PRESSRELEASE プレスリリース

第25032号

パワー半導体の世界市場を調査
― 2035年予測(2024年比) ―
■パワー半導体の世界市場 7兆7,710億円(2.3倍)
自動車の電動化が進むことで次世代パワー半導体が大きく伸びる

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 社長 菊地 弘幸 03-3241-3470)は、中国の景況悪化による民生機器や産業向けを中心とした在庫が2025年後半に向けて解消され、2026年以降大きな伸長が予想されるほか、長期的には自動車の電動化などによって需要が高まるパワー半導体の世界市場を調査した。その結果を「2025年版 次世代パワーデバイス関連市場の現状と将来展望」にまとめた。

この調査では、パワー半導体17品目、構成部材20品目、製造装置20品目について、市場の現状を明らかにし、将来を展望した。

◆調査結果の概要

■パワー半導体の世界市場

パワー半導体の世界市場

パワー半導体は、2024年は在庫調整やEVの需要鈍化に加え、FA(ファクトリーオートメーション)向けの投資減退や中国の景気悪化により、在庫を抱えることとなった。2024年後半からは需要が回復に向かっており、2025年後半に向けて在庫が正常化するとみられるため、2025年の市場は3兆5,285億円が見込まれる。

シリコンパワー半導体は、2025年は在庫調整の影響を受け微増にとどまるとみられる。しかし、2025年後半からの在庫正常化により2026年以降は伸長するとみられる。

次世代パワー半導体は、市場規模の大きいSiCパワー半導体は、2024年はEVや太陽光発電用パワーコンディショナーなどの需要停滞による影響が懸念されたものの一定の需要がみられたことから小幅に伸びた。また、GaNパワー半導体は、AC-DCアダプタでシリコン半導体からの置き換えがみられたほか、民生機器分野や情報通信機器分野の需要堅調により、大きく伸びた。2025年もSiCパワー半導体とGaNパワー半導体が伸長し、次世代パワー半導体は伸びるとみられる。今後も、EVを始め自動車の電動化が進むことで次世代パワー半導体の採用が進むほか、2026年頃からシリコンやSiC、GaNに比べてより高電圧かつ大電流に対応できる酸化ガリウムパワー半導体の実用化なども、市場拡大に貢献するとみられる。

■パワー半導体の構成部品の世界市場

パワー半導体の構成部品の世界市場

ウエハーは、シリコンウエハーが中心であったが、中国企業による生産増加で2024年にSiCウエハーがシリコンウエハーを上回った。SiCウエハーは価格が低下しているものの、中国向けの好調が続いており大きく伸びている。また、GaNウエハーも大きく伸長しており、前年比2.9倍が見込まれる。

SiCウエハーの中国における堅調な需要が続くとみられ、今後も市場拡大をけん引すると予想される。また、GaNウエハーや酸化ガリウムウエハーは、4インチウエハーが既に実用化されており、6インチウエハーの開発も進んでいるため、中長期的な市場拡大を後押しするとみられる。

半導体レジストなど前工程材料は、ウエハーの薄化や回路パターンの形成に必要であるため一定の需要がみられるが、2024年以降、日本や欧州、北米で需要が低調であり、2025年の市場は前年比3.0%増にとどまるとみられる。

CMPパッドやCMPスラリーで、SiCなどの硬質ウエハーに対応した材料開発が続いており、実用化によって、今後の市場拡大が期待される。また、中長期的にはSiCパワー半導体向けなどの需要増加が予想され、2035年に向けて市場は拡大するとみられる。

後工程材料市場は、IGBTモジュールなどの需要減少の影響を受け、2024年は市場の伸びが鈍化した。2025年もシンタリング接合材など新規材料の需要は比較的堅調である一方、既存の材料は需要の停滞が予想される。

シンタリング接合材は、SiCパワー半導体向けやパワーモジュールとヒートシンクの接合で採用が進んでいるため、今後は、SiCパワー半導体の伸びとともに、はんだの代替材料として普及し市場拡大に繋がるとみられる。また、絶縁・放熱基板のうち窒化ケイ素回路基板が、自動車・電装向けの増加を背景に大きく伸長するため、2035年の後工程市場は2024年比2.9倍の7,985億円が予測される。

■パワー半導体の製造装置の世界市場

パワー半導体の製造装置の世界市場

2022年から2023年にかけて大きく拡大したが、2024年後半よりEVの需要低迷による自動車関連の設備投資減少の影響を受け、2025年の市場は前年比5.0%減が見込まれる。ただし、中国では、パワー半導体メーカーによる補助金を活用した新規設備投資や新興メーカーの工場新設などがみられることから、市場が続伸している。

今後は、自動車関連の設備投資の再開に加え、SiCパワー半導体の8インチ製造ラインの投資増加によって2027年頃以降、市場は再拡大が予想される。また、GaNパワー半導体向け装置の需要増加もみられ、市場拡大に繋がるとみられる。

◆注目市場

●次世代パワー半導体の世界市場

次世代パワー半導体の世界市場

SiCパワー半導体(SiC-SBD、SiC-FET、SiCパワーモジュール)は、トラクションインバータや急速充電インフラなどEV向けが8割弱を占めている。2024年は、EVの販売が低迷したほか、車載バッテリーの価格下落により、シリコンから置き換えが進まず、市場は伸び悩んだ。

長期的には自動車の電動化が進むとみられ、EVにおけるSiCパワー半導体採用率は、2024年に10%強だったが2035年には50%を超えると予測される。加えて、ESSや太陽光発電用パワーコンディショナー、電鉄車両など自動車・電装分野以外でも採用が本格化するとみられ、2035年の市場は2024年比7.4倍が予測される。

GaNパワー半導体は、GaN(窒化ガリウム)ウエハーを使用したパワー半導体を対象とする。高速スイッチングが可能かつ、電源回路の小型化を実現できる。

2024年の市場は、参入メーカーの設備投資に伴う量産化によって、価格が低下したため最終製品に採用しやすくなり、小型化ニーズが高いAC-DCアダプタにおいてシリコンからの置き換えが進んだ。また、サーバー電源でも消費電力増加に伴い、電力密度を向上させるため置き換えが進んでいる。

中長期的には、オンボードチャージャーやLiDARなどの自動車・電装分野や産業用スイッチング電源、太陽光発電パワーコンディショナーなどで採用が増加し、2035年の市場は2024年比7.7倍が予測される。

酸化ガリウムパワー半導体は、日系メーカーが実用化に向けて開発を進めている。SiCやGaNパワー半導体よりも高電圧かつ大電流に対応できるため注目が集まる。

2026年頃から民生機器やサーバー電源など情報通信機器向けにSBDの本格的な生産が始まると予想される。さらに2030年前後には産業分野やエネルギー分野など高耐圧用途をターゲットにしたFETの生産が始まり、自動車・電装分野への採用が進むことで、2035年の市場は149億円が予測される。

◆調査対象

パワー半導体
シリコンパワー半導体
・整流ダイオード
・SBD(ショットキー・バリア・ダイオード)
・FRD(ファスト・リカバリー・ダイオード)
・バイポーラパワートランジスタ
・低耐圧パワーMOSFET
・高耐圧パワーMOSFET
・IGBTディスクリート
・サイリスタ/トライアック
・IGBTモジュール
・インテリジェントパワーモジュール
・ダイオード/サイリスタモジュール
次世代パワー半導体
・SiC-SBD
・SiC-FET
・SiCパワーモジュール
・GaNパワー半導体
・酸化ガリウムパワー半導体
・ダイヤモンドパワー半導体

パワー半導体の構成部品
ウエハー
・シリコンウエハー
・SiCウエハー
・GaNウエハー
・酸化ガリウムウエハー
・ダイヤモンドウエハー
前工程材料
・半導体レジスト
・バッファーコート膜
・CMPパッド
・CMPスラリー
後工程材料
・ダイボンディングペースト
・はんだ
・シンタリング接合材
・ボンディングワイヤー
・封止材料
・窒化アルミニウム回路基板
・アルミナ系回路基板
・窒化ケイ素回路基板・白板
・金属放熱基板
・放熱シート
・放熱グリース

パワー半導体の製造装置
・エピ膜成長装置
・グラインダ
・CMP装置
・プラズマCVD
・コータ/デベロッパ
・露光装置
・イオン注入装置
・熱処理装置
・レーザーアニール装置
・ドライエッチング装置
・スパッタリング装置
・洗浄装置
・ダイシング装置
・ダイボンダ
・焼結装置
・ワイヤボンダ
・モールディング装置
・ウエハー外観検査装置
・チップ外観検査装置
・電気テスタ装置


2025/4/3
上記の内容は弊社独自調査の結果に基づきます。 また、内容は予告なく変更される場合があります。 上記レポートのご購入および内容に関するご質問はお問い合わせフォームをご利用ください、 報道関係者の方は富士経済グループ本社 広報部(TEL 03-3241-3473)までご連絡をお願いいたします。