PRESSRELEASE プレスリリース
●燃料電池車(FCV) 10兆8,580億円(130.3倍)
燃料電池や燃料電池システムの普及でコストが低下するほか、水素ステーションの増加で市場拡大
■燃料電池システムの世界市場 18兆2,320億円(45.2倍)
燃料電池の優位性を生かし、トラック・バスへの普及が大きく進む
総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 社長 菊地 弘幸 03-3241-3470)はカーボンニュートラル実現に向けて、商用車への普及や船舶、鉄道、航空機などへの展開がみられる燃料電池の関連の世界市場を調査した。その結果を「2023年版 燃料電池関連技術・市場の将来展望」にまとめた。
この調査では、8品目の燃料電池システム市場を用途別、エリア別、タイプ別に捉えたほか、PEFC、SOFCのスタックや関連部品8品目についても現状を把握し、将来予想した。
◆注目世界市場
●燃料電池車(FCV)
|
|
2023年度見込 |
2022年度比 |
2040年度予測 |
2022年度比 |
全体 |
|
859億円 |
103.1% |
10兆8,580億円 |
130.3倍 |
|
日本 |
51億円 |
196.2% |
1兆3,870億円 |
533.5倍 |
|
アジア |
620億円 |
101.0% |
4兆 870億円 |
66.6倍 |
※日本、アジアは全体の内数
燃料電池システム(燃料電池スタック、モーター、高圧水素タンクなど)を駆動用に使用する乗用車(タクシーを含む)を対象とする。
2023年度の市場は、中国や韓国を含むアジアの需要が中心となり、859億円が見込まれる。日本は前年度に落ち込んだ反動もあり、大きく伸びるとみられる。
短期的には、水素ステーションの普及がポイントである。水素ステーションの建築規制の見直しに加え、燃料電池車に先行して燃料電池トラック・バスなどが普及し、水素ステーションの整備が進むことにより、燃料電池車の伸びを後押しすることが期待される。
今後は、自動車メーカーが製造する燃料電池モジュールを他の自動車や船舶、航空機メーカーなどへ販売する動きが活発化し、燃料電池車の製造コストは低下するとみられる。また、水素ステーション設置補助の充実や燃料電池トラック・バスの増加に伴う水素充填インフラの拡充が期待され、2040年度に向けて市場は拡大が予想される。
●燃料電池トラック・バス
|
|
2023年度見込 |
2022年度比 |
2040年度予測 |
2022年度比 |
全体 |
|
1,419億円 |
171.4% |
2兆8,289億円 |
34.2倍 |
|
日本 |
36億円 |
144.0% |
1,120億円 |
44.8倍 |
|
北米 |
58億円 |
138.1% |
4,060億円 |
96.7倍 |
※日本、北米は全体の内数
トラックやバスなどの駆動用に使用される燃料電池システムを対象とする。トラック・バスは水素需要量が多く走行ルートが決まっているため普及が進むつつあり、水素ステーションの整備増加に繋がっている。
燃料電池の搭載車は、当初は乗用車の開発や販売が中心であったが、EVと比較して航続距離の長さや水素充填時間の短さなどの利点が注目されて、トラックやバスについても開発が活発化してきた。2023年度の市場は2022年度比71.4%増が見込まれる。ただし、車両や燃料価格の高さ、水素ステーションの整備不足など、現状の規制や補助では物流事業者を始めとするユーザー企業の負担が大きい点が課題である。
今後は、北米で実施されているようなディーゼル車両の規制や、ユーザーへのインセンティブ強化など官民一体となった施策を背景に市場が拡大するとみられる。また、2020年代後半からは大型の燃料電池トラック・バスの量産が本格化することで、2040年度の市場は2022年度比34.2倍が予測される。
◆調査結果の概要
●燃料電池システムの世界市場
2023年度見込 |
2022年度比 |
2040年度予測 |
2022年度比 |
5,046億円 |
125.1% |
18兆2,320億円 |
45.2倍 |
2023年度の燃料電池システムの世界市場は、燃料電池車と燃料電池トラック・バスに加え、商業施設の発電設備や発電事業者の充電設備などに導入される産業・業務用燃料電池で80%以上を占め、前年度比25.1%増の5,046億円が見込まれる。特に、燃料電池トラック・バスは欧州・中国を中心に大きく伸びている。
今後は、航続可能距離の長さや水素充填時間の短さといった燃料電池の優位性を生かし、大型・長距離走行車両への普及が進むとみられ、2025年度から2030年度にかけて燃料電池トラック・バスの市場規模が最も大きくなると予想される。2030年度以降は、燃料電池車や燃料電池トラック・バスの普及を通じて燃料電池スタックのコストダウンが実現するほか、自動車メーカーによる積極的な燃料電池モジュールの販売や船舶、ドローンでの採用など用途の多様化が予想され、2040年度の市場は2022年度比45.2倍が予測される。
●燃料電池スタックの世界市場
|
2023年度見込 |
2022年度比 |
2040年度予測 |
2022年度比 |
PEFC |
390億円 |
148.9% |
3兆5,608億円 |
135.9倍 |
SOFC |
341億円 |
109.6% |
711億円 |
2.3倍 |
合 計 |
731億円 |
127.6% |
3兆6,319億円 |
63.4倍 |
燃料電池スタックのうち、発電効率が高く作業温度が低く、軽量でコンパクトなPEFC(固体高分子形)と、高い発電効率かつ高価な白金触媒が不要なSOFC(固体酸化物形)を対象にした。
2023年度の燃料電池スタックの世界市場は、前年度比27.6%増の731億円が見込まれる。
PEFCは、燃料電池車や、フォークリフト、建設機械、農業機械といった産業用車両などモビリティで採用が進んでいる。中でも、燃料電池トラック・バスは大きく伸張しており、PEFC用途の半数を占める。日本や韓国自動車メーカーでは、燃料電池車以外の用途で外販を進めている。
今後は、燃料電池トラック・バスや燃料電池車の需要増加とともに製造コストの低減が進むとみられ、船舶や鉄道などその他モビリティへの普及などもあり、市場は拡大を続けると予想される。
SOFCは、産業・業務用燃料電池で多く採用されているものの、高止まりしているコストが普及の課題となっている。メーカーは代替材料の検討や生産委託による効率化、船舶やSOEC(固体酸化物系電解セル)などの様々な用途に対応する量産体制の構築によりコスト低減を図っている。
近年、600℃前後の低温作動やコストの低減、モビリティへの適用を目指したメタル支持型セルスタックの量産化に向けた開発も進められている。今後はコストが低下し、多様な用途での採用が進むとみられるため、2040年度に向けて市場は拡大するとみられる。
◆調査対象
燃料電池システム |
||
・燃料電池車(FCV) |
・燃料電池大型駆動用 |
・家庭用燃料電池 |
・燃料電池トラック・バス |
・燃料電池小型駆動用 |
・ポータブル/ |
・燃料電池産業用車両 |
・産業・業務用燃料電池 |
バックアップ用燃料電池 |
燃料電池スタック部品 |
||
PEFCスタック |
・電極材 |
・セパレータ |
・電解質 |
・GDL |
|
SOFCスタック |
・燃料極(アノード) |
・電解質 |
・空気極(カソード) |
・金属インターコネクタ |