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ビルダー/リフォーム事業者のZEH、注目住設機器採用状況を調査
総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 清口正夫 代表取締役)は、太陽光発電設置住宅およびZEH、オール電化住宅市場と、大手ハウスメーカー、中堅ビルダー/リフォーム事業者のZEHや先進エネルギー住設機器に関する採用状況について調査し、その結果を報告書「2017年版 住宅エネルギー・サービス・関連機器エリア別普及予測調査」にまとめた。
この報告書では、さらに国内住宅市場におけるエリアごとの熱源(オール電化、都市ガス、LPガス・灯油)シェアおよび関連住設機器の普及状況、電力・ガス小売全面自由化後のエネルギー業界の事業戦略や住宅リフォーム需要ポテンシャルなどについても調査分析し、国内住宅市場の実態と今後を展望した。
◆調査結果の概要
1.太陽光発電設置住宅およびZEH
フロー(単年)
2016年度 |
2025年度予測 |
2016年度比 |
|
太陽光発電設置住宅 |
20.8万戸 |
23.8万戸 |
114.4% |
(新築戸建太陽光発電 設置住宅) |
9.3万戸 |
13.4万戸 |
144.1% |
((ZEH)) |
2.8万戸 |
7.1万戸 |
2.5倍 |
※新築戸建太陽光発電設置住宅は太陽光発電設置住宅の内数、ZEHは新築戸建太陽光発電設置住宅の内数
2016年度の太陽光発電設置住宅は20.8万戸となり、うち44.7%の9.3万戸が新築戸建太陽光発電設置住宅となった。市場は、2013年度をピークにFIT買取価格の低下と連動して減少が続いていたものの、今後ZEHに対するハウスメーカー、ビルダーの取り組みが本格化することが期待され、2025年度には2016年度比14.4%増の23.8万戸、うち13.4万戸が新築戸建住宅設置と予測される。
2016年度のZEHは2.8万戸、新築戸建太陽光発電設置住宅の30.1%を占めた。エネルギー基本計画に掲げるZEH普及目標に向けて、環境省や経済産業省が補助事業を展開し、2016年度にはZEHビルダー制度を開始したことで、ZEHは増加している。今後、FIT買取価格の低下による自家消費ニーズの高まりと中堅ビルダーによるZEH提案活発化、さらに建材メーカーや商社などによるZEH提案に意欲的なビルダーの開拓により、2025年度には2016年度比2.5倍の7.1万戸が予測される。
2.オール電化住宅
(厨房・給湯(北海道/東北では空調も含む)に電化機器を採用した住宅)
フロー(単年)
2016年度 |
2025年度予測 |
2016年度比 |
|
オール電化住宅 |
29.1万戸 |
29.8万戸 |
102.4% |
東日本大震災以降、既存電力会社による電化PRの自粛や節電志向などが起因となり、オール電化住宅市場は縮小が続いており、2016年度は前年度比2.0%減の29.1万戸となった。一方で、電力小売全面自由化スタート後は電化住宅実績の減少幅が徐々に縮小しており、エリア別では北陸、関西、九州エリアは2016年度に増加へ転じた。
従来、オール電化は既存電力会社が夜間電力需要の確保を目的として普及を図ってきたが、電力小売全面自由化以降、その位置づけが変化している。既存のオール電化料金プランに対抗するプランを持つ新規参入事業者は僅少であり、特に原発が再稼動し、家庭向けガス小売事業への参入を見送った西日本の既存電力会社を中心に、顧客囲い込み策としてオール電化を位置づけ、積極的な展開を図るとみられ、今後電化率は上昇すると予想される。
ストック(累計)
2016年度 |
2025年度予測 |
2016年度比 |
|
オール電化住宅 |
654万戸 |
1,057万戸 |
161.6% |
都市ガス住宅 |
2,525万戸 |
2,609万戸 |
103.3% |
LPG・灯油住宅 |
2,182万戸 |
1,483万戸 |
68.0% |
2016年度のオール電化住宅は、前年度比4.5%増の654万戸、電化普及率は12.2%となった。東日本大震災以降は、新築電化率の低下および既築における電化転換数減少などにより、オール電化住宅増加率は緩やかな伸びとなっている。都市ガスは、人口密度の高い都市部が供給エリアの中心であり、転入者数も多いことから継続的な増加が予想される。LPガス・灯油は、他熱源への転換に加え、LPガス・灯油普及率の高いエリアにおける住宅ストックの減少が加速するとみられることから、2030年度のLPガス・灯油住宅普及率は住宅ストック全体の3割を下回ると予想される。
3.ハウスメーカー、ビルダーにおけるZEH、注目住設機器の動向
全国規模で事業展開する大手ハウスメーカー8社において、2016年度のZEH販売戸数は1.7万戸となり、ZEH市場全体2.8万戸の60.7%を占める。同年度ZEH補助金交付件数の約2倍となることから、補助金交付は受けずとも、ZEH基準をクリアする住宅が販売されている。ただし、ZEH採用率はハウスメーカーによって1〜58%と開きがある。
大手ハウスメーカーの住設機器採用状況は、太陽光発電システムが3〜8割の採用率となった。今後はZEH販売戸数拡大に向けて、太陽光発電設置率の向上を課題とする事業者が多い。一方、HEMSは太陽光発電設置住宅に標準搭載としている事業者が増加している。また、先進エネルギー機器であるハイブリッド給湯器では、LPガスエリアでのZEH熱源機器の一つとして提案を行うハウスメーカーもみられる。
その他ビルダーにおいては、2016年度のZEH販売戸数は1.1万戸となった。ZEHの熱源選択においては一次エネルギーの削減目標は設定されているものの、高効率機器であること以上の条件はなく、ビルダーにおいて販売価格が100万円を超えるエネファームの提案はまだ一般化しているとは言い難く、エコキュートを採用するケースが多いと予想される。
なお、中堅ビルダー及びリフォーム事業者全国約500社に関しては、ZEH、長期優良住宅、オール電化住宅の提案実績とスタンス、先進エネルギー住宅設備の提案実績、エンドユーザーの反響を整理し、住宅業界における注目設備機器/サービストレンド及び新築着工減に向けた事業多角化の方向性と課題を調査分析し、関連レポート「中堅ビルダー/リフォーム事業者データブック 2017」にまとめている。
◆調査対象品目
企業 | 電力事業者、都市ガス事業者、LPG・石油系燃料供給事業者、住設機器メーカー、ハウスメーカー/リフォーム事業者、その他 |
住宅 | オール電化住宅、太陽光発電設置住宅およびZEH |
機器 | IHクッキングヒーター(ビルトイン)、ガスコンロ(ビルトイン)、エコキュート、電気温水器、ガス給湯器(給湯専用機)、ガス給湯器(ガス風呂給湯機)、ガス給湯器(温水給湯暖房機)、ハイブリッド給湯器、石油給湯器 |
※一部の数字は四捨五入しています。このため合計と一致しない場合があります。