PRESSRELEASE プレスリリース
新型・次世代太陽電池の開発、特殊用途向けの取り組みも活発化
■第三者所有モデル(PPAモデル、リース) 4,224億円( 2022年度比10.4倍)
~電気料金高騰と環境価値ニーズの高まりから、太陽光発電システム導入形態の一つとして定着~
■太陽電池 2,232億円 / 内、新型・次世代太陽電池 250億円
~新型・次世代太陽電池が、2040年度には太陽電池市場の1割程度を占める~
総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 社長 菊地 弘幸 03-3241-3470)は、燃料価格や電気料金の高騰、エネルギー安全保障などの観点から需要が高まっており、新型・次世代太陽電池の開発、ソーラーカーポートや営農発電といった特殊用途向けなどの取り組みも活発化している太陽電池の関連市場を調査した。その結果を「2023年版 太陽電池関連技術・市場の現状と将来展望」にまとめた。
この調査では、太陽電池・周辺機器や設置形態別・アプリケーション別、ストック向けビジネスなど太陽電池に関連する国内市場、太陽電池やインゴット/ウエハー製造技術、セル/モジュール部材の世界市場を調査・分析し、将来を展望した。
◆注目市場
●第三者所有モデル(PPAモデル、リース)の国内市場(年度:4月~3月)
2023年度見込 |
2022年度比 |
2040年度予測 |
2022年度比 |
551億円 |
135.0% |
4,224億円 |
10.4倍 |
サービス事業者が顧客の所有する建物の屋根などに太陽光発電システムを設置し、電力購入契約を結ぶ顧客へ電力を供給するPPAモデルと、定額で太陽光発電システムを貸与するリースを対象とする。顧客は初期投資なしで設置でき、原則、契約期間終了後は、顧客に無償譲渡される。
近年の電気料金高騰と環境価値ニーズの高まりを受けて注目度が高まっており、太陽光発電システム導入形態の一つとして定着しつつあることから、2023年度の市場は前年度比35.0%増の551億円が見込まれる。太陽光発電システムの導入費低減により収益を得やすくなっていることから、新規参入が相次いでいる。
また、長期契約となることからユーザーとの直接的な関係構築を進めていき、将来的にVPP/DR/P2P電力取引などへの展開を想定する事業者も多く、2040年度の市場は2022年度比10.4倍の4,224億円が予測される。
需要分野別には、住宅向けは、ZEH推進の観点から太陽光発電システムの提案が増加している。また、電気料金が高騰していることから、可能な限り自家消費を増やし、余剰売電をしないようにした提案や、太陽光発電システムと蓄電池をセットにした提案も増えている。
非住宅向けは、自家消費を前提とした、オンサイト型の屋根設置案件が中心である。商業施設や文教施設、医療・福祉施設、公共施設、工場、冷凍・冷蔵倉庫などで導入されており、300kW程度の中小規模案件が多い。また、電力需要が大きい施設では数百kW~MW規模のオフサイト型が増えており、今後はPPAにおけるオフサイト型の比率が上昇していくとみられる。
●新型・次世代太陽電池の国内市場(年度:4月~3月)
国内で開発・販売される色素増感太陽電池(DSC)、有機薄膜太陽電池(OPV)、ペロブスカイト太陽電池(PSC)を新型・次世代太陽電池とした。
2023年度時点では、DSCやOPVが先行している。DSCはバッテリーレスによるメンテナンスフリーの利便性を訴求したIoTセンサー電源として、OPVはフィルム基板による軽量・薄膜・フレキシブルという特性を活かした窓ガラスや屋根材一体型のBIPVとして展開が期待される。
市場が本格的に立ち上がるのは、PSCの商用化が進む2025年度以降とみられる。PSCは結晶シリコン太陽電池と組み合わせたタンデム型、BIPVでの既存太陽電池の代替が有望であり、潜在的なポテンシャルの大きさから、今後の市場をけん引すると期待される。
2040年度には太陽電池市場の1割程度を新型・次世代太陽電池が占め、市場は250億円が予測される。
◆調査結果の概要
●太陽電池の国内市場(年度:4月~3月)
|
2023年度見込 |
2022年度比 |
2040年度予測 |
2022年度比 |
金額 |
3,110億円 |
92.9% |
2,232億円 |
66.7% |
数量 |
7,750MW |
101.2% |
9,070MW |
118.4% |
2020年度以降、出荷価格の上昇や、電気料金の高騰に伴う需要増加により、住宅/非住宅向け共に金額ベースで大きく拡大している。2022年度は電気料金の高騰により、住宅向けが1,000MWを超えるなど大幅に伸びた。2023年度も引き続き住宅向けの好調により数量ベースは伸びているが、新型コロナの影響などによるサプライチェーンの混乱が落ち着きを見せ始めたことから出荷価格が下落に転じているため、金額ベースでは縮小が予想される。
2024年度まで非住宅向けでFIT認定失効制度適用による駆け込み需要が期待されるが、2025年度にはFIT案件による導入が大きく減少することで、金額・数量共に大きく縮小すると予想される。以降は、自家消費用途を中心としたPPAの提案拡大や国・地方自治体による住宅/非住宅向けの設置義務化の流れ、ペロブスカイト太陽電池を中心とした新型・次世代太陽電池の開発、ソーラーカーポート/営農発電といった特殊用途向けの取り組みの活発化などから、経済性と環境性を両輪とした太陽光発電システムの導入が広がり、数量ベースでは拡大するとみられる。しかし、海外企業を中心とする主要メーカーの生産能力拡大に伴い、出荷価格が下落し、金額ベースでは2,000億円程度で推移するとみられる。
●太陽電池の世界市場(年次:1月~12月)
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2023年見込 |
2022年比 |
2040年予測 |
2022年比 |
金額 |
12兆6,060億円 |
107.1% |
22兆3,897億円 |
190.2% |
数量 |
377.8GW |
116.7% |
1,190.0GW |
3.7倍 |
2020年から2022年にかけて、ポリシリコンをはじめとしてケーブル、銅、樹脂、鉄、アルミなどの部材価格の高騰がみられた。一方で、燃料価格や電気料金の高騰、エネルギー安全保障などの観点から太陽光発電システムの導入ニーズが世界的に高まっている。地球温暖化に対する危機感の高まりや各国政府による導入促進政策も後押しとなり、2022年は、前年から数量ベースで50%近く伸び、金額ベースでほぼ倍増した。
2023年は価格高騰が落ち着きつつあるが、中国や米国での発電事業用の導入がけん引することで、数量・金額共に拡大するとみられる。今後は原材料価格の落ち着きに加え、各種構成部材の生産能力拡大に伴う価格低下が想定されるが、インドを筆頭とするグローバルサウスの経済成長と脱炭素化の動き、カーボンニュートラル実現に向けた主力電源として太陽光発電システムの導入が進んでいき、2040年には22兆3,897億円、1,190.0GWが予測される。
なお、サプライチェーン強化、エネルギー安全保障などの観点から、米国や欧州では自国生産に切り替える動きが顕在化している。
◆調査対象
国
内 |
太陽電池・周辺機器 |
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・太陽電池 |
・パワーコンディショナー |
・架台 |
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・新型・次世代太陽電池 |
・遠隔監視システム |
・蓄電システム |
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太陽光発電システム |
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・住宅用太陽光発電システム |
・非住宅用太陽光発電システム |
|
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設置形態別・アプリケーション |
|||
・第三者所有モデル (PPAモデル、リース) |
・営農型 (ソーラーシェアリング) |
・建材一体型太陽電池 (BIPV) |
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・ソーラーカーポート |
・水上太陽光発電 |
・移動体用太陽電池 |
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ストック向け注目ビジネス |
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・O&Mサービス |
・リサイクル・リユース・適正処理 |
・太陽光発電セカンダリー マーケット |
|
世
界 |
太陽電池 |
||
・太陽電池 |
・高付加価値・特殊型太陽電池 |
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|
インゴット/ウエハー製造技術 |
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・シリコンインゴット/ウエハー |
・ダイヤモンドワイヤー |
|
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・炭素材料 |
・製造装置(ワイヤーソーなど) |
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セル/モジュール部材 |
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・バックシート |
・封止材 |
・電極ペースト(銀ペースト) |