PRESSRELEASE プレスリリース
■コネクテッドカーの新車販売台数 9,230万台(2.0倍)
…自動車メーカーなどによるCASE関連投資の活発化が続き、乗用車がけん引し市場拡大
◆V2X車載器(C-V2X) 4,870万台 (97.4倍)
…中国で標準装備化が進むほか、米国ではDSRCからのシフトが進む
◆EV用充電決済サービス 2,273万基(9.6倍)
…EV用充電器の効率的な運用による稼働率改善が期待され拡大
総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 社長 菊地 弘幸 03-3241-3470)は、高度な自動運転社会の実現に向けて不可欠な外部ネットワークへの安定した常時接続を目指し、V2Xをはじめとする技術などの進展が注目されるコネクテッドカー関連の世界市場を調査した。この結果を「コネクテッドカー・V2X・自動運転関連市場の将来展望 2023」にまとめた。
この調査では、コネクテッドカーのエリア別市場に加えて、コネクテッドカー関連サービス11品目、コネクテッドカー関連機器・システム9品目、コネクテッドカー関連デバイス3品目、V2X関連機器・インフラ3品目、ADAS・自動運転関連・技術6品目の現状を調査し、将来を予想した。また、主要自動車メーカーのコネクテッドカー戦略についても整理した。
◆調査結果の概要
●コネクテッドカーの新車販売台数(乗用車・商用車)
乗用車、商用車を合わせたコネクテッドカーの新車販売台数は、2023年は依然半導体不足の問題は残るものの、後半には市況回復が予想され、前年比11.6%増の5,080万台が見込まれる。今後も自動車メーカーやTier1によるCASE関連投資が引き続き活発になるとみられ、2035年の市場は9,230万台に拡大すると予想される。
車種別では、乗用車のコネクテッドカーが市場をけん引するとみられる。乗用車販売台数のうちコネクテッドカー比率は、2022年の58.0%から2025年に約69.2%、2035年には85.4%に上昇すると予想される。商用車でも、大型商用車メーカーの製品開発や発売が活発化しており、コネクテッドカー比率は高まるとみられる。商用車販売台数に占めるコネクテッドカー比率は2025年頃には60%を超え、2035年には86.2%に上昇すると予想される。
コネクテッドカーの通信形態は車載セルラー、車載DSRC(Dedicated Short Range Communications)、モバイル連携があり、複数の通信形態を採用するケースもみられる。中でも、車両側にセルラー通信モジュールを装備する車載セルラーが増加しており、2023年でコネクテッドカー販売台数の86.2%に車載セルラーが採用されると見込まれる。自動車分野において5G通信の主流化が進むとみられ、2035年には車載セルラーの採用率は90%近くまで上昇すると予想される。
車載DSRCは、V2X(車車間・車路間無線通信)で欧州を中心に商用化が進んでいる。しかし、中国はセルラー通信の全面採用を打ち出しており、また、DSRCによるV2Xの法制化に取り組んできた米国でも2020年以降、C-V2Xシフトの動きが鮮明となっている。そのため、DSRCは、欧州などを中心に限定的な普及にとどまるとみられる。
スマートフォンを用いるモバイル連携のコネクテッドカーは、自動車メーカーのテレマティクスサービスの拡充や「CarPlay」や「Android Auto」などサードパーティプラットフォームの普及により、市場拡大している。常時接続が可能な車載セルラーの採用が拡大しているが、時代のトレンドに応じたコネクテッドカーサービスやユーザビリティを提供できるモバイル連携へのニーズは高く、長期的には採用増加が続くと予想される。
◆注目市場
●V2X車載器(搭載新車台数)
|
2023年見込 |
2022年比 |
2035年予測 |
2022年比 |
DSRC |
41万台 |
136.7% |
500万台 |
16.7倍 |
C-V2X |
160万台 |
3.2倍 |
4,870万台 |
97.4倍 |
V2Xは、自動車間(V2V)や自動車と信号機などのインフラ間(V2I)において相互通信を行い、車両を制御することで事故発生を抑制する無線通信システムである。無線通信技術としては、DSRCとC-V2X(Cellular Vehicle to Everything)通信に大別される。
【DSRC】
日本は、「ITS Connect」(760MHz帯)が実用化され、DSRC対応車載器の搭載車両が発売されているが、販売台数は少数にとどまっている。C-V2Xの実用化に時間を要するため、当面は「ITS Connect」専用車載器の継続的な需要が予想されるが、中長期的にはC-V2Xとのハイブリッド型車載器を搭載した車両が発売される可能性もある。
海外では、欧州がDSRCの主要市場となっており、今後もその傾向が続くとみられる。VWがDSRC対応V2Xの採用を新型EVシリーズでも進めており、2023年以降は他欧州自動車メーカーの市場投入開始が期待される。
北米は乗用車ではDSRC対応の搭載増加は見込みにくい状況にあるが、今後はトラックなど大型商用車でDSRC技術が採用される可能性がある。
【C-V2X】
先行する中国では、2020年末からBYDやGM、FordなどがC-V2X車載器搭載車両の販売を開始し、市場が立ち上がっている。高級車への搭載が中心であり、市場は小規模にとどまっているが、国家方針「車両インターネット(IoV)産業発展行動計画」では、2025年に新車販売の半数にV2X技術を搭載し、2030年には標準装備化する計画であるため、市場は大幅に拡大すると予想される。
米国では、FCC(連邦通信委員会)が5.9GHz帯域幅の大部分をC-V2Xへの再割り当てを決定した2020年11月以降、DSRCからC-V2Xへのシフトが鮮明になり、将来的には中国に次ぐ規模になると予想される。
欧州では、2025年予定のEuro NCAP対応以降、高級車を中心に自動運転技術を採用したNR対応C-V2X車載器の搭載が開始され、5G対応が標準となる2030年以降に市場拡大が本格化すると予想される。
日本は、C-V2X導入に向けた議論や実証実験が開始されているが、海外で主流のC-V2X周波数帯(5.9GHz帯)が放送用に使用されているため、今後、放送事業体との調整や電波法などの法規制、電波干渉などの技術的問題など課題が多く、市場形成には時間を要するとみられる。
●EV用充電決済サービス(連携稼働充電器数)
2023年見込 |
2022年比 |
2035年予測 |
2022年比 |
304万基 |
128.3% |
2,273万基 |
9.6倍 |
EV用充電決済サービス、および決済プラットフォームに連携したEV用充電器を対象とする。このサービスを導入することにより効率的な運用が可能になり、EV用充電器の稼働率改善につながると期待されており、市場は拡大している。なお、一般開放されている駐車場や商業施設に設置されたEV用充電器向けのほか、マンション駐車場や半閉鎖環境に設置されたEV用充電器向けも対象とした。
日本では、2022年末時点のEV充電決済サービス対応率は、普通充電器では60%程度、急速充電器でおよそ99%となっている。マンション駐車場や月極駐車場などの普通充電器の設置が増加しており、サービス導入によるEV用充電器の効率的な運用が期待される。
北米では、商業施設や公営駐車場での普通充電器の設置が多く、今後はEVの普及に伴い、利便性向上を目的として充電決済サービスの対応率の上昇が予想される。
欧州では、集合住宅が多い国が多く、普通充電器における充電決済サービスの対応率は50%台である。今後はさらに対応率が高まるとみられる。
中国では、共有地における充電器設置が主流となっており、EV充電決済サービスの対応率が高く、EV普及に進んでいることから、市場拡大が予想される。
●車載OS(搭載新車台数)
2023年見込 |
2022年比 |
2035年予測 |
2022年比 |
110万台 |
123.6% |
3,940万台 |
44.3倍 |
統合ECU用として採用される車載OS(Operating System)を対象とする。
2018年から搭載が開始され、主要自動車メーカーが搭載に向けた開発を推進しており、2023年から2024年にかけて統合ECU用車載OSを搭載した車種が複数発売されるとみられる。
統合ECUは、世界的に推進されているEVへのシフトを背景に、各国の自動車メーカーで採用増加が予想される。それに伴い、EV市場でのシェア拡大を狙う欧州、新興勢力の多い北米や中国を中心に車載OSの搭載が増加するとみられ、OTA(Over The Air)やSDV(ソフトウェア定義車両)などの進展により、市場は大幅に拡大すると予想される。
◆調査対象
コネクテッドカー関連 サービス |
・自動車向けデータ通信 |
・リモート故障診断/OBD |
・テレマティクス(OEテレマティクス) |
・OTAソリューション |
|
・フリートテレマティクス |
・車載eコマース |
|
・テレマティクス自動車保険 |
・EV用充電決済サービス |
|
・緊急通報(eCall/bCall) |
・EV用蓄電池劣化診断・状態監視 |
|
・盗難車両追跡(SVT/SVR) |
|
|
コネクテッドカー関連 機器・システム |
・カーナビゲーション/IVI |
・音声認識インターフェース |
・ディスプレイオーディオ(DA) |
・ジェスチャーインターフェース |
|
・2D地図 |
・ドライバーモニターシステム |
|
・テレマティクスコントロールユニット(TCU) |
・ドライブレコーダー |
|
・車載OS |
|
|
コネクテッドカー関連 デバイス |
・車載通信モジュール |
・車載GPS/GNSS |
・車載近距離無線技術 |
|
|
V2X関連機器・ インフラ |
・V2X車載器(DSRC) |
・V2X路側機(RSU) |
・V2X車載器(C-V2X) |
|
|
ADAS・ 自動運転関連・技術 |
・車載カメラ |
・ダイナミックマップ(3D地図) |
・ミリ波レーダ |
・自動駐車システム(リモートパーキング) |
|
・LiDAR |
・バックアップ電源 |