PRESSRELEASE プレスリリース

第24028号

世界の製造業向けロボット市場を調査
製造業向けロボットの世界市場は2028年には2兆円を突破
協働ロボットや小型垂直多関節ロボットの大きな伸長、ウエハ搬送ロボットにも期待

唯一伸びを続ける協働ロボット市場は同2,430億円

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 社長 菊地 弘幸 03-3241-3470)は、製造現場において、いずれの国・地域おいても人手不足や人件費の高騰が深刻な問題となっていることから潜在的なニーズは大きく、今後も拡大推移が期待される製造業向けロボットの世界市場を調査した。その結果を「2024年版 ワールドワイドロボット関連市場の現状と将来展望 FAロボット編」にまとめた。

この調査では、製造業向けとして、溶接・塗装系、アクチュエータ系、組立・搬送系、クリーン搬送系のロボット17品目をはじめ、半導体・電子部品実装向けロボット6品目、FAロボット向け注目構成部材8品目、FAロボット関連のソリューション・サービス2品目の市場を、特に世界最大需要地である中国の最新動向、中国ロボットメーカーの事業実態などを踏まえながら分析し、将来を予想した。

◆調査結果の概要

■製造業向けロボットの世界市場

製造業向けロボットの世界市場

近年、市場はスマートフォン関連、半導体関連、自動車関連での需要増加によって拡大してきたが、2023年はこれらで設備投資が抑制されたことにより縮小した。特に、2023年後半からの中国景気の悪化は、設備投資に急ブレーキをかけた。ロボットメーカーでは、2022年に部材不足による納期遅延が発生したことから大量の見込発注を行ったが、需要が一転して減少したことから在庫調整の局面に陥っている。

2024年は、年初からスポット的な設備投資が散見されるようになってきたことから、市場は回復に向かうとみられる。いずれの国・地域おいても人手不足や人件費の高騰を背景とした自動化ニーズは高く、緩やかながら設備投資も回復に向うとみられることから、2025年にはこれまでのピークであった2022年の市場規模を超え、2028年には2兆円を突破すると予想される。

ロボット別では、組立・搬送系の協働ロボットや小型垂直多関節ロボットの大きな伸長が期待される。人手不足を背景とした手作業からの置き換えに適しており需要が高まっている。また、クリーン搬送系のウエハ搬送ロボットも、半導体製造装置の需要増加に伴い伸びるとみられる。

■■地域別市場

地域別市場

アジア市場の規模が最も大きい。2023年は中国で設備投資が抑制されたことから縮小したが、2024年は回復に向かいつつあり、以降は拡大路線をたどると予想される。近年は中国をはじめ、台湾、韓国などのメーカーが注力度をさらに高めている。シェア上位にランクインする中国ロボットメーカーも散見されるようになった。中国では中国メーカーによるロボット開発やユーザーの導入に対して補助金制度を設けるなどして、ロボット開発や導入拡大を強力に推進している。今後は日本や欧米のロボットメーカーとの競合激化が予想される。

アジア市場の8割近くを占めるのが中国市場である。中国は世界最大の需要地であり、市場は人手不足や人件費の高騰などを背景に拡大を遂げてきたが、2023年は主要な需要先であるスマートフォン関連や自動車関連の設備投資が抑制され、この年の後半には近年好調であったEV関連の設備投資にも急ブレーキがかかり、縮小に転じた。2024年は自動車関連などで設備投資が散見されるようになってきたことから、緩やかな需要回復が期待される。また、米中貿易摩擦を背景に、半導体の国産化に注力していることから、ウエハ搬送ロボットの需要も増加するとみられる。なお、こうした市場環境の中で唯一伸長を続けているのが協働ロボットである。中国では新型コロナウイルスが蔓延して以降、需要が急増している。特に、中国ロボットメーカーが販売実績を伸ばしており、協働ロボット市場でのプレゼンスを高めている。

韓国は自動車関連、半導体・液晶関連が主要な需要先となっており、溶接・塗装系、組立・搬送系、クリーン搬送系ロボットの需要が中心となっている。2023年の韓国市場はスマートフォン関連、半導体関連の設備投資が低調だったことから縮小した。2024年は引き続きスマートフォン関連の設備投資が低調となるが、ディスプレイ関連の設備投資が顕在化するとみられることから、市場はわずかに拡大すると予想される。

台湾は、EMS、半導体・液晶関連が主要な需要先であり、組立・搬送系、クリーン搬送系ロボットの需要が中心となっている。

インドを含むその他アジア(NEXTチャイナ)は、自動車関連、電気・電子関連が主要な需要先となっており、溶接・塗装系、組立・搬送系ロボットの需要が中心となっている。以前から自動車関連メーカーの生産拠点が多いタイやインドネシアに加えて、近年はEMSやディスプレイメーカーがベトナムやインドに生産拠点を展開している。中国における人手不足や人件費の高騰、政治的リスクなどを考慮して、今後NEXTチャイナ地域への生産シフトが活発化していくとみられることから需要の増加が期待される。

◆注目市場

1.協働ロボット

協働ロボット市場

協働ロボットは、人との接触を検知して停止するなどの安全機能を備えたロボットである。従来の産業用ロボットと同様に、人が行っていた単純作業や反復作業を代替することと併せ、人と同じ空間で、人と直接、モノや治工具などの受け渡しを行って協働作業ができる。垂直多関節タイプや水平多関節タイプ、単腕・双腕タイプがある。

協働ロボットはオプション品を充実させることで需要先のすそ野を広げており、市場は中国を中心に拡大している。2023年の市場は、アジア系のロボットメーカーが中国などでの販売を伸ばしたことから拡大した。これまでは、欧州系メーカーが市場拡大をけん引してきたが、近年は台湾系メーカーをはじめ、中国系メーカーなどが実績を伸ばしているほか、多数のロボットメーカーが参入している。これらのメーカーは台湾や中国での販売にとどまらず、欧州や米州、日本などにも展開しており、廉価であることが受け入れられている。なお、日本は、安全性に対する要求が高く、センシティブなユーザーも多いため、大量導入に至るケースは限定的となっている。 人と協働することができ、手軽に設置・運用できることから、今後も市場は堅調に拡大すると予想される。

2.垂直多関節ロボット

垂直多関節ロボット市場

垂直多関節ロボットは多軸構造により人の腕のように動作し、複雑な作業をこなせるロボットである。可搬重量20kg以下の小型垂直多関節ロボットは、スマートフォンやタブレット端末、PCなどのコンシューマ機器や自動車部品の生産ラインなどを中心として採用されている。近年は利用シーンが多様化しており、食品・医薬分野における梱包工程でのピック&プレース用途でも採用されている。一方、可搬重量21kg以上の垂直多関節ロボットは、自動車関連が中心で、部品などの比較的小さなワークから、自動車のボディなどの重量物を対象とするワークまで幅広く対応している。

可搬重量20kg以下、可搬重量21kg以上、ともに2023年の市場は、前年比マイナス成長となった。可搬重量20kg以下は、日本や欧米で自動車関連や医薬品関連などでの需要が堅調だったが、中国で設備投資が抑制されたことが大きく影響した。可搬重量21kg以上も中国での影響を大きく受けたが、パレタイジング用途や自動車部品関連での需要が安定していたことから、ほかのロボットに比べるとマイナス幅は少なかった。2024年は中国で設備投資が緩やかに再開されていることから、市場は2025年以降本格的な回復が予想される。

◆調査対象

1.FAロボット(23品目)

A.製造業向けロボット(17品目)
・アーク溶接ロボット
・スポット溶接ロボット
・塗装ロボット
・単軸ロボット
・直交ロボット
・電動スライダ
・卓上型ロボット
・パレタイジングロボット
・取出しロボット
・スカラロボット
・小型垂直多関節ロボット(可搬重量20kg以下)
・垂直多関節ロボット(可搬重量21kg以上)
・パラレルリンクロボット
・ガラス基板搬送ロボット
・ウエハ搬送ロボット
・協働ロボット
・アーム付AGV

B.半導体・電子部品実装向けロボット(6品目)
・高速モジュラーマウンタ
・中速モジュラーマウンタ
・多機能マウンタ
・ダイボンダ
・ワイヤボンダ
・フリップチップボンダ

2.ロボット向け注目構成部材(8品目)

・FAケーブル ・精密制御減速機 ・オートツールチェンジャ
・ロボット用力覚センサ
・ロボットビジョンシステム(2D/3D)
・セーフティレーザースキャナ
・汎用ロボットハンド
・リニア搬送システム

3.ソリューション・サービス(2品目)

・ロボット制御ソリューション
・協働ロボットレンタルサービス


2024/3/19
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