PRESSRELEASE プレスリリース

第18116号

自動運転・AIカーの世界市場を調査

  • 自動運転・AIカーの世界販売台数は2040年に4,412万台と予測
  • 全自動車販売台数の33.0%

 マーケティング&コンサルテーションの株式会社富士キメラ総研(本社:東京都中央区日本橋小伝馬町 TEL:03-3664-5839 社長:田中 一志)は、世界の自動車メーカーが開発に注力しているレベル3(条件付き運転自動化)以上の自動化を実現する自動運転・AIカーの市場を調査した。その結果を報告書「2019 自動運転・AIカー市場の将来展望」にまとめた。
 この調査では自動車メーカーの自動運転車両の開発計画、自動運転に必要な電装機器やソフトウェアの動向などをはじめ、車載AIの開発動向や法規制動向、データセンターなどの周辺動向を把握し、自動運転・AIカー市場の将来を予測した。

調査結果の概要
自動運転・AIカーの世界市場(自動運転レベル3以上の車両/販売台数ベース)
2019 自動運転・AIカー市場の将来展望:自動運転・AIカーの世界市場グラフ
 自動運転・AIカーの市場は、2017年に世界で初めてレベル3相当の自動運転を実現した車両がAudiとGMから発売され、立ち上がった。自動車メーカー各社は限定条件下で運転機能をシステムに委ねるレベル3やレベル4(高度な運転自動化)車両の開発計画を発表している。日系自動車メーカーでも自動運転車両の開発が活発化しており、大手各社は2020年に高速道路や自動車専用道路におけるレベル3車両の実用化を目指している。法規制やインフラ整備、社会における受容性の醸成、また、多数搭載されるセンシング機器や高額な半導体のコストダウンといった課題はあるものの、レベル4車両の実用化も身近なところまできており、市場は今後確実に拡大するとみられ、2040年には4,412万台、世界自動車販売台数の33.0%を占めると予測される。ただし、90%以上がレベル3車両で、レベル5(完全な運転自動化)車両は0.6%程度とみられる。
 自動運転技術の発展は自動車メーカーだけでなく、ITS機器メーカーやセンシング機器メーカー、半導体メーカー、AIベンチャー、データセンター事業者など、多くの企業がビジネスチャンスととらえており、この分野に注力している。また、自動運転車両の開発でもこれまでこの分野には関連性の薄かった異業種間で連携や共同開発が行われている。
レベル3以上の自動運転・AIカーの国・地域別販売ウェイト
2019 自動運転・AIカー市場の将来展望:レベル3以上の自動運転・AIカーの国・地域別販売ウェイトグラフ
 自動運転・AIカーの投入で進んでいるのはEU市場である。NAFTA市場にも一部投入がみられるが僅少で、顕在化するのは2019年と予想される。同時に中国市場も立ち上がる。日本はその翌年の2020年頃の市場投入が予想される。
 EUは他の地域に比べて環境保護要求の高い地域である。環境にやさしいとされていたディーゼル車が多い地域であったが、2015年の排ガス不正を受けてディーゼル車禁止地域が広がっている。早くからMaaS(Mobility-as-a-Service)に取り組んでいる欧州自動車メーカーはMaaSとの親和性が良いEVなどへの急転換を図っている。同時にMaaSと連動した自動運転車両やMaaS車の普及を進めている。
 NAFTAの移動手段は自動車が主体であり、乗車する時間は長い。そのため自動運転車両についてもニーズは高く、EUに次いで早期に市場が形成されるとみられる。NAFTAでは自動運転車両の、一般ユーザーまでの早期普及が求められており、2020年頃のMaaSと連動した市場投入が顕在化すると予想される。
 中国では新技術に対する官民の取り組みは積極的で、EVについては補助金政策が行われており、AI化についてもBaiduなどのITメーカーが積極的に取り組んでいる。そのため自動運転車両の市場投入は欧米に次いで早いとみられる。
 日本ではトヨタや日産が東京五輪に合わせてレベル3車両の実用化を目指している。レベル4以上の車両の実用化についてはインフラの整備や法規制整備などの課題があることから、本格的な投入時期としては2030年代となるが、市場はまだ非常に小規模にとどまるとみられる。自動運転車両を普及させるには、官民一体となったインフラ整備や法規制整備といった課題解決、自動運転車両を使ったビジネス形成などに取り組む必要がある。
注目市場(自動運転・AIカー関連デバイス)
1. LIDAR
2018年見込2017年比2040年予測2017年比
1万個100.0%5,505万個5,505.0倍
15億円93.8%1兆7,066億円1,066.6倍
 LIDAR(Light detection and ranging)は、レーザー光をパルス状に照射し、物体に反射されて戻ってくるまでの時間から対象物の距離や方向、属性などを測定するリモートセンシング技術の一つである。自動運転レベル3〜5の量産車や試作車の搭載ではレーザー光を縦横に照射することで周辺(120〜360°)の空間情報をスキャンし、リアルタイムで3Dマッピングを行い、地図データと照合して高度な位置測定、周辺情報(対向車、歩行者などの識別、白線検知など)の把握を可能とする。
 2018年の市場は1万個が見込まれる。自動運転システムの高精度化に向け、リアルタイムの空間情報検知にはLIDARが不可欠とみて開発に乗り出す自動車メーカーやTier1(自動車メーカーと直接取引する一次サプライヤー)が多い。2025年頃に製品化、量産されるとみられることから、それに伴い市場は本格化すると予想される。
2. ミリ波レーダー
2018年見込2017年比2040年予測2017年比
4,940万個108.4%3億1,465万個6.9倍
3,965億円107.7%2兆2,491億円6.1倍
 ここでは準ミリ波として24GHz帯、ミリ波として76G〜79GHz帯のレーダーを対象とした。ミリ波レーダーは天候や昼夜などの周辺環境の影響を受けず、また、積雪などの路面状況にも検知精度が左右されないことから、カメラ機能の補助としてADASなどで採用が増加している。24GHz帯は主に短距離から中距離における周辺環境の認識や衝突防止などに利用されている。76〜79GHz帯は主に中長距離に利用されているが、距離分解能を向上させることにより、短距離まで対応可能なマルチレンジのレーダーシステムとしての利用が期待されている。
 76〜79GHz帯のミリ波レーダーはACCやAEBなどの前方検知用途で需要が増加しているが、今後、周辺検知でも使用されることから市場は数量、金額ベースともに拡大するとみられる。なお、金額ベースの伸長率はCMOS方式のミリ波レーダーが2020年以降普及期を迎え、低価格化が進むことから数量ベースと比べると低くなるとみられる。
 24GHz帯のミリ波レーダーはEUをはじめとして2020年代に法制度によって使用が制限され、距離分解能を高めた79GHz帯のミリ波レーダーに置き換わっていくことから、数量、金額ベースともに市場は縮小していくとみられる。
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