PRESSRELEASE プレスリリース
■業務用ヒートポンプ給湯機の世界市場 3,850億円(5.7倍)
~国内では電気式や、燃焼式と電気式のハイブリッド利用で伸び、海外では産業施設の低温加熱などでの利用で拡大~
■空調・暖房/給湯機器の世界市場 22兆6,717億円(159.0%)
~脱炭素化で燃焼式から電気式へ移行する。電気式給湯機器の伸長で拡大~
総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋小伝馬町 社長 清口 正夫 03-3664-5811)は、世界的な脱炭素化の流れの中、その実現に貢献する機器として注目が集まっているヒートポンプ機器の世界市場を調査した。その結果を「ヒートポンプ 温水・空調市場の現状と将来展望 2021」にまとめた。
この調査では、ヒートポンプ式を中心とした空調・暖房/給湯機器全体の市場を調査・分析したほか、冷媒やコンプレッサー、再生冷媒の最新動向などについてもまとめた。
◆注目市場
●業務用ヒートポンプ給湯機【業務・産業分野/電気式/給湯】
2021年見込 |
2020年比 |
2035年予測 |
2020年比 |
720億円 |
106.7% |
3,850億円 |
5.7倍 |
業務・産業分野で使用される空気熱源の給湯機のうち、給湯専用機と暖房給湯兼用機を対象とする。水や排熱を熱源とする機器は含まない。
国内では給湯専用機が主力である。2020年秋に宣言された「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を受け、電化機器へ注目が集まっており、2021年の市場は拡大するとみられる。政府は「地球温暖化対策計画(2016年策定)」で、2030年に業務用ヒートポンプの累計導入台数を14万台とする目標を立てており、今後は脱炭素に向け、電気式給湯機や従来型の給湯機と小容量の電気式給湯機を併用するハイブリッド利用が増加するとみられ、市場は拡大が予想される。
海外では給湯専用機に加え、ボイラの代替として暖房給湯兼用機も使用されている。需要は中国と欧州の需要が中心である。中国では、石炭ボイラ規制や経済成長に伴う生活水準の向上でフィットネスクラブや温泉施設が増えていることから、需要が増加している。2021年以降は産業施設における低温加熱の需要増加も予想される。欧州では、ドイツやイタリア、フランスで普及が進んでおり、2021年は熱源転換を含む既築向けが増加している。今後も、脱炭素に向けた燃焼式から電気式への移行により市場は拡大するとみられる。
●住宅向けヒートポンプ式給湯機【住宅分野/電気式/給湯】
2021年見込 |
2020年比 |
2035年予測 |
2020年比 |
2,620億円 |
107.8% |
4,120億円 |
169.5% |
住宅向けヒートポンプ式給湯機のシステム全体を対象とする。
国内ではCO2を冷媒とする製品が一般的であり、市場は新築のオール電化住宅での採用によって拡大している。また、2010年前後に導入された機器の更新時期に入っており、2021年も更新需要によって伸長している。この需要は2025年まで続き、その後は落ち着くものの、中長期的には効率性の良さや再生可能エネルギーによる自家発電の増加で伸長するとみられる。
海外では非CO2冷媒製品が一般的であり、導入に関する補助金政策がある中国や欧州が中心である。中国では生活水準の向上により新築戸建住宅の高所得者層でヒートポンプ式の需要が増加し、市場は拡大している。欧州では、既存ボイラからの切り替えが難しいため、設置の7割が新築向けとなり、特にフランスでは電気代が他の欧州諸国と比較し安価であるため、普及が進んでいる。近年は冷媒にR32を使用した製品も販売されているが、今後、規制強化によりR32が使用できなくなる恐れから、日系企業が展開するエコキュートに注目が集まるとみられ、市場は拡大が予想される。
●パッケージエアコン/ビル用マルチエアコン【業務・産業分野/電気式/空調・暖房】
2021年見込 |
2020年比 |
2035年予測 |
2020年比 |
2兆6,981億円 |
100.7% |
4兆4,371億円 |
165.6% |
パッケージエアコン(PAC)とビル用マルチエアコン(VRF:Variable Refrigerant Flow Systems)を対象とする。PACは、主として事務所や店舗などのビル用に設計されたエアコンを指し、店舗やオフィス向けの店舗用PAC、工場や産業施設向けの設備用PACに大別される。また、米国で住宅用としても広く普及している全館空調機・ユニタリーエアコンも、PACとした。VRFは主に中規模ビルに使用されるエアコンであり、室内機ごとに個別運用が可能である。
国内ではPAC、VRF共にリプレイスを中心とした成熟市場である。2019年までは東京五輪に伴う都市開発の影響により、新築を中心に市場は拡大していたが、2020年は新型コロナの影響で設備投資控えが起き、販売台数が減少した。中長期的にはPACとVRF共に更新需要が中心になり、市場は縮小が予想される。
海外では北米や中国の需要が中心であり、とりわけVRFはオフィスビルや店舗、ホテルに加え、室温管理の効率の良さなどから大型住宅などでの採用も増加している。北米ではユニタリーエアコンが普及しているが、個別制御機能などが評価されているVRFへの置き換えが進んでいる。また、中国やその他アジアでは、PACとVRF共に新築需要が増加しており、今後はこれらが伸長することで大幅な市場拡大が予想される。
◆調査結果の概要
■空調・暖房/給湯機器の世界市場
2021年見込 |
2020年比 |
2035年予測 |
2020年比 |
14兆5,934億円 |
102.4% |
22兆6,717億円 |
159.0% |
2021年の市場は、新型コロナウイルス感染症の影響が続くものの、中国では需要が回復していることから、前年比2.4%増の14兆5,934億円が見込まれる。
2035年に向けて、燃焼式は脱炭素への取り組みや化石燃料の消費抑制によって、業務・産業用燃焼式給湯機器が縮小すると予想される。一方、燃焼式から移行する電気式は、住宅向けと業務・産業向けの空調/暖房機器が大きく伸長し、市場は2020年比59.0%増の22兆6,717億円が予測される。
■ヒートポンプ機器の冷媒動向
冷媒とは、ヒートポンプサイクルの中で熱を移動(温度変化)させる熱媒体である。
一般的には、フルオロカーボン(フロン)や二酸化炭素、アンモニア、ブタン、イソブタンなどが使用される。フロン系冷媒は、モントリオール議定書発効以降、オゾン破壊係数(ODP)の規制を受け、CFC(クロロフルオロカーボン)からHCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)へ、さらにHFC(ハイドロフルオロカーボン)へと変遷してきた。その後、キガリ改正により温室効果の強いHFCが規制対象に加えられたことを受け、近年は、地球温暖化係数(GWP値)の低い新冷媒への移行が検討されており、一部の機器ではすでに移行が進んでいる。
1)ルームエアコンの冷媒動向
2020年は、途上国ではR32とR410Aが、先進国ではR32が主に採用された。
2035年はR32が5割を占めるとみられるが、2025年以降は冷媒規制が最も厳しい欧州でGWP値の低いR290やHFOの採用も進むと予想される。R290は強燃性対策が課題であるが、欧州では自然冷媒が選択される傾向にあるため、今後は圧縮機や凝縮器、蒸発器が一体のウィンドウ型ではR290、圧縮機や凝縮器と蒸発器が分かれたスプリット型ではHFOが選択されるとみられる。
2)チリングユニットの冷媒動向
2020年は、R410Aが中心であるが、オゾン層の破壊効果があるR22の採用も一定量あった。
2030年までにR22の使用禁止が進むとみられる。また、2035年にはGWP値が低いHFOが中心になるとみられる。
参考)主要冷媒の種別と冷媒番号
種別 |
冷媒番号 |
HCFC |
R22 |
HFC |
R32 |
R134a |
|
HFC混合 |
R410A |
R407C |
|
HFO |
R1234yf |
R1234zeなど |
|
ノンフロン |
R290 |
◆調査対象
住宅分野 (7品目) |
電気式 |
空調・暖房 |
ルームエアコン、住宅向けヒートポンプ式温水暖房機、 地中熱利用ヒートポンプ |
給湯 |
住宅向けヒートポンプ式給湯機、 電気温水器(貯湯式/瞬間式) |
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燃焼式 |
空調・暖房 |
住宅向け燃焼式温水暖房機 |
|
給湯 |
住宅向け燃焼式給湯器 |
||
業務・産業分野 (10品目) |
電気式 |
空調・暖房 |
パッケージエアコン/ビル用マルチエアコン、 チリングユニット、ターボ冷凍機、蒸気/熱風発生ヒートポンプ |
給湯 |
業務用ヒートポンプ給湯機、排熱回収ヒートポンプ |
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燃焼式 |
空調・暖房 |
ガスエンジンヒートポンプエアコン、 吸収式冷凍機(冷温水発生機)、蒸気ボイラ(貫流ボイラ) |
|
給湯 |
業務用温水ボイラ |
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その他 (7品目) |
冷凍・冷蔵 |
冷凍・冷蔵ショーケース、コンデンシングユニット、 自動販売機 |
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輸送・移動体 |
カーエアコン、電動自動車用カーエアコン、 輸送用冷凍・冷蔵ユニット、磁気ヒートポンプ |
※網掛けは国内市場のみ調査・分析