PRESSRELEASE プレスリリース

第23014号

EMS と関連システム・機器、サービスの国内市場を調査
―2035年度国内市場予測(2021年度比)― ■EMS 1,295億円(60.1%増)
...導入施設の広がりやシステムの高度化・高機能化による価値・導入メリット向上で市場拡大
◆V2X(自動車用充放電器) 465億円(16.0倍)
...PV自家消費用途やBCP対策用途のニーズが増加し好調
◆コージェネレーションシステム 3,590億円(6.1倍)
...CGSは国や地方自治体による支援施策の後押しからレジリエンス目的の導入が進む
燃料電池は製品価格の引き下げなどで普及進む

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 社長 菊地 弘幸 03-3241-3470)は、脱炭素、エネルギーコストの高騰、省人・省人化、運用高度化などを受け変化がみられるエネルギーマネジメントシステム(EMS)の最新動向と関連するシステム・機器、サービスの国内市場を調査した。その結果を「エネルギーマネジメント・パワーシステム関連市場実態総調査 2023」にまとめた。

この調査では、EMS5品目と、エネルギープラットフォーム4品目、関連設備について発電・蓄電分野6品目、送配電・受電分野14品目の市場を分析し、最新ニーズと今後の方向性を明らかにした。

◆調査結果の概要

■EMS市場

 

2022年度見込

2021年度比

2035年度予測

2021年度比

システム

753億円

109.8%

1,035億円

150.9%

サービス

124億円

100.8%

260億円

2.1倍

合 計

877億円

108.4%

1,295億円

160.1%

2021年度は新型コロナウイルス感染症流行の影響による設備投資抑制および世界的な部材供給不足の影響により、わずかに市場が縮小した。2022年度は脱炭素対策による製造業での需要増加、エネルギーコスト高騰による省エネ・再エネニーズの高まりが市場をけん引している。今後は中小規模事業者の導入が増えるなどユーザーのすそ野が広がるほか、エネルギープラットフォーム連携などシステムの高度化・高機能化による価値・導入メリット向上により市場は拡大し、2035年度には2021年度比60.1%増の1,295億円が予測される。

【HEMS】

 

2022年度見込

2021年度比

2035年度予測

2021年度比

システム

74億円

108.8%

105億円

154.4%

サービス

1億円

100.0%

5億円

5.0倍

合 計

74億円

107.2%

110億円

159.4%

※HEMSはEMSの内数、市場データは四捨五入している

HEMS(Home Energy Management System)は家庭内のエネルギーの見える化や設備機器の制御などを行うエネルギーマネジメントシステムを対象とする。

HEMSは、脱炭素化やZEH化の促進の影響を受け、太陽光発電システム(PV)の発電量見える化などを目的とした導入が多い。最近では住宅大手ハウスメーカーが提供する新築戸建住宅におけるPV搭載比率の上昇に伴いHEMS搭載も増えている。

2022年度は人件費や部材費の高騰が続いているため、HEMSの搭載率が低下しているハウスメーカーもみられる。一方で、電力価格高騰などの影響を受け、一部では自家消費用途でのPVの販売が好調なため、ハウスメーカーによっては付帯設備としてHEMSの採用割合を増やすケースもみられる。サービスは、HEMSメーカーやハウスメーカーが無償でコンテンツサービスを展開していることが多く、有償でのサービス展開は限定的である。システムとサービスを合わせたHEMS市場は2021年度比7.2%増の74億円が見込まれる。

長期的には新築着工戸数の減少が予想されるが、ZEH基準の厳格化などによって、基準に即した対応が進み、HEMSの搭載率が上昇すると予想される。また、PVの設置義務化が東京都以外でも検討されており、PV設置台数が増えればHEMSの導入も進むとみられる。サービスは、コンテンツの拡充による多様化で、有償サービスの展開が緩やかに増えると予想される。

【BEMS】

 

2022年度見込

2021年度比

2035年度予測

2021年度比

システム

613億円

108.5%

830億円

146.9%

サービス

112億円

100.9%

232億円

2.1倍

合 計

725億円

107.2%

1,062億円

157.1%

※BEMSはEMSの内数

BEMS(Building Energy Management System)は業務・産業施設の空調設備、照明設備、OA設備など一般的な負荷設備のエネルギー見える化や最適制御を行うエネルギーマネジメントシステムを対象とする。具体的にはBAS(Building Automation System)とエネルギー監視特化型システムを対象とする。

大規模施設で採用されるBASは、部材供給不足は依然として続いているものの、首都圏の大規模再開発案件における新設・建て替え案件での底堅い需要や前年度の受注案件の納入が順次行われており、安定した市場となっている。中長期的には、大半を占める大規模施設での採用は新設、既設更新ともに減少していくものとみられる。一方で、人手不足に伴う建物管理の省力化ニーズの高まりにより、多拠点統合管理用途や中小規模施設においてクラウドをベースとしたシステムの普及が進むと予想される。

中小規模施設に採用されるエネルギー監視特化型システムでは、電力価格高騰に伴い、電力コスト削減対策として注目が高まったことや、脱炭素の取り組み推進の一環で導入が進んだ。将来的には、DR・VPPビジネスが本格的に立ち上がり、自動制御や分散型電源の融通に対応した高機能な製品の普及が進むと予想される。

サービスは、直近では保守管理やデマンド監視による電力コスト削減を目的とした採用が多いが、今後は脱炭素の取り組みとしての企業活動全体でのエネルギー管理ニーズが高まると予想される。

◆注目市場

●V2X(自動車用充放電器)

2022年度見込

2021年度比

2035年度予測

2021年度比

43億円

148.3%

465億円

16.0倍

電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド自動車(PHV)などの搭載蓄電システムから、建物や電力系統(逆潮流)に対して電力供給を行うための設備である自動車用充放電器を対象とし、採用施設に応じて、V2H(Vehicle to Home:住宅向け)、V2B(Vehicle to Building:業務施設向け)、V2G(Vehicle to Grid:電力系統供給向け)に分類されるが、それらを総称してV2X(Vehicle to X)とする。

V2Hでの導入が中心であり、スマートハウスなど高付加価値住宅のオプション設備や、環境・防災意識の高い層で導入が進んでいる。2018年度以降、大規模自然災害の発生に伴うBCP対策用途や卒FITユーザーによる自家消費用途、各種補助金制度の整備などを背景として、市場は拡大している。

2022年度は、比較的安価な軽EVのラインアップが拡充したことから、EVの普及に合わせてV2Hのニーズが増加している。また、国の補助金制度の利用条件が一部緩和されたことから、補助の対象者が広がり、V2Hの購入希望者が増加している。さらに、東京都や神奈川県など、一部自治体では独自のV2H用補助金制度が設けられており、国の補助金制度と併用できるため、需要の増加し、市場は2021年度比48.3%増の43億円が見込まれる。

今後は、EV本体の給電性能の強化などによりV2H導入のメリットが薄れる懸念はあるが、引き続きPV自家消費用途やBCP対策用途のニーズが増加するほか、部材不足による納期遅れの解消や新規メーカーの参入などによって、2035年度の市場は2021年度比16.0倍の465億円が予測される。

●コージェネレーションシステム

 

2022年度見込

2021年度比

2035年度予測

2021年度比

CGS

270億円

117.4%

380億円

165.2%

燃料電池

406億円

114.7%

3,210億円

9.1倍

合 計

676億円

115.8%

3,590億円

6.1倍

エンジンなどの内燃機関を持つ設備・システムを「CGS(Co-Generation System)」、化学反応によって電気・熱を生み出す仕組みを利用した設備・システムを「燃料電池」として対象とする。

CGSは、化学、鉄鋼など熱需要の多い製造業や非常時のエネルギー供給が必要な病院や介護施設を中心に採用されている。2021年度は部品調達不足によりメーカーの生産が減少したが、2022年度は生産稼働率が回復しており、納品も進んでいる。また、「災害時の強靱性向上に資する天然ガス利用設備導入支援事業費補助金」「先進的省エネルギー投資促進支援事業費補助金」など、経済産業省を中心に導入補助施策が継続的に実施されているほか、東京都環境局が「スマートエネルギーネットワーク構築事業」を展開するなど、国や地方自治体による支援施策の後押しもあり、災害時の自立運転などレジリエンスを目的としたCGSの導入が進むとみられ、今後も市場は拡大すると予想される。

燃料電池は、住宅での採用が中心である。大手都市ガス会社による販売が7割以上を占めることから、都市ガス向け製品の売れ行きに市場が左右される。なお、LPガス向けはイニシャルコストの高さから普及が進んでいない。中長期的には、地方都市ガスエリアとLPガスエリア向けの販売が増えるほか、今後は住宅用、業務・産業用ともに製品単価が下がることから普及が進むと予想される。

●見える化ツール

2022年度見込

2021年度比

2035年度予測

2021年度比

103億円

108.4%

160億円

168.4%

主に業務・産業施設で採用される電力計測機器やデータ収集機器、エネルギーの使用状況を可視化するための構成機器を「見える化ツール」として取り上げる。対象製品は単回路電力モニタ、多回路計測ユニット 、計測機能付ブレーカ、マルチ指示計器、データ収集サーバである。

2022年度は、半導体や電源などの電子部品の調達不安が続いており、長納期化や工事計画の見直しや延期の影響がみられ、数量ベースの伸びは鈍化している。しかし、前年度に引き続き製造業での旺盛な需要に加えて、首都圏を中心とした大規模のビル開発案件でのEMSや受配電盤の組み込み需要が堅調である。加えて、主要メーカーによる製品の価格改定が相次いでおり、製品単価の上昇により、市場は2021年度比8.4%増の103億円が見込まれる。

今後は、脱炭素経営のグローバルスタンダード化によって、中小企業の採用が広がっていくとみられる。中長期的には人口減少などによる法人および業務・産業施設のストック減少が予想されるが、少子高齢化による労働力不足などから、エネルギーデータや電力諸量の遠隔監視によるエネルギー管理や設備管理の省力化システムのニーズも高まり、EMSの普及率上昇が期待されることから2035年度の市場は2021年度比68.4%増の160億円が予測される。

●直流給電システム

2022年度見込

2021年度比

2035年度予測

2021年度比

8億円

100.0%

24億円

3.0倍

建物内の電力負荷設備への電力供給を直流で行うシステムであり、直流電圧が300V~400Vのシステムを対象とする。系統網からの電力供給ネットワークは交流をベースに構築されており、建物内への電力供給も交流が一般的である。しかし、建物内のICT機器やLED照明、家電などの負荷設備による作動電力は直流で、普及が進んでいる太陽光発電システムや蓄電システムなどの分散型電源も同様に直流方式である。そのため、直流給電システムは電力供給における電力変換(直流/交流)の回数を減らすことで高効率化を図るために採用されている。

2021年度に環境省はエネルギーロスの低減および災害時における自立運転を両立するシステムを構築することを目的に「平時の省CO2と災害時避難施設を両立する直流による建物間融通支援事業」を開始した。PVや蓄電システムなどの直流電源を利用する場合、直流給電システムを採用することで電力変換回数を低減でき、必要な電流量が減ることでケーブルの細径化が可能となるため、設置コストの削減や設計自由度の向上が期待できることにより、今後も取り組みが続いていくと想定される。

中長期的には、ZEB化が進められる中で、ビルや業務施設などでのPVの導入増加に加えて、直流給電に対応した負荷設備が拡充されることにより、市場は大幅に拡大すると予想される。

◆調査対象

需要家EMS市場編

・HEMS(住宅向け)

・BEMS(ビル/業務施設向け)

・FEMS(産業施設向け)

・MEMS(マンション/集合住宅向け)

・REMS(店舗/商業施設向け)

 

エネルギープラットフォーム市場編

・CEMS

・CO2排出量管理プラットフォーム

・DR・VPPプラットフォーム

・電力取引プラットフォーム

関連設備市場編

発電・蓄電分野

 

 

・需要家用蓄電システム

・ハイブリッドパワーコンディショナ

・発電所併設蓄電システム

・V2X

・コージェネレーションシステム

・蓄電池制御システム

送配電・受電分野

 

 

・見える化ツール

・系統用蓄電システム

・直流給電システム

・分電盤

・ガス絶縁開閉装置

・マルチリレー/IED

・キュービクル式高圧受電設備/スイッチギヤ

・配電用変圧器

・ガススマートメーター

・絶縁監視装置

・水道スマートメーター

・電力スマートメーター

・自動検針システム

・高圧一括受電サービス


2023/12/04
上記の内容は弊社独自調査の結果に基づきます。 また、内容は予告なく変更される場合があります。 上記レポートのご購入および内容に関するご質問はお問い合わせフォームをご利用ください、 報道関係者の方は富士経済グループ本社 広報部(TEL 03-3241-3473)までご連絡をお願いいたします。