PRESSRELEASE プレスリリース
リチウムイオン二次電池の材料世界市場を調査
リチウムイオン二次電池の材料世界市場4兆5,061億円(2.5倍)
リチウムイオン二次電池の更なる需要増を期待し生産能力増強や新工場の建設が進み市場拡大
総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 清口正夫 代表取締役)は、xEV向けやESS(電力貯蔵システム)向けなど、大型用途を中心に市場が拡大しているリチウムイオン二次電池の材料市場について調査した。その結果を「2018 電池関連市場実態総調査 No.3」にまとめた。この調査では、リチウムイオン二次電池材料12品目をはじめ、その他二次電池材料4品目、一次電池材料4品目、金属資源・出発原料3品目、計23品目を取り上げ、市場動向をまとめた。
◆注目市場
1.リチウムイオン二次電池の材料世界市場
正極活物質、負極活物質、電解液、セパレータ、正極・負極バインダ、正極・負極集電体、外装材などを対象とする。主要4材料(正極活物質、セパレータ、負極活物質、電解液)が市場の80%以上を占める。xEV向けやESS向けなど、大型用途におけるリチウムイオン二次電池の需要増加に伴い材料市場も拡大しており、2018年は2兆3,415億円(2017年比28.0%増)が見込まれる。これまでの主な需要先であった小型民生用途に比べ大型用途は、アプリケーション1台当たりのリチウムイオン二次電池の使用量が多く、材料の使用量も増加する。このため、各国の環境規制対応を背景としたxEVの市場拡大や再生可能エネルギー利用促進のためのESSの市場拡大に伴うリチウムイオン二次電池の需要増加は材料市場の拡大に寄与している。今後は、多くの材料メーカーがxEV向けリチウムイオン二次電池の更なる需要増加を期待して生産能力増強や新工場の建設を進めていることから、市場の拡大が予想される。
2.リチウムイオン二次電池主要4材料の動向
<正極活物質>
正極活物質は、コバルト酸リチウム、三元系、マンガン酸リチウム、リン酸鉄リチウム、ハイニッケルが使用される。
コバルト酸リチウムは、主に角型やラミネート型に使用される。コバルト酸リチウムからほかの材料に置き換えると、材料によっては容量の低下や電圧の変更などが起こることからアプリケーションの設計変更が必要になるため、角型やラミネート型で安定した需要を獲得している。また、リチウムイオン二次電池の充電電圧の高電圧化に対応するため、高電圧充電対応のコバルト酸リチウムの開発が進められており、今後の市場活性が期待される。
三元系は、これまでの小型民生用のシリンダ型のほかxEV用途で需要が増加している。xEVでは、航続距離延長要求、電池のエネルギー密度向上要求から、容量の大きい三元系の需要は今後も増加していくとみられる。
マンガン酸リチウムは、中国のEVトラック用途で鉛蓄電池からリチウムイオン二次電池への置き換えが進んでいることなどから需要が増加している。これまでは、日産自動車のEV「LEAF」の需要が市場をけん引していたがモデルチェンジによってマンガン酸リチウムは使用されなくなっている。
リン酸鉄リチウムは、中国のxEV乗用車、EVバスなど大型電池用途で主流となっている。中国以外でも徐々にリン酸鉄リチウムの使用が浸透してきており、欧州自動車メーカーのアイドリングストップ用電池などで採用されている。近年は、マンガン酸リチウムや三元系の構成比が高まっているが、ESS用途で需要の増加が期待される。
ハイニッケルは、TeslaのEV用途で需要を獲得し拡大している。このほかの用途では充電式電動工具があり、高容量化の進展によってハイニッケルの採用が増加している。
<負極活物質>
負極活物質は、xEV市場の伸びによって拡大している。主に使用されるのは黒鉛(グラファイト)であるが、電池の高容量化に対する要求は激しくなっており黒鉛よりも容量の大きい新たな材料が探索されている。そこで注目を集めているのがシリコン系材料であり、実用化に向けた動きが加速している。
<電解液>
電解液は、電解質塩に有機溶媒と添加剤を混合させたものであり、xEV市場の伸びによって拡大している。電解液は、化学物質規制の影響で欧州への持ち込みが困難なことや輸送に時間がかかり品質保証面で懸念があることなどから地産地消が適切だと考えられており、中国・韓国・日本のメーカーによる欧州生産が増加していくとみられる。
<セパレータ>
セパレータは電池の正極と負極を電気的に絶縁するために使用される。また、電解液を担持する役割も持っている。現在の主流はPO(ポリオレフィン)微多孔膜である。耐熱性や耐酸化性を向上させた安全性の高いコーティングセパレータの需要がxEV用で増加している。
◆調査結果の概要
二次電池、一次電池の材料世界市場
2018年見込 |
2017年比 |
2022年予測 |
2017年比 |
|
二次電池材料 |
2兆4,400億円 |
126.9% |
4兆6,073億円 |
2.4倍 |
一次電池材料 |
1,259億円 |
102.1% |
1,300億円 |
105.4% |
合 計 |
2兆5,659億円 |
125.4% |
4兆7,373億円 |
2.3倍 |
二次電池の材料市場は、リチウムイオン二次電池材料のけん引により拡大する見込みである。市場をけん引しているリチウムイオン二次電池材料は、IT機器向けなどの小型民生用途の伸びが市場成熟により鈍化しているものの、xEV、ESS・UPS(無停電電源装置)・BTS(携帯電話基地局)などの大型用途で需要が大幅に増加している。今後は、引き続きリチウムイオン二次電池材料が市場をけん引し、拡大していくとみられる。
一次電池の材料は、一次電池市場が成熟していることや単価下落の影響から横ばいとみられる。アルカリマンガン乾電池とマンガン乾電池の両方に使用される電解二酸化マンガンは、アルカリマンガン乾電池向けは増加するもののマンガン乾電池向けが減少することから横ばいとみられる。亜鉛粉やアルカリマンガン乾電池用セパレータはマンガン乾電池には使用されないためマンガン乾電池の縮小の影響を受けず、アルカリマンガン乾電池の伸びとともに需要が増加するとみられる。金属リチウム箔は、リチウム一次電池やリチウム二次電池(コイン)の負極活物質として使用されており、リチウム一次電池の需要増加により、伸びると予想される。
◆調査対象
一次電池材料 | 電解二酸化マンガン、亜鉛粉、金属リチウム箔、アルカリマンガン乾電池用セパレータ |
二次電池材料 | アルカリ二次電池正極活物質(水酸化ニッケル、硝酸ニッケル)、水素吸蔵合金、アルカリ二次電池セパレータ、アルカリ二次電池集電体(パンチングメタル、発泡ニッケル) |
(リチウムイオン二次電池材料) | 正極活物質、負極活物質、電解液、セパレータ、正極バインダ、負極バインダ、正極集電体、負極集電体、金属外装缶用ニッケルメッキ鋼板、角型用アルミ板、ラミネート外装材(アルミ箔・SUS箔)、導電助剤 |
金属資源・出発原料 | LIB正極前駆体、電解質塩(LiPF6、LiBF4、LiTFSI、LiFSI)、国内リチウムイオン二次電池リサイクル市場 |
※一部の数字は四捨五入しています。このため合計と一致しない場合があります。