PRESSRELEASE プレスリリース
電力貯蔵システム向け二次電池の世界市場を調査
電力貯蔵システム向け二次電池の世界市場 7,423億円(5.7倍)
住宅用蓄電や電力貯蔵システム(系統設置他)向けを中心にLiBの需要が大きく伸びる
総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 清口正夫 代表取締役)は、リチウムイオン電池(LiB)、鉛電池(Pb)、NAS電池、レドックスフロー電池、ニッケル水素電池、電気二重層キャパシタなど、電力貯蔵システムに採用される二次電池の世界市場を調査し、その結果を報告書「エネルギー・大型二次電池・材料の将来展望 2016 動力・電力貯蔵・家電分野編」にまとめた。
これらの二次電池は、再生可能エネルギーの自家消費の広がり、電力システム改革の進展に伴う新たなエネルギーサービスの活性化、再生可能エネルギーの導入量増加に伴う系統安定化ニーズの高まりにより需要が増加している。
この報告書では電力貯蔵分野6品目、動力分野3品目、家電分野2品目、その他蓄電デバイス採用製品8品目とそれらに採用される二次電池について、日本、欧州、北米・中南米、中国、アジア他のエリア別に市場の現状を分析し、将来を予測した。
※「アジア他」…日本と中国を除くアジア諸国、インド、中東、アフリカ、オセアニア諸国
◆注目市場
電力貯蔵システム向け二次電池の世界市場
住宅用蓄電システム、非住宅用電力貯蔵システム、系統用電力貯蔵システム向けの二次電池を対象とする。
各システムの市場の伸びに伴い、採用される二次電池の需要も増加している。特にLiBは低価格化や参入メーカーの積極的な営業展開により採用が増えている。今後も 再生可能エネルギーの自家消費サポートや系統安定化、周波数制御などで電力品質を保証するアンシラリーサービス、ネガワット取引などのエネルギーサービスといった様々な用途で需要が増加し、2025年には全体の80%以上を占めるとみられる。また、NAS電池やレドックスフロー電池は再生可能エネルギー導入拡大に伴う系統安定化ニーズの高まりを受け、出力4時間超の長周期用途を中心に需要増加が期待される。
1.住宅用蓄電システム向け二次電池の世界市場
2015年 |
2025年予測 |
2015年比 |
|
市場規模 |
478億円 |
2,407億円 |
5.0倍 |
住宅用蓄電システムは非常用電源用途および、深夜電力や太陽光発電電力を充電し電気料金高騰時間帯に使用するピークシフト用途の需要が増加している。また、2015年に発表され、予約段階で大量の注文を受けたTesla Motors「Power Wall」を用いたシステムの実導入による市場規模の押し上げも期待される。
従来は北米・中南米やアジア他の一部など、系統インフラが不安定な地域の非常用電源用途が中心であったが、 近年は補助制度の整備もありドイツや豪州、米国の一部で太陽光発電電力の自家消費サポート用途の導入が増えている。今後はドイツ、豪州、米国における太陽光発電電力自家消費トレンドの拡大や、住宅で創出された電力を事業者が束ねてデマンドレスポンス(DR)や仮想発電所(VPP)などのサービスを展開するエネルギーリソースアグリゲーション用途も市場拡大をけん引するとみられる。またインドやアフリカ諸国などの系統インフラが不安定なエリアにおける独立電源用途も、堅調な需要増加が予想される。
日本では2013年に創設された「定置用リチウムイオン蓄電池導入支援事業費補助金」の後押しを受け、市場は大幅な伸びを続けてきた。同補助金の廃止などを受け一時的に市場は停滞するが、太陽光発電余剰電力の買取制度適用終了が始まる2019年前後を契機とし、太陽光発電電力の自家消費サポート用途で需要が増加するとみられる。またZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)の普及、エネルギーリソースアグリゲーション用電源としての利用拡大もあり、2020年以降市場は大幅な拡大が予想される。
住宅用蓄電システムではPbとLiBが使用される。Pbは北米・中南米やアジア他での非常用電源用途やピークシフト用途の需要が多いが、LiBの採用拡大に伴い、需要は縮小していくとみられる。LiBは太陽光発電電力や深夜電力のピークシフト用途の採用が中心となる。2020年以降は低価格化の進展もあり、幅広い用途で採用拡大が期待され、市場は大きく伸びるとみられる。
2.非住宅用電力貯蔵システム向け二次電池の世界市場
2015年 |
2025年予測 |
2015年比 |
|
市場規模 |
184億円 |
1,842億円 |
10.0倍 |
非住宅の各種需要家施設(商業・公共・産業施設)に設置される電力貯蔵システムは、現状日本や北米・中南米の需要が中心である。日本はグリーンニューディール基金を背景に、非常用電源用途で学校や公民館などの公共施設への導入が進んだ。北米・中南米では電力需要のピークに従って料金が加算されるデマンドチャージ対策の導入が急増している。
100kWh未満の中小規模システム向けではLiBの採用が中心となる。 今後、北米・中南米やアジア他を中心としたデマンドチャージ対策のピークカット用途や、2020年以降は日本も含めエネルギーリソースアグリゲーション用電源での需要増が予想される。100kWh以上のシステム向けもLiBの採用が主流となるが、日本を中心にNAS電池やレドックスフロー電池の導入も拡大するとみられる。
3.系統用電力貯蔵システム向け二次電池の世界市場
2015年 |
2025年予測 |
2015年比 |
|
市場規模 |
652億円 |
3,174億円 |
4.9倍 |
系統用電力貯蔵システムは、変電所や従来型発電所などの系統設備、発電事業用太陽光発電システムや風力発電システムに併設される製品を対象とする。
系統設備併設の電力貯蔵システムは、現状米国のアンシラリーサービス用途や、各エリアでの離島マイクログリッドなどの系統安定化を目的とした実証試験での導入が中心で、当面はそれらの用途が市場をけん引する。今後は欧州でもアンシラリーサービス市場の整備・拡大が進み、同用途での導入拡大が予想される。
日本は現状実証試験による導入が大半で、 北海道、九州、沖縄、その他島しょ部の再生可能エネルギーの大量導入に向けた系統安定化用途や離島マイクログリッド用途が多い。2016年以降は電力システム改革の進展に伴い、アンシラリーサービスが普及する環境が整うと想定されるため、同用途の需要増加も期待される。
太陽光発電・風力発電システム併設は、現状米国や欧州、アジア他での導入が進んでいる。2018年以降、多くのエリアで再生可能エネルギーの発電コストが既存の電力コストと同等か安価になるグリッドパリティを迎えるため、太陽光発電や風力発電システムの普及が加速し、それに伴い併設電力貯蔵システムの需要も増加するとみられる。
系統用電力貯蔵システムではLiBの採用が多い。系統安定化などの用途はPbやNAS電池の導入が先行していたが、現在はLiBが主流となっている。 今後LiBの低価格化が一層進むことで、アンシラリーサービス用途を中心に、さらなる導入拡大が予想される。NAS電池、レドックスフロー電池は4時間超の出力時間が求められる用途で導入が進むとみられる。Pbは安全性やコスト重視の案件で、特に風力発電システムの出力安定化用途を中心とした導入が予想される。
◆その他の注目市場
無線基地局(携帯電話)バックアップ電源向け二次電池の世界市場
2015年 |
2025年予測 |
2015年比 |
|
市場規模 |
1,359億円 |
2,131億円 |
156.8% |
無線基地局(携帯電話)に備えられる蓄電池型のパックアップ電源設備向けの二次電池を対象とする。 現状は低価格を活かしたPbの採用が主流である。今後も一定の需要が想定されるが、低価格化の進展や省スペース化が可能なことによりLiBの採用が増えており、Pbの需要は徐々に減少するとみられる。一方、LiBは中国やインドをはじめとしたアジアなどの新興国で需要増加が予想される。 また、現状LiBは新設基地局向けで採用されるが、長期的には既設向けでもPbの代替が想定される。
◆調査対象
分野 |
品目 |
電力貯蔵分野 | 中・大容量UPS、無線基地局(携帯電話)バックアップ電源、住宅用蓄電システム、非住宅用電力貯蔵システム(需要家設置)、系統用電力貯蔵システム(系統設置・太陽光発電システム併設・風力発電システム併設)、電力貯蔵システム(鉄道関連施設併設) |
動力分野 | 鉄道車両・LRV、フォークリフト、電動式自動二輪車 |
家電分野 | フィーチャーフォン・スマートフォン、ノートPC・タブレット |
その他蓄電デバイス採用製品 | 電動工具、ウェアラブルデバイス、ドローン、家庭用掃除ロボット、パワーアシストスーツ、電動アシスト自転車、建設機械(ショベル)、高所作業車 |
※一部の数字は四捨五入しています。このため合計と一致しない場合があります。