PRESSRELEASE プレスリリース

第24029号

パブリッククラウドの国内市場を調査
― 2027 年度の国内市場予測(2022 年度比) ―
■パブリッククラウド 4 兆3,862 億円(85.6%増)
DX 実現に向けた新規システム/サービス基盤としてIaaS/PaaS が拡大
DX の推進や生成AI の登場で関連サービスが伸び、PaaS を後押し
●ガバメントクラウド 1,234 億円(44.1 倍)
2025 年度末までに、500 自治体がガバメントクラウドを活用
2023 年に国産ベンダーが条件付きで認定されるなど、今後のベンダー参入動向が注目される

マーケティング&コンサルテーションの株式会社富士キメラ総研(東京都中央区日本橋 社長 田中 一志 03-3241-3490)は、クラウドファーストの進展を背景に、オンプレミス環境からのクラウド環境への移行が活発化するなど利用増加が続き、今後は「SAP ERP 6.0」のサポート終了やメインフレームメーカーの事業撤退といった課題に対応しながら、拡大が予想されるパブリッククラウド市場を調査した。その結果を「2024 クラウドコンピューティングの現状と将来展望 市場編」にまとめた。

この調査では、「市場編」でSaaS、DaaS、PaaS、IaaS といったパブリッククラウド市場の現状を分析し、将来を展望した。また、「2024 クラウドコンピューティングの現状と将来展望 ベンダー戦略編」でクラウドベンダー30 社の動向を整理した。

◆調査結果の概要

■パブリッククラウドの国内市場(リソース提供)

パブリッククラウドの国内市場(リソース提供)

【SaaS】

市場は業種汎用型と業種特化型に大別され、汎用型はERP や財務管理、人材管理といった業務システム、CRM などのCX/デジタルマーケティング、グループウェアやテキストマイニングなどの情報分析、コラボレーションを対象とする。特化型は製造業における生産管理、運輸業における物流/倉庫管理といった特定の業種に特化して利用されるサービスと対象とする。 クラウド基盤を活用することにより低コストでIT 環境の整備が可能になることから、IaaS/PaaS 基盤上でのパッケージ製品の提供やSaaS 活用が進んでいる。2023 年度は法改正や顧客ニーズの多様化への対応、人手不足に伴う業務削減ニーズを背景にSaaS 活用が進んだ。

汎用型は、パッケージ製品ユーザーのSaaS 移行が進展しているほか、新規で業務システムを採用する場合はSaaS で展開されるケースが多い。電子帳簿保存法の改正やインボイス制度の導入などペーパーレスを推進する法 整備が進んでいることに伴い、SaaS の需要も高まっている。

特化型は、汎用型の活用が進んだことによりSaaS 活用のメリットが浸透し、市場拡大を後押ししている。労働人口の減少が問題視される中、人材不足をカバーするために大企業から中小企業まで採用が増加している。

【DaaS】

VDI(仮想デスクトップ)のうち、パブリッククラウド上に構築されたサービスを対象としている。 新型コロナウイルス感染症流行の収束を受けてオフィスへの回帰が見られる一方、オフィスとテレワークを組み合わせたハイブリッドワークを恒久的な就業形態とする企業が増加しているため、今後も需要増加が期待される。

近年はゼロトラストセキュリティの実現に向けた取り組みが加速していることも追い風となっている。国内におけるサイバー攻撃の増加/複雑化や就業環境の多様化により、従来の境界型セキュリティでは対策が不十分である。DaaSは他のゼロトラスト関連プロダクトと比較して、安価かつ短期間で導入可能であること、場所を問わずIT環境を統一できること、端末にデータを保存しないといった利点から、安心安全な就業環境の実現に向けた導入の拡大が期待される。中長期的にはデジタルワークプレイスを実現するツールとして需要が増加すると予想される。

【PaaS】

アプリケーションを稼働するためのプラットフォーム/ミドルウェアリソースを提供するサービスを対象とした。DX推進を背景としたデータ統合ニーズの拡大に伴って需要が増加しており、アプリケーション開発/実行/連携関連サービスとオンプレミス環境からの移行などが進展しているデータベース/データウェアハウス領域のサービスの伸びが市場をけん引している。

今後は人工知能や機械学習関連も注目の分野である。これまでも、カスタマーサポートのチャットボット構築などの自然言語処理から始まり、画像や音声の処理へと展開が進んできたが、生成AIの登場で市場はさらに活性化しており、AI技術活用ニーズの高まりに伴って今後大きく成長すると予想される。

【IaaS】

サーバーやストレージ、ネットワークなどのリソースを提供するサービスを対象とした。 市場は社内システムのクラウド移行や、大規模システムのインフラ用途で利用されるサーバーリソースが主体である。近年はDX実現に向けたビッグデータの分析やAI/機械学習用などでのGPUサーバーリソースの利用拡大も成長に寄与している。

近年は社内システムの移行において、クラウドネイティブなシステムの構築案件が増加しており、そのケースではIaaSではなくPaaSを活用する傾向にあるため、長期的には伸長率は穏やかになると予測される。

■SIの国内市場

SIの国内市場

2023年度は基幹系システムのリプレースやDX実現に向けたシステムの新規構築案件におけるアプリケーション開発といった需要が活発でパブリッククラウド関連が順調に伸び、SI市場は前年度比6.3%増が見込まれる。パブリッククラウドの利用増加もあり、2027年度には全体の50%近くがパブリッククラウド関連SIになるとみられる。

パブリッククラウド関連は総体的な拡大が予想されるが、ERPにおける「SAP S/4HANA」へのリプレースなどの大規模な刷新案件が増加していることから、特にコンサルティング/システム設計/開発の伸びが著しい。

従来型はソフトウェアでクラウドへの移行が顕著である。また、ミドルウェア/ハードウェアは、低スペックモデルはクラウド移行の進展により需要が減少しているが、高スペックモデルは生成AI関連の取り組みが活況なことからSI案件の増加が予想されるなど、従来型の中でも動きに違いがみられる。

◆注目市場

●ガバメントクラウド

ガバメントクラウド

中央省庁や地方自治体におけるクラウド上の行政システム用基盤で、主にインフラであるIaaS基盤と20業務標準化を推進するSaaSアプリケーションがある。2017年にデジタル・ガバメント推進方針が打ち出されて以降、採用に向けた動きが進んできた。

2022年度末時点で、ガバメントクラウドへ移行する自治体は50程度あり、2023年度末には100以上が移行を予定している。自治体システムの移行完了は2025年を目途としており、500程度が利用を開始するとみられ、2027年度の市場は1,234億円と予測される。

既にガバメントクラウド認定を受けている4社はいずれも外資系企業で、これまで国産ベンダーの参入が見られなかったが、2023年の公募では要件が緩和され、さくらインターネットが条件付きで認定された。ソブリンクラウド(他の国・地域の法令の影響を排除し、自国のデータ主権を担保したクラウドサービス)の観点から国産ベンダーの参入を求める声もあり、今後の動向が注目される。

◆調査対象

市場編・パブリッククラウド
・SaaS
・DaaS
・IaaS/PaaS

市場編・クラウドベンダーおよびパートナー
・主要企業6社

ベンダー戦略編・対象企業
・メガクラウドベンダー 3社
・システムインテグレーター 10社
・クラウドインテグレーター 9社
・外資系ベンダー 3社
・キャリア/サービスプロバイダー 5社


2024/3/21
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