PRESSRELEASE プレスリリース
日本からの中国向け越境EC市場1,270億元(2兆1,044億円)
中国向け越境EC全体市場4,700億元(7兆7,879億円)
総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 清口正夫 代表取締役)は、消費者の旺盛な購買意欲に支えられて拡大を続ける中国のEC市場について、中でも伸びが著しい中国向け越境ECを中心に調査した。その結果を報告書「中国向け越境EC市場の実態と今後 2016」にまとめた。
この報告書では、中国ECと中国向け越境ECの市場規模および商品カテゴリー別、受注形態別、販売エリア別の市場動向や購入者属性などを分析すると共に、中国向け越境EC市場への参入企業のケーススタディを通して、市場の現状を把握し今後の方向性を予想した。なお、市場は物販を対象とした。
中国政府は内需主導型の経済成長を目指しており、ECの普及を積極的に進めている。特に越境ECについては、国外での消費を国内消費に切り替えられることから法改正などにより活性化を図っている。日本からの中国向け越境ECも年々増加しており、2016年にはアメリカや韓国などを抑えて最大の市場規模になると見込まれる。
※換算レートは各年の12月末のTTMレートを参考とした。2016年以降は1元=16.57円とした。
◆調査結果の概要
1.日本からの中国向け越境EC市場(物販)
市場は急拡大を続けており2016年は613億元(1兆158億円)が見込まれる。中国市場への進出を図る手段として越境ECへ注目が集まり、2015〜2016年にかけて日本企業による中国ECサイトへの旗艦店出店や卸での進出が増えた。中国で日本の化粧品や雑貨、食品、家電などの認知度が高まっていることも、市場拡大の追い風となっている。 大都市が集中している華東、華北、華南が需要の中心である。
商品カテゴリー別では生活雑貨、ビューティ他がそれぞれ30%以上の構成比を占めている。
生活雑貨はベビー用紙おむつが主要商品である。越境EC普及前から中国製に不安のある消費者には日本製の人気が高く、個人輸入や旅行時の購入、中国国内ECでの転売品の購入などが行われていた。しかし、これらのルートでは劣化品や粗悪品が流通しブランドにダメージを与えるリスクがあるため、参入メーカーによる越境ECでの展開が広がっている。また、ベビー用紙おむつはドラッグストアなどの流通系ECでの取り扱いも多いことなどから、価格競争が激化している。
ビューティ他はスキンケアを中心とした化粧品の人気が高い。2016年4月に行郵税が廃止されたことにより、100元以上の商品は実質減税となったため、単価の高いスキンケア商品の販売が増えている。シャンプー、ヘアケア商品も需要が高い。今後は高級スキンケアブランドの進出が期待される。
アパレルはベビー・子供服、インナーウェア、マタニティウェアなどの販売が徐々に増えている。 家電は炊飯器や空気清浄機などインバウンド消費の人気商品が中心であるが、取り扱いは小規模である。欧米製品の人気が高いものの、食品は菓子類や飲料(リキッド、茶葉類)が中心で、「フルグラ」「じゃがポックル」(共にカルビー)などのインバウンド消費でも人気の商品が売れ筋である。健康食品・医薬品はサプリメントが中心であるが実績はまだ小さい。
受注形態別ではスマートフォン経由が60%以上を占めている。4G対応の安価なスマートフォンが普及しており、独身の日などの大規模なセールイベント時にイベント中継をPCで鑑賞しながらモバイル端末で商品を購入する消費者が多い。また、ECサイト側ではショッピング用のスマートフォンアプリを公開し、クーポン発行などでスマートフォンへの顧客誘導を進めている。
現状、ベビー用紙おむつとスキンケア化粧品に需要が集中しており、他の商品カテゴリーへの広がりはまだ弱い。中国で需要を獲得するためには、知名度向上に向けた新商品発売イベントの開催や、セールイベントへの協力などの投資が必要である。また、化粧品が越境ECに関わる新たな税制度への対応を迫られているように、中国の法整備の変更に対応する必要があるなど、今後も市場は拡大が予想されるものの課題も多い。旗艦店出店などの直営モデルだけでは環境変化への対応が難しいため、ECモールへの卸販売や、現地向け商品の開発などによる市場開拓が更に進むことが期待される。
2.中国向け越境EC全体市場(物販)
2016年見込 |
2019年予測 |
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市場規模 |
2,320億元 (3兆8,443億円) |
4,700億元 (7兆7,879億円) |
市場は越境EC実験区プロジェクトが始動した2012年に本格的に形成され、2014年にかけて市場環境の整備が急速に進み基盤が構築された。 中間層や富裕層の増加に伴い、高品質かつ安心・安全な商品を求める消費者が増えたことにより外国製の需要が高まり越境ECの利用が増加している。また、割安商品の導入により低価格志向が強いユーザーの利用促進の取り組みが進んでおり、ユーザーの裾野が広がっている。
2015年は「天猫国際」、「京東全球購」がモール内に国・地域別の専門館を開設したことにより、各国企業の出店が急増したため全体の商品数が増加し、市場は大きく拡大した。2016年は4月の新税制の公布により、商品によっては増税となったことで、参入企業の越境EC事業への注力度低下や利用者の需要減退を招き伸び率はやや鈍化するが、市場は前年比23.7%増の2,320億元(3兆8,443億円)が見込まれ、以降も市場拡大が予想される。
商品カテゴリー別では生活雑貨が30%弱を占めている。特に安心感や安全面から紙おむつをはじめとしたマタニティ・ベビー用品の実績が高い。価格競争の激化が懸念されるものの、2016年の“二人っ子政策”実施により需要は今後更に高まるとみられる。また、スキンケア・化粧品や美容器具などが含まれるビューティ他は25%弱を占めている。外国化粧品ブランドの出店活発化や、各ブランドメーカーとの提携により正規品が安定供給されていることで実績は拡大している。 食品は、中国産に対する消費者の疑念が強く、粉ミルクやスナック菓子をはじめとした加工食品などの需要が高まっている。
商品供給国・地域別
日本やアメリカ、韓国、オーストラリアは、「天猫国際」、「京東全球購」などの大手越境ECモールに専門館が開設されるなど人気が高い。また、参入企業が現地に物流センターや倉庫を設置し配送コストおよび配送日数を削減する取組みもみられる。
日本はマタニティ・ベビー用品や化粧品などが中心である。アメリカは高級ブランドの服飾及び服飾雑貨の需要が高く、店頭価格よりも割安に販売することで需要を獲得する動きが顕著である。また、子供向けサプリメントも一定の需要がある。韓国はスキンケア化粧品の人気が高いほか、紙おむつなどのマタニティ・ベビー用品やスマートフォンなどの需要も増えている。
3.中国EC市場(物販)
2016年見込 |
2019年予測 |
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市場規模 |
5兆4,000億元 (89兆4,780億円) |
10兆5,000億元 (173兆9,850億円) |
実店舗より安価に商品を購入できることや、参入企業が物流網の整備などユーザーの利便性を高める施策を進めたことにより、市場は大幅な拡大が続いている。
受注形態別ではスマートフォンからの受注が60%弱を占めている。時間や場所を選ばずにECサイトにアクセスできる利便性の高さや、大手企業がスマートフォンアプリをリリースし独自のコンテンツ展開やアプリ限定価格での販売といった施策を進めていることにより、スマートフォンの利用率が上昇している。
商品カテゴリー別では、中国向け越境ECと異なりアパレルの構成比が最も高い。直接仕入れの実施などにより、正規品であることを訴求した海外ブランド品の服飾やバッグ、靴などの実績が高く、他の商品カテゴリーと比べて単価が高い。実店舗よりも低価格で販売することで中間層や富裕層を中心に需要を獲得している。ビューティ他ではスキンケア・化粧品が中心である。海外ブランドと提携し正規品の安定供給を訴求した展開が活発化している。生活雑貨では紙おむつや衛生用品といったマタニティ・ベビー用品の実績が高く、今後の伸びが期待される。食品では安心や安全面を訴求した輸入商品の需要が高い。
◆調査対象
対象品目
商品カテゴリー |
品目 |
食品・産直品 | 加工食品、菓子類、酒類、飲料、自然食、水産物、農産物など |
健康食品・医薬品 | 健康食品、シリーズサプリメント、医薬品など |
ビューティ他 | 化粧品、美容器具、健康器具など |
生活雑貨 | 家庭用品、トイレタリー(化粧品除く)、食器、台所用品など |
アパレル | 婦人服、紳士服、子供服、ベビー服、服飾雑貨、宝飾品、スポーツウェアなど |
家電・パソコン | パソコン本体、パソコン周辺機器、パソコンソフト、家電類など |
書籍・ソフト | 書籍、雑誌、音楽・映像ソフトなど |
その他 | 家具・収納、インテリア、寝具、ホビー関連グッズ、玩具、スポーツ用品、文具、カー用品など |
ケーススタディ掲載企業
企業分類 |
掲載企業 |
中国EC企業 | 総合(モール)13社、総合(その他)2社、小売系3社、専門系5社 |
越境EC企業 | 流通系2社、通販系9社、メーカー系4社 |
越境ECサポート企業 | 4社 |
販売エリア
エリア |
対象地域 |
華東 | 上海市、安徽省、浙江省、江蘇省、福建省、山東省 |
華中 | 河南省、湖北省、湖南省、江西省 |
華北 | 北京市、天津市、河北省、山西省、内モンゴル自治区 |
華南 | 広東省、海南省、広西チワン族自治区 |
東北 | 遼寧省、吉林省、黒竜江省 |
西北 | 甘粛省、陝西省、青海省、新疆ウイグル自治区、寧夏回族自治区 |
西南 | 重慶市、雲南省、四川省、貴州省、チベット自治区 |
換算レート
年 |
換算レート |
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2010年 |
1元=12.30円 |
換算レートは各年の12月末のTTMレートを参考としている。(2016年見込は12月1日時点でのTTMレートを採用)また、2017年以降の日本円換算の市場予測値は、2016年見込と同様のTTMレート(2016年12月1日時点)で換算。 |
2011年 |
1元=12.31円 |
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2012年 |
1元=13.91円 |
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2013年 |
1元=17.36円 |
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2014年 |
1元=19.35円 |
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2015年 |
1元=18.36円 |
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2016年(見) |
1元=16.57円 |
※一部の数字は四捨五入しています。このため合計と一致しない場合があります。