PRESSRELEASE プレスリリース
ヘルステック・健康ソリューション関連市場の調査結果
ヘルステック・健康ソリューション関連の国内市場3,083億円(50.0%増)
ストレスチェックの義務化や健康経営の推進などにより各サービス・機器の需要が増加
総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 清口正夫 代表取締役)は、モバイルアプリやAI、IoTなどのITを利用してヘルスケアをより効果的に進展させるヘルステックと、健康に関する計測・測定や管理・分析とその後のフォロープログラム提案により健康PDCAの構築や利用者の生活習慣の行動変容へつなげる健康ソリューションに着目し、企業における働き方改革や健康経営への意識の高まりを背景に市場拡大が予想される、関連機器やサービス・ソリューションの市場について調査した。その結果を「ヘルステック&健康ソリューション関連市場の現状と将来展望 2019」にまとめた。
この調査では、健康経営サービス5品目、健康情報測定機器・治療器12品目、注目検査・健診サービス4品目、健康プラットフォーム&生活習慣改善サポートサービス6品目について、市場の現状を分析し、将来を予想した。
◆調査結果の概要
ヘルステック・健康ソリューション関連の国内市場
2018年の市場は前年比9.4%増の2,248億円が見込まれる。参入企業が個人を対象とするセルフケアのサービスに加えて、近年は法人向けサービスを積極的に展開していることで新規需要の開拓につながっている。また、市場拡大の背景としては、政府主導で進められている働き方改革や健康経営の推進、ストレスチェックの義務化などにより、企業による従業員の健康維持・増進への関心が高まり、関連サービスを積極的に導入する動きが活発化していることがある。
分野別では、健康経営サービスが市場拡大をけん引している。対象とした各品目は、関連する法律への対応や、人手不足によるアウトソーシング活用の増加などを背景に近年利用が増えている。中でも、福利厚生代行サービスの市場規模が大きく、人材確保や離職率低下の手段として企業が福利厚生に注力していることもあり、今後も需要増加が期待される。また、厚生労働省によるストレスチェック義務化により、メンタルヘルスサービスも伸びている。
健康情報測定機器・治療器は、消費者の健康意識および美容意識の高まりや、参入企業の増加、低価格製品の発売によるラインアップの拡充、製品認知度の向上などにより、市場が拡大している。品目別にみると、これまで着目されていなかった身体領域の健康指標を測定するツールであるストレス測定器やAGE(終末糖化産物)測定器、ウェア型端末(スマート衣料)、体臭測定器、スマート歯ブラシなどは、消費者の注目度が高まっているため、今後の伸びが期待される。
注目検査・健診サービスは、利用者が家庭や店舗で検査・健診ができるサービスを対象とした。近年、企業による従業員の健康増進施策の一つとして、企業や健康保険組合が従業員や組合員向けのサービス提供のために導入するケース増えており、今後の伸びが期待される。また、販促キャンペーンのツールや、自治体が住民サービスとして活用するケースも増えている。
健康プラットフォーム&生活習慣改善サポートサービスは、モバイルアプリの登場や参入事業者の増加などにより伸びている。今後、従業員の健康増進を進める健康経営、健康保険組合の医療費削減、労働環境の整備などを目的に各サービスの導入が進むと予想される。特に健康管理ポータルサービス/健康ポイント・マイレージサービスやダイエット/食事管理サービス、睡眠改善サービスなどの伸びが期待される。
◆注目市場
1.メンタルヘルスサービス
2017年 |
2022年予測 |
2017年比 |
|
ストレスチェックシステム |
28億円 |
31億円 |
110.7% |
EAPサービス |
96億円 |
145億円 |
151.0% |
合 計 |
124億円 |
176億円 |
141.9% |
メンタルヘルスサービスとして、ストレスチェックシステムとEAP(従業員支援)サービスを対象とする。法改正によるストレスチェック義務化に加えて、働き方改革や健康経営などへの意識の高まりを背景に市場拡大が予想される。なお、EAPサービスの一部にはストレスチェックが含まれている。
ストレスチェックシステムは、厚生労働省によるストレスチェック義務化を契機として、2015年と2016年は大きく伸びた。2017年以降は、導入企業が継続的にシステムを使用しているため、サービス利用料が順調に増加している。また、これまで自社でシステムを構築して従業員向けに運営していた企業が、運営業務の負担解消のためアウトソーシングへと移行するケースもみられる。
EAPサービスは、メンタル不調者の発見や、予防・改善に向けたカウンセリングやオンライン学習などを提供するサービスである。ストレスチェック義務化以前から大企業を中心に導入されていたが、近年はストレスチェック義務化や働き方改革が注目されていることで、このサービスへの関心は更に高まっている。また、導入を検討する企業では、健康経営優良法人認定制度や健康経営銘柄の認定を目指すケースが多く、サービス事業者は併せてそれらの制度認定に向けたサポートも展開している。現状は、大企業での導入が多いが、中小企業でも健康経営に関心をもつ企業が増えているため導入企業の広がりが期待される。
今後は、シーンごとの対処やメンタルヘルス不調の予防に関するサービスメニューが充実するとみられる。また、メンタルヘルス不調者の支援だけでなく、従業員のやる気を引き出し生産性の向上につながるようなメニューも増えるとみられる。
2.DTC遺伝子検査サービス
2017年 |
2022年予測 |
2017年比 |
|
市場規模 |
41億円 |
50億円 |
122.0% |
専用の遺伝子解析キットを用いて利用者が唾液や口腔粘膜などを採取した後にキットを事業者に送り、利用者の遺伝子の特性を調べるサービスを対象とする。個人利用が多いが、一部では、企業や自治体が福利厚生や市民サービスの一環として、検査費用を一部負担する取り組みもみられる。
疾患リスクや体質特性など多くの検査項目があるフルパッケージ版と、特定の遺伝子検査に絞り込んだ低価格版に大きく分けられるが、現状は健康意識の高い個人によるフルパッケージ版の利用が多い。
参入企業はテレビCMやテレビ通販、交通機関広告などのプロモーションを活用し、同サービスに対して関心の低い層へのアプローチにも取り組んでおり、市場は緩やかに拡大している。大手IT企業の新規参入などによりサービスの認知度が高まり参入企業は増えているものの、サービスの差別化が難しいことや検査結果の信頼性、コスト面などを理由に特定企業のサービスに利用者が集中する傾向もみられる。
市場拡大のためには健康意識のそれほど高くない個人の利用促進が必要となる。サービス利用により体質や病気のリスクが分かるのに加え、その後のソリューションとして健康改善に向けた助言や指導、個別医療への展開など、利用者が検査後に健康改善への行動につなげられるような仕掛けづくりがポイントになるとみられる。
3.睡眠改善サービス
2017年 |
2022年予測 |
2017年比 |
|
市場規模 |
1億円 |
20億円 |
20.0倍 |
利用者の睡眠改善を促す機器やシステム、コーチングサービスを対象とする。睡眠に関する状況把握、オンライン学習、睡眠の計測、睡眠に有効な助言などがサービスとして提供されている。
睡眠の質の改善について、これまでは重度の睡眠障害の場合を除いては問題視されることは少なかったが、寝付きが悪い、熟睡感が低いなど睡眠に悩む人は多く、「睡眠負債」という言葉が登場するほど、近年は睡眠の質の改善に対する需要が高まっている。その需要に対応するITを活用したサービスとして利用者が増えており、2022年の市場は20億円が予測される。
BtoC向けでは、睡眠改善への意識が高く、新しいIT機器・サービスに関心のある個人の利用が中心である。今後は企業が従業員向けサービスとして提供するBtoB向けの利用増加が期待される。企業側では従業員の睡眠改善により生産性の向上や産業事故リスクの低下が期待でき、利用する従業員は自己支出を抑えてサービスを利用できるため、それぞれに利点がある。当初は健康経営に関心が高い大手企業や、運輸・運送業界、IT業界を中心に利用が広がるとみられる。
◆調査対象
健康経営サービス | メンタルヘルスサービス(EAPサービス/ストレスチェックシステム)、健康診断予約精算代行サービス、従業員健康管理システム、福利厚生代行サービス、禁煙サポートプログラム |
健康情報測定機器・治療器 | 活動量計/歩数計/ヘルスケアバンド、ヘルスメーター、ストレス測定器、血圧計、AGE測定器、骨密度測定器、睡眠時無呼吸症候群治療器、3次元動作解析システム、足圧分布解析装置、ウェア型端末(スマート衣料)、体臭測定器、スマート歯ブラシ |
注目検査・健診サービス | 郵送生化学検査/スマートフォン対応型簡易検査サービス、DTC遺伝子検査サービス、郵送血液検査サービス、店舗健診サービス |
健康プラットフォーム&生活習慣改善サポートサービス | 健康管理ポータルサービス/健康ポイント・マイレージサービス、患者向け健康管理ポータルサービス、ダイエット/食事管理サービス、女性向けヘルスケアサービス、睡眠改善サービス、電子お薬手帳 |
※一部の数字は四捨五入しています。このため合計と一致しない場合があります。