マーケット情報


BEMS、BAS、ESP、FEMS エネルギーソリューションの国内市場を調査

−2025年度市場予測−
BEMS:エネルギーサービスの付加価値提案の拡大により226億円
BAS:2020年度まではオリンピック特需、以降中規模施設への提案拡大により450億円
ESP:電力システム改革に伴う大口顧客への提案強化により2,120億円
FEMS:IoT、デマンドレスポンスへの対応から22億円


総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 清口正夫 代表取締役)は、システム、サービス単体の提案から「エネルギー+α」の付加価値として設備、資産管理などを含めたトータルソリューションとしての提案が拡大するBAS、BEMS、FEMS、ESPの国内市場を調査した。その結果を報告書「電力・ガス・エネルギーサービス市場戦略総調査 2016 エネルギーソリューション編」にまとめた。

この報告書では、注目される129品目のエネルギーサービス・システムの実績動向をまとめ、参入34事業者について企業事例を分析し、多数の企業が参入するエネルギーソリューション市場の課題をまとめ将来を展望した。

◆調査結果の概要

1.BEMS(ビル・エネルギー・マネジメント・システム)

2015年度
2020年度予測
2025年度予測
市場規模
141億円
203億円
226億円

※市場はエンジニアリング費を除くシステム費

設備の運転データ/エネルギー使用量データを各種センサーで収集し、建物内のローカルサーバーで一括管理・分析を行うシステムである。近年はローカルサーバーを構築しないクラウド型や制御機能や表示機能を持たせたデマンドコントローラー、多拠点統合エネルギー管理システムなどもBEMSと称し、市場はこれら全てを含み、製品機能で主に自動制御型と手動制御型のBEMSに区分し算出した。

市場は東日本大震災を契機にデマンドコトローラーを中心に拡大し、2012年度はBEMSアグリゲータ事業が追い風となって自動制御型の普及も進み、アグリゲータ事業最終年度となった2013年度は154億円、導入件数ベースで3.9万件となった。しかし、2014年度はその反動で大きく縮小した。

2015年度は僅かながら拡大に転じ、141億円、2.9万件となった。機能別では手動制御型が2.2万件、自動制御型は0.7万件となっており、施工も含めたイニシャルコストを比較的安価に抑えることができる手動制御型が依然として多い。近年、手動制御型は新電力による電力使用情報収集需要やエネルギーデータのみならず、気温、来店者数、テナント別売上など顧客の事業に関わるあらゆるデータの一元的な見える化、管理、マーケティングへの活用など、必ずしも省エネ・省コストを主目的としない導入が増えている。一方、自動制御型は空調機や冷設メーカーが既存ストックの更新時にBEMS機能を付加したコントローラーの拡販を進めており、空調更新に併せて導入件数が伸びている。

2016年度以降は空調や冷設、電気設備の保安管理などの既存事業の延長で、付加価値の1つとして展開する事業者の安定的な需要と、電力システム改革により電力市場に参入する通信などの新規事業者が自社エネルギー販売の付加価値として、省エネコンサルティングや多拠点エネルギー管理とセットでBEMSの拡販を進めるとみられる。また、国が掲げるエネルギー基本計画では、建物規模に応じたエネルギー管理支援サービスやアグリゲータ事業、ZEBの実現、デマンドレスポンスへの対応を推進しており、EMSに関連した普及支援もプラスに影響するとみられる。手動制御型の安定的な需要と、新規参入事業者や国の施策による自動制御型の普及拡大により2020年度の市場は2015年度比44.0%増の203億円、2025年度には同60.3%増の226億円が予測される。

有望業種におけるBEMS普及率



事務所ビル、物販・飲食・サービス施設、医療・福祉・宿泊施設、大学といった有望4業種施設における2015年度のBEMS普及率は12.0%となった。物販・飲食・サービス施設の普及率が最も高く29.4%、次いで医療・福祉・宿泊施設が20.8%、施設ストックが多い事務所ビルが最も普及率が低い4.3%となった。

2020年度にかけて物販・飲食・サービス施設では引き続き安定的に普及が進み、また事務所ビルにおいても空調機更新とのセットで普及が進み、2020年度にはBEMS普及率は18.7%が予測される。業種別には物販・飲食・サービス施設のBEMS普及率が高く35.9%となる。チェーン化率が高く、総エネルギー消費量における電力消費量の割合が8割を超えることから電力削減幅も大きく、事業者側にとって提案し易い業種である点が普及進展要因である。その他、宿泊施設は2020年度に向けて新築需要が期待できるほか、老人福祉/保健施設は居住者の行動パターンが一定であることから、省エネコンサルティングなどとのセット提案も進むとみられる。

2.BAS(ビルディング・オートメーション・システム)

2015年度
2020年度予測
2025年度予測
市場規模
459億円
501億円
450億円

※市場はエンジニアリング費を除くシステム費

建物内の受変電設備、防災設備、熱源設備、空調設備、電気設備、衛生設備、給配水設備、セキュリティ設備など、多岐に亘る設備の運転状況の監視や制御、エネルギー使用量の計測や管理などを統合的に行うシステムである。

市場は2013年度に前年度比マイナスとなったが、以降は微増で推移し、2015年度には459億円となった。システムタイプ別では、建物内に独立したローカルサーバーにおいてデータの管理・分析サービスを提供するローカル型が441億円、導入件数ベースでは全体の7割を占める2,685システム、クラウド利用による遠隔監視サーバーでデータの管理・分析サービスを提供するクラウド型が18億円、1,015システムとなった。

2016〜2020年度にかけて、導入件数ベースでは前年度比横ばいから3%程度の拡大が予想される。1970〜1980年代のバブル期に建てられた建築物の改修、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けた首都圏を中心とした再開発、2020年度以降に改修時期を迎える駅や空港、商業施設、宿泊レジャー施設などの改修工事の前倒しなどが拡大要因である。これにより2020年度の市場は2015年度比9.2%増の501億円が予測される。建築需要拡大の一方、建築資材の高騰や建築業界における人材リソースの限界などを理由に工事案件の順延も発生している。そのため2016〜2020年度にかけて市場は拡大するものの、導入件数ベースでの伸びは前年度比5%増を超えることが難しいとみられる。

東京オリンピック・パラリンピック特需の反動から2021年度の市場は大きく縮小するものの、以降は微増推移が予想される。参入各社は、延床面積1万平方m以上の大規模施設ではBASがほぼ100%普及していることから、ターゲットレンジを中規模施設まで拡大する動きが加速するとみられる。中規模施設では大規模施設向けBASと同程度のスペックで安価なクラウド型の提案が進み、導入件数ベースでは全体に占めるクラウド型の比率が上昇すると予想される。ローカル型も安定した更新需要の獲得が続き、2025年度の市場は450億円、4,700システムが予測される。そのうち46.8%の2,200システムがクラウド型となる。

3.ESP(エネルギーサービスプロバイダ)

2015年度
2020年度予測
2025年度予測
市場規模
1,377億円
1,620億円
2,120億円

※市場はESP業者が受け取る年間サービス料(エネルギー=電力・ガス販売実績を含む)

ESPは、ユーティリティ設備を顧客の敷地内に設置し、顧客が必要とする電気や温/冷熱、空気、水などのユーティリティを提供するサービスである。設備の調達から、運用管理、保守メンテナンスまでをESP事業者が請け負う。

2015年度の市場はエネルギー価格の低下や、一部で新規獲得案件の小型化が進んだことから、前年度比4.7%増の1,377億円となった。

2016年度以降、2002年度前後より提案が活発化したコジェネによるオンサイト発電サービスが契約更新時期を迎える。特に2017〜2018年度は更新提案が活発化するとみられ、併せてボイラや集中熱源などとのセット提案により事業規模の拡大が期待される。

また、この市場はコジェネが商材の中心であったものの、2013年頃より集中熱源の更新にあわせたESP提案が顕在化している。特に業務施設においては、1970〜1980年代にかけて相次いで建設された300床を超える大型病院が近年建て替え時期を迎える。病院では人材確保の問題などから集中熱源のアウトソーシングニーズも高く、ESP事業者が建て替えに併せて熱源設備の更新とサービスのセット提案を強化している。2016年度以降、業務施設を中心に集中熱源更新におけるESP提案がさらに拡大し、2020年度には集中熱源更新件数全体の3割程度を占めるとみられる。コジェネの更新案件の獲得と集中熱源提案の拡大により、市場は2020年度には1,620億円が予測される。

電力システム改革に伴い、エネルギー供給事業者は大口顧客への付加価値提案として、ソリューション提案を強化している。特にエネルギー供給事業者系子会社による従来の親会社の供給エリアを超えた提案競争が激化している。エネルギー供給事業者系ESP事業者の多くは、今後親会社の電力・ガス契約の維持拡大施策と連動してエネルギー調達とのセット提案を強化するとみられ、1案件あたりの事業規模の拡大も予想される。

4.FEMS(ファクトリー・エネルギー・マネジメント・システム)

2015年度
2020年度予測
2025年度予測
市場規模
22億円
19億円
22億円

※市場はエンジニアリング費を除くシステム費

産業施設(工場)内の生産プロセスで用いられる「ユーティリティ設備(空調熱源/コンプレッサ/ボイラ/受変電設備等)」や「生産用機械設備(工業炉/クリーンルーム/成形機械など)」の運転データ、エネルギー使用量データを蓄積、解析することでエネルギー消費量削減を図るシステムである。

東日本大震災を契機とした電力需給への不安によって、工場内の節電、見える化、設備更新などの需要が高まりを見せたものの、その需要も一巡し、国内での新規工場の建設も少ないことから、市場は伸び悩んでいる。業務施設を対象としたBEMSは、エネルギーの管理対象設備が空調機器、受変電設備、照明機器、昇降機とほぼ共通しているため標準化したパッケージ製品として展開されている。それに対しFEMSは、対象とする工場では空調機器や多様な生産設備などの配置がその規模や業種によって異なることからパッケージ化することが難しく、市場拡大を抑制する要因となっている。

近年、工場では生産性の向上やIoT、Industrie 4.0への対応がキーワードとなっており、生産現場の情報を経営層まで見える化する仕組みづくりへのニーズが高まっている。生産現場の状況を把握するためには単なる工場全体のエネルギーの見える化だけではなく、生産稼働状況や製品の品質までを含めた状況の把握、分析を行う必要があり、工場の現状診断からエネルギー管理システムとしての導入、省エネ効果の分析・検証から更なる運用状況の改善まで、PDCAサイクルを実行することにより適切なエネルギーの運用実現を目指した提案がされている。そのためFEMSは生産分析支援や設備機器の故障予測などの多機能化もみられ、FEMSの拡販ではなく、1事業者に対する段階的なコンサルティングとシステムの拡張提案が中心となっている。

一方でターゲットとしては中規模工場がフォーカスされつつある。中規模工場は大規模工場と比べてエネルギー管理担当者がいない場合も多く、エネルギーを含めた工場の運用改善の需要に合わせて小規模なFEMSの提案が進んでいる。また、2016年度より「中小企業等の省エネ・生産性革命投資促進事業費補助金」が開始され、2016年6月までに20件の交付が決定している。補助金の採択件数全体でみるとFEMSの採択件数は僅かとなっているものの、今後は中規模工場での導入拡大が期待される。

また、2020年度以降にはデマンドレスポンス市場が本格的に立ち上がるとみられる。産業施設は業務施設と比べてエネルギーリソースが高く、デマンドレスポンスの観点では産業施設に期待が寄せられており、エネルギー供給事業者との連携や新規参入によって、FEMSのサービス拡大が期待される。

◆調査対象

市場分析 BAS(ビルディング・オートメーション・システム:中央監視システム)(ローカル型、クラウド型)
BEMS(ビル・エネルギー・マネジメント・システム)(自動制御型、手動制御型)
FEMS(ファクトリー・エネルギー・マネジメント・システム)
ESP(エネルギーサービスプロバイダ)
企業事例分析 エネルギー供給系事業者 5社、エネルギーサービス専業&新電力事業者(PPS) 6社、エンジニアリング事業者 3社、電機メーカー 9社、計測制御機器メーカー 6社、ビルシステム事業者 3社、通信・ICT事業者 2社

※一部の数字は四捨五入しています。このため合計と一致しない場合があります。


2016/10/13
       
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