PRESSRELEASE プレスリリース
■EMS関連市場 3兆1,678億円(2.2倍)
GHG排出量削減の取り組み本格化などによりEMSの活用シーンが増加し市場は拡大
総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 社長 菊地 弘幸 03-3241-3470)は、脱炭素への取り組みやエネルギーコストの高騰によるニーズの高まり、また、人手不足対策として設備管理の自動化や省力化などが実現できることで注目が集まるエネルギーマネジメントシステム(EMS)関連の国内市場を調査した。その結果を「エネルギーマネジメント・パワーシステム関連市場実態総調査 2025」にまとめた。
この調査ではEMS・関連システム11市場(EMS5市場とその関連システム6市場)、関連サービス6市場、関連ハードウェア13市場の最新動向をまとめ、将来を展望した。
◆調査結果の概要
■EMS関連(EMS・関連システム、サービス、ハードウェア)の国内市場
製造業を中心に2050年のカーボンニュートラル実現に向けた取り組みが進む中、温室効果ガス(GHG)排出量の把握や、企業活動におけるエネルギー使用状況の細分化や見える化などを目的に、EMSや関連システムのニーズが高まっている。
また、グリーン電力メニューの拡充などに伴い再生可能エネルギーの導入が加速しているため、再エネ調達ニーズが高まっており、太陽光発電システム関連設備や蓄電システムなどの需要が増加している。さらに、人手不足対策として設備管理のDX化が進んでおり、空調設備や電気設備などの遠隔監視や、建物利用者の快適性や混雑状況などのデータに基づいた最適制御が進んでいる。
今後は、温室効果ガスの排出量やエネルギー使用状況の把握フェーズから削減フェーズへの移行に伴い、大手企業だけでなくサプライチェーンに関わる中小規模事業者まで脱炭素への取り組みが加速するとみられる。再エネの需給調整を目的とした投資が増加すると予想される。また、人手不足対策としてDX化ニーズも年々高まっており、自動化や省力化関連システムなどの市場も拡大するとみられる。
■主要EMS・関連システム市場
1.BAS(Building Automation System)
延床面積が数万㎡以上のオフィスや複合ビル、工場などの大規模施設においてBEMS(エネルギー監視特化型システム)を含む設備管理システムを統合する中央監視システムを対象とする。
市場は、大規模なオフィス・複合ビル、病院、文教施設、工場などの安定した更新需要に支えられている。近年は、首都圏再開発案件での需要に加え人手不足による建物管理の省力化ニーズが高まっており、大規模オフィスビルでの導入が好調である。2030年度前後までは、首都圏再開発案件での導入が市場をけん引するとみられる。
長期的には、人口減少に伴いオフィスの需要が減ることで、大規模施設案件は新設、更新ともに減少していくとみられる。一方、人手不足による建物管理の省力化ニーズの高まりが続くため、複数拠点の統合管理用途での導入増加や、導入費用が安価なクラウドベースのシステムが中小規模施設で普及し、市場をけん引すると予想される。
2.BEMS(エネルギー監視特化型システム)
エネルギー管理に特化し、主に中小規模施設で導入される業務・産業施設向けの汎用的なEMSである。
ビルや商業施設のほか、製造業を中心に省エネ・脱炭素の取り組みや電気料金高騰に伴うエネルギーコスト削減の用途で導入が増加している。中小規模事業者においても、省エネや脱炭素を目的とした導入や引き合いが高まっているものの、費用対効果の観点から導入に至らないケースも多い。
今後は、サプライチェーンの上流から下流まで総合的な脱炭素対策が求められるため、中小規模事業者における温室効果ガス排出量の可視化や削減を目的とした省エネ用途で需要増加が予想される。また、DR(デマンドレスポンス:電力使用量をコントロールし、電力の需要と供給のバランスを取ること)・VPP(バーチャルパワープラント:電力の需要と供給のバランスを最適調整すること)でのエネルギーリソース供出時にBEMSの活用が増加することで導入価値が高まり、市場は拡大するとみられる。
3.CEMS(Community EMS)
特定の地域・街区における住宅や業務・産業施設のエネルギー使用状況などを統合的に管理するためのシステムを対象とする。
2023年度は、資材・人件費の高騰などの影響で、自治体主導案件での導入が複数延期され市場は縮小した。2024年度も同様の傾向が続いており、延期された案件は2025年頃に導入されるとみられる。
今後は、都市部再開発や環境省の「脱炭素先行地域」事業に関連した地域エネルギーマネジメントなどで需要が増加するとみられる。特に、2030年度までの温室効果ガス削減目標達成に向け、脱炭素先行地域での導入が伸びると予想され市場拡大が期待される。また、太陽光発電システムなどの再エネや分散型電源の導入増加、脱炭素やエネルギー需給最適化の要求水準の高まりも市場拡大に寄与するとみられる。
4.建物OS(Operating System)/ビルOS
空調や照明、防災、セキュリティなどの建物設備の情報や、設備保全やテナント管理など建物にかかわる情報を統合管理し、建物運用をデジタル化するシステムを対象とする。
2022年度前後より大規模物件の新設時やシステム更新時に導入されはじめた。また、建物設備メーカーが展開するクラウド上のデータプラットフォームとの連携で、業務ロボットとエレベーターの連携運転や、複数拠点の設備統合管理などの用途で活用されている。
スマートビルの普及を目的に建物OS/ビルOSの仕様標準化などが進められており、建物規模を問わず建物管理の省力化ニーズの高まりを背景に導入が増加し、今後も市場は拡大するとみられる。
◆注目市場
●ディスアグリケーションサービス【EMS関連サービス】
電力スマートメーターや分電盤の計測値を用いて、家庭内の機器ごとの電力使用状況を可視化するサービスを対象とする。現状、電力の見える化や電力需要の変化に基づく、居住者の見守りサービスが展開されており、市場は拡大を続けている。
今後は、現行のサービスに加え、個々の機器の電力使用状況や使用時間帯の把握で、介護や運送事業など様々なサービスとの連携が予想される。また、2025年度より導入予定の次世代電力スマートメーターは、従来のスマートメーターでの5分単位の電力計測より細かいデータ取得ができる。そのため、電力計測デバイスを介することなく使用電力の詳細分析が可能となり、より安価にサービス提供ができると期待される。さらに、2030年代半ばには大半の住宅で従来のスマートメーターが次世代機種に置き換わり、サービス提供が可能になるとみられることから、市場拡大が予想される。
◆調査対象
EMS・関連システム・HEMS
・BAS/BEMS
・REMS(店舗/商業施設向け)
・FEMS(産業施設向け)
・CEMS(地域/街区向け)
・EV向け充放電管理・制御システム
・空調設備監視制御システム
・照明設備監視制御システム
・蓄電設備監視制御システム
・太陽光発電遠隔監視システム
・建物OS/ビルOS
EMS関連サービス
・デマンドレスポンスサービス (EMS活用型)
・建物設備監視サービス
・エネルギーサービス(ESCO/ESP)
・ディスアグリゲーションサービス
・高圧一括受電サービス
・GHG排出量算定・可視化サービス
EMS関連ハードウェア
発電・蓄電分野
・蓄電システム
・V2X
・コージェネレーションシステム
送配電・受電分野など
・見える化ツール
・分電盤
・キュービクル式高圧受電設備
・電力スマートメーター
・ガス絶縁開閉装置
・配電用変圧器
・絶縁監視装置
・保護継電器
・ガススマートメーター
・水道スマートメーター