PRESSRELEASE プレスリリース
■製造業向けロボット 1兆9,643億円(46.8%増)
各国で自動車や半導体、スマートフォンなどの設備投資が回復し2024年の市場は拡大
今後は自動化・省人化ニーズの高まりに伴い着実に伸びる
●協働ロボット 2,210億円(2.0倍)
パレタイジング用途で高可搬タイプが伸長
自動車や半導体、物流、食品など採用の幅が広がる
総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 社長 菊地 弘幸 03-3241-3470)は、直近では自動車や半導体、スマートフォン・タブレットなどのコンシューマー機器/用品といった、需要先の設備投資が堅調であり、また、将来的には自動化・省人化ニーズの世界的な高まりで拡大すると予想される、製造業向けロボットの世界市場を調査した。その結果を「2025年版 ワールドワイドロボット関連市場の現状と将来展望 FAロボット編」にまとめた。
この調査では、製造業向けロボット12品目に加え、半導体・電子部品実装向けロボット6品目、ロボット向け注目構成部材7品目の市場について、最新動向を捉え将来を展望した。また、現在世界市場をけん引する中国市場や有力中国ロボットメーカーの実態や、今後中国からの生産シフトが予想される東南アジアやインドなどのNEXTチャイナ市場について明らかにした。
※製造業向けロボットは物流や一部非製造業用途も含む
◆調査結果の概要
■製造業向けロボットの世界市場
市場は、2023年に自動車関連や半導体関連、スマートフォンなどのコンシューマー機器/用品関連の設備投資が抑制されて縮小したが、2024年の市場は拡大に転じた。半導体関連の設備投資が回復したほか、コンシューマー機器/用品関連も中国を中心に設備投資が緩やかに回復した。日本や米州では自動車関連の設備投資が堅調である。
市場は2025年も伸びが続くとみられる。中国や欧州で設備投資の活発化が期待されるほか、日本・米州では引き続き自動車関連などでの堅調な設備投資が予想される。中長期的に、人手不足や人件費の高騰を背景とした世界的な自動化・省人化ニーズの高まりで、需要が増加していくとみられる。中国や先進国に加え、中国からの生産拠点シフトが進むとみられる東南アジアやインドの市場拡大も期待される。
需要分野別では、短期的には、2020年以降のリモートワーク需要で急増したスマートフォンやタブレット、ノートPCの買い替え需要の増加に伴う設備投資でコンシューマー機器/用品関連での伸びが期待される。中長期的には、需要の中心である自動車関連に加え、ECの普及により、パレタイジング用途を中心とした物流関連での世界的な需要拡大や、生成AIの普及に伴い、半導体関連向けロボットの成長が期待される。
溶接・塗装系ロボットは、主に自動車製造で採用される。2023年は自動車関連の設備投資が抑制されたため前年比マイナスとなったが、2024年は日本や米州の設備投資が堅調であり、市場は回復に向かった。品目別では、自動車関連や一般産業機械関連で設備投資が上向いたことから、アーク溶接ロボットが伸びた。スポット溶接ロボットや塗装ロボットは、EV関連の設備投資が振るわなかったため微増にとどまった。今後は自動車関連の設備投資増加に伴って、市場は堅調に拡大していくと予想される。
組立・搬送系ロボットは、自動車やスマートフォン・タブレット、半導体などの電子デバイス関連が主な需要先である。2024年は対象品目全てが前年を上回り、今後も市場は順調に成長するとみられる。小型ロボットは、スカラロボットや小型垂直多関節ロボット(可搬重量20kg以下)が中国でスマートフォンやタブレット関連、半導体関連の需要が増加した。中国ロボットメーカーの勢力が拡大している。大型ロボットは、規模の大きい垂直多関節ロボット(可搬重量21kg以上)が、主な導入先である自動車関連で底堅い自動化・省人化ニーズがあり、着実な成長が予想される。今後は自動車、半導体など多様な現場で導入が期待される協働ロボットが市場をけん引するとみられる。
クリーン搬送系ロボットは、ウエハー搬送ロボットと、フラットパネルディスプレイや有機ELパネルなどの製造で導入されるガラス基板搬送ロボットを対象とする。2024年は両市場ともに前年比10%以上拡大した。今後は半導体関連の設備投資拡大を背景にウエハー搬送ロボットが市場をけん引するとみられ、中長期的にはEVや自動運転の普及も市場拡大を後押しすると期待される。
■製造業向けロボットの注目エリア別市場
中国はEVの設備投資が低迷しているが、半導体関連は継続的な設備投資がみられることや、スマートフォンやタブレットなどのコンシューマー機器/用品関連の設備投資も回復しつつあり、2024年の市場は前年を上回った。また、中国ロボットメーカーの成長が市場拡大を後押ししている。今後も半導体関連の継続的な設備投資やコンシューマー機器/用品関連の設備投資拡大により世界市場をけん引するとみられる。懸念点としては、市況の不透明感が強いことや、米中関係、米国の関税動向による影響が挙げられる。
NEXTチャイナは、日本、中国、韓国、台湾を除くアジアを対象とし、東南アジア諸国やインドが中心である。2025年時点では市場規模が小さいものの、自動車や二輪車、コンシューマー機器/用品関連での需要が伸びており今後も順調に成長するとみられる。東南アジアやインドは人件費の高騰を背景に中国からの生産拠点シフトが予想され、参入メーカーではこの地域での需要増加を見据えて、各国での事業体制を整えていく方向性である。
◆注目市場
●協働ロボット
人との接触を検知して停止する安全機能を備えたロボットであり、人が作業しているスペースへの導入や、人に近い動作、作業内容、作業環境での利用を想定したロボットを対象とする。
2024年の市場は、世界的に自動車や半導体、食品、物流関連といった幅広い現場で設備投資が増加したため拡大した。ピック&プレース用途に加え、パレタイジング用途での需要増加により、より重量のあるワークに対応できる高可搬タイプが特に伸びており、今後はパレタイジングロボットとの差別化も求められる。
スペースを有効活用して作業者と協働できるため、需要のすそ野が非常に広く、自動車や半導体、コンシューマー機器/用品、食品、物流関連などに幅広く採用される。柵の設置が不要であるため、製造業では他のロボットからの置き換えも考えられる。製造業が主軸であるが飲食店やエンターテインメント用途などでも採用されており、2025年以降も様々な現場で需要を獲得し、市場は順調な拡大が予想される。
エリア別では、人件費が高い先進国各国や中国が拡大をけん引するとみられる。日系や欧米メーカーは先進国をターゲットとする一方、中国・台湾・韓国メーカーは自国向けを主体としながら海外展開を進めていくとみられる。中国においては、低価格を強みとする中国メーカーが台頭してきており、参入企業数も増加している。
●ウエハー搬送ロボット
半導体製造装置に組み込まれるクリーン仕様の水平多関節機構のロボットを対象とする。
半導体関連の設備投資の抑制に伴い2023年の市場は低迷したが、2024年は設備投資の回復により、日本や米国、中国の半導体製造装置メーカー向けの販売が好調となった。特に、台湾の大手半導体メーカーによる活発な設備投資や、中国での継続的な設備投資が追い風となった。
2025年以降も、ロジックやメモリーといった半導体関連の設備投資が継続されることで拡大し、2030年の市場は2,090億円と予測される。すでに市場が確立している国々に加え、半導体後工程の自動化が進む東南アジアやインドでの成長も期待される。
現状は日本メーカーが強みを持つが、中国では中国半導体製造装置メーカーの成長に伴って中国メーカーが存在感を高めており、日本ロボットメーカーではロボット単体の販売からEFEM(Equipment Front End Module)などのシステム販売へシフトする動きもみられる。
●スカラロボット
水平多関節機構のスカラロボットを対象とする。自動車部品や電子部品、光学部品などでハンドリングやピック&プレース、配膳、組み立てなどの用途に使用される。
2024年は中国を中心にEV関連の設備投資が低調であったことに伴い、車載バッテリー関連の需要が減少したものの、スマートフォンやタブレット関連の設備投資は回復に向かったため市場は微増した。2025年も、中国を中心に市場拡大が予想される。2020年以降のリモートワーク需要で急増したPCやタブレット、スマートフォンの買い替え時期が2025年から2026年になるとみられ、これを見据えた設備投資の活発化が期待される。
また、中国からの生産拠点シフトが予想されるベトナムやインドネシア、マレーシア、インド市場への注目度が高まっており、参入メーカーは各国での事業環境の整備を進めていくとみられる。
◆調査対象
●製造業向けロボット
溶接・塗装系
・アーク溶接ロボット
・スポット溶接ロボット
・塗装ロボット
組立・搬送系
・パレタイジングロボット
・スカラロボット
・小型垂直多関節ロボット(可搬重量20㎏以下)
・垂直多関節ロボット(可搬重量21㎏以上)
・パラレルリンクロボット
・協働ロボット
・アーム付AGV
クリーン搬送系
・ガラス基板搬送ロボット
・ウエハー搬送ロボット
●半導体・電子部品実装向けロボット
・高速モジュラーマウンター
・中速モジュラーマウンター
・多機能マウンター
・ダイボンダー
・ワイヤボンダー
・フリップチップボンダー
●ロボット向け注目構成部材
・FAケーブル
・精密制御減速機
・オートツールチェンジャー
・ロボット用力覚センサー
・ロボットビジョンシステム(2D/3D)
・セーフティレーザースキャナー
・汎用ロボットハンド