PRESSRELEASE プレスリリース

第23135号

機能性コンパウンドの世界市場を調査
― 2027年市場予測(2022年比) ―
●PPSコンパウンド 18.2万トン (25.5%増)
xEVへのシフトにより自動車一台当たりの使用量が増え、伸長
●PA6コンパウンド 81.9万トン (5.7%増)
普及が広がるEVでは使用量が減少するため伸びが鈍化。用途開拓で需要獲得図る

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 社長 菊地 弘幸 03-3241-3470)は、フィラーや添加剤などの配合により樹脂の機能性を向上させた、自動車や電気電子など幅広い分野で使用される機能性コンパウンドの世界市場を調査した。その結果を「2024年 コンパウンド市場の展望とグローバルメーカー戦略 上巻」にまとめた。

この調査では、代表的な機能性コンパウンド19品目、フィラー・添加剤6品目の市場を分析し、将来を展望した。

◆注目市場

●PPSコンパウンド

2023年見込

2022年比

2027年予測

2022年比

14.5万トン

100.0%

18.2万トン

125.5%

PPS(ポリフェニレンサルファイド)は、耐熱性、機械的強度、耐クリープ性、寸法安定性、難燃性に優れるスーパーエンプラであり、ほかの樹脂と比較して高い割合でフィラーを配合できる。また、機能付与による物性低下が問題になりにくく、摺動、熱伝導、耐トラッキング、導電・帯電防止、電磁波防止などの特殊グレードが多数展開されている。用途としては自動車部品向けの比率が高く、xEVへのシフトにより、パワーコントロールユニット、パワー半導体周りの部品での採用が拡大している。

2023年の市場は、自動車部品メーカーの在庫調整に伴う買い控え、不動産不況による水回り部品の需要停滞などから、横ばいが予想される。ICEV(内燃自動車)よりも部品点数の多いHVやPHV、エンジン部品はないものの電装部品や冷却部品が増加するEVはPPSコンパウンドの使用量が多く、xEV化が進むことで使用量が増加していき、2027年の市場は18.2万トンが予測される。

日系自動車部品メーカーによる採用が中心であることから、エリア別では日本および日系自動車・自動車部品メーカーの進出先である中国、東南アジアでの需要が多い。また、PPA(ポリフタルアミド)の供給不足が懸念されたことから欧州系自動車・自動車部品メーカーがPPAからPPSへの代替を進めたことで、欧州での需要が増加している。

●PA6コンパウンド

2023年見込

2022年比

2027年予測

2022年比

76.5万トン

98.7%

81.9万トン

105.7%

PA6(ポリアミド6)は、耐熱性、機械的強度、耐薬品性、成形性に優れる汎用エンプラである。PA6レジンにガラス繊維を配合することで更なる耐熱性や機械的強度の向上が図られており、自動車部品向けを中心に伸びている。

2022年は半導体不足などに起因する自動車生産台数の伸び悩みとサプライチェーンでのPA6コンパウンド採用部品の在庫調整の影響により市場は大きく縮小した。2023年は上期まで在庫調整の影響が続いたが、下期には在庫が適正水準になってきたことから自動車分野での需要が回復に向かっており、市場の落ち込みは前年よりも小さくなるとみられる。

2024年以降は、自動車生産台数の増加に伴って市場は拡大していくとみられる。しかし、PA6コンパウンドはインテークマニホールド、シリンダーヘッドカバー、ラジエーター部品などのエンジン回りでの使用が多いことから、長期的にはEVシフトの進展により、市場の伸びは鈍化していくとみられる。そのため、EVやFCVで新規用途開拓、機能付与による他材料からの代替などによる需要の取り込みが進められるとみられる。

また、環境対応の観点から、CNF(セルロースナノファイバー)強化コンパウンドの開発が進められている。CNFを配合することで、粉砕したコンパウンド品を原料としたマテリアルリサイクル品でも、リサイクル前の製品と近い物性を維持できる点がメリットである。しかし、一般的なガラス繊維強化コンパウンドと比べて価格差が大きく、CNF強化コンパウンドの普及には大幅なコストダウンが求められている。

●PPコンパウンド

2023年見込

2022年比

2027年予測

2022年比

547.9万トン

105.5%

585.7万トン

112.8%

PP(ポリプロピレン)は最も汎用的に使用されている熱可塑性樹脂の一つである。

2023年は新型コロナウイルス感染症流行の影響が落ち着き半導体不足も解消したことで自動車生産台数が増加しており、市場は拡大するとみられる。2024年以降も、需要の9割以上を占める自動車の生産台数に左右される形で推移し、市場は緩やかに拡大していくと予想される。

用途別では、世界市場においては自動車外装部品向けの比率が高いが、日本市場では自動車内装部品向けの比率が高い。今後は、xEVの進展に伴い、バッテリーケースやエアクリーナーケース、ワイヤーハーネス周辺など電装部品での需要増加が期待される。

環境への意識の高まりとともに、汎用樹脂の中でも比較的流通量の多いPPで再資源化を図る企業が増えている。PPメーカーは資源の使用量の削減、再利用可能な製品の開発などを進めており、コンパウンドメーカーもマテリアルリサイクルコンパウンドなどに取り組んでいる。

●PA9Tコンパウンド

2023年見込

2022年比

2027年予測

2022年比

2.1万トン

105.0%

3.0万トン

150.0%

PA9Tは、耐熱性、耐薬品性、寸法精度、摺動性などに優れる吸水性の低いスーパーエンプラであり、主にガラス繊維、難燃剤を配合したグレードが展開されている。用途としてはコネクターなど電気電子部品向けが中心であるが、近年では自動車部品向けで需要が増加している。

2022年は民生機器の生産減少と自動車生産台数の伸び悩み、さらには各サプライチェーンにおいて在庫調整が行われたことで、市場は低迷した。2023年は自動車生産台数が増加し在庫が適正水準になってきたことから、市場の拡大が予想される。今後は北米、欧州、韓国などの自動車・自動車部品メーカーでの新規採用が期待されるほか、EVシフトを含めた自動車電装化の進展も需要を後押しし、2027年の市場は2022年比50.0%増が予測される。

エリア別では、コネクターやLEDリフレクターの生産が多いアジア地域が需要の大半を占めている。日本は全需要の2割程度を占め、自動車部品向けの比率が高くなっている。今後、北米や欧州の自動車・自動車部品メーカーによる採用が進むことで、北米や欧州での需要増加も期待される。

◆調査結果の概要

■機能性コンパウンドの世界市場

2023年見込

2022年比

2027年予測

2022年比

3,154万トン

102.6%

3,442万トン

111.9%

2022年は、世界的なインフレなどにより景気が停滞し、スーパーエンプラは伸びたものの、汎用樹脂や汎用エンプラが減少したことから、市場は縮小した。2023年は、景気の停滞感は残っているが、規模の大きい汎用樹脂が伸びたことで、市場は拡大が予想される。2024年以降は、高速通信やxEV化、自動車電装化などの進展によるコンパウンドの高付加価値化、新興国の経済成長に伴う需要増加により、高い成長が期待される。

エリア別では、家電製品やOA機器などの電気電子製品の生産工場が集積する中国の比率が高い。ただし、生産の一部を中国から東南アジア地域へ移管する動きもあり、汎用樹脂などでは、中国の占める比率は緩やかに減少していくとみられる。なお、汎用樹脂よりもコンパウンドに関連する技術力が要求される汎用エンプラ、スーパーエンプラでは、汎用樹脂と比較し中国の比率が低く、日本、北米、欧州の比率が高い。長期的には、中国でも汎用エンプラやスーパーエンプラの需要が増加し、中国の比率は高まっていくとみられる。

用途分野別では、自動車分野や電気電子分野での需要が多い。

自動車分野では大型部品のバンパーをはじめとした外装材や各種内装材、機構部品に使用されるPP、主にワイヤーハーネスの被覆材に使用されるPVC、エンプラではエンジンルーム周辺の大型部品に採用されるPA6、PA66、ワイヤーハーネスコネクターやECUケースなどに採用されるPBTの需要が多い。なお、グレード別では、強化繊維を採用したグレードの比率が2割以上を占める。また、難燃グレードの比率は低いものの、xEVの進展により、バッテリー周りを中心に採用が増加している。

電気電子分野では各種電線の被覆材などで使用されるPVC、家電やOA機器などに使用されるABS、エンプラでは、筐体材料として使用されるPCや電気特性に優れるPBTの需要が多い。なお、グレード別では、発火リスクの懸念から筐体や部品に対して難燃性が求められており、難燃グレードの比率が6割近くを占める。

■カテゴリー別機能性コンパウンドの世界市場

 

2023年見込

2022年比

2027年予測

2022年比

汎用樹脂コンパウンド

2,691万トン

103.3%

2,925万トン

112.2%

汎用エンプラコンパウンド

434万トン

98.9%

481万トン

109.6%

スーパーエンプラコンパウンド

29万トン

96.7%

36万トン

120.0%

合 計

3,154万トン

102.6%

3,442万トン

111.9%

【汎用樹脂コンパウンド】

汎用樹脂はエンプラほどの耐熱性、機械的強度はないが、加工がしやすく、単価が低いため販売量が多い。

世界的なインフレ、中国での不動産バブルの崩壊、政情不安の高まりなどを背景として需要が減退した2022年の反動で2023年の市場は拡大するとみられる。PVC、PEが電線ケーブル用などで安定的に成長しており、PPやABSは自動車部品向けを中心に小幅な伸びが予想される。2024年以降は自動車、家電製品などの電気器具向けを中心に拡大し、長期的には各国のインフラ投資が汎用樹脂の需要増加を促すとみられる。

【汎用エンプラコンパウンド】

汎用エンプラは、汎用樹脂を上回る耐熱性、機械的強度を備えた樹脂であり、混錬することでさらに物性向上、機能付与が可能となる。2022年から2023年にかけて、市場は電気電子製品などにおける生産低迷、在庫調整の影響により、m-PPEを除き需要減少が続いているものが多い。

2024年以降は、需要の回復により市場拡大が予想されるものの、汎用エンプラによる樹脂部品の薄肉化や金属部品の代替はほぼ済んでおり、今後の市場の伸びは緩やかになるとみられる。また、m-PPE、PBTなどはEVシフトの影響で車載電装品向けを中心に堅調な増加が期待される一方で、PAはエンジン周辺部品の減少により、伸びの鈍化が予想される。

【スーパーエンプラコンパウンド】

スーパーエンプラは樹脂としては最高クラスの耐熱性や機械的強度に加え、優れた耐薬品性や難燃性を備えていることもあり、物性の向上、欠点の改善を目的にコンパウンドが行われる。優れた物性に応じて製品単価も高い水準にある。

高速通信、xEV化、自動車電装化の進展などによって耐熱性、電気特性などに優れるスーパーエンプラの需要が増加したことで、2022年は市場拡大したが、2023年は電気電子部品や自動車部品の在庫調整の影響を受けて、市場は前年比微減が予想される。輸送機器部品を中心に金属やセラミックスといった他素材からの代替が進められており、2024年以降は、特に自動車での採用増加が進むPPS、PA9Tを中心に高い伸びが予想され、市場は大きく拡大するとみられる。

◆調査対象

汎用樹脂

コンパウンド

・PPコンパウンド

・PVCコンパウンド

・ABS

・PEコンパウンド

・PSコンパウンド

 

汎用エンプラ

コンパウンド

・PCコンパウンド

・PA6コンパウンド

・GF-PET

・m-PPE

・PA66コンパウンド

 

・POMコンパウンド

・PBTコンパウンド

 

スーパーエンプラ

コンパウンド

・PPSコンパウンド

・PA9Tコンパウンド

・溶融フッ素樹脂コンパウンド

・LCPコンパウンド

・PEEKコンパウンド

 

・PA6Tコンパウンド

・PTFEコンパウンド

 

フィラー・添加剤

・ガラス繊維

・セルロースファイバー

・リン系難燃剤

・炭素繊維

・臭素系難燃剤

・難燃助剤


2023/12/15
上記の内容は弊社独自調査の結果に基づきます。 また、内容は予告なく変更される場合があります。 上記レポートのご購入および内容に関するご質問はお問い合わせフォームをご利用ください、 報道関係者の方は富士経済グループ本社 広報部(TEL 03-3241-3473)までご連絡をお願いいたします。