PRESSRELEASE プレスリリース
■溶剤24品目の国内市場 3,514億円(0.7%減)
塗料やインキの生産量減少に伴って緩やかに縮小するが、半導体やLiB向けは好調
■アミン系溶剤 365億円(7.4%増)
半導体洗浄剤など電子材料向けに多く用いられ、xEVや電子機器の需要増に従って伸びる
■グリコールエーテル系溶剤 378億円(6.5%増)
塗料向けは横ばいから微減。半導体向けでPMやPMAの高純度品の需要が増加
総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 社長 菊地 弘幸 03-3241-3470)は、塗料やインキ、接着剤などの希釈用や、樹脂や医薬・農薬の反応溶媒、また半導体をはじめとした電子材料などで幅広く採用される溶剤の国内市場を調査した。その結果を「溶剤市場の全貌とリサイクル関連技術実態総調査 2025」にまとめた。
この調査では、炭化水素系溶剤5品目、アルコール系溶剤2品目、グリコールエーテル系溶剤6品目、エステル系溶剤3品目、ケトン系溶剤3品目、アミン系溶剤3品目、ハロゲン系溶剤2品目、その他溶剤1品目について最新の動向をまとめ、将来を展望した。また、環境保全の観点から関心が高まるバイオ原料製品や廃溶剤のリユース・リサイクルについて、商流や技術動向、品目別の対応動向をまとめた。
◆調査結果の概要
■溶剤24品目の国内市場
市場は、主な用途である塗料やインキの生産量減少に伴い、ケトン系や炭化水素系、エステル系といった主要な溶剤の需要が緩やかに減少しているため、横ばいから微減となっている。半導体やLiB(リチウムイオン二次電池)向けが伸びているアミン系やアルコール系、グリコールエーテル系は堅調に拡大している。2024年の市場はナフサ価格の高騰に伴う値上げがあったため前年比1.6%増の3,538億円と見込まれるが、数量ベースでは前年を下回るとみられる。
今後、市場はほぼ横ばいから微減で推移し、2028年は2024年見込比0.7%減の3,514億円が予測される。引き続き半導体やLiB向けでアミン系、グリコールエーテル系などが堅調に伸び、これらは単価が高い高純度品であるため、市場は数量ベースよりも安定して推移すると予想される。
アミン系はNMP、DMF、DMACを対象とする。LiBや半導体向けが増加しているNMPが堅調に伸びており、DMFとDMACもPI反応溶媒などで使用され、安定した推移が予想される。
グリコールエーテル系は用途によって動きに違いがある。メチセロやブチセロ、ブチカビといった主に塗料や洗浄剤向けの溶剤は安定した需要があるものの、今後は横ばいから微減が予想される。一方、半導体向けで高純度品の需要が伸びているPMやPMAは半導体産業の拡大が追い風になるとみられる。
炭化水素系やケトン系、ハロゲン系は環境負荷や人体への影響が大きい製品が多く、これらは環境対応や作業者の安全管理が進む中で市場拡大は難しいとみられる。ただし、環境面や安全面に配慮した製品への切り替えは既に進んでいるため今後は大きな落ち込みはなく、用途先の需要により横ばいから緩やかな減少が予想される。
【環境対応動向】
バイオ原料を用いた製品の開発や、廃溶剤を原料とするリサイクル、リユース品などの需要が拡大しつつある。特に半導体やLiBでは高純度品が使われるため、これらを再生するリサイクルメーカーの動向にも注目が集まっている。高純度品においては、これまで一般的であったダウンリサイクル(高純度品をより純度の低い溶剤としてリサイクルする)に加え、半導体用途で回収した再生品を、再び半導体向けに供給する水平リサイクルの取り組みも進んでいる。
◆注目市場
【アミン系】
●N-メチル-2-ピロリドン(NMP)
LiB(液式)や半導体などの電子材料向けと、ワニス材料やPPS反応溶媒といった工業用に大別される。2021年以降、LiB向けの急速な需要拡大により需給がひっ迫したことから市場全体で価格が高騰し、LiBや半導体向けは価格が高止まりしている。
電子材料向け、工業向けともにxEVの生産動向に影響を受け、国内のxEV生産台数の増加に伴い市場は拡大を続けるとみられる。
近年、生殖毒性に対する懸念から、欧州を中心に規制が強化されつつある。LiBにおいてもNMPを使用しない工法や水系バインダーの適用に向けて研究開発が進められているが、製品の安定性や品質の点でNMPを用いる現行の工法には及ばないため、当面は採用が続くとみられる。
環境対応としては、LiB向けで高度なリサイクルシステムが構築されている。製造工程内で発生するNMP廃液の回収率は90%を超え、リサイクル品は新材よりも低価格で流通している。
【グリコールエーテル系】
●PM、PMA
PM、PMAともに、塗料やインキといった工業用と半導体をはじめとする電子材料向けが主な用途である。工業用は市場が成熟しているため、安定した需要があるものの今後の成長性は低いとみられる。今後は半導体向けの成長が市場をけん引するとみられる。国内半導体メーカーの増産計画により、需要が増加することに加え、半導体では単価の高い高純度品が用いられることも市場を押し上げる要因になる。
PM(プロピレングリコールモノメチルエーテル)は、電子材料向けでは半導体のレジスト溶剤やプリコート剤、エッジリンスとして用いられている。国内の半導体メーカーの増産に伴い需要が増加するとみられ、2028年の市場は2024年見込比11.6%増の106億円と予測される。
PMA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)は、半導体のほか、液晶ディスプレイの洗浄液でも使用されていたが、2024年は需要先の大手日系メーカーの工場閉鎖に伴い、市場は前年を下回るとみられる。半導体では、プリコート剤やエッジバックリンスなどに使用され、溶解力の高さから精密洗浄剤として用途は広い。半導体向けのけん引で2025年以降市場は拡大し、2028年の市場は2024年見込比17.2%増の102億円と予測される。
【ハロゲン系】
●洗浄用フッ素系溶剤(ハイドロフルオロオレフィン)
洗浄用フッ素系溶剤の内、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)を対象とする。フッ素系溶剤はフルオロカーボン(フロン)の一種であり、フルオロカーボンはGWP(地球温暖化係数)が高いことやオゾン層破壊の観点から、一部の種類は規制対象になっている。
しかし、HFOはODP(オゾン層破壊能力)やGWPが極めて低いうえ、洗浄する部材の強度低下といった悪影響が少ないことが利点であるため、他のフッ素系溶剤であるHFCやHFEからの転換が進んでいる。今後はこれらに加え、炭化水素系や臭素系洗浄剤からの切り替えもあってHFO市場は拡大が続くとみられる。
現状、非常に高価であるため、回収・リサイクルが求められており、新材を展開するメーカーも、ユーザーに対して回収装置を導入してのリサイクルを案内している。
◆調査対象
炭化水素系・トルエン
・キシレン
・ターペン
・イソパラフィン(i-パラフィン)
・ノルマルパラフィン(n-パラフィン)
アルコール系
・イソプロピルアルコール(IPA)
・n-ブチルアルコール(n-ブタノール)
グリコールエーテル系
・メチルセロソルブ(メチセロ)
・ブチルセロソルブ(ブチセロ)
・ブチルカルビトール(ブチカビ)
・プロピレングリコールモノメチルエーテル(PM)
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)
・3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(MMB)
エステル系
・酢酸エチル(EAC)
・酢酸ブチル(NBAC)
・酢酸n-プロピル(NPAC)
ケトン系
・メチルエチルケトン(MEK)
・メチルイソブチルケトン(MIBK)
・アセトン
アミン系
・N-メチル-2-ピロリドン(NMP)
・ジメチルホルムアミド(DMF)
・N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)
ハロゲン系
・塩素系溶剤
・洗浄用フッ素系溶剤
その他
・シンナー