PRESSRELEASE プレスリリース
ADHD、抗うつ、アルコール依存症、認知症など
中枢神経領域の治療剤市場を調査
ADHD治療剤514億円(50.7%増)、抗うつ剤(PTSD、社会不安障害含む)1,202億円(5.5%減)
総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 清口正夫 代表取締役)は、大型品の特許切れが相次ぎジェネリック医薬品への切り替えが進む中枢神経領域の医療用医薬品国内市場を調査した。その結果を「2018-2019 医療用医薬品データブック No.2 中枢神経・疼痛・多発性硬化症・ヒト成長ホルモン・診断薬編」にまとめた。
今回の調査では、中枢神経領域(11品目)のほか、新たな作用機序を持つ効果の高い製品が登場している慢性疼痛治療剤をはじめとした疼痛治療剤(6品目)、経口剤による処方開拓が進んでいる多発性硬化症治療剤、新たな作用機序の薬剤投入がなく伸び悩んでいるヒト成長ホルモン、ジェネリック医薬品への切り替えが進む体内診断薬の市場を調査した。
◆注目市場
1.ADHD治療剤(中枢神経領域)
ADHD治療剤は、2007年発売「コンサータ」(ヤンセンファーマ)、2009年発売「ストラテラ」(日本イーライリリー)の2剤により市場が形成された。2017年には小児ADHD治療剤「インチュニブ」(塩野義製薬)が発売され、市場は活況を呈しており拡大している。今後は、「インチュニブ」が成人ADHDへ適応拡大するとみられる。また、小児ADHD治療剤の発売は続いており、市場拡大が予想されるが「ストラテラ」のジェネリック医薬品が発売されると、伸びは鈍化していくとみられる。
2.抗うつ剤(PTSD、社会不安障害含む)(中枢神経領域)
2018年見込 |
2017年比 |
2026年予測 |
2017年比 |
|
市場規模 |
1,247億円 |
98.0% |
1,202億円 |
94.5% |
抗うつ剤は、SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取込み阻害剤)の「サインバルタ」(日本イーライリリー)、SSRI(選択的セロトニン再取込み阻害剤)の「レクサプロ」(持田製薬、田辺三菱製薬)、NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)の「リフレックス」(Meiji Seika ファルマ)、「レメロン」(MSD)などが実績を伸ばしているが、大型品のジェネリック医薬品が発売されて切り替えが進むなど、市場は一進一退を繰り返している。今後は、「リフレックス」「レメロン」のジェネリック医薬品も発売される可能性があり、市場は縮小していくとみられる。
3.慢性疼痛治療剤(疼痛治療剤)
2018年見込 |
2017年比 |
2026年予測 |
2017年比 |
|
市場規模 |
1,498億円 |
106.1% |
1,613億円 |
114.2% |
慢性疼痛治療剤は、高齢化の進行によって増加する患者に対し、「リリカ」(ファイザー)、「サインバルタ」(日本イーライリリー、塩野義製薬)、「トラムセット」(持田製薬)といった、新たな作用機序を持つ効果の高い製品の登場が相次ぎ市場拡大が続いている。今後は、ジェネリック医薬品の発売が予定されており、市場の伸びは鈍化していくとみられる。
◆調査結果の概要
中枢神経領域、疼痛治療剤、多発性硬化治療剤、ヒト成長ホルモン、体内診断薬の市場
中枢神経領域は、抗うつ剤(PTSD、社会不安障害含む)、双極性障害治療剤、抗不安剤、睡眠障害治療剤、統合失調症治療剤、抗てんかん剤、抗パーキンソン病剤・レストレスレッグス症候群治療剤、ADHD治療剤、認知症治療剤、アルコール依存症治療剤、神経変性疾患治療剤・その他中枢神経疾患治療剤を対象とする。
ADHD治療剤は伸びているが、統合失調治療剤や認知症治療剤は、ジェネリック医薬品への切り替えが進んでいることから縮小するとみられ、2018年の市場は6,866億円(2017年比98.0%)が見込まれる。今後は、ADHD治療剤においてもジェネリック医薬品の発売が予定されており伸びの鈍化が予想されることから、市場は引き続き縮小するとみられ、2026年は6,820億円(同97.3%)と予測される。
疼痛治療剤は、NSAIDs・解熱鎮痛剤、慢性疼痛治療剤、ステロイド系消炎鎮痛剤、外用消炎鎮痛剤、麻酔用剤・筋弛緩剤・回復剤、片頭痛治療剤を対象とする。
慢性疼痛治療剤や麻酔用剤・筋弛緩剤・回復剤などは伸びているが、外用消炎鎮痛剤やNSAIDs・解熱鎮痛剤、片頭痛治療剤などはジェネリック医薬品の台頭で、縮小するとみられ、2018年の市場は4,683億円(2017年比98.0%)が見込まれる。今後は、慢性疼痛治療剤で新薬の発売が予定されているが、そのほかの品目ではジェネリック医薬品への切り替えが進むことから縮小するとみられ、2026年の市場は4,286億円(同89.7%)と予測される。
多発性硬化症治療剤の市場は、服薬しやすい経口剤による処方開拓が進み拡大しており、2018年は153億円(2017年比103.4%)が見込まれる。今後は、疾患認知の向上と治療選択肢の拡大によって治療を開始する患者が増えるとみられ、2026年の市場は226億円(同152.7%)と予測される。
ヒト成長ホルモンの市場は、新たな作用機序の薬剤投入がないことから伸び悩んでおり、2018年は551億円(2017年比99.3%)が見込まれる。今後は、少子化を背景に処方の拡大が期待しにくく、横ばいで推移するとみられ、2026年の市場は564億円(同101.6%)と予測される。
体内診断薬の市場は、DPC病院を中心にジェネリック医薬品への切り替えが進み縮小しており、2018年は1,089億円(2017年比94.3%)が見込まれる。今後は、市場の約50%を占めるX線造影剤が薬価改定、ジェネリック医薬品への切り替え、処方件数の減少の影響を受け縮小するとみられ、2026年の市場は908億円(同78.6%)と予測される。
◆調査対象
中枢神経領域 | 抗うつ剤(PTSD、社会不安障害含む)、双極性障害治療剤、抗不安剤、睡眠障害治療剤、統合失調症治療剤、抗てんかん剤、抗パーキンソン病剤・レストレスレッグス症候群治療剤、ADHD治療剤、認知症治療剤、アルコール依存症治療剤、神経変性疾患治療剤・その他中枢神経疾患治療剤 |
疼痛治療剤 | NSAIDs、解熱鎮痛剤、慢性疼痛治療剤、ステロイド系消炎鎮痛剤、外用消炎鎮痛剤、麻酔用剤・筋弛緩剤・回復剤、片頭痛治療剤 |
多発性硬化症治療剤 | |
ヒト成長ホルモン | |
体内診断薬、MRI、CT |
※一部の数字は四捨五入しています。このため合計と一致しない場合があります。