PRESSRELEASE プレスリリース
■印刷インキの世界市場 346万トン(6.5%増)
~インクジェットインキの伸長、グラビアインキやフレキソインキの堅調な需要により拡大~
●バイオマスインキの国内市場 10万トン(2.0倍)
~石化由来インキからの切り替えが進み、市場は大きく拡大~
総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 社長 菊地 弘幸 03-3241-3470)は、環境保護意識の高まりから、バイオマスなど環境に配慮した製品の採用が増加している印刷インキの世界市場を調査した。その結果を「環境対応が進む印刷インキ関連市場の全貌 2023」にまとめた。
この調査では、印刷インキの市場を調査し、印刷方式別、用途別、種類別に分類・分析し、今後の方向性を多角的に捉えた。また、環境対応型インキ2品目、印刷機8品目、印刷資材・インキ原料5品目の動向も明らかにした。なお、一部の品目は国内市場のみ算出した。
◆調査結果の概要
●印刷インキの世界市場【印刷方式別】
|
2023年見込 |
2022年比 |
2027年予測 |
2022年比 |
オフセットインキ |
119万トン |
99.2% |
112万トン |
93.3% |
グラビアインキ |
118万トン |
103.5% |
128万トン |
112.2% |
フレキソインキ |
72万トン |
102.9% |
77万トン |
110.0% |
スクリーンインキ |
6万トン |
100.0% |
6万トン |
100.0% |
インクジェットインキ |
16万トン |
106.7% |
23万トン |
153.3% |
合 計 |
330万トン |
101.5% |
346万トン |
106.5% |
※市場データは四捨五入している
※インクジェットインキは印刷機メーカー出荷ベース
先進国を中心とした情報のデジタル化を背景に、商業印刷や出版印刷、新聞印刷など紙媒体の印刷需要は減少している一方、食品や飲料、日用品、医薬品など日常生活に用いられるパッケージ印刷の需要は増加している。また、環境保護意識の高まりから欧米を中心に容器包装で脱プラスチック化の動きがみられ、代替素材である紙や金属に適したインキのニーズが高まっている。今後、紙媒体で使用されるオフセットインキは低迷するものの、パッケージ用でインクジェットインキの伸長やグラビアインキやフレキソインキの堅調な需要により市場拡大が続くとみられ、2027年には2022年比6.5%増の346万トンが予測される。
オフセットインキは、紙媒体の印刷需要が減少していることから、今後縮小が予想される。一方、新興国を中心とした人口増加や経済成長を背景としたパッケージ印刷の需要増加に伴い、紙器印刷や金属加飾印刷向けは伸長するとみられる。
グラビアインキは、主に食品や日用品、化粧品、医薬品などの軟包装印刷に使用され、軟包装用途が約8割を占める。日本を含むアジア地域が市場をけん引しており、特にインドネシアやベトナム、インドなどで、人口増加を背景に需要が増加している。
フレキソインキは、段ボールや軟包装向けを中心に需要が安定している。欧州では厳格な環境規制により容器包装の紙化が進んでいることから、印刷適性の高いフレキソインキのニーズが高まっている。北米と欧州の需要が大きく、欧州ではパッケージ分野の約6割がフレキソ印刷である。
スクリーンインキは、自動車(スピードメータ、ディスプレイなど)や家電、タッチパネルなどの工業加飾印刷が主用途である。今後も市場は横ばいで推移するとみられる。
インクジェットインキは、商業・産業用インクジェット印刷機で使用される。インクジェット印刷は印刷版不要、小ロット多品種対応、1枚1枚異なる文字や画像などを印刷するバリアブル印刷が可能であることが特徴で、余剰在庫の削減や洗浄廃水の低減を目的に、特に環境規制の厳格な欧米を中心に採用が増加している。また、小ロット多品種の印刷需要の増加に伴い、商業・出版印刷ではオフセットインキ、軟包装や紙器、段ボール向けなどではグラビアインキやフレキソインキ、それ以外の用途では主にスクリーンインキから需要を取り込んでおり、2027年の市場は2022年比53.3%増の23万トンが予測される。
◆注目市場
●バイオマスインキの国内市場
2023年見込 |
2022年比 |
2027年予測 |
2022年比 |
6万トン |
120.0% |
10万トン |
2.0倍 |
原料に綿や木材、植物の種などの生物由来の素材を一定以上使用したグラビアインキおよびフレキソインキを対象とする。
バイオマスインキは、石化由来インキと比較して価格が1~2割上昇することに加え、原料の制約のためベタ濃度や諧調表現といった印刷特性、色の再現性は劣るなどの課題がある。しかし、再生可能な生物由来の有機性資源を利用しているため、資源の有効活用ができる環境効果を一般消費者に訴求できることが特徴であり、環境保護意識の高まりと共に、2017年頃より大手小売業を中心に食品パッケージにおいて石化由来インキから切り替える動きが始まっている。徐々にニーズは高まっており、食品軟包装を中心に、化粧品パッケージでも採用が増加している。今後も石化由来インキからの切り替えがさらに進むとみられ、市場は大きく拡大する。
●水性インキの世界市場【種類別】
2023年見込 |
2022年比 |
2027年予測 |
2022年比 |
46万トン |
104.5% |
54万トン |
122.7% |
水性インキは、溶媒において有機溶剤の代わりに水の含有率を高めたインキで、主に段ボールや紙器、建材、軟包装の印刷に使用される。有機溶剤は最終的に燃えて二酸化炭素を発生させるが、水は二酸化炭素を発生させないことから、環境負荷の低減を目的にニーズが高まっている。フレキソ印刷を中心に、グラビアやインクジェット印刷でも使用される。
現状、段ボール用途で水性フレキソインキが広く使用されている。世界的な人口、物流増加に伴い、食品・飲料や電子機器、ECなどあらゆる産業において段ボール需要が増加しており、市場は拡大している。今後伸びが期待されるのは食品パッケージ用途である。環境に優しい印刷方式として軟包装印刷で採用されるほか、脱プラスチックに伴い紙パッケージ化が注目されていることから、需要が増加するとみられる。
●軟包装用インキの世界市場【用途別】
2023年見込 |
2022年比 |
2027年予測 |
2022年比 |
117万トン |
102.6% |
129万トン |
113.2% |
食品や日用品、医薬品などではプラスチックフィルムの軟包装が使用されている。ここでは軟包装印刷で用いられるグラビアインキおよびフレキソインキを対象とする。日本をはじめとするアジア地域では、軟包装印刷の約8割でグラビア印刷が採用されている。フレキソ印刷は欧米が主流であり、欧州では、軟包装印刷における約6割、米国では約8割でフレキソ印刷が採用されている。
軟包装は食品包装を中心に、日用品や化粧品、医薬品包装などに使用されており、日本や北米、欧州は市場が成熟しているものの、その他アジア・パシフィック地域では、東南アジアや南アジアなどの人口増加や経済成長を背景にニーズが高まっている。大手インキメーカー各社がそれらの地域で生産能力の増強を行っていることから、今後市場をけん引していくとみられる。2027年には2022年比13.2%増の129万トンが予測される。
◆調査対象
インキ |
方式別 |
・オフセットインキ |
・フレキソインキ |
・インクジェットインキ |
・グラビアインキ |
・スクリーンインキ |
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用途別 |
・軟包装用インキ |
・金属加飾用インキ |
・紙おむつ用インキ |
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・紙パッケージ用インキ |
・シール・ラベル用インキ |
・建材用インキ |
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種類別 |
・水性インキ |
・UV硬化型インキ |
・EB硬化型インキ |
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環境対応型インキ |
・バイオマスインキ |
・リサイクル対応UV硬化型インキ |
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印刷機 |
・オフセット印刷機 |
・インクジェット印刷機 |
・インクジェット印刷機 |
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・グラビア印刷機 |
(サイン・ディスプレイ用) |
(テキスタイル用) |
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・フレキソ印刷機 |
・インクジェット印刷機 |
・インクジェット印刷機 |
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・スクリーン印刷機 |
(シール・ラベル用) |
(軟包装用) |
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印刷資材・インキ原料 |
・オフセット印刷版 |
・フレキソ印刷版(液状) |
・印刷表面用ニス |
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・フレキソ印刷版(固体状) |
・インキ用樹脂 |
※網掛けの品目は国内市場のみ算出している