PRESSRELEASE プレスリリース
電力消費特性からみた家庭分野の電力小売顧客ターゲットを調査
創エネ住宅フロー:太陽光発電の買取価格低下により2015年度は前年度比14.3%減
既存電力会社および新規参入事業者の顧客ターゲットは、3,736万戸、住宅ストック全体の70.5%
主戦場となる多消費世帯は660万戸、同12.4%
総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 清口正夫 代表取締役)は、国内住宅における熱源(オール電化、都市ガス、LPガス・灯油)シェアおよび関連住設機器の普及状況、太陽光発電システムないし家庭用CHP(エネファーム、エコウィル)といった創エネ機器を設置した創エネ住宅の動向、さらに需要家の電力消費特性からみた電力契約スイッチポテンシャルの算出と電力小売全面自由化に伴う主要小売電気事業者の顧客獲得施策について調査を実施し、都道府県別/エリア別に分析した。その結果を報告書「2016年版 住宅エネルギー・サービス・関連機器エリア別普及予測調査」にまとめた。
◆調査結果の概要
1.オール電化住宅
(厨房・給湯(北海道/東北では空調も含む)に電気機器を採用した住宅)
■フロー(単年)
2015年度 |
構成比 |
2025年度予測 |
構成比 |
|
オール電化 |
30万戸 |
88.2% |
37万戸 |
123.3% |
東日本大震災以降、既存電力会社の営業自粛によりオール電化戸数は前年度比マイナス推移となっている。2015年度も前年度より4万戸減となる30万戸となり、エリア別にみると電化営業再開によって沖縄エリアは増加したが、その他のエリアは軒並み減少した。また、既築住宅市場は再生可能エネルギーの固定価格買取制度の買取価格低下により、従来太陽光発電システムとセットで提案されていた電化リフォームが減少していることから縮小した。
電力小売全面自由化を契機に営業自粛を続けていた一部既存電力会社は電化営業を本格的に再開する。また、2016年度は消費税増税前の駆け込みにより着工や大型リフォーム案件増が期待できる上、一部既存電力会社の現行の電化プランが2016年秋頃を目処に新規加入停止となることから駆け込み需要が発生し、電化率の回復が期待される。今後、新築着工戸数減少により大幅な伸びは期待し難いものの、電化率は徐々に上昇するとみられる。
■ストック(累計)
2015年度 |
構成比 |
2025年度予測 |
構成比 |
|
オール電化 |
627万戸 |
11.8% |
939万戸 |
17.9% |
都市ガス |
2,511万戸 |
47.4% |
2,604万戸 |
49.5% |
LPG・灯油 |
2,165万戸 |
40.8% |
1,713万戸 |
32.6% |
都市ガス採用住宅が増加する一方で、LPガス・灯油採用住宅は継続的に減少している。2015年度は都市ガス住宅が住宅ストック全体の47.4%となる2,511万戸となった一方で、LPガス・灯油採用住宅は前年度比0.4%減の2,165万戸となった。
オール電化住宅は2015年度に627万戸、構成比(普及率)11.8%となったが、東日本大震災以降は新築、既築ともに電化の採用、電化への移行が減少していることから、増加幅は鈍化している。中国、四国、九州エリアなどのLPガス普及率の高いエリアで新築電化、既築の電化転換が進む一方、LPガス・灯油採用住宅の減少には拍車がかかるとみられる。
2.創エネ住宅
(太陽光発電システムないし家庭用CHP(エネファーム、エコウィル)を設置する住宅)
※2016年度は見込、2018年度以降予測
■フロー(単年)
創エネ住宅フローは再生可能エネルギーの固定価格買取制度の開始とハウスメーカーの積極的な提案による太陽光発電システム設置住宅の増加で前年度比プラス推移していたが、新築着工数の減少から2013年度をピークに同マイナスへと転じた。2015年度は、都市ガス会社の積極的な提案により家庭用CHP設置住宅は増加したが、全体の9割以上を占める太陽光発電システム設置住宅は買取価格の低下により減少したことから36万戸となった。
今後、買取価格はさらに低下すると想定され、太陽光発電システムとオール電化やW発電はメリットを提示しにくくなるものの、大手ハウスメーカーを中心にZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)の標準化目標達成に向けた提案拡大で太陽光発電システムの設置が一定規模維持され、都市ガス会社がエネファームを戦略商材としていることから、長期的にみると創エネ住宅フローは拡大すると予想される。2025年度には創エネ住宅フローの5割強が家庭用CHPの設置住宅で構成されると予想される。
■ストック(累計)
2015年度の創エネ住宅ストックは前年度比12.4%増の280万戸、普及率は5.3%となった。太陽光発電システム設置住宅が258万戸と、大部分を占める。
今後は買取価格の低下により、太陽光発電システム設置住宅の伸びが鈍化し、代わって家庭用CHP設置住宅が徐々に構成比を高める。2025年度の創エネ住宅ストックは524万戸、普及率は10.0%が予測される。エリア別では中部、関西、中国、四国、九州エリアで普及率10.0%を上回る。
ZEH関連機器市場
※2016年度は見込、2018年度以降予測
太陽光発電システムは、買取価格の低下、買取期間終了などから縮小するが、一定規模維持される。自家消費提案がメインとなり、住宅用蓄電池やHEMSなどとのセット提案、電気自動車とのV2H提案が増えるとみられる。その他、HEMSは補助金制度と連動して伸長が期待されるほか、パワーコンディショナは太陽光発電システム初期ユーザーでの更新需要が期待されるとともに、住宅用蓄電池のセット提案も増えるとみられる。
3.電力消費量特性からみた電力小売事業者の顧客ターゲットと主な施策
2016年3月末時点で全国5,302万戸の住宅ストックを電力消費特性別にみると、一般世帯(電気使用量150〜600kWh/月)が3,360万戸と全体の6割を占め、多消費世帯(電気使用量600kWh/月以上)は1,160戸と全体の2割、少量消費世帯(電気使用量150kWh/月未満)は全体の1割、784万戸となった。また、オール電化住宅は9.5%、太陽光発電システム+オール電化住宅を含めた創エネ住宅は5.3%を占める。そのうち、既存電力会社や新規参入事業者のターゲット顧客は少量消費世帯やオール電化住宅などを除く3,736万戸、全体の70.5%であり、主戦場となる多消費世帯は660万戸、全体の12.4%である。
電力消費特性別にみた電力小売事業者の主な施策については、電力使用量別の料金メニューの設定の他に、多世帯同居住宅やペット飼育住宅などの多消費世帯には、ハウスメーカー専用プランなどの特別プランの設定、家事代行等の生活支援サービスなどとのセット提案がある。一般世帯では、電気+ガスなどその他の家計の支出とのセットプラン、ポイント・割引などがある。その他、創エネ住宅にはエネファームとのセットやFIT電気など環境性を訴求する料金プランも設定されている。
2016年3月末時点での家庭部門電力契約の新規参入事業者へのスイッチ状況は、全顧客の0.68%の切り替えに留まった。今後、需要家の認知度向上や2017年度から開始するガス小売全面自由化に向けた本格的な価格競争、付加価値提案による顧客獲得が活発化する。電力においては、短中期的に既存電力会社の1〜2割程の顧客が新規参入事業者へ切り替わるとみられる。
◆調査対象品目
企業 | 電力小売事業者、都市ガス事業者、LPG・石油系燃料供給事業者、サブユーザー、住設機器メーカーなど、新規参入事業者 | |
品目 | 住宅 | 創エネ住宅、オール電化住宅 |
機器 | IHクッキングヒーター(ビルトイン)、ガスコンロ(ビルトイン)、エコキュート、電気温水器、ガス給湯器(給湯専用機)、ガス給湯器(ガス風呂給湯機)、ガス給湯器(温水給湯暖房機)、ハイブリッド給湯器、石油給湯器、エコフィール、ルームエアコン、全館空調システム、蓄熱式暖房機、燃焼式床暖房(ガス温水床暖房)、ヒートポンプ式床暖房、電気式浴室暖房乾燥機、ガス式浴室暖房乾燥機、エネファーム(SOFC)、エネファーム(PEFC)、エコウィル、住宅用太陽光発電システム、住宅用蓄電池、HEMS(Home Energy Management System)、電力スマートメーター、一括受電サービス |
※一部の数字は四捨五入しています。このため合計と一致しない場合があります。