PRESSRELEASE プレスリリース

第21030号

10年間で3,000億円近く拡大
介護関連製品・サービス市場は1.1兆円(2030年予測)
―2030年国内市場予測(2019年比)―
■見守りシステム 施設用120億円(2.0倍)/在宅用18億円(2.3倍)

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋小伝馬町 社長 清口 正夫 03-3664-5811)は、自立支援・重度化防止を目的に身体機能や口腔機能の維持・向上に寄与する製品やサービスの拡大が期待され、また、人材不足の解消や負担の軽減を目的にITやロボット技術の活用が進む介護関連製品・サービスの国内市場を調査した。その結果を「注目高齢者施設・住宅&介護関連市場の商圏分析と将来性 2021」にまとめた。

この調査では、介護関連製品・サービス41品目の市場調査に加え、高齢者施設の管理者や施設長100名に介護製品の採用動向や施設での自立支援・重度化防止への取り組みに関するアンケート調査を実施したほか、アクティブシニアや要介護認定者の居住実態や介護サービス利用率などを都道府県別に整理した。

◆調査結果の概要

●介護関連製品・サービスの国内市場

2020年見込

前年比

2030年予測

2019年比

7,996億円

98.8%

1兆944億円

135.2%

2020年の市場は前年比1.2%減が見込まれる。新型コロナウイルス感染症の流行により、外出機会の減少やデイサービスをはじめとした介護サービスの利用減少で、規模が大きいリハビリ関連や介護保険対象品目が縮小するものの、生活用品は消耗品が多いことから拡大が続き、また、規模が小さいながらもフレイル関連、見守り関連、介護テックなどは拡大するとみられることから、縮小幅はわずかにとどまる。

2021年以降も、新型コロナウイルス感染症の影響は続くが、高齢者人口の増加と共に市場拡大が続き、2030年には2019年比35.2%増の1兆944億円が予測される。

●注目のカテゴリー

 

2020年見込

前年比

2030年予測

2019年比

リハビリ関連

1,823億円

92.3%

2,663億円

134.8%

フレイル関連

956億円

102.8%

1,270億円

136.6%

介護テック

499億円

102.9%

710億円

146.4%

見守り関連

107億円

113.8%

212億円

2.3倍

リハビリ(リハビリテーション)関連は、身体機能が低下した高齢者のためのリハビリ機器やサービス、高齢者施設などでリハビリプランの作成を支援するリハビリ・機能訓練支援システムを対象とする。市場はリハビリ特化型デイサービスの比率が高い。

2020年は新型コロナウイルス感染症の影響でデイサービスの利用が減少し、リハビリ機器も施設での買い控えがみられ、市場は縮小するとみられる。なお、介護保険で心身機能維持・向上に対する加算が新設されるなど、高齢者の自立支援・重度化防止を重視する施策によりリハビリ特化型を訴求するデイサービス施設が増えていることや、リハビリ機器は小規模施設や整形外科クリニックで導入が増えていることから、市場は今後拡大していくとみられる。

フレイル関連は、食事量が減少した高齢者が必要な栄養量を摂取できるフレイル対策食品や、経口からの栄養摂取を維持するための口腔ケア製品、フレイル評価・早期発見システムを対象とする。高齢者の自立支援・重度化防止の一環として、口腔機能の維持の重要性が広まりつつある。

ITを活用しフレイルの予知や重症度を把握するフレイル評価・早期発見システムは、2020年4月からフレイル健診が開始されたことから、市場は小さいものの注目されている。口腔ケア製品は、口腔保湿剤が口腔ケアを実施する訪問看護などの訪問系サービスやデイサービスの利用減少で、2020年は縮小するとみられる。本来は介護サービスを利用しない場合でも家族などによるケアが必要であるが、方法がわからないなどの理由によりケア実施が限定的なことも縮小の要因となっている。

最も市場が大きいフレイル対策食品は、フレイル・サルコペニア予防に対する関心の高まりにより、栄養補給食の需要が増加しており、2020年も引き続き伸びるとみられ、今後も市場拡大をけん引するとみられる。

介護テック関連は、ITやAI、ロボティクスなどの最先端技術を活用した介護関連製品・サービスを対象とする。人材不足や業務過多、重労働といった課題の解決を目的に、介護テックの活用が活発になっており、長期的に市場は拡大が期待される。

市場は介護事業者向け基幹システムの比率が高い。基幹システムはタブレット端末を活用した介護記録のニーズの高まりや高齢者施設の増加により導入が進んでいる。このほか効率化支援システムや、RPAやAIによる自動化システムなども伸長が期待されるが、介護者のITリテラシーは個人差が大きく、操作方法の理解など介護者の負担増加が導入の障壁となる懸念がある。

見守り関連は、高齢者の転倒・徘徊に備えて見守る、確認するための機器・サービスを対象とする。

2020年は外出自粛や県をまたぐ移動の制限に伴い、感染リスクの高い高齢者への訪問を避ける動きがみられ、離れて暮らす家族が高齢者の安否を確認できる機器・システム活用型見守りサービスが伸びている。一方、直接訪問による感染リスクが懸念されたことから、訪問型見守りサービスの伸びは緩やかである。しかし、単独世帯の高齢者の孤独死は社会問題でもあり、直接訪問し確認できる同サービスの伸びは続くとみられる。

◆注目市場

■見守りシステム

 

2020年見込

前年比

2030年予測

2019年比

施設用

71億円

118.3%

120億円

2.0倍

施設用見守りシステムは、高齢者人口の増加と介護職員の人材不足により、業務の効率化を目的に導入する施設が増えており、市場が拡大している。

2020年は新型コロナウイルス感染症流行の影響により、高齢者施設への訪問規制などにより営業活動が規制されたが、非接触の観点から導入が補助金支給の対象となるケースもあり、市場は拡大が続くとみられる。

 

2020年見込

前年比

2030年予測

2019年比

在宅用

8.3億円

105.1%

18.0億円

2.3倍

在宅用見守りシステムは、多くが認知症老人徘徊感知機器に該当し、要介護2以上であれば介護保険により安価でレンタル可能である。

市場は、共働き夫婦の増加、核家族の増加などの家庭環境の変化により拡大している。また、在宅介護が増加していることに加え、最期まで自宅で過ごしたいと考える高齢者の増加も、市場の追い風になっている。介護保険外の利用は全額自己負担であるため、現状で利用する人は少なく、この層をどう取り込むかが課題となっている。

■業務効率化支援システム

2020年見込

前年比

2030年予測

2019年比

23億円

115.0%

57億円

2.9倍

スマートフォンやタブレット端末を用いて介護記録をその場で入力するシステムや、介護記録の文例を提示し、書類作成業務の効率化を実現するシステムを対象とする。

介護分野はIT化が遅れており、ようやくペーパーレス化や手書き業務の削減が進み出したところである。経済産業省のIT導入補助金などの支援策により、市場は拡大している。なお、居住型サービスを提供する高齢者施設では半数以上が導入済とみられ、近年では訪問系サービス事業者による導入が市場拡大をけん引している。

当面、介護のIT化に向けて政府の支援策は継続されるとみられ、資金面での導入のハードルが下がることで、継続した拡大が予想される。

■フレイル評価・早期発見システム

2020年見込

前年比

2030年予測

2019年比

0.5億円

5.0倍

10.0億円

100.0倍

ITを活用しフレイルの予知や重症度を把握するシステムを対象とする。

2017年に市場が立ち上がった。フレイル状態の高齢者やフレイル予備軍を早期に発見・支援することで、要支援・要介護への移行を阻止できることから、自治体によるシステムの導入が進んでいる。特に2020年4月から後期高齢者を対象としたフレイル健診が開始されており、今後も拡大が期待される。

◆調査対象

フレイル関連

・フレイル対策食品

・口腔スポンジブラシ

・フレイル評価・早期発見

・口腔保湿剤

・口腔ウエットティッシュ

システム

リハビリ関連

・リハビリ機器

・リハビリ特化型デイサービス

・高齢者リハビリ支援ロボット

・リハビリ・機能訓練支援システム

見守り関連

・施設用見守りシステム

・訪問型見守りサービス

・在宅用見守りシステム

・機器・システム活用型見守りサービス

認知症関連

・認知機能対策食品・サプリメント

・認知症早期発見検査キット

・認知症予防支援システム

・コミュニケーションロボット

介護保険対象外

サービス

・食事関連サービス

・生活支援サービス

介護保険対象品目

・手動車いす

・床ずれ防止マット

・腰掛便座

・電動車いす

・体位変換器

・入浴補助用具

・電動ベッド

・シルバーカー/歩行車・

 

・手すり

歩行器

 

生活用品

・大人用紙おむつ

・高齢者向けシューズ

・清拭剤

・介護用ウエットティッシュ

・介護用消臭剤

・介護用おむつ消臭袋

介護テック

・介護事業者向け基幹

・送迎効率化支援システム

・介護事業者向けRPA

システム

・AIケアプラン作成

・介護者向けロボット

・業務効率化支援システム

システム

・移動支援ロボット


2021/03/12
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