PRESSRELEASE プレスリリース
◆液体カーボンニュートラル燃料 80兆347億円(5.7倍)
・・・自動車用燃料が市場をけん引、航空機燃料で置き換え加速
◆気体カーボンニュートラル燃料 34兆8,781億円(11.7倍)
・・・導管供給により幅広い用途へ展開し市場拡大
●e-Fuel 20兆4,721億円
・・・自動車分野や航空機分野で採用が進み伸びる
●e-メタン 2兆3,012億円(1,438.3倍)
・・・日本が市場をけん引し、産業用燃料分野を中心に拡大
総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 社長 清口 正夫 03-3241-3470)は、CO2排出量削減が重要視される情勢を受けて、製造時のCO2排出量が少ないクリーンな非化石エネルギーとして需要が増えているカーボンニュートラル燃料の市場を調査した。その結果を「カーボンニュートラル燃料の現状と将来展望 2022」にまとめた。
この調査では、バイオマス由来燃料と水素由来燃料を液体燃料6品目、固体燃料3品目、気体燃料6品目に区分し、自動車分野、船舶分野、航空機分野、発電分野、産業用燃料分野、その他分野を対象に、カーボンニュートラル燃料の市場拡大のポイントや課題などを整理し、現状と将来における市場動向を明らかにした。
◆調査結果の概要
■カーボンニュートラル燃料(CN燃料)のタイプ別世界市場
●液体CN燃料
2022年見込 |
2021年比 |
2050年予測 |
2021年比 |
16兆3,306億円 |
115.8% |
80兆347億円 |
5.7倍 |
自動車用燃料で採用が進むバイオディーゼル、バイオエタノールの規模が大きく市場の大半を占める。2021年もバイオディーゼルとバイオエタノールが引き続き市場をけん引したほか、バイオメタノールは自動車分野で、バイオジェット燃料は航空機分野で採用が進み、市場は16兆3,306億円となった。また、e-Fuel、e-メタノールなどの合成燃料は実証事業が開始されており、2030年以降はバイオジェット燃料、e-Fuel、e-メタノールの市場が本格化するとみられる。2050年にはバイオディーゼルなどのバイオマス由来燃料と併せてe-Fuelなどの水素由来燃料の採用が増え、市場は大幅に拡大し80兆347億円が予測される。
日本は自動車用途が中心であり、2021年はバイオエタノールが市場をけん引した。ディーゼルエンジンを搭載した自動車の普及率が海外に比べ低いため、現状バイオディーゼルの採用は小規模に留まっているが、2030 年以降に市場が本格化するとみられる。長期的にはバイオディーゼル、バイオエタノール、バイオジェット燃料、e-Fuelの採用が進むと予想される。
●固体CN燃料
2022年見込 |
2021年比 |
2050年予測 |
2021年比 |
6兆1,177億円 |
106.8% |
11兆4,573億円 |
199.9% |
固体燃料は木材チップ、木質ペレット、PKSを対象とする。安価かつ安定供給可能なことから、需要が増えており、2021年は欧州、日本、韓国を中心に市場は拡大した。中長期的には、中国や東南アジアなどにおけるバイオマス発電の増加、産業分野におけるバイオマス燃料の需要増加に伴い、発電分野、産業用燃料を軸に市場は拡大すると予想される。
日本は、2025年頃までバイオマス発電所が増加することにより、2030年前後にかけて市場が拡大するとみられる。2030年以降は、非効率石炭から置き換えが想定される一方、FIT買取価格の低下や買取期間の終了などにより、バイオマス発電所の大幅な増加が見込めないことや、木材チップに比べ重量単価が低い木質ペレットの採用率が上昇するため、市場は微減が続くと予想される。
●気体CN燃料
2022年見込 |
2021年比 |
2050年予測 |
2021年比 |
3兆1,521億円 |
105.8% |
34兆8,781億円 |
11.7倍 |
現状は大部分がバイオメタン/バイオガスであり、グリーン水素、ブルー水素、e-メタンなどは実証事業が中心である。2030年には欧州、豪州を中心にグリーン水素、ブルー水素の市場が立ち上がってくると予想される。2050年はLNG・LPG 燃料の脱炭素化に伴う需要が増加すると予想される。また、アンモニア類は航空機、発電分野を中心に、2025年に市場が立ち上がると予想される。2030年から石炭火力発電所での混焼が開始するとみられる。2040年からはアンモニア専焼プラントの建設も進むとみられ、気体CN燃料の市場は34兆8,781億円が予測される。
日本は水素、メタン類は発電分野を中心に市場が立ち上がると予想され、2040年から製造コストの低下などにより、商用化、量産化が進むとみられる。特にe-メタンは日本が市場の約半分を占めており、ガス業界の目標である2050年e-メタン導入量90%に向けた取り組みの推進で、今後も市場拡大をけん引するとみられる。アンモニア類は発電分野を中心とした展開が想定される。2030年から製造プラントの商用化が進み、2040年から量産化が進むと予想される。日本の電源構成では、2050年までにおよそ1割を水素アンモニア発電が占めると予想され、それに伴いブルーアンモニアやグリーンアンモニアも伸びるとみられる。
■需要分野別のCN燃料採用動向(熱量ベース)
|
2021年 |
CN燃料比率 |
2050年予測 |
CN燃料比率 |
自動車分野 |
3.6EJ |
5.0% |
25.8EJ |
43.8% |
船舶分野 |
0.1EJ |
0.9% |
3.7EJ |
44.6% |
航空機分野 |
僅少 |
0.0% |
8.2EJ |
56.9% |
発電分野 |
1.9EJ |
2.7% |
13.6EJ |
50.0% |
産業用燃料分野 |
2.1EJ |
1.3% |
13.0EJ |
18.5% |
その他分野 |
0.7EJ |
0.6% |
2.2EJ |
4.1% |
自動車分野では、エンジン搭載車両が中心となるストック車両の脱炭素化としてバイオディーゼル、バイオエタノールなどが普及するとみられ、2050年にはCN燃料比率が43.8%になると予測される。
船舶分野では、IMOによるCO2排出量規制の強化により、2050年までのGHG排出量50%削減(2008年比)達成に向け、2040年以降にアンモニア類、e-Fuelやe-メタノールなど合成燃料の普及が加速し、2050年にはCN燃料比率が44.6%になると予測される。
航空機分野では、ICAO(国際民間航空機関)によるCORSIAの実現や欧州におけるSAF採用義務化などに伴いバイオジェット燃料、e-Fuelを中心に普及が進み、2050年にはCN燃料比率が56.9%になると予測される。
発電分野では、先進国における非火力発電の導入により2030年まで急激に火力発電比率が減少し、バイオマス系による脱炭素化が進むことで、2050年はCN燃料比率が50.0%になると予測される。
産業用燃料分野では、短期的にはボイラや非常用発電機における化石燃料からの置き換え、長期的にはガスインフラにおける天然ガスからの置き換えが進むとみられ、2050年にはCN燃料比率が18.5%になると予測される。
その他分野でも、2050年にはCN燃料比率が4.1%になると予測される。
◆注目市場
●e-Fuel
2022年見込 |
2021年比 |
2050年予測 |
2021年比 |
僅少 |
― |
20兆4,721億円 |
― |
水素(H2)とCO2を原料とし、各種合成ガス製造プロセスを経て、FT合成(Fischer-Tropsch 合成)により製造される合成液体燃料を対象とする。
欧州では、水素のパイプラインの整備が想定されるドイツや豊富な水力発電容量を有する北欧エリアで生産が進むと想定される。また、太陽光や風力発電のリソースが豊富な南米エリアは生産地として注目され、チリなどでも実証プラントの計画が立ち上がっており、取り組みが進んでいる。
日本では経済産業省のグリーン成長戦略において2050年までの合成燃料のロードマップが示されており、技術開発や実証事業が進んでいる。2030年には商用化に向けたプラントの建設が世界的に進み始め、日本への輸入や国内消費も増加していくとみられる。特に航空機分野で需要が増加し、市場をけん引していくと予想される。2040年以降には本格的な商用化が進み、採用が増えると予想される。
需要分野別では、自動車分野で軽油からの置き換えとして採用が進むとみられる。また、航空機分野ではICAOなどによる排出量規制が進み、工業的に生産が可能なe-Fuelの普及が進むとみられる。
●e-メタン
2022年見込 |
2021年比 |
2050年予測 |
2021年比 |
16億円 |
100.0% |
2兆3,012億円 |
1,438.3倍 |
グリーン水素とCO2から合成されるe-メタンを対象とする。
現状、日本が市場の約半分を占めており、都市ガスの原料における天然ガスやLNGからの置き換えとして普及が想定されている。ガス業界におけるメタネーション実装に関する目標値として、2030年にガス全体における1%以上、2050年に90%以上e-メタンの導入を目指すといった目標が掲げられている。現在は技術検証や製造プロセスの開発が行われており、2030年以降導入量が増加するとみられる。2050年には、本格導入が進み、現行の天然ガス価格の価格水準に近づき、導入量も大きく増えると想定される。また、LNG船への供給も開始されるものとみられ、運輸部門向けでも採用が進むと予想される。
欧州では、大手ガス事業者による業界団体によって2030年までに欧州でのガス消費量のうち再生可能ガスを11%まで導入することを目指すと発表され、ドイツやフランスなどで一部メタネーションプラントが設置されている。中国では、2020年代半ばから製造実証が行われるとみられる。豪州は再生可能エネルギーが安価なことから、グリーン水素製造の適地として期待されており、日本などへの輸出向けの生産に加え、ARENA(Australian Renewable Energy Agency)による地域のガス導管への混入のためのメタネーションプラントの実証支援なども行われている。
◆調査対象
液体CN燃料 |
|||
・バイオディーゼル |
・バイオエタノール |
・バイオメタノール |
|
・バイオジェット燃料 |
・e-Fuel |
・e-メタノール |
|
固体CN燃料 |
|||
・木材チップ・木質ペレット |
・PKS |
||
・その他技術・燃料(ソルガム、ブラックペレット、EFB、OPT) |
|||
気体CN燃料 |
|||
・バイオメタン/バイオガス |
・グリーン水素 |
・ブルー水素 |
|
・グリーンアンモニア |
・ブルーアンモニア |
・e-メタン |
|
用途 |
|||
・自動車 |
・船舶 |
・航空機 |
|
・発電分野 |
・産業用燃料分野 |
・その他分野 |
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