PRESSRELEASE プレスリリース
●グリーンエネルギー 5兆1,634億円(13.2倍)
2050年度のカーボンニュートラル達成に向け、グリーン電力の普及が進む
総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 社長 菊地 弘幸 03-3241-3470)は、脱炭素化に向け様々な施策とサービス提供が進み、グリーン電力やカーボンニュートラルLNG/LPGなどの取り組みが活発化している電力・ガス市場を調査した。その結果を「電力・ガス/グリーンエネルギー市場・企業戦略総調査 2024」にまとめた。
この調査では、電力、ガスの小売市場に加え、エネルギーサービス6品目を分析した。また、燃料別の発電量についても現状を明らかにし、将来を展望した。
◆注目市場
●グリーンエネルギーの国内市場
グリーン電力、カーボンニュートラルLNG、カーボンニュートラルLPGの小売販売金額を対象とする。 RE100やESG投資を始めとする環境価値への意識向上や政策動向を背景に、グリーンエネルギーを提供する小売事業者が増加しており、2040年度のグリーンエネルギー市場は電力・ガス・LPGの販売額の18.6%を占める5兆1,634億円が予測される。
グリーン電力は、水力、太陽光、風力、地熱、バイオマスなどの再生可能エネルギーにより発電された電力である。2023年度は、旧一般電気事業者において環境意識の高い大口需要家からの引き合いが継続しており、販売量が増えているため市場拡大が予想される。一方、電力市況の悪化を背景に販促活動を控えたため、高圧以上の販売電力量が減少している新電力事業者が多くみられる。
「2050年カーボンニュートラル宣言」をはじめ、省エネ法の改正など政策動向やGXリーグの構想によって、環境意識が向上している。大手企業やグローバル企業を中心に2050年度のカーボンニュートラル達成に向けた脱炭素化への取り組みが増加するとみられ、今後は大幅な伸びが予想される。
カーボンニュートラルLNGは、大手ガス事業者に加え、中堅都市ガス事業者や大手電力事業者の参入が増加しており、取り扱いが増えているため市場が拡大している。ただし、カーボンニュートラルLNGは「地球温暖化対策の推進に関する法律」などの温室効果ガス削減量の対象としては認められず、需要家のメリットは環境対策の対外的PRのみに限られる。2030年度頃より水素とCO2からメタンを合成するメタネーションが実用化され、2040年度に向けてカーボンニュートラルLNGからの切り替えが予想されるため、伸びは緩やかになるとみられる。
カーボンニュートラルLPGは、2023年度は参入企業の販促活動を通じた認知度向上や環境意識の高まりなどを背景に市場は拡大した。
2026年度からカーボンプライシングの排出量取引制度が本格導入され、CO2の排出量を削減した分を市場で売買することができるようになるため、カーボンニュートラルLPGガスの導入障壁となっているコストの軽減に繋がる。これにより、低コストで企業の脱炭素活動PRが可能となることから、中長期的には市場拡大が予想される。
●ESP/オンサイトエネルギーサービス
エネルギーサービス事業者が需要家の施設内にユーティリティ設備の設置や運用、保守、エネルギー供給を行うサービスのうち、燃料調達も行うエネルギーサービスプロバイダー(ESP)事業と燃料調達は行わないオンサイトエネルギーサービス事業のストックベースの年間契約料を対象とする。太陽光発電PPAサービスは市場に含まない。
企業の設備投資が増加していることや脱炭素化への対応を背景に需要が増えている。CGS(ガスコジェネレーションシステム)の更新が多く、更新時にオンサイト契約の対象範囲を拡張するケースが契約単価向上に繋がっているため、2023年度の市場は2022年度比12.0%増の3,148億円が見込まれる。
今後も脱炭素化に向けた設備更新は活発化するため、2040年度の市場は2022年度比2.9倍が予測される。また、CO2算定・可視化サービスの導入増加に伴い、CO2排出量が把握しやすくなるため、CO2の削減手法を検討する需要家も増えると予想され、市場拡大に貢献するとみられる。
◆調査結果の概要
■電力小売市場
2023年度の市場は、ウクライナ侵攻を背景とした燃料価格高騰に伴う販売価格の上昇を受け拡大している。
2024年度ー2025年度は、世界情勢や燃料価格の動向が読みにくいことから、事前に発電事業者と年間の購入量と価格を決める相対契約や自社電源といったスタイルをとる新電力事業者の伸長が予想される。2026年度以降は、カタールの大規模LNGプロジェクトの取引開始で世界的にLNG余剰が発生することから電力販売価格の低下が予想され、電力利用が増えることから新電力の展開が活発化するとみられる。
■ガス小売市場
一般ガス導管事業者の小売供給分を対象とする。卸供給や自家消費分は含まない。また、LPGも対象外とする。
2023年度は暖冬などの影響で需要が落ち込んだ。中長期的には、電化が進むものの、熱需要の高い業種ではガスのニーズが高く、石油からガスへの需要シフトも予想され販売量は増加するとみられる。2025年度までは市場拡大が続くが、2026年度以降LNGの余剰発生によって販売価格が低下し、市場は停滞するとみられる。2030年度以降は水素/アンモニアの導入進展の可能性があるが、一方でメタネーションの普及やガス導管インフラの維持にかかる託送金の上昇で販売価格が上がるとみられ、2040年度に向けて市場は伸びが予想される。
◆調査対象
小売市場・電力小売
・ガス小売
グリーンエネルギー市場
・グリーン電力
・カーボンニュートラルLNG
・カーボンニュートラルLPG
エネルギーサービス
・電力BPOサービス
・オンサイトエネルギーサービス/ESP
・太陽光発電PPAサービス
・DRサービス
・CO2算定・可視化サービス
・脱炭素コンサルティングサービス
新電力企業戦略
・17社
旧一般電気・ガス企業戦略
・8社
エネルギーサービス企業戦略
・9社