PRESSRELEASE プレスリリース

第15062号

電力小売全面自由化、発送電分離により大きな変革が予想される
電力ビジネスの国内市場を調査
-2020年度市場予測-
電力小売サービス低圧分野における新電力事業者のシェアは10.0%、業務分野は20.0%
顧客料金管理システム(CIS)ランニング料金の市場は93億円(2013年度比13.3倍) 

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 清口正夫 代表取締役)は、2016年度予定の電力小売全面自由化や、2020年度予定の発送電分離などにより、新規事業者の参入や新たなビジネスモデルの展開など、大きな変革が予想される国内の電力ビジネスと関連する市場を調査した。その結果を「電力システム改革で動く電力ビジネスの全貌と将来展望」にまとめた。

この報告書では、電力サービスビジネス6品目、電力サービス用プラットフォーム2品目、電力小売事業運用システム・サービス3品目、系統安定化システム・サービス6品目の市場の現状を調査・分析し将来を予測するとともに、発電所データベースを作成し、発電ビジネスの動向を整理した。

◆注目市場

1.電力小売サービス

電力小売市場における新電力事業者のシェアは、2014年度で3.3%にとどまっている※1。最大の要因は電源調達にあり、販売増を計画しても電源を調達できない状況にある。それでも、新電力事業者に対する電源調達支援施策として、常時バックアップの見直しや、一般電気事業者の余剰電力の供出拡大などによる日本卸電力取引所の利便性向上が図られ、ここ数年新電力事業者のシェアは徐々に上昇している。また、公営電気事業者や卸電気事業者の電源利用などの支援施策も検討されているほか、新電力事業者自身も火力発電所建設など安定した自社電源確保への投資を進めていることから、シェアは今後も上昇が予想される。※1電力調査統計(経済産業省)を参照。

需要分野別 新電力事業者のシェア(販売量ベース)※2

※2 2014年度まで電力調査統計(経済産業省)をベースに富士経済が作成、2015年度以降は富士経済が推定。現在の規制分野を低圧とし、自由化分野を富士経済が業務・産業に分類した。

需要分野別に新電力事業者のシェアを見ると、家庭用途などの低圧分野は自由化前であり、また産業分野では価格要求が厳しいことから新電力事業者の参入が進んでおらず、現状は業務分野が最も高くなっている。

新電力事業者の展開先は今後も業務分野が中心になると予想される。低圧分野の自由化がフォーカスされるが、業務用途が成長分野であることも認識する必要がある。電力システム改革の議論の中で進められている電源調達環境の改善など、環境整備が新電力事業者の業務分野への展開にも好影響を与えるとみられる。業務分野に展開している新電力事業者にとって販売手法が異なる低圧分野への進出は、運用管理システムの導入やコールセンターの設置、人員拡充など整備に費用と時間を要する。そのため、現体制で効率良い展開が可能な業務分野を優先させるとみられる。

低圧分野へ展開する企業は、既存の事業・体制とのシナジーが見込める事業者になると予想される。例えば、ガス会社や通信会社などがあげられる。ただ、電源を持つガス会社は業務・産業分野の既存契約先を持ち、低圧分野へ割り当てられる電力供給量が限定的とみられる。また、通信会社は顧客接点を持つが電源をほとんど持っていないため、電源保有企業と提携する必要がある。

低圧分野市場の活性化ポイントは、スマートメーター導入の進展である。計測データを利用することで料金メニューの多様化や新たなサービスの創出が期待される。低圧スマートメーター導入率が全国平均で50%を超える2018年度頃から計測データの利用が活発化し、低圧分野市場が活性化し始めると予想される。

産業分野は、大口需要家の価格要求が厳しく、一般電気事業者が重要顧客として注力していることもあり、多くの新電力事業者の展開優先度は低いと考えられる。

2.顧客料金管理システム(CIS)

2013年度
2015年度予測
2020年度予測
イニシャル料金※3
4億円
71億円
18億円
ランニング料金※4
7億円
28億円
93億円

※3パッケージ/テンプレートのライセンス料、クラウド(SaaS) サーバーセッティング料。
※4パッケージ/テンプレートのシステム保守料、SaaSサービス基本使用料及び契約需要家数に応じた料金収入。

パッケージ/テンプレート、SaaS、スクラッチの提供形態があり、契約口数によって利用形態が異なる。数千から数万件規模を対象とする場合はSaaS、数万から数十万件規模では大容量の顧客情報を素早く処理できるパッケージ/テンプレートの導入が多い。スクラッチは、一般電気事業者などが数百万件規模を管理する場合が多い。

2016年4月の電力小売全面自由化時に参入する事業者は、数万件規模を対象とした新電力事業者や、既に高圧向けで実績のある事業者が多いと想定され、情報処理能力の高いパッケージ/テンプレートを導入するとみられる。また、今後は再生可能エネルギーを活用する新電力事業者の増加が予想されるが、特に自治体型は需要規模が限定的なためイニシャル料金負担が少ないSaaSを活用するとみられる。また、早急にシステム構築を望む新電力事業者は、最初はSaaSを活用し、契約口数が増えた際に拡張性のあるパッケージへ切り替えるケースも想定される。

新電力事業者の純増数は2016年度をピークに減少するとみられるため、イニシャル料金収入は縮小に転じるが、ランニング料金収入は年々拡大が予想される。ただし、今後は新電力事業者の統廃合が予想されるため、それに伴うシステムの移行によって生じるイニシャル料金収入も期待される。また、新たな方向性として、安定的なランニング料金収入が確保できるSaaS事業者は、CISの販売に加えて付帯サービスを積極的に展開すると考えられる。2020年度には、発送電分離によって新たな電力ビジネスの仕組みが立ち上がるとみられ、アグリゲータや他事業者の電力を販売するホワイトラベルのCIS導入に伴う新規需要の創出も期待される。

3.太陽光発電オンサイトエネルギーサービス

2013年度
2015年度予測
2020年度予測
累計設置容量
20万kW
40万kW
100万kW

2012年7月に施行されたFITにより、高い買取価格での売電収入を期待できることで、急激に需要が増加した。しかし、2014年度は、買取価格が下がったことで導入意欲が減退している。とは言え、FIT活用には契約期間があり途中解約は想定しにくく、少なからず新規の導入も予想されるため、今後も累計設置容量は増加するとみられる。また、2016年度の低圧分野の自由化後に、太陽光発電の発電コストが系統電力からの電力と同等以下になる状況が実現すれば、住宅屋根で発電した電力を直接その家庭へ販売するビジネスモデルの登場も想定され、市場拡大が予想される。

◆調査対象

電力サービスビジネス
電力小売サービス、電力購入代行サービス(部分供給サービス活用)、高圧一括受電サービス、オンサイトエネルギーサービス、デマンドレスポンスサービス〔補足:分散型電源のストックデータ(業務・産業用コージェネレーションシステム、家庭用燃料電池、業務・家庭用蓄電池)〕、再生可能エネルギー買取サービス
電力サービス用
プラットフォーム
需要家EMS(HEMS、BEMS、FEMS、REMS)、地域EMS(CEMS)
電力小売事業運用
システム・サービス
統合型業務ソリューション(ERP)、顧客料金管理システム(CIS)(補足:請求書発行・送付・決済代行サービス、コールセンターサービスの動向)、需給管理システム(同時同量など)(補足:電力取引支援システムの動向)
系統安定化システム
・サービス
スマートメーター、自動検針システム(AMI)、メーターデータ管理システム(MDMS)、電力貯蔵システム〔出力変動対策市場、系統安定化市場、業務用・家庭用市場(BLCP対応市場、電気料金削減市場)〕、FACTS(SVC)(補足:配電自動化システムの動向)、他電力システム(スイッチング支援システム/託送料金管理システム)
発電ビジネス
火力発電、バイオマス発電、廃熱発電、地熱発電、水力発電、風力発電、太陽光発電、原子力発電
発電所データベース
(右記23分類141事業者)
鉄鋼業界、非鉄金属材料業界、化学材料業界、セメント業界、製紙・パルプ業界、都市ガス業界、石油・LPガス業界、商社業界、重電・プラント業界、鉄道業界、公営水力業界、公営ごみ焼却業界、住宅建築・建材業界、土木・建築・エンジニアリング業界、不動産業界、物流業界、通信業界、太陽電池業界、再生可能エネルギー発電事業者(主に太陽光発電)、再生可能エネルギー発電事業者(主に風力発電)、特定規模電気事業者(新電力事業者)、一般電気事業者&卸電気事業者(出資先系列企業)、一般電気事業者&卸電気事業者(本体)

※一部の数字は四捨五入しています。このため合計と一致しない場合があります。

 


2015/07/10
上記の内容は弊社独自調査の結果に基づきます。 また、内容は予告なく変更される場合があります。 上記レポートのご購入および内容に関するご質問はお問い合わせフォームをご利用ください、 報道関係者の方は富士経済グループ本社 広報部(TEL 03-3241-3473)までご連絡をお願いいたします。