PRESSRELEASE プレスリリース
ホビー・ゲーム、ハウス・家電、アミューズメント・レジャー分野などを中心に拡大
総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 清口正夫 代表取締役)は、幅広い用途が考えられ、多くのメーカーの参入が期待される空中表示技術の世界市場を調査した。その結果を報告書「2017 空中表示技術と構成部材市場の将来展望」にまとめた。
この報告書では、空中表示技術の動向を空中ディスプレイの市場で捉えるとともに、空中ディスプレイに採用される主要なデバイス・部材市場についても調査・分析した。なお、空中ディスプレイの国内市場については用途別に分析した。また、VR・AR表示機器とそれらに採用される主要なデバイス・部材の市場についても調査・分析した。
◆調査結果の概要
1. 空中ディスプレイの世界市場
近年、空中に画像や映像を表示する空中ディスプレイの開発が多くのメーカーで行われている。現在、商用出荷され市場を形成している空中ディスプレイは、光学素子の内部で映像モニターから広がった光を反射させ、1点に集約させることで空中に実像を結像させる。2017年の世界市場は356台(うち国内市場は306台)が予測されるが、市場を構成しているのは光学素子にAIプレートや再帰反射シート、DCRA(Dihedral Corner Reflector Array)を使用した空中ディスプレイである。
空中ディスプレイはSF映画のような未来感ある操作性からホビー・ゲーム、ハウス・家電、アミューズメント・レジャー、自動車コックピットなどの用途分野で今後需要が増加するとみられる。また、ディスプレイに直接触れず操作できるため衛生面の配慮が必要な医療分野での需要の増加や、外食店舗や企業・製造工場での活用も期待される。2025年には再帰反射シートやDCRAを光学素子に使用した空中ディスプレイを中心に、4万6,543台(うち国内市場は3万7,116台)まで市場は拡大すると予測される。
2.国内主要用途別空中ディスプレイ市場
現在、国内市場のほとんどがホビー・ゲーム分野向けである。ホビー・ゲーム分野で導入されているのは、再帰反射シートを使用した空中ディスプレイであるが、2018年からAIプレートやDCRAを使用した空中ディスプレイの普及が始まる。AIプレート、再帰反射シート、DCRAを使用した空中ディスプレイはそれぞれ普及が進むが、操作デバイスと組み合わせたインタラクティブデバイス用途で大幅な採用拡大が期待される再帰反射シートを使用したタイプが特に伸びると予想される。
ホビー・ゲーム分野に次いで有望な用途分野は、ハウス・家電分野である。冷蔵庫や洗濯機、家電のリモコンに 空中ディスプレイの搭載が検討されている。しかし、コスト高になるなどが課題であり、製品化まで至っていない。一方、2017年は各種家電のスイッチとして使用できるパリティ・イノベーションズの空中ディスプレイ「Air Switch」が発売されるとみられる。
空中ディスプレイは家電メーカーからの引き合いも多く、デザイン性などから各種家電の表示・操作デバイスとして、特に、キッチン周りで調理中にレシピを確認できる操作パネルや調理家電の操作パネルとしての用途が期待される。また、マンションエントランスの暗証番号操作パネルとしての用途も想定される。2020年の東京五輪に向けてタワーマンションをはじめとした高級マンションの建設も加速するとみられるが、マンションの差別化目的などで採用が期待される。2023年ごろには空中ディスプレイのコストダウンが進み、冷蔵庫などへの搭載も始まると予想される。センサーなどを搭載したIoT家電の普及で、空中ディスプレイの引き合いも強まるとみられる。
アミューズメント・レジャー分野も有望な用途分野の一つである。市場は2018年から立ち上がる。先発するのはAIプレートや再帰反射シートを使用した空中ディスプレイである。AIプレートを使用した空中ディスプレイは、パチンコホールやボーリング場などでデジタルサイネージとして採用が進むとみられる。将来的には低価格化の進行により、遊技台への搭載も想定される。再帰反射シートを使用した空中ディスプレイは暗闇で効果を発揮するため、アミューズメントパークのお化け屋敷などでの採用が期待される。また、多くのライトが取り付けられるパチンコ遊技台への搭載検討も進んでいる。DCRAを使用した空中ディスプレイもパチンコ遊技台や、ゲームセンターでの採用が想定される。
◆注目市場 −空中ディスプレイを構成する主要デバイス・部材の世界市場−
1.AIプレート
2017年予測 |
2016年比 |
2025年予測 |
2016年比 |
|
市場規模 |
5.0百万円 |
166.7% |
325.0百万円 |
108.3倍 |
市場規模には含まないが、サンプル出荷としては、既に250社以上に供給実績があり、ガラス製や樹脂製のプレートを合わせて年間数百枚出荷されている。
国内市場は2020年の東京五輪に向けて、交通機関、小売、外食店舗、宿泊施設、公共施設といった用途分野の受付端末やデジタルサイネージ用途、また、ホビー・ゲーム、医療分野などでAIプレートを使用した空中ディスプレイの採用が進み、需要が増加するとみられる。また、海外市場ではデジタルサイネージ用途でAIプレートを使用した空中ディスプレイの採用が多く、しばらくはアミューズメント・レジャー分野などでデジタルサイネージ用途を中心に採用が進み、需要の増加が予想される。
2023年以降は操作デバイスを中心に搭載が増加する空中ディスプレイに対し、量産性に優れた樹脂製プレートの需要が増加するとみられる。また、自動車分野で空中ディスプレイの本格的な採用も期待され、需要の増加が期待される。
2.再帰反射シート
2017年予測 |
2016年比 |
2025年予測 |
2016年比 |
|
市場規模 |
僅少 |
− |
5.4百万円 |
− |
2017年は、国内では2016年に引き続き「iPhone」「iPAD」用の再帰反射シートを使用した空中ディスプレイが数量限定で生産されるとみられ、また、海外ではホビー・ゲーム機器用が生産されるとみられることから僅少であるが再帰反射シートの出荷が予想される。なお、サンプルとしては多数の企業に出荷されている(市場規模対象外)。
2018年は再帰反射シートを使用した空中ディスプレイ「AIrWitch」(コト)の生産が予想されるほか、パチンコ・パチスロ機や、海外ではホビー・ゲーム機器に再帰反射シートを使用した空中ディスプレイの採用が予想され、需要は徐々に増えるとみられる。再帰反射シートを使用した空中ディスプレイは、2020年まではデジタルサイネージ用途を中心に、2020年以降はホビー・ゲーム機器用途などを中心に、さらに、2023年以降は自動車分野で普及が期待され、需要も増加していくと予想される。
3.DCRA
2017年予測 |
2016年比 |
2025年予測 |
2016年比 |
|
市場規模 |
2.4百万円 |
− |
227.0百万円 |
− |
2016年まで市場は未形成であるが、サンプル出荷はこれまで年間数百枚程度ある(市場規模対象外)。パリティ・イノベーションズは自社のDCRAを搭載したスイッチとして使用できる空中ディスプレイ「Air Switch」、スマートフォンの映像を空中に表示して操作も可能な「AIR Interactive Display」を展示会などに出展している。2017年は「Air Switch」が、また、2018年には「AIR Interactive Display」が発売され、市場は拡大するとみられる。自社製品の他には、外食店舗の注文用操作デバイス、家電の表示・操作デバイスなどへの搭載が期待さる。海外では家電用途などで引き合いが多く、同用途中心に需要が増加するとみられる。
2023年以降はコンシューマ向けを中心にアミューズメント・レジャーやホビー・ゲーム、家電などの用途分野で大幅な採用拡大が期待される。 また、現状でも引き合いの多い自動車分野での採用が期待される。
◆調査対象
空中表示技術 | AIプレート技術、再帰反射シート技術、DCRA技術、アイリス面型空中結像ディスプレイ、ホログラム技術、ライトフィールドディスプレイ、プラズマ発光技術、VR、AR |
国内用途 | アミューズメント・レジャー、ホビー・ゲーム、医療・介護・ヘルスケア、自動車、旅行、金融、ハウス・家電、小売・eコマース、企業・製造、建設・不動産、教育、ライブイベント・TV、交通機関、外食店舗、宿泊施設、公共施設、防災 |
デバイス・部材 | AIプレート、再帰反射シート、DCRA、位相差フィルム(pAIRR用)、ビームスプリッター、透明光学樹脂(空中ディスプレイ用)、ガラス材(AIプレート用)、LCD、OLED、マイクロディスプレイ、光学レンズ樹脂、カラーフィルター、触覚デバイス、ジェスチャーインターフェイス |
※一部の数字は四捨五入しています。このため合計と一致しない場合があります。