PRESSRELEASE プレスリリース

第25030号

電力・ガスエネルギー関連の国内市場を調査
― 2040年度国内市場予測(2023年度比) ―
●グリーン電力 4兆7,359億円(6.9倍)
脱炭素化への継続的な取り組みが広がることで長期的に拡大
●市場連動型電力小売 5,632.6億kWh(51.2%増)
市場価格低下に伴い供給量拡大で伸長
●ETRM(Energy Trading and Risk Management)システム 234億円(117.0倍)
ユーザーの広がりやサービス機能の拡充で大きく伸びる

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 社長 菊地 弘幸 03-3241-3470)は、インフラとしての安定化に加えて、ソリューションサービス事業の様々な展開がみられる電力・ガスエネルギー関連の国内市場、また、今後大幅な伸びが期待されるグリーンエネルギー市場について調査した。その結果を「電力・ガス/グリーンエネルギー市場・企業戦略総調査 2025」にまとめた。

この調査では、グリーンエネルギーを含めた電力、ガス市場に加え、電力ビジネス支援サービスやエネルギー創出/削減サービス、脱炭素支援サービス市場の現状を分析し、将来を予想した。

◆注目市場

●グリーンエネルギーの国内市場

グリーンエネルギーの国内市場規模

グリーン電力の市場は、RE100やESG投資など環境価値への意識向上や政策動向を背景に大きく伸びている。現状、特別高圧向けが5割以上を占めており、ユーザーは製造業や小売・流通などのグローバル企業を含む大企業、自治体や官公庁などが中心である。PPAサービスを含めた太陽光発電の導入と併用し、不足電力分をグリーン電力の調達でカバーするケースが多くみられる。低圧電灯(家庭向け)のグリーン電力料金メニューをラインアップする事業者が増えているが、新電力では、環境価値を含まないFIT電力を供給するメニューも多く、積極的に展開する事業者は一部にとどまる。今後も、大手企業やグローバル企業を中心に2050年度のカーボンニュートラル達成目標に向けて、脱炭素化への継続的な取り組みが広がることに伴い、長期的に市場拡大が続くと予想される。

カーボンニュートラルLNG・カーボンオフセット都市ガスは、天然ガスの利用工程で発生する温室効果ガスをクレジットで相殺することにより、実質的な温室効果ガス排出量をゼロとみなす都市ガスを対象とした。新規事業者が増加していることや、既存事業者でも供給件数が増加していることにより、市場の拡大が続いている。特に、政府が自治体主導の「地域脱炭素化」を重要施策に位置付けたことから自治体への導入が増えている。
カーボンニュートラルLNGに使用されるボランタリークレジットは、海外で品質・活用に関する制度設計の議論が急速に進展しており、特にScope3領域の削減策として注目されている。また、日本国内の法律にも対応しているJ-クレジットの活用に多くの事業者が関心を示しており、参入が増えるとみられる。今後J-クレジットによるオフセットも増加するとみられる。

カーボンニュートラルLPガスは、LPガスの利用工程で発生する温室効果ガスをクレジットで相殺することにより、実質的な温室効果ガス排出量をゼロとみなすLPガスを対象とした。2022年度より各社が順次取り扱いを開始し、市場は拡大している。2024年度は元売各社の販促活動により認知度が向上したことに加え、企業における環境意識の高まりで伸びるとみられる。中長期的には2026年度より本格導入されるカーボンプライシングの排出量取引制度が市場の追い風になるとみられ、カーボンニュートラルLPガスの導入障壁となっているコストの軽減につながるため、利用が進むと予想される。

●市場連動型電力小売

市場連動型電力小売市場規模

JEPX スポット市場のボラティリティ(変動性)を小売料金単価へ反映させるダイナミック・プライシングである。電力量料金の単価を市場価格に連動させる料金単価連動型と、燃料費調整額の中で各社の電源調達構成に応じてJEPX スポット市場からの調達分を市場価格に連動させて算定する電源調整項目型に分類される。

現状は電源調整項目型が主流である。2022年度に多くの旧一般電気事業者が料金プランの改定を実施したが、その際に高圧以上では電源調整項目が設定されたケースが多く、新電力の大半は旧一般電気事業者の燃料費調整額算定にリンクさせていたことにより、電源調整項目型が伸びている。料金単価連動型も高圧以上がメインである。2023年度からスポット市場価格が低く推移していることから、料金単価連動型の市場連動プランにより需要家はコストメリットを享受できるため、小売電気事業者の展開も積極的であり、市場は伸びている。
2024年度の上半期もスポット市場価格が落ち着いた水準にあり、市場連動プランを提案する小売電気事業者が増えている。また、新電力による低圧向けの展開も進んでいる。将来的にはLNG価格の下落による市場価格の低下・安定が予想され、さらに普及するとみられる。

●ETRMシステム

ETRMシステム市場規模

ETRM(Energy Trading and Risk Management)システムは、エネルギー取引にかかわる情報を管理、分析、評価することでバリューチェーンにおけるリスクを可視化し、関連情報をタイムリーに提供するシステムである。市場は導入社の利用料金で算出している。

2022年に経済産業省より安定的な電力サービス実現に向けたリスクマネジメントに関する指針が示され、小売電気事業者に対して変動リスクの定常的管理が望まれるようになったため、このシステムの必要性が高まった。需要増加に伴い参入が増えたことから、市場が拡大している。今後、電力供給に関する制度の複雑化・多様化や、電力先物商品の拡充などに伴い、リスク要因の分析要素が増加し、システムの拡張が進むことからランニングコストの上昇が予想され、市場は拡大を続けるとみられる。
大手発電・ガス事業者や小売電気事業者が主要ユーザーであるが、FIP(Feed-in Premium)の進展や発電抑制のリスクなどを受けて再エネ発電事業者などの導入もみられる。今後、中堅の新電力など中小規模事業者向けに機能を限定した低価格帯のサービス提供も進むと予想される。

●CO2算定・可視化サービス

CO2算定・可視化サービス市場規模

日々の企業活動データを入力して算出されるCO2排出量を可視化するプラットフォーム提供サービスを対象とする。クラウド型のSaaSでの提供が大半である、市場は導入社の利用料金で算出している。なお、システムの安定稼働のための支援サービスやSX(Sustainability Transformation)コンサルティングなどのサービスも含む。

日本では2022年度からプライム市場に上場する事業者に対し、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)または、同等の開示が実質義務化されている。それを受けて、自動車関連の大手製造業を中心にCO2の算定/可視化への取り組みが始まり、Scope3までの算定を行う中でサプライチェーン企業にも導入が広がっており、市場は急拡大している。2024年度の市場は350億円が見込まれる。今まではシステムの安定稼働のための支援サービスの比率が高かったが、今後は簡易的な可視化サービスのみの利用が増えるとみられる。
上位の事業者が業績を伸ばしているが、需要の高まりを受けて新たな参入も多くみられる。システム・データ連携による機能拡充や、AIを活用した業務効率化に関するサービスなど、各事業者が急速に新しい機能を追加しており、今後競争の激化が予想される。

◆調査結果の概要

■電力小売の国内市場

電力小売市場規模

※新電力は旧一般電気事業者および発電・送配電事業者を除く小売電気事業者を対象とする

2023年度は補助金に加え、燃料価格が比較的早くに落ち着きをみせたことや旧一般電気事業者各社が燃料費調整額の算定諸元の見直しを行ったことで市場は微減となった。中期的には大規模LNGプロジェクトの運転開始を契機とした世界的なLNG余剰の発生により、電力価格の低下が期待される。一方、長期的には電力系統の増強・整備による託送費の上昇から電力価格は再度上昇し、市場の拡大が予想される。

新電力は、2023年度は前年度の電力価格の高止まりを受け高圧以上での営業活動が消極的であったことや、低圧での新規申込キャンペーンの縮小などにより、前年度比20%近い縮小となった。しかし、2024年度はスポット市場価格の低下を受けて、新電力の積極的な拡販の動きがみられる。2024年度の新電力シェアは2022年度を上回るとみられ、今後のシェア拡大も予想される。

◆調査対象

電力・ガス市場
・電力小売
・市場連動型電力小売
・都市ガス小売
・LPガス小売
・国内発電量・電源ミックス推移

グリーンエネルギー市場
・グリーン電力
・カーボンニュートラルLNG・カーボンオフセット都市ガス
・カーボンニュートラルLPガス

電力ビジネス支援サービス
・電力BPOサービス
・電力CIS
・ETRMシステム

エネルギー創出/削減サービス
・オンサイトエネルギーサービス/ESP
・太陽光発電PPAサービス

脱炭素支援サービス
・CO2算定・可視化サービス
・脱炭素コンサルティングサービス

主要企業戦略
・27社


2025/3/27
上記の内容は弊社独自調査の結果に基づきます。 また、内容は予告なく変更される場合があります。 上記レポートのご購入および内容に関するご質問はお問い合わせフォームをご利用ください、 報道関係者の方は富士経済グループ本社 広報部(TEL 03-3241-3473)までご連絡をお願いいたします。