PRESSRELEASE プレスリリース

第17036号

IoT、FinTech、人工知能など新たな需要創出も期待されるクラウドビジネスの国内市場を調査

2020年度市場予測(2015年度比)
クラウドビジネス(クラウド型SI)の国内市場 3兆6,922億円(76.6%増)
パブリッククラウド(IaaS/PaaS、DaaS、SaaS)の伸びが拡大をけん引
IaaS/PaaSの国内市場 5,457億円(2.5倍)
メガクラウドベンダーの提供するオートセルフ型が大きく伸びる

 マーケティング&コンサルテーションの株式会社富士キメラ総研(本社:東京都中央区日本橋小伝馬町 TEL:03-3664-5839 社長:田中 一志)は、近年、業種や企業規模に関わらず一般企業において利用が進み、特にメガクラウドベンダーの提供するサービスがけん引する形で市場規模が拡大しているクラウドビジネス(クラウド型SI)の国内市場について調査した。その結果を報告書「2017 クラウドコンピューティングの現状と将来展望」にまとめた。
 この報告書ではパブリッククラウド(SaaS、DaaS、IaaS/PaaS(オートセルフ型)、IaaS/PaaS(オーダーメイド型))、共同利用サービス、プライベートクラウド(オンプレミス型、ホスティング型)、ハイブリッドクラウドの各市場について現状を調査し、将来を予想した。

調査結果の概要
クラウドビジネス(クラウド型SI)の国内市場
データセンタービジネスの国内市場:市場規模推移グラフ
アプリケーションレイヤー(ソフトウェア、システム開発、運用サービス)プラットフォームレイヤー(ハードウェア、ソフトウェア、コンサルティング/導入支援、ITリソース提供、運用サービス)を対象とした
 市場は拡大を続けており、2020年度には2015年度比76.6%増の3兆6,922億円が予測される。
 特に大幅な伸びが予想されるのはパブリッククラウド(SaaS、DaaS、IaaS/PaaS(オートセルフ型)、IaaS/PaaS(オーダーメイド型))である。コンピューターベンダーをはじめ、SIベンダー、キャリア、ISP事業者など多数のベンダーが参入している。
 中でもSaaS(業種共通型/業種特化型)の構成比が大きい。当初は中堅・中小企業向けが中心であったが、短期間で導入できるため近年は大手企業でも利用が増えている。業種共通型はメール/グループウェア、CRMといった情報系のアプリケーションが中心で、メガクラウドベンダーの提供するサービスの利用が好調である。加えて、業務プロセスの共通性が高い財務/会計、人事/給与などの基幹系システムや、セキュリティ関連の伸びも期待される。業種特化型は流通業やサービス業など小規模の企業が多い業種で導入が進んでいる。今後はその他の業種でもスマート工場(製造業)や地域医療連携/地域包括ケア(医療/福祉介護)、教育のIT化(学校教育)などを目的とした導入が期待される。
 DaaSはIaaSの付加価値サービスの一つとして展開するベンダーが増えている。ユーザーは金融業や自治体、大規模製造業が中心であったが、ワークスタイル変革やインターネット分離のニーズ拡大により中堅・中小企業でも導入が増えている。また、設計/開発部門やマイナンバー管理を行う総務部門など特定部門のみの部分的な導入もみられる。
 IaaS/PaaSはメガクラウドベンダーの提供するオートセルフ型のサービスが伸びをけん引している。今後は既存システムからの移行に加え、IoT、FinTech、オムニチャネルなどSoE(System of Engagement)※1用途で新規システム基盤としての利用による伸びが期待できる。PaaSはラインアップを拡充するベンダーが増えており、特に高い伸びが予想される。
 オーダーメイド型は、ユーザーニーズに応じた個別構築や運用サービスの提供がオートセルフ型との差別化につながるため、リソース提供だけでなくクラウドインテグレーションの占める割合が大きくなっている。
 業種別では、ソーシャルゲームなどを展開するエンターテインメント向けの市場が落ち着きつつあり、近年は他の業種で利用が拡大している。特に、これまでクラウド活用に消極的だった金融業が、一部では積極的な活用を進めているため今後の伸びが期待される。製造業は海外拠点を持つユーザーも多く、グローバルビジネスの円滑化を目的にSoR(Systems of Record)※2などのシステムプラットフォームの統合ニーズが高まっているため利用が進んでいる。また、初期投資を抑えて導入できることに加え、ベンダーがIaaS/PaaSを活用したIoT/ビッグデータプラットフォームをリリースし始めているため、今後はSoE用途での利用拡大も期待される。流通業やサービス業は比較的導入の障壁が低く、コスト面を重要視して利用するケースが多い。
※1 engagement(つながり)を重視し複数のチャネルから提供される情報を収集し、分析、予測することで創造的な価値を引き出すシステム
※2 記録を重視した従来型のシステム
 企業・組織が自社内でクラウド環境を構築するプライベートクラウドは、ユーザーのIT資産で構築するオンプレミス型、ベンダーが提供するホスティングを利用するホスティング型がある。オンプレミス型は自社IT製品をクラウド環境へ移行できるため、その簡便性から導入が増えている。ホスティング型は一部ユーザーのパブリッククラウドへの移行もみられるため、オンプレミス型の方が伸びが大きくなるとみられる。従来型SIが減少する中、ベンダーはプライベートクラウドへの取り組みを重要視しており、システムによってプライベートクラウドとパブリッククラウドを使い分けるソリューションを強化することで利用拡大を図っている。特にコンピューターベンダーは、自社プロダクト(ハードウェア/ソフトウェア)の拡販ができるため注力度は極めて高い。
 共同利用サービスはシステム開発・運用コストの削減を目的とした、金融業(銀行、証券、信用金庫)や自治体の需要が中心である。今後はFinTechに対応したシステム基盤構築サービスの提供や、地方自治体における自治体クラウド進展による需要により堅調な伸びが予想される。金融機関では既に共同利用サービスを利用している事業者が、個別システムで対応している業務の共同利用への切り替えによる需要増が期待される。また、地方自治体はマイナンバーに対応した業務システムへの移行ニーズが高まり自治体クラウドへ移行する契機となっているため、今後の大幅な伸びが予想される。
 クラウドサービス同士やクラウドサービスと既存システムを連携するハイブリッドクラウドは、今後大幅な伸びが予想される。SI事業者は自社クラウドサービスだけでなく、他社のIaaS/PaaSの積極的な展開や、ハイブリッドクラウドを前提とした統合運用管理ツールの開発に注力している。
注目市場
IaaS/PaaSの国内市場
 2016年度見込2020年度予測2015年度比
全体2,710億円5,457億円2.5倍
 メガクラウドベンダー1,319億円3,109億円3.2倍
国産SIベンダー475億円759億円191.7%
国産ISP/専業ベンダー193億円420億円2.6倍
メガクラウドベンダー、国産SIベンダー、国産ISP/専業ベンダーは全体の内数
 IaaS/PaaS市場をけん引しているのはメガクラウドベンダーである。2016年度は50%弱の構成比を占め、特にPaaSでは80%以上を占めるとみられる。今後も価格面やサービスラインアップで優位なメガクラウドベンダーの構成比が高まると予想される。ただし、PaaSはIaaSの付加価値サービスとして注力する国産ベンダーが増えている。
 Webサイト基盤用途やコンシューマー向けサービス基盤(ソーシャルゲーム、コンテンツ配信など)用途でメガクラウドサービスの需要は引き続き堅調である。加えて、近年は基幹系システムや情報系システムなどSoR用途でも導入が進んでいる。また、ビッグデータやIoT、人工知能といったSoE用途も注目されており、メガクラウドベンダーはSoE用途と親和性の高いPaaSのラインアップ拡充に取り組んでおり今後の大幅な伸びが期待される。
 国産ベンダーはメガクラウドベンダーの価格戦略に対して、個別ニーズの柔軟対応や手厚い運用サービス提供などで対抗している。メガクラウドベンダーとの協業も増加している。国産SIベンダーや国産コンピューターベンダーは主幹システム開発の中でビッグデータやIoT領域の注力度を高めており、SoE用途でのクラウド利用の推進や、自社サービスだけではなく他社サービスへの対応も柔軟に行っている。
SIの国内市場
 2016年度見込2020年度予測2015年度比
クラウド型SI2兆3,218億円3兆6,922億円176.6%
従来型SI6兆1,273億円6兆38億円97.2%
その他2兆3,250億円2兆1,532億円90.9%
合計10兆7,741億円11兆8,492億円111.4%
 クラウド型SIの構成比は2015年度の20%弱から、パブリッククラウドを中心とした伸びがけん引し、2020年度には31.2%に拡大すると予測される。一方、メインフレーム系システムやサイロ型システム、個別対応型のホスティング(プライベートクラウド用途除く)を対象とした従来型SIは2015年度の構成比は60%弱であったが、クラウド型SIの伸びにより2020年度は減少するとみられる。クライアントPCやPOS端末などの専用端末、それらに伴う保守/運用を対象としたその他も市場縮小が予想される。
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