージ向上を図れるため、アパレルや包装・ラベル(バイオマス度10ー30%程度)で採用が進んでいる。また、エレクトロニクス分野の高付加価値製品ではコストアップを吸収できることなどから採用が進んでおり、2023年の市場は41億ドルが見込まれる。日本では、粘着付与樹脂やエレクトロニクス向けのモノマーにバイオマス原料が使用されており、需要が増加している。また、直近1、2年で採用への関心が高まっておりサンプルワークも増えている。

エレクトロニクス分野は高付加価値の完成品が多いほか、採用している大手スマートフォンメーカーの環境意識の高さもあり、2026年以降エレクトロニクス向けが大きく伸びるため、2030年の市場は2022年比2.3倍が予測される。日本でもスマートフォン向けの電子部材用粘着シートなどで採用が進むとみられる。一方、自動車やラベル・軟包装向けは環境意識の高さなどにより世界では普及が進むものの、日本では価格が重視される傾向から大幅な伸長は2030年以降になると予想される。

■粘・接着剤の形態別の世界市場

粘・接着剤の形態別の世界市場

反応形接着剤は、エレクトロニクス向けや自動車向け、建築向けなどで使用されている。2023年は自動車の生産台数が増加したことから伸長した。

今後も、自動車の電装化やEV化により自動車向けが伸長するため、2030年の市場は127億ドルが予測される。エリア別では、他国からの生産拠点シフトや人口増加を背景に、ASEAN・東アジアやインドなど新興国で需要増加が予想される。日本は、車載電子部品向けが伸びる一方、エレクトロニクス向けは生産拠点を海外に移しており減少するとみられる。

ホットメルト形接着剤は、包装・製本・紙加工や衛生材料で使用されている。エラストマー系ホットメルト接着剤やEVA樹脂系ホットメルト接着剤の販売量が多い。世界経済の成長とともにEVA樹脂系ホットメルト接着剤を使用する段ボールの需要が高まっている。エラストマー系ホットメルト接着剤を使用するベビー用紙おむつの需要も新興国を中心に増加しており、2023年の市場は前年比7.0%増が見込まれる。

段ボール向けの好調は続くとみられるほか、新興国の所得の増加に伴って紙おむつの使用も増加することから、2030年の市場は2022年比39.4%増が予測される。日本は製本や木工向けの減少によって市場が縮小するとみられる。

感圧形粘着剤は、アクリル樹脂系エマルジョン形やアクリル樹脂系溶剤形の販売量が多い。

2023年は、物流の回復によってアクリル樹脂系エマルジョン形の主用途であるOPP粘着テープの需要が増加したことなどから、市場は前年比4.8%増となった。

今後は、東南アジアなどで食品包装需要が高まり、ラベル向けにアクリル樹脂系エマルジョン形粘着剤の伸長が予想される。また、中国でのテレビの大型化に伴ってアクリル樹脂系溶剤形粘着剤を使用したフィルム基材のラベル・シール・粘着テープなどの使用量が増加しており、2030年に向けて市場は拡大するとみられる。

◆注目市場

●変成シリコーン系接着剤【反応形接着剤】

変成シリコーン系接着剤【反応形接着剤】市場規模

原料となる変成シリコーンポリマーは、無溶剤や低温での作業性、良好な耐候性といった特徴を持つことから欧州などの環境規制強化に対応し、接着剤向けで伸長している。

建築用途が全体の9割強を占め、各国・地域の建築様式に合わせて使用されている。

日本では、タイルや床材などの接着で採用が進んでいる。硬化後も余分な部分を容易に剝がしやすいため、硬化膜を剥しにくいウレタン樹脂系接着剤よりも評価されるケースが多く伸びている。また、建築の規制緩和を受け、タイルを貼る際に接着剤として使用されるセメントやモルタルの代替として需要が増加している。

健康被害を防ぐための中国や欧州では有機溶剤の環境規制強化が進んでおり、引き続き、無溶剤形接着剤の引き合いが増えるため伸長するとみられる。日本でもセメントやモルタルの代替として需要が高まるため、2030年の市場は2022年比50.0%増が予測される。

●エラストマー系ホットメルト形接着剤【ホットメルト形接着剤】

エラストマー系ホットメルト形接着剤【ホットメルト形接着剤】市場規模

ベビー用・大人用紙おむつ、ナプキンなど衛生材料向けが用途の9割を占める。紙の層状接着やコア吸収体の接着などに使用され、シール性や通気性といった機能調整に不可欠である、また、日系自動車メーカーを中心にヘッドライトやテールライトなどのシーリング材として使用される。硬化後も接着剤をきれいに剥がせるためリサイクル性が高い。

所得増加に伴って中国や東南アジアで紙おむつの利用が増えていることや日本や欧米でテープタイプより接着剤を多く使うパンツタイプの大人用紙おむつの需要が増加しているため、2023年の市場は拡大が予想される。

今後も安定した衛生材料の需要増加やリサイクル性を重視した自動車向けの伸長によって、市場拡大が続くとみられる。特に、中国や東南アジア、インドでは紙おむつの現地生産が増加しており、需要が高まると予想される。日本では、ベビー用紙おむつの需要が減少する一方で、大人用紙おむつは需要が増加するため、微増で推移するとみられる。

●シリコーン系溶剤形粘着剤【感圧形粘着剤】

シリコーン系溶剤形粘着剤【感圧形粘着剤】市場規模

耐熱性や耐寒性のほか、耐候性、耐薬品性、電気絶縁性などに優れるため、フレキシブルディスプレイ用OCA(Optical Clear Adhesive)やスマートフォンの飛散防止フィルム、電子部品用マスキングテープ、電気絶縁用粘着テープなどエレクトロニクス用途が中心である。車載ディスプレイでも使用される。

2023年はスマートフォンの出荷台数が世界的に減少していることからエレクトロニクス向けが減少している。一方、自動車生産の回復や車載ディプレイの大型化によって自動車向けが伸びたことから市場は拡大した。

今後は、自動車向けの伸長が予想される。また、エレクトロニクスも世界的に一定の需要を維持するとみられる。特に、エレクトロニクス製品の生産が多い中国やASEAN・東アジアでの需要の高まりが予想される。なお、日本ではエレクトロニクス分野と自動車分野ともに海外生産へシフトすることから、国内需要は微減するとみられる。

◆調査対象

反応形接着剤
・シアノアクリレート系
・シリコーン系
・変成シリコーン系
・ウレタン樹脂系
・シリル化ウレタン系弾性
・エポキシ樹脂系
・第2世代アクリル系(SGA)
・紫外線硬化型
・可視光硬化型
・嫌気性

溶剤形接着剤
・CR系溶剤形
・非晶性ポリエステル樹脂(溶剤形)

水性形接着剤
・アクリル樹脂系エマルジョン形
・EVA樹脂系エマルジョン形
・酢酸ビニール系エマルジョン形
・水性高分子-イソシアネート系

縮合形接着剤
・ユリア樹脂系
・メラミン樹脂系
・フェノール樹脂系

ホットメルト形接着剤
・ウレタン樹脂系反応型
・エラストマー系
・オレフィン系
・メタロセンPO系
・ブチルゴム系
・EVA樹脂系
・ポリエステル系
・ポリアミド系
・フィルム状

感圧形粘着剤
・アクリル樹脂系溶剤形
・シリコーン系溶剤形
・ゴム系溶剤形
・アクリル樹脂系エマルジョン形
・ゴム系ラテックス形
・カレンダーロール型ゴム系
・アクリル樹脂系エマルジョン形
・ゴム系ラテックス形


2024/3/15
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