PRESSRELEASE プレスリリース

第24106号

物流DXの実現に向け自動化・デジタル化が進む
次世代物流システム・サービス市場を調査
― 2030年国内市場予測(2023年比) ―
●バース管理システム 163億円 (5.1倍)
直近では2024年問題への対応で急伸、以降も拡大続く

●次世代物流ロボットシステム 317億円 (7.4倍)
AI技術の活用でピッキングやデバンニングの自動化が進み、伸長

●WMS(倉庫管理システム) 457億円 (57.6%増)
バース管理やTMSなど倉庫外のソフトウェアとの連携によるサプライチェーン最適化に期待

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 社長 菊地 弘幸 03-3241-3470)は、今以上に人手不足が顕在化する2030年問題の解決に向け、ロボティクス、AI、IoTなど先端技術を活用したシステムの導入が進む次世代物流システム・サービス市場を調査した。その結果を「2024年版 次世代物流ビジネス・システムの実態と将来展望」にまとめた。

この調査では、次世代物流システム・サービスとして、ロボティクス・オートメーション10品目、ロジスティクス・ファシリティ7品目、ラストワンマイル4品目、IoT(ハードウェア・ソリューション)5品目、IoT(ソフトウェア・ソリューション)6品目、サービス5品目の市場を明らかにし、2024年問題が物流システム・サービス市場に与えた影響なども整理した。なお、市場は日本市場に加え、日系メーカーの海外販売も捉えた。

◆注目市場

●次世代物流ロボットシステム(デバンニングロボット含)

次世代物流ロボットシステム(デバンニングロボット含)

ビジョンシステムと垂直多関節ロボット、ハンド・グリッパ、AGVなどを組み合わせて、荷卸し・荷積み(ピッキング、パレタイジング、デパレタイジング、バンニング、デバンニングなど)を行う物流向け知能化ロボットシステムを対象とした。

物流センター内の多くの工程は、依然として人手による作業が多く、特に複雑な作業となるピッキング工程は、プログラミングやティーチングが膨大になることからロボットの導入が敬遠されてきた。しかし、AIを組み合わせることで、瞬時に状況判断を行い、マスターレスでピッキングが可能となったことから、自動化を推進する大規模物流センターを中心に導入が進んでいる。また、2023年には以前より物流業界の課題であったトラックドライバーによるトラックコンテナからの荷卸し(デバンニング)・荷積み(バンニング)を自動化するデバンニングロボットが投入され、注目されている。

2024年の国内市場は参入企業が増加しているほか、案件が実証実験から本格導入へ移行していることから、拡大が予想される。一方で、導入コストが高いため、国内では費用対効果が出にくく、まずはコストメリットの高い24時間稼働の宅配、通販、食品などの物流施設などへ導入が進むとみられる。

なお、日系メーカーによる海外販売はまだ少ないが、人件費が高い北米やオセアニアなどでの展開が進むことで、拡大が予想される。

●屋外無人搬送車

屋外無人搬送車

屋外での搬送や工場などの建屋間搬送に使用される、自律走行型の無人搬送車を対象とした。

AGVをはじめとした物流ロボットの製品認知度向上による導入拡大や参入企業の増加により、工場の建屋間搬送や屋外の搬送においても、自動化を検討する事業者が増加し、注目度が高まっている。

屋外では、地面の凸凹など走行路の悪さなどにより耐環境性が求められることや、遮蔽物がないことから降雨などによるセンサーの誤作動や測量が難しくなること、人やトラックの往来に備えた制御など、屋内とは異なる環境への対応が必要なことから、自動化が進まない分野であった。しかし、これまで課題となっていた屋外での安定した自律走行についても3D LiDAR SLAMの活用により走行性能の向上が進んでおり、国内市場が拡大している。
また、定期メンテナンスや地図編集などのアフターサポートと自動運転システム提供者専用保険をパッケージ化したサブスクリプションサービスによる導入も進んでおり、今後も製品認知度の向上などにより拡大し、2030年の国内市場は2023年比16.3倍が予測される。

なお、現時点では日系メーカーによる海外販売はないが、今後の展開が期待される。

●WMS(倉庫管理システム)

WMS(倉庫管理システム)

物流現場において在庫管理、入出庫管理を行うWMS(Warehouse Management System)を対象とする。なお、ERPなど他製品の中で機能の一つとして提供されるWMSは含まない。

倉庫内の物流の正確性とスピードアップが可能なことから注目されている。慢性的な人手不足に加え、ECの普及による多頻度配送や小口化、オペレーションの複雑化などから、倉庫内の自動化機器の導入が進み、需要が増加している。2024年問題対策の一環としての中継拠点の開設や、レガシーシステムの更新などにより、2024年の国内市場は拡大が予想され、今後も、物流センターの新設や拠点間の集約などにより、伸びが続くとみられる。

近年では、WES(倉庫実行システム)、WCS(倉庫制御システム)と連動した効率的な倉庫運営や、可視化・データ分析アプリなどの付加機能を追加したトータルソリューション提案が進展している。また、倉庫外のソフトウェアとの連携も期待されており、バース管理システムやTMS(配車計画支援システム)などとサプライチェーンの最適化を目的とした、物流プラットフォームの構築といった構想も出てきている。

なお、日系メーカーの海外販売については、日系ユーザーの海外進出にあわせた展開が多く、今後も一定規模で推移するとみられる。

●WES(倉庫実行システム)

WES(倉庫実行システム)

AGVやロボットなど各種マテハン機器の接続の簡易化、人や設備などのリソースの制御・稼働データ取得による見える化など、各種プロセスとの統合管理を可能とし、倉庫内の最適化を図るWES(Warehouse Execution System)を対象とした。市場はパッケージ製品のインテグレーション、カスタム、コンサルティング、保守・運用費用とする。

物流センターの新設が相次ぎ、自動化設備の導入が進んだことにより、市場が拡大している。従来、在庫管理や入出庫管理を行うWMSや倉庫内のAGVやロボットなどを制御するWCSの導入時にITベンダーや機器メーカーなどがカスタム対応していた領域であった。近年パッケージ製品として発売し、市場に参入する企業が増えており、物流関連の大手事業者で導入が始まったことで急速に市場が拡大している。参入企業の増加も続いてるほか、カスタマイズ要求も高く、案件規模も大型化していることから、今後も市場は拡大が予想される。

●バース管理システム

バース管理システム

トラックの予約・受付、車両誘導、車両入退管理などを行うシステムを対象とした。

2024年問題を背景に生産性の向上や長時間労働の解消に向けた取り組みが活発化しており、トラックドライバーの待機時間や入出荷作業負担の増大、荷待ちトラックによる渋滞など、従来からの課題を解決し、効率化するシステムとして需要が高まっている。

特に、トライアル導入を終えたユーザーによる、自社保有のほかの物流倉庫・センターへの横展開が活発化したことで、2023年は市場が大きく拡大した。2024年は、2024年問題対策の駆け込み需要があったことから市場は急拡大しているが、2025年以降は主要拠点への導入が落ち着くことで伸びが緩やかになるとみられる。

今後は、予約や管理だけではなく、外部システムとの連携によって倉庫内外の効率化を図るようなシステム提案が増えていくと予想される。また、現在は初期費用を抑えたパッケージ製品が多いものの、今後は、ユーザーごとの最適なシステムが求められ、カスタムのニーズも高まっていくと予想される。

◆調査結果の概要

■次世代物流システム・サービス市場

次世代物流システム・サービス市場

新型コロナウイルスの影響も落ち着きを見せ、物流業界に長年にわたる人手不足などの諸問題を解消するため、ロボティクス、AI、IoTなどの先端技術を活用した機器システムの導入が進み、市場は拡大を続けている。

2023年は2024年問題の解決を目的に物流センターの新設や自動化設備の導入増加とともに、案件が大型化したことから、ロボティクス・オートメーション、ラストワンマイル、IoT(ソフトウェア・ソリューション)が前年比二桁増と大きく伸長した。

2024年は市場の伸びは鈍化するものの、IoT(ソフトウェア・ソリューション)はレガシーシステムからの更新などにより引き続き前年比二桁増が予想される。ロボティクス・オートメーションは長年の物流業界の課題であるデバンニング工程を自動化するデバンニングロボットが2023年より本格導入され、伸びが期待される。

人手不足が顕在化する2030年問題に向けて、ロボティクス、AI、IoTを活用した機器・システムを利用したソリューションの導入が加速し、物流DX化が進んでいくとみられる。なお、物流DXの本格化のためには、既存倉庫の対応が不可欠であり、複数拠点への横展開を前提とした拡張性の高いシステムやロボットの導入が進んでいくとみられる。特に人手不足という観点から自動化やデジタル化を進めるロボティクス・オートメーション、連携して最適化を行うIoT(ソフトウェア・ソリューション)などが伸びていくとみられる。

◆調査対象

ロボティクス・オートメーション
・AGV・アーム付AGV
・AMR(協働型ピッキング支援ロボット)
・棚搬送AGV(QRグリッド式)
・ACR(自動ケースハンドリングロボット)
・ソーティングロボットシステム
・AGF(無人フォークリフト)
・次世代物流ロボットシステム(デバンニングロボット含)
・物流向けアシストスーツ
・AGV用ワイヤレス給電システム
・屋外無人搬送車

ロジスティクス・ファシリティ
・デジタルピッキングシステム
・自動搬送・仕分けシステム
・立体自動倉庫システム
・回転棚
・電動式移動棚
・垂直搬送機
・ラベルプリンタ

ラストワンマイル
・宅配ボックス(戸建住宅向け)
・宅配ボックス(集合住宅、公共スペース向け)
・物流向けドローン
・無人宅配・配送ロボット

IoT(ハードウェア・ソリューション)
・スマートグラス
・ハンディターミナル
・自動運転トラック
・物流向け音声認識エンジン
・物流・流通向けRFIDソリューション

IoT(ソフトウェア・ソリューション)
・WMS(倉庫管理システム)
・TMS(配車計画支援システム)
・物流向けシミュレーションソフト
・バース管理システム
・輸配送見える化ソリューション
・倉庫内作業可視化システム

サービス
・RaaS(Robot as a Service)
・通販フルフィルメントサービス
・倉庫シェアリング
・求貨求車マッチングサービス
・パレットレンタルサービス


2024/11/14
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