PRESSRELEASE プレスリリース
●CGP(がんゲノムプロファイリング検査) 540億円(5.7倍)
血液がん向けの投入や、固形がんの初回治療での検査実施増加で大幅に拡大
総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 社長 菊地 弘幸 03-3241-3470)は、がん医療における標準治療終了後の患者への実施に留まらず、今後は初回治療時の治療方針策定への応用や、再発・予後予測などのモニタリング、早期発見に向けたスクリーニングなどへの利用が期待されている、ゲノム検査の注目市場を調査した。その結果を「ゲノム医療/層別化医療のフォーキャスト分析」にまとめた。
この調査では、CGP(がんゲノムプロファイリング検査)、モニタリング(抵抗性予測)、MRD(術後再発・予後予測)、早期発見(MCET)、コンパニオン診断の5品目について、用途の拡大を想定して将来を展望し、市場成長への必要条件やブレイクスルーポイントをまとめた。
◆注目市場
●CGP(がんゲノムプロファイリング検査)
CGPとして使用されるがん遺伝子パネル検査(複数の遺伝子の異常を一度で調べ、遺伝子異常に対応する治療薬を探す検査)のうち、臨床上で使用されている検査を対象とする。創薬研究など治療方針決定を目的としないものや、コンパニオン診断薬としてのみ承認されているがん遺伝子パネル検査は対象外とする。2024年時点では固形がん向けに使用されており、血液がん向けは申請中の段階である。
市場は近年堅調に推移してきた。2024年以降、エキスパートパネル(*1)が実施できる施設が増えることや、血液がん向けの遺伝子パネル検査が開始され、実施が増えていくことで、2025年以降市場は大きく拡大すると予想される。2020年代後半には固形がんの初回治療時のCGPが保険適用(*2)されると想定され、その後はCGPの実施事例が増加することで拡大が続き、2035年の市場は540億円が予測される。
組織を検体とする検査と、体液や血液を検体とする検査(リキッドバイオプシー)に分けられ、2023年時点では、約80%が組織を検体とする検査である。しかし、今後発売が予想される血液がん向けの検査パネルはリキッドバイオプシーであるため、2025年にはリキッドバイオプシーの比率が大幅に拡大するとみられる。
(*1 エキスパートパネル)
CGPで得られた結果をもとに、患者に適した薬剤を検討する会議。会議構成員は専門性や保有する技術の条件がある。独自に実施できる施設はがんゲノム医療中核拠点病院、がんゲノム医療拠点病院と、がんゲノム医療連携病院の一部に限られ、2024年6月時点で全国に57施設が存在する。
(*2 初回治療時のCGPが保険適用)
CGPは、適応する標準治療がない、または終了したなどの条件を満たす固形がん患者のみ、保険診療の対象となる(2024年時点)。このためCGPで薬物療法可能と判断されても、全身状態の悪化などで治療機会を逃す事例が発生しているとして、複数の関係団体により、初回治療時から保険診療でCGPが実施できるよう、提言されている。
◆調査結果の概要
■がん医療における注目ゲノム検査5品目の国内市場
CGP(がんゲノムプロファイリング検査)、モニタリング(抵抗性予測)、MRD(術後再発・予後予測)、早期発見(MCET)、コンパニオン診断を対象とする。
市場は、2019年にCGPが保険適用されたことで本格的に形成され、2023年には263億円となった。コンパニオン診断とCGPで95%以上を占め、その他のゲノム検査は保険収載ものは一部で、研究用や自費診療が多く実績は限定的である。
将来的には、CGPの伸長に加え、モニタリングやMRDの保険適用が期待されるほか、MCETは検診などのオプションで実施数が増えると想定され、それに伴って市場は大幅に拡大するとみられる。適応がん種の増加や、初回治療での検査実施が増加することで、市場は中長期的に拡大すると予想される。
MRDは、大腸がんにおける術後再発・予後予測を目的とした自費検査が、一部のがん専門クリニックやがんゲノム外来で実施され始めている。2020年代後半には大腸がん検査で保険適用されることが期待されるほか、2030年以降には他のがん種へ保険適用が広がり、市場は飛躍的に拡大するとみられる。
コンパニオン診断は、がん治療薬に対応するコンパニオン診断薬のみを対象とする。がん治療薬の新薬登場に伴ってコンパニオン診断薬が発売されることに加え、既存薬も、適応されるがんの種類や検査項目の追加があると予想され、市場は拡大が続くとみられる。
対象品目・CGP(がんゲノムプロファイリング検査)
・モニタリング(抵抗性予測)
・MRD(術後再発・予後予測)
・早期発見(MCET)
・コンパニオン診断