PRESSRELEASE プレスリリース

第22109号

再生可能エネルギーの普及拡大とともに導入が進展する
ESS・定置用蓄電システム向け二次電池の世界市場を調査
―2035年予測(2021年比)―
■ESS・定置用蓄電システム向け二次電池の世界市場
5兆4,418億円 (3.8倍)/255.2GWh(4.7倍)
出力変動への対応や需要変動に対する供給力の確保などを目的に導入が進み、市場拡大

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 社長 菊地 弘幸 03-3241-3470)は、カーボンニュートラルの実現に向けて導入が進み、系統・再エネ併設分野がけん引していくESS・定置用蓄電システム向け二次電池の世界市場を調査した。その結果を「エネルギー・大型二次電池・材料の将来展望 2022 ESS・定置用蓄電池分野編」にまとめた。

この調査では、ESS・定置用蓄電システムと搭載されるリチウムイオン電池を筆頭とする二次電池の市場を明らかにするとともに、ESS・定置用蓄電システムの普及に寄与する脱炭素化目標や再生可能エネルギー市場の動向も整理した。

◆調査結果の概要

■ESS・定置用蓄電システム向け二次電池の世界市場

 

2022年見込

2021年比

2035年予測

2021年比

金額

2兆26億円

141.5%

5兆4,418億円

3.8倍

容量

69.9GWh

128.0%

255.2GWh

4.7倍

世界各国で脱炭素/カーボンニュートラルの実現に向けた目標が掲げられ、再生可能エネルギーの導入加速/変動電源の増加によって、ESS・定置用蓄電システムに注目が集まっている。

2022年は新型コロナウイルス感染症の流行や半導体などの関連部品の調達不安がありながらも、再生可能エネルギーの普及拡大や導入補助政策の整備、データセンターや5G通信への投資活発化、自然災害への備えや電気代上昇などを背景に蓄電システムの需要が伸びており、二次電池市場も前年比41.5%増の2兆26億円が見込まれる。系統用・再エネ併設分野は2022年に1兆円を突破し、市場をけん引するとみられる。

今後もカーボンニュートラルの実現に向けて再生可能エネルギーの導入は増えていき、これに伴う変動電源比率の高まりにより、出力変動への対応や需要変動に対する供給力の確保などを目的に、調整用電源として二次電池市場が大きく拡大し、2035年には2021年比3.8倍の5兆4,418億円が予測される。

蓄電システムは、系統側では需給調整市場や卸電力市場での活用を見越した調整用電源としての設置、太陽光発電システムや風力発電システムの出力平滑化のための設置が進んでいる。一方、需要家側では、太陽光発電システムなどの自家消費やピークカット用途、レジリエンス性の向上を目的に非常用電源としての設置が進んでいる。

住宅用や小容量の業務・産業用は、パッケージ製品で供給され、系統用や大型の業務・産業用は、システムインテグレーターが案件ごとに電池やパワーコンディショナーなどを調達することが多い。近年海外では、導入の容易さ、迅速さ、コスト削減などを目的に周辺部品の設置や据付工事を含む導入が増えており、MWクラスの場合でもパッケージ製品をラインアップする動きがみられる。また、電池メーカーやパワーコンディショナーメーカーが、部材供給にとどまらず、自らシステムインテグレーターとなり蓄電システムとして供給し、事業領域を拡大させる動きもみられ、蓄電システムの業界構造が多様化していることから、市場拡大とともに事業者間の競争も激化していくと予想される。

■分野別ESS・定置用蓄電システム向け二次電池の世界市場

 

2022年見込

2021年比

2035年予測

2021年比

住宅分野

1,896億円

133.8%

4,315億円

3.0倍

業務・産業分野

793億円

118.7%

4,042億円

6.1倍

系統・再エネ併設分野

1兆  698億円

160.4%

3兆6,589億円

5.5倍

UPS/基地局分野

6,431億円

122.9%

9,172億円

175.2%

その他

209億円

123.7%

300億円

177.5%

合 計

2兆   26億円

141.5%

5兆4,418億円

3.8倍

※市場データは四捨五入している

住宅分野では、電気代上昇、自家消費利用、レジリエンス強化を背景に導入が増加している。日本では、太陽光発電システムの設置義務化の動きやZEH住宅の進展と共に蓄電システムの設置も進むとみられる。

業務・産業分野では、BCP/非常用電源・ピークカット/デマンドチャージ対策での導入が主体である。長期的には、再生可能エネルギーを有効利用する自家消費/BCP/VPP(バーチャルパワープラント)・DR(デマンドレスポンス)など二次電池のマルチユースが広がることで導入が加速していくとみられる。

系統・再エネ併設分野では、スタンドアローン型(系統への直接連系タイプ)の蓄電システムの導入が加速しており、日本でも系統用補助金が創設され蓄電所ビジネスが活況を呈している。長期的には、再生可能エネルギーの普及に伴い調整力のニーズが拡大し、蓄電システムで各種電力市場における収益機会の確保が進むことが期待される。

UPS/基地局分野では、世界的なクラウドサービス・IoT産業の進展に伴い、データセンター向けUPSの 需要は安定して伸びるとみられる。長期的には、5G通信基地局に加え、6G通信基地局の建設投資の拡大とともに、バックアップ電源需要も成長が予想される。

◆注目市場

●系統・再エネ併設分野の二次電池の世界市場

 

2022年見込

2021年比

2035年予測

2021年比

系統用

7,459億円

163.9%

2兆6,134億円

5.7倍

再エネ併設用

3,238億円

153.0%

1兆 454億円

4.9倍

合 計

1兆 698億円

160.4%

3兆6,589億円

5.5倍

※市場データは四捨五入している

ユーティリティ関連施設に併設される大型の蓄電システムを対象とし、系統設備に併設される製品を系統用、発電事業用の太陽光発電所や風力発電所(自社電力事業含む)に併設される製品を再エネ併設用とした。

市場をけん引しているのは系統用である。米国では、カリフォルニア州をはじめ複数の州で系統用蓄電システムの導入目標が策定され、大規模蓄電システムの設置が進んでいる。将来的にはITC(投資税額控除)の対象になることで、長期的な市場拡大が予想される。また、日本では需給調整市場、卸電力市場、容量市場など各種電力市場での活用を目的とした蓄電システムの設置が多数計画されており、2022年は総額130億円の系統用蓄電システムの補助金の公募が行われたことから、設置期限を迎える2023年の市場が大きく伸びるとみられる。

再エネ併設用は、北米、中国、豪州などさまざまなエリアで拡大している。特に中国では、近年、国の主導でエネルギー貯蔵の目標が示されたことから省レベルの導入目標が立てられており、太陽光発電所や風力発電所の開発・建設時の蓄電システムの設置を義務付けられたため、市場が急拡大している。

電池種別では、リチウムイオン電池の比率が高い。これまで短周期(1~2時間程度)向けで導入が進んできたが、価格低下に伴い長周期(10~12時間程度)向けでも導入が進みつつある。このほか、レドックスフロー電池、NAS電池、鉛電池などが採用されており、レドックスフロー電池やNAS電池は長周期の大型システムが中心である。レドックスフロー電池は2021年頃から中国で急速に導入が増えており、今後量産効果や新型電解液の採用によって低価格化が進み、一定の規模を形成するとみられる。

◆調査対象

住宅分野

・住宅用蓄電システム

 

業務・産業分野

・業務・産業用蓄電システム(300kWh未満)

・業務・産業用蓄電システム(300kWh以上)

系統・再エネ併設分野

・系統・太陽光発電システム・風力発電システム用蓄電システム

UPS/基地局分野

・中・大容量UPS

・無線基地局用バックアップ電源

その他

(日本市場のみ)

・直流電源装置(100V系)

・ポータブル電源

・小型蓄電システム(非系統連系タイプ)

・鉄道用電力貯蔵システム(回生電力貯蔵用途)


2022/10/20
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