PRESSRELEASE プレスリリース

第20014号

高齢者向け食品の国内市場を調査
―2025年市場予測(2018年比)―
在宅向け流動食(メーカー出荷ベース) 90億円(69.8%増)
~薬局・薬店、量販店などの 店頭販売チャネルへの配荷が好調に進み、市場は拡大 ~
施設向け完成食宅配(小売ベース) 545億円(29.8%増)
~調理人員、時間、コストの削減、衛生面でのリスク低減などのメリットから需要増加~

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋小伝馬町 社長 清口 正夫 03-3664-5811)は、高齢者人口が増加する中で、在宅では老老介護やライフスタイルの変化、施設では深刻な人手不足を背景に高まる調理の簡略化需要、介護や健康寿命の延伸を目的に拡大する高齢者向け食品の国内市場を調査した。その結果を「高齢者向け食品市場の将来展望 2019」にまとめた。

この調査では、高齢者向け食品7品目、高齢者向け宅配サービス4品目において在宅向け、施設向けとルート別で市場を捉え、また、高齢者向け施設8業態における食事提供の実態など動向を明らかにした。

◆調査結果の概要

1.高齢者向け食品(メーカー出荷ベース)

 

2019年見込

2018年比

2025年予測

2018年比

在宅向け

166億円

109.2%

254億円

167.1%

施設向け

1,525億円

103.2%

1,792億円

121.2%

合 計

1,691億円

103.7%

2,046億円

125.5%

高齢者人口の増加を背景に市場は拡大している。ボリュームゾーンの経腸流動食は診療報酬改定などの影響などにより需要が落ち込み、経口流動食や栄養補給食、とろみ調整食品・固形化補助剤にシフトしているものの、市場は低たんぱく食を除くすべての品目が伸長するとみられ、2025年は2018年比25.5%増の2,046億円が予測される。

2019年は施設向けで1,525億円、在宅向けで166億円が見込まれ、市場の大半を施設向けが占めている。施設向けでは慢性的な人手不足を背景に調理の簡略化需要が高まっており、従来は採用する際に価格面を重視する傾向が強かったものの、近年は人件費などの総合的なコストを考慮し、加工度が高く提供しやすい、また、栄養価値が高いなどの高単価・高付加価値商品の採用が進んでいる。在宅向けでは店頭における配荷が拡大することで流動食、やわらか食、栄養補給食が急伸するとみられる。

2.高齢者向け宅配サービス(小売ベース)

 

2019年見込

2018年比

2025年予測

2018年比

在宅向け

1,485億円

101.6%

1,627億円

111.4%

施設向け

692億円

110.4%

805億円

128.4%

合 計

2,176億円

104.2%

2,432億円

116.5%

※市場データは四捨五入している

高齢者向け宅配サービスは、価格やリードタイムなどのきめ細やかなニーズに対応して弁当を直接高齢者に届ける病者・高齢者食宅配の需要が、近年在宅高齢者の増加により高まっている。一方で、従来給食サービスの利用や自家調理を行ってきた施設における人手不足の慢性化による需要拡大を受け、上位企業がコストメリットの高いサービスとして高齢者施設向け完成食宅配の提案を強化しており、市場拡大に寄与している。また、病者・高齢者食宅配や病者・高齢者冷凍食通販、食材宅配は、在宅向けだけでなく施設数の拡大が続くデイサービス・デイケアを中心とした小規模施設向けのBtoB ルートが小規模ながらも需要が増加している。

食材宅配のユーザーは大半が65歳以下で、65歳以上の構成比は1割程度となっているが、ユーザーの高齢化を受けて、カロリー・たんぱく質制限食の調理済み食品の品揃えが強化されており、高齢者向けの実績についても拡大している。

◆注目市場

1.高齢者向け食品(メーカー出荷ベース)

 

2019年見込

2018年比

2025年予測

2018年比

在宅向け流動食

60億円

113.2%

90億円

169.8%

在宅向けやわらか食

47億円

111.9%

75億円

178.6%

施設向けやわらか食

149億円

105.7%

205億円

145.4%

栄養補給食

211億円

111.6%

350億円

185.2%

在宅向け流動食は在宅高齢者の増加に伴い市場が拡大している。施設向けは診療報酬の改定などの影響により経腸流動食の需要が減少しているものの、在宅向けは経口流動食の店頭配荷が好調に進み拡大を続けている。主要の店頭販売チャネルは薬局・薬店で、明治「明治メイバランスMini カップ」をはじめ様々な商品が採用されている。また、近年量販店でも介護用品売り場において面展開されるケースがみられる。

やわらか食は調理の手間を削減することを主目的として在宅向け、施設向け共に需要が高まっている。在宅向けはライフスタイルの変化から時短や調理の簡略化需要の高まりを背景にレトルトパウチ入り商品を中心に店頭配荷が進んでいる。2019年は新規参入もみられるほか、電子レンジ対応商品が発売されるなど新たな価値提案により市場は活性化しており、大幅な拡大が見込まれる。

施設向けは慢性的な人手不足により需要が高まっており、UDF区分“舌でつぶせる"といった加工度の高い商品から“容易にかめる"といった加工度の低い商品まで調理を簡略化できることから採用が進んでいる。2019年は朝食向けなど特定シーン向け商品が発売されるなど市場は活性化しており、今後も拡大していくとみられる。

栄養補給食品はフレイル(虚弱)・サルコペニア(筋肉量の減少)予防に対する関心の高まりを背景に市場が拡大している。在宅向けでは薬局・薬店を中心に店頭配荷が進み、施設向けも胃ろう造設が減少したことで経口摂取の割合が増加し、ゼリー状商品を中心に採用が進んでいる。特に介護予防・健康寿命の延伸を目的としたたんぱく質補給訴求商品の採用や残食率の低減を目的とした小容量・高栄養商品の需要が増加し、参入各社とも商品開発・訴求の強化が市場全体のトレンドとなっている。

2.高齢者向け宅配サービス(小売ベース)

 

2019年見込

2018年比

2025年予測

2018年比

病者・高齢者食宅配

968億円

102.7%

1,080億円

114.5%

病者・高齢者冷凍食通販

139億円

103.0%

162億円

120.0%

施設向け完成食宅配

470億円

111.9%

545億円

129.8%

病者・高齢者食宅配は、糖尿病や腎臓病などの疾病により糖質やたんぱく質などの制限が必要な高齢者や、高齢者向けに低塩分などを訴求した完全調理済食(完成食)を自社物流網によって宅配を展開するサービスを対象とする。市場は在宅高齢者の増加に伴い拡大してきた。大半が在宅向けであるが、デイサービス・デイケアなどのスタッフ数が少ない日帰り主体の施設や、小規模高齢者施設からの需要が高まっており、各社が販促を強化していることから施設向けも堅調に伸長していくとみられる。

病者・高齢者冷凍食通販は、高齢者や生活習慣病患者の増加に伴い市場が拡大してきた。近年は糖尿病・腎臓病などの罹患者だけではなく、“未病"を訴求したメニュー開発で新たな顧客層を獲得している。また、高齢者施設への販促も強化しており市場は拡大していくとみられる。

施設向け完成食宅配は高齢者施設や病院向けに展開する宅配・通販サービスで、湯せんや電子レンジなどを使用しゼロクック・ワンクックで完成する完全調理済食品を対象とする。施設スタッフの人手不足が慢性化するなか、調理人員、時間、コストの削減、衛生面でのリスク低減などのメリットから近年ニーズが高まっている。2019年は有料老人ホームや介護保険施設向けに高齢者施設給食を展開する企業で調理人員の確保がより困難となっていることから施設向け完成食宅配への注力度が高まり、二桁増が見込まれる。今後も市場は拡大していくとみられる。

<調査対象>

高齢者向け食品

在宅向け

流動食、やわらか食、栄養補給食、水分補給食、とろみ調整食品・固形化補助剤、低たんぱく食、施設用冷凍骨なし魚

施設向け

高齢者向け宅配サービス

在宅向け

病者・高齢者食宅配、病者・高齢者冷凍食通販、食材宅配、施設向け完成食宅配 

施設向け

高齢者向け施設

・病院・診療所

・軽費老人ホーム 

・デイサービス・デイケア

・介護保険施設

・グループホーム

・小規模多機能型居宅介護

・有料老人ホーム

・サービス付き高齢者向け住宅

 


2020/02/20
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