PRESSRELEASE プレスリリース

第24114号

生成AI関連の国内市場を調査
― 2028年度市場予測(2023年度比) ―
■生成AI 1兆7,397億円(12.3倍)
従来AIとの併用・連携でこれまで以上の業務変革やイノベーション創出が可能となり導入増

●大規模言語モデル(LLM) 1,840億円( 15.3倍)
汎用的な業務の支援に加え、業界/領域特化型LLMの登場で利用の裾野が広がり、拡大

マーケティング&コンサルテーションの株式会社富士キメラ総研(東京都中央区日本橋 社長 田中 一志 03-3241-3490)は、対話型AI「ChatGPT」の登場以降、注目度が急速に高まり、実用化に向けた取り組みが加速している生成AI関連の国内市場を調査した。その結果を「2025 生成AI/LLMで飛躍するAI市場総調査」にまとめた。

この調査では、AI市場をビジネスカテゴリー別(サービス、アプリケーション、プラットフォーム、インフラ)に分類し、市場動向や参入ベンダーについて分析した。中でも生成AI/LLMにフォーカスし、利用実態や今後の有望分野など市場の将来を展望した。

◆調査結果の概要

■AI(生成AIを含む)の国内市場

AI(生成AIを含む)の国内市場

AIシステム開発/構築にともなうSIサービスや、AIが搭載されたアプリケーション、AI機能を提供するプラットフォーム、AI活用のリソースであるインフラを対象とする。

2024年度のAI市場は前年度比29.1%増の1兆4,735億円が見込まれ、2028年度には2兆7,780億円が予測される。現状では、従来AIの比率が高いが、市場拡大をけん引しているのは生成AIである。

生成AIは、2022年11月の対話型AI「ChatGPT」の登場により 一気に注目が集まった。世界中でLLMの開発やLLMをベースとした新規サービス/ソリューションの創出、実用化に向けた取り組みが加速し、国内ベンダーも国産LLM開発やLLM導入支援ソリューションなどの体系化を進めている。政府もLLM開発に取り組むスタートアップ企業の支援や生成AI関連のガイドライン策定を進めるなど、取り組みを活発化させており、2024年度の生成AI市場は前年度比3.0倍の4,291億円が見込まれる。

今後は、生成AIの採用が増加し従来AIとの併用・連携が進むことで、これまで以上の業務変革やイノベーション創出が可能となり、市場拡大が予想される。また、現状では生成AIシステムを構築する基盤モデルや生成AIを搭載したアプリケーションを単体で利用することが多いが、回答精度向上に向けたRAG(Retrieval Augmented Generation:検索拡張生成)の活用、既存の基盤モデルをベースとしたファインチューニング(追加学習)の普及による独自の基盤モデルの開発が活発化し、生成AIの適応業務領域が広がることで、2028年度の生成AI市場は2023年度比12.3倍の1兆7,397億円が予測され、AI市場の6割程度を占めるとみられる。

◆注目市場

●大規模言語モデル(LLM)

大規模言語モデル(LLM)

LLMとは、大規模な「計算量」「データ量」「パラメーター数」を前提とした深層学習によって開発された言語モデルである。市場はLLMとの応答を行うことが可能なクラウドAPIサービスの利用料を対象とする。

「ChatGPT」が公開されて以降、生成AIへの注目は高まり、LLMとの対話を自社システムやサービス、アプリケーションに組み込む需要が高まった。また、2023年1月に「Azure OpenAI Service」が公開され、OpenAIの「GPT」シリーズがAPIサービスとして利用可能になったことで急速に普及し、市場拡大が続いている。

2025年度以降は、「GPT」シリーズのように汎用的な会話を得意とするLLMに加え、専門用語を学習した業界/領域特化型LLMや、応答速度の高速化と推論コストを低減した軽量LLMなど、多様なLLMの登場が予想される。これにより、業界特有の業務への適応も可能となり、市場は大幅に拡大するとみられる。

業種別の利用状況をみると、最も利用が進んでいるのは、情報通信である。業務へのLLM活用に加え、自社プロダクト/サービスへのLLMの組み込みが進んでいる。製造や流通、サービスでは、大手企業を中心に自社業務システムへの活用を進め、営業や製品開発など幅広いシーンでLLMの利用を行っている。

●対話型生成AIチャットボット

対話型生成AIチャットボット

生成AIの活用により汎用的な業務支援が可能なチャットボットを対象とする。ほかの製品のオプションとして提供されるものや、APIを通じてLLMと対話するサービスは含まない。

法人向けの対話型生成AIチャットボットとしては、「Azure OpenAI Service」をベースとして提供されることが多い。APIを利用するだけで生成AIをチャットボットに実装することが可能なため、2023年度初頭からシステムインテグレーターやクラウドインテグレーター、AIベンダーなどを中心に、多数の企業が市場へ参入した。

2023年度、2024年度と導入が増えており、今後も市場拡大が予想される。しかし、機能面での差別化を図ることが難しくなっており、参入企業の増加によって価格競争が激化し低価格化が進んでいる。

業種別の利用状況をみると、汎用性の高い製品のため、製造、流通、サービスなど事業者数の多い業種が占める比率が高い。また、情報通信では、自社で「Azure OpenAI Service」を利用して独自の生成AIチャットシステムを構築するケースも多いため、比較的導入は少ない。

●AI向けGPUサーバー/GPUクラウド

AI向けGPUサーバー/GPUクラウド

GPUサーバーは、CPU(中央演算処理装置)に加えGPU(画像処理装置)を搭載したサーバー設備、GPUクラウドは、GPUサーバーをインターネット経由で使えるクラウドサービスである。

GPU(Graphics Processing Unit)は従来、画像処理を目的に利用されていたが、大量の並列演算処理を得意とすることから、AIを活用した技術研究や学習を目的に研究機関や教育機関、AIベンダーなどで利用が進み、市場が形成された。

2023年度は、生成AIの学習用途を目的に、より高速かつ安定した計算処理を求めて、GPUチップの調達が困難になるほど需要が高まった。2024年度も、生成AIの利用検討が積極的にされていることから引き続き好調である。前年度みられた大幅な納期遅延も徐々に解消しつつあり、市場は前年度比3.5倍の1,697億円が見込まれる。

GPUサーバーはクラウドサービスプロバイターによるGPUクラウドサービス提供を目的とした導入や、研究/教育機関向けでの大規模な導入が続いており、今後も好調な市場拡大が予想される。一方で、GPUサーバーは高価で設備投資が莫大となるため、短期利用を目的とする企業や中小企業などでは初期コストが抑えられるGPUクラウドの需要が高い。生成AIの活用ニーズが広がっている中、ユーザーの裾野が広がっており、 GPUクラウドの性能や提供形態などの利便性・柔軟性が向上することで、需要が高まっていくとみられる。

◆調査対象

■市場編(25品目)
サービス
・アノテーション
・秘匿化ソリューション
・戦略策定・ガバナンス構築
・構築・分析サービス
・データ分析基盤構築
・GPUサーバー設計・構築
・AI人材教育サービス

アプリケーション
・対話型生成AIチャットボット
・統合コミュニケーションサービス向け生成AIオプション
・AIコーディングアシスタント
・AI-OCR
・ハイパーオートメーション
・自動応答
・FAQナレッジ管理
・翻訳/通訳
・議事録作成
・eKYC
・AI外観検査
・AI行動分析

プラットフォーム
・AIエンジン
・RAG連携向け検索エンジン
・大規模言語モデル(LLM)
・AI/MLプラットフォーム

インフラ
・GPUサーバー/GPUクラウド
・高電力ハウジングサービス

■ベンダー編
・グローバルベンダー5社、国内AIベンダー7社、国内ソリューションベンダー5社

2024/12/3
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