PRESSRELEASE プレスリリース

第24036号

サスティナブル素材
再生プラスチックの国内市場を調査
― 2035年国内市場予測(2023年比) ―
■再生プラスチック 3,594億円(2.1倍)
技術開発のほか、種類ごとの分別回収の推進、識別マークの表示などの取り組みが重要に
MRプラスチックが中心も、2020年代中盤以降にCRプラスチックも大幅伸長

●サスティナブルPET 2,467億円 (2.1倍)
飲料メーカーがサスティナブルボトル化を進め、MRを中心に石油由来からシフト
使用済みPETボトルの回収・再利用のシステムが構築されていることも強み

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 社長 菊地 弘幸 03-3241-3470)は、石油由来プラスチックの使用量削減の機運が高まり、リサイクル技術の開発などが進展する中、サスティナブル素材として注目される再生プラスチックの国内市場を調査した。その結果を「2024年 循環型プラスチック・素材市場の新展望」にまとめた。

この調査では、マテリアルリサイクルプラスチック(MRプラスチック※1)5品目とケミカルリサイクルプラスチック(CRプラスチック※2)6品目の再生プラスチックに加え、バイオマスプラスチック6品目の循環型プラスチック素材と、循環型合成ゴム2品目、循環型ナフサ2品目など、サスティナブル素材の市場を分析し、減・脱プラスチック・素材の最新動向を捉えた。
※1:MRプラスチック
廃プラスチックの分子構造を保持したまま溶融・成形など加工を行いプラスチックの原料として再利用したもの
※2:CRプラスチック
廃プラスチックを油やガス、モノマーまで分解してから再度プラスチックの原料として再利用したもの

◆調査結果の概要

■再生プラスチック(MRプラスチック・CRプラスチック)の国内市場

再生プラスチックの国内市場

再生プラスチックの市場は2023年に1,727億円となった。市場の大半をMRプラスチックが占める。

日本政府が「プラスチック資源循環戦略」などに基づき、再生プラスチックやバイオマスプラスチックの普及を後押しする法整備や助成を行っており、メーカーによるサスティナブル素材の開発強化や展開商品の増加も進んでいる。また、ユーザー企業もGHG/CO2排出量削減・カーボンニュートラルやSDGs・ESGといった観点から再生プラスチックやバイオマスプラスチック採用の目標を設定し、導入検討や採用を増やしていることから、市場は今後も拡大を続け、2035年に2023年比2.1倍の3,594億円が予測される。

なお、再生プラスチックについては、原料の確保も課題であることから、メーカーによる技術開発のほか、原料となる廃プラスチックの種類ごとの分別回収の推進、ユーザー企業による素材の識別マークの表示、地産地消型の循環再利用システムの整備といった多方面での取り組みが必要になっている。

【MRプラスチック】

MR-PET、MR-PP・PE、MR-PS、MR-PC、MR-PAを対象とした。

原料は、一種類の廃プラスチックで構成され、排出源が明確・特定済みで、廃棄時点での性能・品質の低下が少なく、回収後の異物除去・洗浄が可能な廃プラスチックに限られる。そのため、市場をけん引しているのは使用済み飲料用PETボトルでリサイクルが進んでいるMR-PETである。飲料メーカーの再生プラ採用意欲は高く、水平リサイクルの体制整備が進むとともに、市場拡大が続くとみられる。

このほか、MR-PP・PEは廃PP・PEの安定調達という課題はあるものの、バージンPP・PEよりも安価なことや自動車部品や化粧品・日用品関連容器・包装の分野での水平リサイクルへの取り組みが増えていることから、堅調な伸びが予想され、2035年のMRプラの市場は2,941億円が予測される。

【CRプラスチック】

CR-PET、CR-PP・PE、CR-PS、CR-PA、CR-PMMA、CR-PCを対象とした。

廃プラスチックを原料まで戻し再重合するため、着色プラスチック製品や繊維を原料として使用可能で、性能・品質はバージンプラスチックと同等であることから、リサイクル性に優れている。

市場をけん引するのはCR-PETで、このほかCR-PA、CR-PSが商用化されており、2023年の市場は34億円となった。2025年前後にCR-PP・PE、CR-PMMAなどの供給が始まり、以降急速に市場が拡大し、2035年には2023年比19.2倍が予測される。

◆注目市場

●サスティナブルPETの国内市場

サスティナブルPET市場規模

プラスチックの中で、サスティナブル素材へのシフトが最も進んでいるのがPETである。使用済みPETボトルの回収・再利用システムが既に構築されていることに加え、飲料メーカーがサスティナブルボトル化を進める動きを加速させていることから、MR-PET、CR-PET、バイオマスPETともに市場拡大が予想され、2035年には2023年比2.1倍の2,467億円が予測される。

【MR-PET】

原料に使用できるのは、汚れがなく着色剤や添加剤などの混合が少ない、ほぼPETのみで構成される高品位品であり、具体的には使用済み飲料用無着色PETボトルを中心に、使用済み食品トレー、使用済み漁網、工場端材PETなどが挙げられる。

国内の飲料メーカーが使用済み飲料用PETボトルの水平リサイクルに注力していることから、既に1,000億円を超える市場規模がある。また、シートや繊維など幅広い用途での需要の高まりにより、需給ひっ迫により価格が高騰しているため、今後も市場拡大が予想される。なお、使用済み飲料用PETボトルを除くと、MR-PET原料となりうる使用済みPET製品の量が少ないことから、PETと異種材を分離する技術の向上も求められている。

【CR-PET】

MRでは原料にならなかった調味料などの非飲料用PETボトルや着色PETボトル、日用品・化粧品用PETボトル、トレー、ラベルなどの中品位品も原料として使用できる。また、MRは回数に限度があることから、将来的にはMR-PETも原料になるとみられる。

現状では、CR-PETの供給能力に限界があり、バージンPETやMR-PETよりも高価格なため、高付加価値・小ロット品など採用は限定されるが、これまでサーマルリカバリー(熱回収)されてきた大量の中品位廃PET製品が原料として活用できることから、今後は市場拡大していくとみられる。

【バイオマスPET】

PET原料はモノエチレングリコール(MEG)とテレフタル酸(TPA)であり、このうちMEGをバイオマス化したバイオPET30が量産化され、飲料メーカーや化粧品メーカーなどが自社製品の容器類に採用を始めたことで、市場が本格的に立ち上がった。

バイオマスTPAは高コストであるものの製造に目途がつきつつあり、2024年にはバイオマス比率100%のPET市場の形成が想定され、今後の市場拡大が予想される。なお、バイオマスMEGは量産メーカーが限られることから後発参入企業の本格的な量産および供給量の増加が期待される。

●循環型合成ゴムの国内市場

循環型合成ゴム市場規模

2023年の市場は僅少であるが、2035年には80.2億円が予測される。

CR合成ゴムは、廃プラスチック由来と廃タイヤ由来に大きく分けられ、廃プラスチック由来のCRナフサを原料に使用した市場が先に形成されるとみられる。しかし、回収されるのは使用済みタイヤが多いことから、廃タイヤによるCR合成ゴム製造に向けて要素技術の開発が進められている。

バイオマス合成ゴムは、原料であるバイオマスナフサの供給量が限定され、高価格であることから、まずは小規模生産・高付加価値な特殊ゴム製品で採用されるとみられる。

◆調査対象

再生プラスチック
マテリアルリサイクルプラスチック
・MR-PET
・MR-PP・PE
・MR-PS
・MR-PC
・MR-PA

ケミカルリサイクルプラスチック
・CR-PET
・CR-PP・PE
・CR-PS
・CR-PA
・CR-PMMA
・CR-PC
バイオマスプラスチック
・PLA(ポリ乳酸)
・バイオマスPET
・バイオマスPET
・バイオマスPE
・バイオマスPE
・バイオマスPC

循環型合成ゴム
・循環型合成ゴム
・バイオマス合成ゴム

循環型ナフサ(世界市場)
・CRナフサ(廃プラスチック・廃ゴム由来ナフサ)
・バイオマスナフサ


2024/4/12
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