PRESSRELEASE プレスリリース

第18029号

中国を中心に製造業向けロボットの需要が急増している
FA(ファクトリー・オートメーション)ロボットの世界市場を調査
−2025年世界市場予測(2017年比)−
製造業向けロボットの世界市場 3兆3,140億円(3.1倍)
FAロボット関連IoT・AIサービス 4,110億円(4.0倍)
ヒト協調ロボット 5,900億円(12.1倍)

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 清口正夫 代表取締役)は、組み立て作業の自動化、人との共存・協働、中国を中心としたアジアの需要増加などをキーワードに益々注目度が増しているFA(ファクトリー・オートメーション)ロボットの世界市場を調査した。その結果を「2018 ワールドワイドロボット関連市場の現状と将来展望 No.1 FAロボット市場編」にまとめた。

この調査では、製造業向けロボット17品目、半導体・電子部品実装向けロボット11品目、ロボット向け注目構成部材10品目の国・地域別の生産・販売動向について、現状を分析し将来を予想した。また、今後の進展が期待されるFAロボット関連IoT・AIサービス4品目についても市場動向を整理した。

※ロボット向け注目構成部材の一部品目、FAロボット関連IoT・AIサービス4品目の市場は、国内市場+日系メー
カーの海外実績の合計とした。

◆調査結果の概要

1.製造業向けロボットの世界市場



2017年の製造業向けロボット市場は、労働力不足や人件費高騰を背景に自動化ニーズが加速し、中国を中心に拡大し、前年比23.7%増の1兆821億円となった。市場拡大をけん引している中国ではEMSやスマートフォン関連、自動車関連分野においてロボットへの設備投資が好調で、特に小型垂直多関節ロボットやスカラロボットなど小型ロボットの需要が増えた。

分野別にみると、組立・搬送系は、EMSやスマートフォン関連、自動車関連分野の好調な設備投資により、小型ロボットが伸びた。また、ヒト協調ロボットは自動車関連や電機・電子関連の大手ユーザーを中心に導入が進んだ。

溶接・塗装系は、欧米や日本、中国で自動車関連の設備投資が増えたことにより好調だった。

クリーン搬送系は、ガラス基板搬送ロボットが、スマートフォンやテレビ向け高精細液晶や有機EL関連の設備投資が増えたことに伴い伸びた。特に東南アジアでは、スマートフォン関連の大型投資により需要が大幅に増加した。また、ウエハ搬送ロボットは、スマートフォンやサーバー向けに大手半導体メーカーが設備投資を増強したことから伸びた。

アクチュエータ系は、スマートフォン関連や自動車関連の設備投資が増大したことにより伸びた。また、用途の広がりがみられ、スマートフォン関連以外の電子機器や、産業機器、食品などの分野でも活用されている。

2018年は、AI技術の活用によるプログラム工数削減や、バラ積みピッキング、検査工程など、ロボット化が困難であった工程での自動化案件が増えるため、引き続き市場拡大が見込まれる。

組立・搬送系は、現状は人による工程が多いため自動化ニーズが高まっている。また、労働力不足や人件費高騰などを受けてロボット活用のシーンやユーザーの裾野が広がっているため伸びが期待される。小型ロボットを中心に旺盛な需要が期待できる。

溶接・塗装系は、自動車関連の設備投資が前年に引き続き欧米や日本、中国で好調なため、続伸するとみられる。

クリーン搬送系は、前年の特需の反動でガラス基板搬送ロボットの伸びは鈍化するものの、ウエハ搬送ロボットは半導体メーカーの設備投資の増加を受けて続伸するとみられる。

アクチュエータ系は、EMSなど大口ユーザーからの受注が期待され、前年ほどではないものの堅調な伸びが見込まれる。特に、中国を中心に電動スライダの需要が増加している。

自動化ニーズの高まりにより市場は拡大を続け、2025年には2017年比3.1倍の3兆3,140億円が予測される。ヒト協調ロボットなどの新しいロボットの普及拡大に加え、IoTやAI技術の活用によりスマート工場などの柔軟な生産システムの実現に寄与するものとして需要は益々増えるとみられる。今後、単純作業の自動化ニーズを受けた溶接・塗装工程から、作業に柔軟性が求められる組立や搬送、検査などの工程で導入が進むため、特に、組立・搬送系の需要が増加するとみられる。また、クリーン搬送では、スマートフォンの大容量化やデータセンター、ストレージ機器、AIやIoT関連機器などにおける半導体需要の増加に伴い、大手半導体メーカーが大規模な設備投資を続けているため、ウエハ搬送ロボットなどの伸びが期待される。

2.FAロボット関連IoT・AIサービス市場(国内市場+日系メーカーの海外実績)

2017年
2025年予測
2017年比
市場規模
1,034億円
4,110億円
4.0倍

IoT・AI対応コントローラ、予知保全システム・サービス、ヒト協調ロボットレンタルサービス、製造業向けロボットアフターサービスを対象とした。各品目の需要増加に伴い2025年の市場は2017年比4.0倍の4,110億円が予測される。

IoT・AI対応コントローラは、Industrie 4.0など柔軟な生産システムの実現に向けた取り組みの中でエッジ側の情報を集約するコントローラとして重要な役割を持つ。現状では試験的な導入が多いが、アプリケーションの広がりや費用対効果が実証されることで今後の伸びが期待される。

ヒト協調ロボットレンタルサービスは、ヒト協調ロボットを、比較的低価格で繁忙期に利用したり、試験的に導入効果を図れたりするため需要が増えている。ヒト協調ロボット市場は、ロボットメーカーの参入が相次ぎ、活性化していることもあり、まだ市場規模は小さいが今後は幅広いユーザー層への展開が期待される。

予知保全システム・サービスは、メンテナンス回数の削減、補修品の効率的なストックなど、保守・メンテナンスにかかる費用の低減ニーズの高まりを受けて、今後の伸びが予想される。

製造業向けロボットアフターサービスは、自動車関連やスマートフォン関連を中心に需要が高まっている。中・大型ロボットの定期メンテナンスや、ロボット搬入後の生産ライン立ち上げ、セットアップ、オーバーホールなどを中心に、今後さらに需要が増えるとみられる。

◆注目市場

1.ヒト協調ロボット

2017年
2025年予測
2017年比
全体市場
488億円
5,900億円
12.1倍
日本
67億円
1,000億円
14.9倍
アジア
144億円
2,325億円
16.1倍

※日本、アジアは全体の内数

組立作業や搬送工程などで、人が作業しているスペースへの置き換えや、人に近い動作、作業内容、作業環境での利用を想定し、人と協調または共存することを目的としたロボットを対象とした。特に、自動車関連や電機・電子関連の大手ユーザーを中心に導入が進んでいる。労働力不足を背景に、これまで人が働いていた場所にそのまま導入されるケースや、無人のロボットラインで使われるケースなど用途は様々である。

2017年は欧米を中心に、中国や韓国、台湾などのアジアでも導入が進んだ。特に、中国では労働力不足や人件費高騰、多品種小量生産対応などの生産課題を解決する手段として、EMSや電機・電子関連で導入が増えた。

参入メーカーの増加により市場は活性化しており、2018年も各エリアで大幅な伸びが期待される。また、日本ではヒト協調ロボットのレンタルサービスも始まっており、トライアルのレンタルから販売へとつなげる動きもみられる。将来的には、大手ユーザーから中堅ユーザーへ、また、製造業から非製造業へと需要の広がりが期待されるため、2025年の市場は2017年比12.1倍の5,900億円が予測される。特に、中国の伸びが大きく、2025年の中国市場は1,950億円が予測される。

2.小型垂直多関節ロボット(可搬重量20kg以下)

2017年
2025年予測
2017年比
全体市場
1,165億円
5,150億円
4.4倍
日本
185億円
750億円
4.1倍
アジア
583億円
3,240億円
5.6倍

※日本、アジアは全体の内数

小型垂直多関節ロボットは、小物部品・製品の組み立てや搬送などで使用される。スマートフォンやタブレット端末、PCなどのコンシューマ機器や自動車部品の生産ラインへの供給が中心である。近年は、利用シーンが多様化しており、食品・医薬品分野の梱包工程でのピック&プレース用途でも採用されている。

労働力不足、人件費高騰を背景に自動化ニーズは年々増加しており、アジアを中心に市場は拡大している。特に、中国ではスマートフォン関連を中心に、自動車関連や産業機器関連、食品・化粧品・医薬品産業関連などへ用途が広がったことにより、2017年は大きく伸びた。また、東南アジアでも積極的な設備投資が行われており、スマートフォン関連や自動車関連で好調である。なかでも、可搬重量7?クラスのロボットの需要が増えており、2018年以降も中国を含むアジアを中心に市場拡大が予想される。

日本や欧米では、単純な作業のロボットへの置き換えから、高度な自動化案件のニーズが拡大している。日本は半導体や自動車関連、欧米では自動車関連、ライフサイエンス、食品関連の設備投資が好調であり、それに伴う需要が増加している。

◆調査対象

製造業向けロボット 組立・搬送系 卓上型ロボット、パレタイジングロボット、取出しロボット、スカラロボット、パラレルリンクロボット、ヒト協調ロボット、小型垂直多関節ロボット(可搬重量20kg以下)、垂直多関節ロボット(可搬重量21kg以上)
溶接・塗装系 アーク溶接ロボット、スポット溶接ロボット、塗装ロボット、バリ取り・研磨仕上げロボット
クリーン搬送系 ガラス基板搬送ロボット、ウエハ搬送ロボット
アクチュエータ系 単軸ロボット、直交ロボット、電動スライダ
半導体・電子部品実装向けロボット 高速モジュラーマウンタ、フリップチップボンダ、クリームはんだ印刷外観検査装置、中速モジュラーマウンタ、ダイボンダ ・クリームはんだ印刷機、低速マウンタ、ワイヤボンダ、AXI、多機能マウンタ、インライン実装検査装置(リフロー前後)
ロボット向け注目構成部材 ロボットビジョンシステム、ロボット用力覚センサ、FAケーブル、精密制御減速機、セーフティレーザースキャナ、ロボット用オートツールチェンジャ、ロボット用サーボモータ、ロボットハンド ・リニア搬送モジュール、AR/VR表示機器(スマートグラス)
※ロボットビジョンシステム、精密制御減速機 以外は国内市場+日系メーカーの海外実績合計
IoT・AI・サービス IoT・AI対応コントローラ、ヒト協調ロボットレンタルサービス、製造業向けロボットアフターサービス、予知保全システム・サービス
※国内市場+日系メーカーの海外実績合計

※一部の数字は四捨五入しています。このため合計と一致しない場合があります。


2018/03/26
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