PRESSRELEASE プレスリリース

第24061号

再生医療と新技術医薬品の市場を調査
― 2030年国内市場予測(2023年比) ―
■CAR-T細胞治療製品 350億円(2.0倍)
治療可能な施設の増加などにより大幅に拡大
■第2世代抗体医薬品 3,325億円(65.2%増)
現状、抗がん剤を中心に開発品が多く、それらの製品化により拡大

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 社長 菊地 弘幸 03-3241-3470)は、従来、有効な治療法がなかった疾患に対する医療ニーズを満たす、再生医療等製品と新技術医薬品の市場を調査した。その結果を「再生医療・新医薬モダリティ関連市場の現状と将来展望 2024」にまとめた。

この調査では、再生医療等製品として、再生医療製品、CAR-T細胞治療製品、遺伝子治療用製品の3品目、新技術医薬品として、ペプチド医薬品、核酸医薬品、第2世代抗体医薬品、mRNA治療薬・mRNAワクチンの新医薬モダリティ4品目を対象に、市場の現状を明らかにし将来を展望した。加えて、その研究・開発・製造に不可欠な試薬・消耗品・装置などのサポーティングインダストリー製品として23品目の市場を分析した。

◆注目市場

■ CAR-T細胞治療製品【再生医療等製品】

 CAR-T細胞治療製品【再生医療等製品】

患者から採取した免疫細胞などを遺伝子医療技術により、がん細胞を攻撃できるように加工したCAR-T細胞治療薬・CAR-NK細胞治療薬、TCR-T細胞治療薬で、再生医療等製品として保険償還が認められている製品を対象とする。

高薬価だが、従来の治療で十分な効果が得られていない再発・難治性の疾患に対する有力な治療薬となっている。また、治療を安全に実施できる要件を満たした医療機関が増加しているため2023年の市場は、前年比84.2%増の175億円となった。

今後は、T細胞の性質改善によって従来より長期間の治療効果が得られることや、iPS細胞由来のCAR-T細胞治療薬やNK細胞を用いたCAR-NK細胞治療薬の発売による多くのがんへの対応、また、治療が可能な施設の増加で、2030年の市場は2023年比2.0倍の350億円が予測される。

■第2世代抗体医薬品【新技術医薬品】

第2世代抗体医薬品【新技術医薬品】

人間の免疫反応を利用する抗体医薬品のうち、2種類の抗体結合であるバイスぺシフィック抗体に代表される多価抗体の医薬品や、抗体と薬剤の複合体の医薬品を第2世代抗体医薬品とする。そのほか、中外製薬の「スイッチ抗体」「リサイクリング抗体」などの技術を用いた抗体医薬品も対象とする。

2023年は「ポライビー」(中外製薬)や「エンハーツ」(第一三共)などの抗がん剤を中心に、血液疾患治療剤や中枢神経向け、眼疾患向けの製品が伸びたことから前年比37.3%増となった。

2024年3月には多発性骨髄腫の適応で初となる2重特異性抗体の「エルレフィオ」(ファイザー)が承認を得るなど、がんを対象とした多くの製品が開発されているほか、新製品の発売や適応拡大により2030年の市場は3,325億円が予測される。

■ペプチド医薬品【新技術医薬品】

ペプチド医薬品【新技術医薬品】

2ー50のアミノ酸で構成されるペプチドを有効成分とする医薬品や、開発が進むがんペプチドワクチンを対象とする。インスリン製剤や赤血球の造血因子であるエリスロポエチン製剤については対象外とする。

2023年の市場は、整形外科疾患向けや生活習慣病向け、がん関連、消化器科疾患向けなどの増加に伴い、拡大した。特に、2023年から2024年にかけて、肥満症治療剤の「ウゴービ」(ノボ ノルディスク ファーマ)など生活習慣病向けで複数の新製品が発売されている。

近年は希少疾患向けも伸長しており、ペプチド医薬品を投与する治療数の増加で、2024年以降も市場は拡大するとみられる。

◆調査結果の概要

●再生医療等製品

再生医療等製品

再生医療等製品は、人や動物の生きた細胞や組織を培養などで加工・作製し、体の構造・機能の再建・修復・形成や疾病の治療・予防、遺伝子治療を目的として使用されている。治療法がない疾患や、再発性・難治性疾患に対し、重要な役割を果たすことが期待されている。

2023年の市場は、CAR-T細胞治療薬を使った治療が可能な施設の増加によって、前年比45.9%増となった。また、新たな細胞シートや遺伝子用治療薬などの新規承認で治療対象が広がったことも市場拡大の要因となった。

今後、高薬価ではあるものの、従来の治療では十分な効果が得られていない白血病や悪性リンパ腫、多発性骨髄腫など血液がんを中心に、CAR-T細胞治療薬を使った治療は増加すると予想される。開発品の発売や既存製品の適応疾患の広がりによって、市場が拡大するとみられる。特に、iPS細胞由来のCAR-T細胞治療薬やNK細胞を用いたCAR-NK細胞治療薬が発売されることで、治療可能な疾患が増えると考えられる。

●新技術医薬品

新技術医薬品

ペプチド医薬品や核酸医薬品、第2世代抗体医薬品、mRNA治療薬・mRNAワクチンを対象とする。

2023年は、新型コロナウイルス感染症の5類移行で、mRNA治療薬・mRNAワクチンの需要が減少したため、市場は縮小した。一方、ペプチド医薬品は生活習慣病や希少疾患の治療に使用される機会が増加したため伸びた。抗がん剤が主力の第2世代抗体医薬品も、既存製品の適応疾患の広がりと新製品の発売によって伸長した。

新型コロナのワクチン需要減少が続くため、2024年は市場が縮小するとみられる。2025年以降は、骨粗鬆症や糖尿病、肥満症などに対応した新たなペプチド医薬品の発売と治療数の増加によって、市場拡大が予想される。高薬価である抗がん剤が主力であり、開発品が多い第2世代抗体医薬品の需要増加も市場拡大の要因になるとみられる。

◆調査対象

再生医療・新技術医薬品

再生医療等製品
・再生医療製品
・CAR-T細胞治療製品
・遺伝子治療用製品

新技術医薬品
・ペプチド医薬品
・核酸医薬品
・第2世代抗体医薬品(次世代抗体医薬品)
・mRNA治療薬・mRNAワクチン

サポーティングインダストリー製品

細胞・試薬・セルカルチャーウェア
・ヒト細胞/iPS細胞・ES細胞/オルガノイド
・細胞培養用液体培地/粉末培地
・細胞培養用血清
・汎用細胞培養容器(シャーレ/プレート/フラスコ)
・ゲノム編集ツール
・特殊細胞培養容器(三次元・多層・温度応答性など)

ライフサイエンス機器・検査機器
・フローサイトメーター
・細胞計数分析装置
・セルイメージングシステム
・MEAシステム
・遠心分離機
・CO₂インキュベータ
・質量分析装置
・マイクロプレートリーダー

保管・実験環境機器
・超低温フリーザー/メディカルフリーザー
・薬用冷蔵ショーケース/薬用保冷庫
・安全キャビネット
・細胞培養加工センター(CPC)

三次元培養・自動化関連
・三次元バイオプリンター
・細胞培養用スキャホールド
・バイオリアクター/培養バッグ
・自動細胞培養装置
・自動核酸抽出装置


2024/7/8
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